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第三章 世界に降りかかる受難

第539話

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 アー君が農村地帯に領地ごと引っ越してきた一族さんと揉めたらしい、内容は税金がどうのとか。

「税はどうすればいいか聞かれたから、いらないって答えたらめっちゃ怒られて領主としての在り方とか運営とか長々説教された」

 今のところ農村地帯で人が住めるのは各国から借り受けた農業のプロ集団がいる村と、レッサーデーモンの皆さんが暮らす辺境の地ぐらい。
 そろそろ他にも村が出来てもいい頃だけど、行ってもどこまでも農地でよく分からないんだよね。

 あの土地の運用自体は各国から送られる資金の他、どっかんどっかんと爆発的に生産される涼玉の加護を受けた作物を売ったお金、辺境でレッサーデーモンの皆さんが売っている冷凍ライス、あと刀国から押し付けられる支援金など。
 つまりまぁ、税金という概念がアー君になかったゆえのトラブル、本拠地としている刀国も税金の概念が薄いから頭からすっぽ抜けていたようです。

 前に一度、国庫が圧迫されて悲鳴を上げた大臣の一人が、やけっぱちになって「重税をかけて市民からお金を絞り取り、苦情が出たところで二倍にして返す!」と発言した事があるらしい。
 王妃様が参加していた朝の会議での発言だったため、チョークスリーパーを食らったとか。

 まぁそれは置いといて。

 とりあえず領主さんとの話し合いはアカーシャ親衛隊に間に入ってもらい、商業ギルドを通して税金を納めるという事でまとまったそうです。
 とうとうお役所仕事まで手を出し始めたのか……手広くやってるなぁ。

「その噂のパパさんと一族を見に来たら巻き込まれました」
「これが噂の突発性婚約破棄」
「セリフも使い回されたテンプレだなぁ」
『いっそこれを名物にする?』
「一瞬で終わるから屋台の客寄せにもならないんよ」

 広々とした広場のど真ん中。
 広すぎて歩くの途中で飽きるこちらの広場を皆で歩いていたら、僕らを間に挟んで突然婚約破棄が始まったんだよね、これにはびっくりした。
 せめて間に人がいない時にやろうよ、僕らが小さくて視界に入らなかったかもしれないけど、でっかいマールスや霧ちゃんも視界にいるよね? しかもこの二人、どかない。

 白昼堂々とピンクの女の肩を抱き、すらりとした美人のお兄さんに婚約破棄を大声で告げる一人の青年。
 セリフは「真実の愛を見つけた」とかそういう系。

 でもそれは本当に真実の愛なのかなー?
 だってピンクのステータス画面に「金づるを手に入れてご機嫌」って書いてある。

 一方のお兄さん、ガーゴイルさんに保護された例のお兄さんの親族っぽい、「親族が魔王に保護されたのをきっかけに一族で亡命、婚約者募集中」って書いてあるもの。
 待って、募集中って、じゃあ目の前の婚約者面してるそれ、誰?

 とりあえずネヴォラにお願いして断罪して悦に入っている集団を昏倒させ、お兄さんに近付いたら困ったように微笑んでいます。

「ちわっす!」
「涼玉様、お久しぶりです。お恥ずかしい所を見せてしまいました」

 涼玉と知り合いだったようだ。
 週に何度もロデオしに遊びに来ているからね、その時に知り合いになったのかな?

「リーシャ、変なのに巻き込まれてたな!」
「あれは国外追放するから安心してください!」
『そもそも不法入国なのよ、ギルドに引き渡して慰謝料どーん』
「人外で良ければ紹介すんのよ、レッサーデーモンだけど!」

 元気溌剌のネヴォラがお兄さんに独身魔物を紹介しようとしている。
 確かに彼らは嫁さん募集中だけども、聖属性苦手だからイネスが走り回るこの地へは出てこないよ。
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