異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き

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皇都へ

素敵な素敵なネックレス

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 夜、オーリさんが用意してくれた宿場で、ゼラが作った霧島の洗脳スキル対策用のネックレスを配る。
「可愛くない……」
 するとハクちゃんは黒々としたネックレスを受け取ると不服そうに唸った。

「き、気に入らないのか!」
 ゼラは自分の作ったネックレスに自信満々だった。ところがハクちゃんに不評だったので一気に顔が青ざめた。

「確かにちょっと怖いかも」
 ハクちゃんの横で、ティアはゼラから貰ったネックレスをマジマジと眺める。

 ネックレスのデザインは黒曜石に黒いチェーンを付けたような形でシンプルだ。

 黒一色。眺める角度によって宝石はどす黒い赤に変わる。
 ゼラらしい、妖しい美しさがある。俺は不格好とは思わない。

 しかし確かに可愛くはない。それにハクちゃんの着る子供用のドレスにこれを付けてしまうと、ネックレスが浮いてしまって見栄えが悪い。
 これは庶民的なティアやギンちゃんの服装にも言える。

 この妖しく、美しく、恐怖すら覚えるネックレスに似合う服は少ないだろう。
 妖艶な黒のドレスなら似合うかもしれない。

「二人とも文句言うでない。ゼラが一生懸命作ってくれたんじゃぞ」
 ギンちゃんはショックを受けるゼラを気遣ってかフォローしてくれた。
 ただし首に下げたネックレスは胸の谷間に落として外から見え無くした。

 ギンちゃんも暗に、ネックレスが自分の服に合わないと言っている。

「うう……」
 ゼラはすっかり意気消沈している。
 せっかく作ったのにぼろくそに言われたら当然か。

「宝石はピンク色にして、チェーンは銀色に作り直してみよう」
 俺は見かねたのでゼラにアドバイスして見る。

「ピンク色に銀色?」
 ゼラはベッドに座りながら上目遣いでこっちに視線を移す。

「そうそう」
 俺はゼラの隣に座って頭を撫でる。

「ゼラは悪いことしてない。ただちょっと失敗しただけ。だから一度作り直してみよう」
「ピンク色に銀色にすればいいのか? 何だか弱そうだ」
 ゼラは自分が作ったデザインがとても気に入っていたのだろう。だから作り直しを提案したら不機嫌な顔になった。

「ゼラはハクちゃんやティアが嫌い?」
「そんな訳ない」
 ゼラは即答。それが嬉しい。

「なら三人が喜ぶように作り直しても良いだろ」
「う」
 ゼラが言葉に詰まる。
 俺はゼラが不機嫌にならないように頭をなでなで。
 するとギンちゃんもなでなで。

「私たちはお主を責めている訳ではない。傷つけたのなら謝るぞ」
 ギンちゃんは優しい声であやす様に微笑みかける。

 本当にお母さんだ。

 そしてゼラの様子を見ていたティアがおずおずと口を開く。
「その、ゼラは悪くないよ。よく見ればカッコいいと思う。だから機嫌直して」
 ティアは大事そうにネックレスを両手で包みながら言う。

 何だかんだ、ティアとゼラは友達なんだと思う。

「ゼラ。元気出して」
 ハクちゃんは泣きそうな声でゼラに抱き付く。
 ハクちゃんもゼラを友達と思ってるんだな。だからゼラが悲しいとハクちゃんも悲しいんだ。

「いやいや。私の間違いだった」
 ゼラは皆に慰められると花が咲いたような笑顔をした。

 俺含めて、皆ゼラに甘々だ。

「ネックレスを返してくれ。すぐに作り直す」
 ゼラが言うと三人は身に着けたネックレスを手渡した。
 ゼラは受け取ると両手に包み、目を閉じる。

「これで良いか?」
 手を広げると、ピンク色に光り輝く宝石と銀色のチェーンを付けたネックレスが出来て来た。

「可愛い!」
 ハクちゃんはそれを見るなり目の色を輝かせて、ゼラから奪い取るようにネックレスを手に取った。

「おお! 凄い」
「これは見事じゃ」
 ティアとギンちゃんも目を輝かせる。

 ゼラが作り出した宝石は透明感の強いピンク色だ。
 それはそれ自体が光を発するように輝いている。

 売ったら絶対に高値がつくな。売らないけど。

「ゼラ。ありがとうな」
 ギンちゃんは満面の笑みでネックレスを受け取ると、さっそく首に下げる。横でハクちゃんもソワソワと落ち着かない感じで身に着ける。

「麗夜! 似合う?」
 ハクちゃんはアイドル気分なのか、スカートをはためかせながらクルリと回って、色目を使うように上目遣いな悪戯っぽい表情をする。
「似合ってるよ」
 頭を撫でるとハクちゃんの頬が緩む。

「えへへへ! ゼラ! ありがと!」
 ハクちゃんはゼラに飛びついて胸元にスリスリと子犬のように顔を擦りつける。
「喜んで貰って嬉しいぞ」
 ゼラはハクちゃんを抱きしめると愛おしそうに頭を撫でた。

 そんな微笑ましい光景を見ながら、ティアとギンちゃんもお礼を言う。
「ゼラ。ありがと」
「感謝するぞ」
 二人とも綺麗な宝石に感動しているように見えた。
「どういたしまして」
 ゼラは本当に嬉しそうに笑った。

