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初デート

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 土曜日になり、美月は祐介との待ち合わせの駅に向かう。
 朝9時という早い時間だったが祐介との初デートのため、苦にはならない。ゲシュペンストの練習場に行く、圭吾に会いに行くとは違った感じがした。
 あれ以来、圭吾からのメールは届いてないし、美月からメールも送っていない。
 ラボーラのブログも更新してない美月。圭吾に対して少し距離を置きたいと思っていた。それが彼氏になった、自分の事を好きになってくれた祐介への礼儀だと思っていた。
 美月が到着すると祐介が「おはよ」と声をかけてきた。

「おはようございます。今日はどこに行くんですか?」
「内緒~♪」

 祐介の笑顔がサプライズを予感させる。初デートの場所は祐介が決めていた。
 その場所を何度聞いても「内緒」の一言で隠された。

「せっかくの美月ちゃんとの初デートなんだから楽しまないとね」

 そう言って祐介は車を出発させると、車中の会話が弾む。美月は自分が少しずつ祐介に引かれていく自分を自覚していた。
 車は高速道路に乗り、東京方面に走っていく。

「そんなに遠くに行くんですか?」

 美月はちょっと不安になり祐介に聞いてみた。祐介は運転しながら美月の問いに答えた。

「大丈夫。ちゃんと遅くならないように帰る。初デートだから、美月ちゃんの笑顔が見たいだけ」

 静岡の看板までは美月には理解できたが、そこからは美月には分からない。高速道路を降りたときには、正午を回っていた。
 そこは横浜と書いてあった。

「中華街でご飯食べようか」

 祐介が気軽に美月に話しかける。美月は唖然とするだけだった。
 今まで彼氏がいたことない美月。友達から色々聞いていた。
 同級生や同じ高校生と付き合っている友達の付き合い方はカラオケや映画、ボウリングがメイン。ちょっと遠出しても遊園地や水族館ぐらいである。ましてや高校生は電車移動。
 こんな遠くまで来る事はこない。しかし、祐介は中華街のレストランに入り、メニューを見始めている。。
 高校生の美月にはありえない状況であった。

「祐介君ってこういう所によく来るんですか?」
「ううん。まさか」

 祐介は苦笑する。

「美月ちゃんとの初デートだから頑張っただけ。毎回期待されても無理」
「私、そんなにお金持ってないですよ」

 高校生の美月にとっては深刻な問題であったが、それを聞いた祐介は爆笑していた。

「いやいやいや、美月ちゃんに出してもらおうなんて、これっぽっちも思ってないよ」
「えっ?いいんですか?」
「もちろん。初デート、しかも美月ちゃんは高校生。ここで出さなかったら男として情けない」

 祐介は全然気にしてないような口ぶりで話した。
 2人で料理を堪能し、お腹も一杯になった頃、祐介が

「そろそろ時間になるから行こうか。」

 美月は(みなとみらい21でも行くのかな?)と勝手な想像をしていたが、祐介に連れて行かれた場所は美月がある意味1番行きたい場所であった。
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