異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き

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皇都へ

人気者と高まる不満

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 俺たちがボランティアを続けて二週間が経った。

「もういい加減にして!」
 オーリさんは今日もご立腹だ。

「まあまあ。そんなに怒るとしわが増えますよ」
 俺はオーリさんと必ず夜に二人きりで今日の売り上げや浪費、そして今後の予定を話し合う。
 なぜ二人きりなのか?

 オーリさんの溜まりにたまったストレスを聞いて上げるためだ。

「私だって怒りたくて怒ってるんじゃないの! でも分かる? 売り上げも何も無し。完全に無収入。家計簿は火の車。そうなったら小言の一つや百や千くらい言いたいと思わない?」
「せめて一つくらいにしてくださいよ」
 俺は苦笑い。オーリさんは頭から湯気が出てる。

「今日もラルク王子に文句を言われたわ! 『返済の目途はあるのかな? こっちだって苦しんだぞ』 お金を貸してくださいって言ってる私の身にもなって! というかあなたが言ってよ! 友人でしょ!」
「まあでもオーリさんは経営者だし」
「いつ経営者にしてくれって言ったの? というかラルク王子からお金が入ってくるんだからそっちで何とかしなさいよ! 友人だから何も言わずに貸してくれるでしょ!」
「友人にお金借りるって悪いじゃないですか」
「私なら良いの? つか私があなたの代わりに友人から金借りてるんですよ!」
「そういうこともあるよね」
「ああもう! とにかくこれからどうするの! またお金ラルク王子から借りないとダメなのよ! 金額分かる? 1000万ゴールド!」
「その分だけ助かる人も居るから。ね?」
「あはははは! また私が嫌味を言われるの! どういうこと!」
「ならオーリさんは道端で死ぬ人を見捨てるんですか?」
「見捨てないわよ! でもこう言っちゃうんだからあなたに良いように使われるんでしょうね!」
「頑張ってください」
 オーリさんが怒るのも無理はない。

 だから良いニュースを教えてあげる。

「良いニュースがありますよ」
「突然何? でも良いニュースなら聞きたいわ」
「ボランティアを手伝ってくれる人が出てきたんです」
「あらそうなの?」
「おかげで俺たちもようやく休憩する時間が出来ました」
「それは確かに良いニュースね。一先ず住民の信頼は勝ち取れたかしら」
「ボランティアも捨てたもんじゃありませんね。歩いてると皆が挨拶してくれるんです」
「そうね。それはあなたの功績よ」
「だからちょっとでも良いから給料払いたいと思ってるんです」
「何言ってるのか私は分からないわ」
「金は天下の回り物って言うでしょ。彼らに給料を払えば経済も潤うと思うんです」
「潤うでしょうね。そうなったら皇都の状況も変わるでしょ」
「いいアイデアでしょ」
「それで給料はどうやって払うの?」
「それはもうオーリさんの手腕を信じます」
「それって私がラルク王子にもっともっと頭下げろって言ってるのと同じじゃない!」
 そうやって今日も夜が過ぎて行った。



■■■■

 三週間が経った。
 そのころになるとライダーは家族亭の配給を配る仕事を得ていた。
「はいはい。まだあるから慌てるな」
 ライダーの仕事は屋台に立って皿に盛りつけられた飯を渡す。
 本当に簡単な仕事だが、配給を受け取りに来る人は一日で一万人近くなったため、重労働だ。

「ライダー! 戻ってきたから休憩してきて良いよ!」
 ひょこひょことティアがゼラとハクちゃんを連れて戻ってくる。

 三人の美少女を見たライダーは思わず顔を赤くする。

「いえいえ。俺はまだやれるんで、ティア様たちはもっと休んでください」
「そういう訳にはいかないの」
 ティアがぷくっと頬っぺたを膨らませるとライダーはますます顔を赤くする。

「俺なんてこれくらいしかすることが」
 とライダーは言う。しかしそんなことを言っていると配給を求める人たちがブーイングを始める。

「俺はお前みたいなむさい男よりもティア様に渡してもらいたいんだ!」
 それを聞いたらライダーは頬を引きつらせて、
「てめえら……下心見え見えだぞ」
 と言って引き下がるしか無かった。