 そんな甘い空気の中、俺はあることを思い出す。
「そうだそうだ。カーミラもゼラのアクセサリーを身に着けてくれ」
 俺は影に潜むカーミラに言う。

 カーミラは俺が命令するまでずっと影の中に居る。就寝する時だろうと何だろうと。休憩しているのかと心配になるくらいに。
 本当に律儀な奴だと思う。

 ただそのせいですっかり存在を忘れていた。目立たないってのも時と場合だ。

「畏まりました」
 カーミラは命令すると即座に影から姿を現す。
 そうするとゼラがカーミラに目を合わせる。
「おお! カーミラか。そう言えばお前が居たな」
 ゼラはハクちゃんの頭を撫でながらカーミラに笑いかける。

「お前はどんな色のネックレスが良い? 言ってみろ」
 ゼラはリラックスした感じ。対照的にカーミラは緊張した表情だ。

 まだまだ、打ち解けるのに時間がかかりそうだ。

「私は黒で良い」
 カーミラはぶっきらぼうに、ハッキリと、ゼラを見ながら言った。

「黒? ピンクでなくて良いのか」
 ゼラはカーミラが緊張していることに気づいていないのか、普段と同じ声色だ。
「ゼラ~~~」
 それか胸で甘えるハクちゃんに夢中なのか。

「ふう……」
 カーミラはそんな二人を見て緊張が解れたのか、苦笑した。

「黒は闇、恐怖の象徴。そして私は麗夜様をお守りする立場だ。ならば敵に恐怖を与える黒が良い」
「真面目だな」
 ゼラはそう言うと黒いネックレスを作り出し、カーミラへ放り投げた。

 ちょっと失礼な渡し方だな……。
 まあゼラの事だから他意は無いのだろうけど。

「ふむ」
 さてさて。受け取ったカーミラだが、別段文句を言う気配はない。
 むしろ、渡されたネックレスを興味深そうに見ていた。

「さすがだ」
 カーミラはネックレスに込められた力を称賛して、首に下げた。
「ありがとう。礼を言う」
 そして礼儀正しくゼラに頭を下げた。

 素晴らしい。さすがカーミラだ。率直に言ってカッコいい。

「麗夜様。部下たちにもこれを身に着けさせたいのですが」
 カーミラの言葉で思い出す。

「そうだそうだ! 皆にも配らないと!」
 すぐに合流できたティアたちに気を取られていたが、ネックレスが必要な仲間はたくさん居る。

「事情を説明してすぐに皆を呼び出してくれ」
 ダイ君たちは皇都の様子を観察するように言ってある。だからどこに居るのか分からない。

 しかし、カーミラなら何とかなるだろう。
「畏まりました。闇夜の今なら影を通じてすぐに知らせることができます」
 さすがとしか言えないな。

「絶対に暴れるなと釘を刺す様に」
 霧島の洗脳スキルの特性上、来て一日で洗脳されるとは考えられない。それに魔王だからある程度耐性があるはず。
 だから皆は無事だと考える。

 それよりも心配なのは、事情を聞いた皆が怒り狂って暴れないかだ。

「それは保証できません。私自身、麗夜様に仇名す可能性のある霧島には腹を立てていますから」
 カーミラは不機嫌そうな顔で影に身を沈める。

 そしてカーミラが首まで影に浸かった直後、ゼラが唐突に謝罪した。
「怖がらせて済まなかった」
 阿吽の呼吸だったのだろう。
「もう過ぎたことだ」
 カーミラはゼラに苦笑した後、影に溶け込んだ。

「ふにゅ?」
 ティアやギンちゃんはゼラとカーミラのやり取りの意味が分からないので首を捻る。
「……私も酷いことをしたものだ」
 ゼラは困惑する二人に何も言わず、寂しそうにため息を吐いた。

「お母さん。お腹空いた」
 そんなしんみりした空気など知ったことかとハクちゃんは切なそうにお腹を撫でる。
 そうすればゼラと一緒にクスリと笑う。

「そろそろ夜ごはんにしようか」
「そうだな」
 和やかな雰囲気になったので話しかけるとゼラが同意して、ハクちゃんを抱っこしたまま立ち上がる。

「うにゅ~~」
 するとなぜかティアが唸りながら抱き付いてきた。
「どうした?」
「悔しい」
 ティアはなぜか頬っぺたを膨らませている。

「どうしたんだ?」
「ゼラが活躍してティアは役に立ってない」
 おいおい。

「ティアは十分活躍してるって」
「うにゅ~ティアもお世辞だって分かるよ~」
 ギュッとティアが腕に抱き付く。

「ティアは麗夜が大好きなの~役に立ちたいの~」
「俺も好きだから安心しろって」
 嫉妬するティアは何だか可愛らしい。

「私も麗夜が好きだぞ~」
 すると今度はゼラがハクちゃんを抱えたまま俺の肩に頭を乗せて来た。

「うにゅ~~~麗夜はティアのもの~~~」
「独占欲が強いと嫌われるぞ~~」
 二人は俺を挟んでワイワイする。

「ここで何も言えないのが俺のダメなところなんだろうなぁ~」
 俺は二人に挟まれながら小さくため息を吐く。

 もうちょっと、二人のことをよく考えた方がいいのかもしれない。
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