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権力とは使う為にある

第235話

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 その日、鬼神が刀国に降り立った。

「あ~る~じ~さ~まぁぁぁぁ」

 本当の鬼神じゃなかった怒り狂ったラウルさんだったよ。

 首元にキスマークやら噛み跡やらがたくさんついているけど、ここで「昨晩はお楽しみでしたね」とか茶化したら怒られそうだから黙っておこう。

「もぅ、樹を驚かさないでよ、胎教に悪いなぁ」
「それは失礼しました。ですがその御様子だと私が何に怒っているか分かっているようですねぇ」

 地の底を這うような低い声がお腹に響く、怖い怖い怖い怖い、騎士様何をしたんですか!
 魔力供給はもういいので僕を解放してください、お茶を用意するふりして逃げたいです!

「もー何が不満なの、約束通り国王職から降りれたでしょ~」
「降りたけど王配になったら意味ないわボケエエエエエエエ!!」

 ラウルさんのオーラが黒い!

「私の役目は我が君の世話であり、人間の世話ではありません!」
「そう言いながら~、凄いキスマークの量だよね~」

 あ、待って騎士様、それ言わない方が良い、言ってみたいの分かるけど言わない方がいいですって絶対。

「昨晩はお楽しみでしたね、あ、この三日間か!」

 キシャアアアアアアア!!!

「ひゃぁぁぁぁ」
「イツキ様!!」
『かあしゃま!?』

 火にダイナマイトを放り込んだ騎士様のせいでラウルさんが暴走し、僕が思わず上げてしまった悲鳴を聞いてシャムス達が隠し部屋から飛び出して来た。

『りっちゃん母様助けて!』
「承知ぃぃぃ!」
「退け牛ぃぃぃぃぃ!!」
「ふぬうううううん!」

 見た目の重量を裏切るスピードで僕らの間に割り込んできたりっちゃんが、飛び掛かってきたラウルさんをその巨体で受け止め。

 ぼいいいいいいいん

 ぷるるんボディで空高く跳ね返した。

『りっちゃんありがとー、すごいねぇ』
「いやぁ」
『おー、イブの言う通りスピード強化しておいて正解だな。それにしても今の誰だ』
「今度は外見を調整しましょう、スライム感を減らして自然な筋肉に見せたいです」
『おーし、撤収~』

 正直な話、僕は何が起こったか分かりたくない。
 でも……ああ……屋根が……

「大丈夫、自動再生ついてるから」

 まったりとお茶を飲みながら騎士様に肩をぽんぽんと叩かれて、とりあえず屋根の修繕はしなくてよさそうな事に安心しておいた。

 ラウルさんは死んではいないと思う。
 もし生還したらそうだな、とりあえず「ご結婚おめでとうございます」って言えばいいのだろうか、駄目かなぁ。

「ラウルはドラグーン王国に転送しておいたからもう大丈夫だよ」

 さらっと言われた。

「それに嫁が妊娠したし、仕事の代理と魔力補給でしばらく忙しくて来れないと思うよ~、あ、嫁ってベルのお兄さんね」
「騎士様もしかして、ラウルさんの同意何一つ得ずに話進めたでしょ」
「あはははは~」

 そりゃ怒るわ。

「僕の名前で滋養に良い物送っておきますね、ベル君のご両親経由でいいかな」
「ありがとねぇ」

 ついでに胃薬も送るべきか迷うなぁ。
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