「じゃあ、休憩してきます」
「うん! いってらっしゃい!」
 ライダーはティアに手を振られて屋台を離れる。

「ティア様だ! やっぱり可愛いなぁ」
「ゼラ様だ! 今日も美しい!」
「ハク様! 俺と結婚してくれ!」
 すると一段と大盛況になる。

「あいつら……」
 ライダーは鼻面にしわを集めながら職員の休憩所兼食事場所の路地裏へ入る。

「おっす」
 すると同僚が飯を食いながら笑顔で迎える。

「うっす」
 ライダーは釜と鍋からご飯と味噌汁を皿によそって同僚の近くに座る。

「なんか表の通りが騒がしくなったけど何かあったのか」
「ティア様とゼラ様とハク様が休憩から戻ってきたんだ」
 ライダーは食事をしながらお喋りを始める。

「あの三人は綺麗だからな」
「全くだ。近くにいるだけで天国だ」
「でも料理番のギン様も綺麗だぜ」
「あの方は優しくて良いな。死んだ母さんを思い出す」
「それにアンリ様も綺麗だ」
「あの人も良い。死んだ姉ちゃんを思い出す」
「騎士団のキイ様は凛々しいな」
「強いのも良いな。冒険者ギルドに所属したら即刻英雄級で国の英雄だ」
「ダイ様やエメ様も強いよな」
「冗談かってくらいだ」
「キイ様たちならふらっと現れた勇者って連中にも勝てるんじゃねえか?」
「あんな偉そうな奴らよりもキイ様たちの方が絶対に強いぜ。冒険者だった俺だから分かる」
「万年銅級だったくせに」
「お前だってそうだろ」
 そうやって楽しそうにしていると周りの人もガヤガヤと話に加わる。

「俺はやっぱり一番はティア様だな。いるだけで元気になる」
「ゼラ様のぞっとする美しさも捨てがたいだろ」
「ハク様だろ。見るだけで笑顔になっちまう」
「ギン様だろ。優しすぎてみるだけで泣けてくる」
 男たちは誰が一番好きか、楽しそうに言い合う。

「でも俺が一番驚いたのは麗夜様が男だってことだ」
「それなんだよな!」
 一斉に皆が頷く。

「あの綺麗さで男だぜ。もったいねえというか何というか」
「いやいや。逆にそれが良いんじゃねえか。今まで男色なんて興味なかったがあの人に会ったら考えが変わったぞ」
 この考えに半数が頷いた。残りの半数も頷きそうになった。

「そう言えばたまーにあの人、寂しそうな顔するよな」
「何とか力になりてえな」
「あの人のためなら命なんて要らねえよ」
「今の訳分からねえ皇帝なんかよりよっぽど命を懸ける甲斐があるって奴だ」
 全員が力強く頷く。

「そう言えば、大部屋で寝てる時に隣の奴から、金払うから家族亭の仕事を変わってくれって言われたぞ」
「俺も来た」
「バカな奴らだよな」
「こんな天国みてえな職場から離れられるかよ」
「100万積まれたって嫌だね」
 全員本当に楽しそうだ。

「麗夜様が皇帝になってくれたらいいのにな」
 誰かがポツンと言った。
「それは俺も思うぜ」
「むしろあの人じゃないと嫌だね」
 全員その考えに同調する。

「いっそ皇帝たちぶっ殺すか」
 誰かが怒りを滲ませて言った。

「気持ちは分かるが止めとけ」
「だけどよ」
「皇帝の傍には勇者が居る。さすがに化け物だ」
「でも皆で命をかければよ!」
「暴走したら麗夜様たちも戦いに巻き込むことになるぞ」
 ライダーが強く言うと皆は口を閉じる。

 しかし、強い怒りは収まらない。

「まあ、向こうがマジでバカなことしてきたら、分かんねえけどな」
 ライダーは目を細めて拳を握った。

「そう言えば、気になる噂があったんだ」
 誰かが手を上げた。
「噂?」
「皇帝たちが麗夜様を目障りに思ってるらしい」
「何だと?」
「近々皇軍の騎士団がこっちに来るみたいだ」
「本当か?」
「噂だからな。本当か分からねえ」
 噂話が終わると静寂に包まれる。

「万が一本当なら」
 ライダーは血が出るほど拳を握りしめる。
「俺たちが相手になってやる」

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