異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き

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皇都へ

不穏な空気

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 ボランティアを初めて一月が経った。

「商売始めたの?」
 帳簿を見せるとオーリさんが目を輝かせた。
「ゼラのアクセサリーを売り出しました。結構好評ですよ」
「それは良いんだけどボランティアは?」
「並行して続けてます」

 オーリさんはペラペラと帳簿を捲る。
「買ってるのはボランティアに参加してる人だけ見たいね」
「売り出してるところが屋台の近くですからね」
「これだとクルクルお金が回ってるだけだと思うんだけど」
「金は天下の回り物ですね」
「冗談言ってる場合じゃないのよ。このままじゃ結局赤字よ」
「始めたばっかりですから。評判が高まれば他の人も買ってくれます」
「呑気な感じね」
 オーリさんは苦笑した。
 赤字とはいえ儲けが出そうなことを始めたので機嫌が良いみたいだ。

「そう言えばあなた、霧島のことは良いの?」
 オーリさんは帳簿を眺めながら聞く。あんまり興味ない感じだ。
「策は考えてますよ」
 俺は欠伸する。朝が早いから夜になるとすぐに眠くなる。

「どんな策?」
「ベラのアクセサリーを皇帝とかに身に着けてもらうんです。そしたら洗脳は解除されます」
「穏便な方法ね。でもそう上手くいく?」
「だからベラのアクセサリーを売ってるんです。評判になれば城の人も見に付けてくれるでしょう」
「まあそこら辺はあなたに任せるわ」
 オーリさんは帳簿に夢中だ。

「まだまだ赤字ね……」
 結局一番気になるのはそれか。

■■■■

 麗夜たちがボランティアを初めて一月が経った。そのころになると皇都は麗夜たちの話題で持ちきりだ。

 女神のように優しい。お腹いっぱいで嬉しい。希望が出た。皇帝になって欲しい。

 もはや麗夜たちはいっぱしの権力者だ。麗夜が声を掛ければ小規模ながらテロすら起こせる。

 それくらい麗夜たちは人気者だった。

 しかし出る杭は打たれる。麗夜の噂は権力者の耳にも入る。

「新庄麗夜ですって?」
 だから支配者気取りの霧島が麗夜の名前を聞いたのも当然だろう。

「あいつ生きてたんだ」
 霧島はワインを飲みながら腹心のマルス32世の報告を聞く。

 マルス32世は立ったままハンカチで汗を拭く。
「中々に評判になっています。庶民の救世主だと」
「野良犬を飼いならしてるだけでしょ」
 霧島は鼻を鳴らす。

「でもあんな奴が人気者なんて面白くないわね」
 ギリギリと歯ぎしりする。

「あいつは昔っからそう! 男のくせに私よりも綺麗で!」
 霧島は嫉妬心丸出しだ。

「すぐに騎士を派遣して、麗夜を痛めつけてやりなさい」
「霧島様。それは無理です」
 マルス32世は汗を拭く。

「無理? なぜ?」
「麗夜の人気は相当です。もし騎士が動けば庶民が暴動を起こしてしまいます」
「なんで暴動を起こすの? バカだから?」
「庶民は国家に不満を持って居ます。騎士が動いたら爆発してしまいます」
 マルス32世は密かに、能無しが、と舌打ちする。
 霧島は気づかず腕組みする。

「私の洗脳を使えば簡単だけど……少し時間がかかるし、何より洗脳したところで面白くも何ともないわ。死にたいくらい痛めつけないと」
 霧島は不穏なことを呟く。

「そうだわ!」
 そして唐突に立ち上がった。

「バカなクラスメイトを使えばいいのよ! そのために生かしてるんだから!」
 霧島は満足げに頷く。

「すぐにクラスメイトを麗夜の所に送って」
「声を掛けるのは大山一派ですか?」
「あいつらは頭が固いし、私に逆らうし、気に食わないから要らないわ」
「では誰を?」
「桃山一派が居たでしょ。女とか宝石とか金を渡せば麗夜を痛めつけるくらい簡単にやってくれるわ」
「ではすぐに連絡を取ります」
「急いでね。こうしている間にも麗夜が私より人気者になっちゃうわ」
 マルス32世は頷いて部屋を出る。
 霧島は足を組む。

「昔からバカな奴。私より綺麗なのがいけないのよ」
 霧島は邪悪に微笑む。

 麗夜は虐めを受けた。その首謀者は霧島である。
 理由は単純、麗夜が自分よりも綺麗で可愛いから。人気が出そうだから。
 だからクラスメイトや手下を扇動して麗夜を虐めた。

「殺しちゃってもいいかな?」
 霧島はパタパタと足を動かす。



 勇者対魔王の戦いが始まろうとしていた。
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