異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き

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最終章 決着

最終決戦:朱雀、カーミラvs佐伯拓郎 決着

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 佐伯拓郎は軽快なステップを踏みながら何度もジャブを放つ。

「シシ」
 二発三発と朱雀の顔面を捉える。
「シ!」
 そして朱雀がよろけた際に強烈な右ストレートをお見舞いした。

「ぐ!」
 朱雀は後ろへたたらを踏む。

「タフだなお前」
 佐伯拓郎は倒れなかった朱雀に目を丸くする。

「お前が手加減してくれてるからな」
「そりゃ俺だって殺したくは無いからな」
 佐伯拓郎はそう言いながら、影から奇襲してきたカーミラの剣をダッキングでかわす。

「甘い!」
 そしてカウンターの右ボディをカーミラの横っ腹に叩き込んだ。

「ぐふ!」
 カーミラは堪らず腹を押さえて後ずさる。

「女は殴りたくないんだ。抵抗しないでくれ」
 ふうっと佐伯拓郎は大きく息を吐いた。

「ふん! 女である前に私は麗夜様のしもべだ!」
 カーミラはそう言って再度剣を振る。

「あんたみたいな美人をしもべって、麗夜は鬼畜か!」
 佐伯拓郎はパーリングで剣をいなすと、再びカウンターの左フックをカーミラの顎に入れる。

「は~~~~~……いい加減、実力差って奴を分かってくれないか?」
 佐伯拓郎は大きく深呼吸する。

「言っただろ。勝てる勝負は投げ出さないって」
 朱雀はキセルを咥えると、フーと煙を吐き出す。
 それはモクモクとダンジョンの通路を埋め尽くす。

 煙は佐伯拓郎と朱雀とカーミラも包み込む。

「目くらまし?」
 佐伯拓郎は真っ白な視界で左右を見渡す。

「ゴホン! 煙いだけだぜ」
 佐伯拓郎は口と鼻を手で塞いで大きく息を吸う。

「ん?」
 佐伯拓郎はしかめっ面になる。

「はぁ、はぁ……どうして襲って来ない? 絶好のチャンスだろ」
 佐伯拓郎ははぁはぁと呼吸を荒げる。

「襲い掛かったらカウンターを食らうからな」
 真っ白な世界で朱雀の声が響く。

「ふん! ならこれは自分たちが回復するまでの時間稼ぎってところか」
 佐伯拓郎ははぁはぁと浅い呼吸を小刻みに繰り返す。

「時間稼ぎは正解。ただ、回復するまでじゃない」
 朱雀の声が響くと同時に、佐伯拓郎は膝を付いた。

「な! なんだ!」
 佐伯拓郎は体を震わせる。

「酸欠だ」
 真っ白な世界で朱雀の無情な声が聞こえる。

「酸欠だと!」
「空気の通りの悪いダンジョンに誘い込むべきじゃなかったな」
 煙が晴れると、朱雀が佐伯拓郎の前に立って居た。

「空気の通りが悪い? そんなはずはないぞ! ここは地上に近いし、風も吹いてる!」
「俺は炎を操る。ならば空気を遮断する炎の壁も作れるって事だ」
 朱雀は顎で通路の奥をさす。

 百メートル先に、赤い炎の壁が微かに見えた。

「まさか! じゃあここはすでに密室だったのか!」
 酸欠によって佐伯拓郎の顔色は見る見ると青くなる。

「その通り」
 朱雀は殴られた頬を撫でる。
「いてぇな……」
 そう言った後、自分たちの策を説明する。

「方法は簡単だ。俺はお前との戦いが始まった直後、密かに前後百メートル先に、空気を遮断する炎の壁を作っておいた。それが出来れば後は簡単。お前が酸欠するまで時間稼ぎすれば良いだけ」
「なるほど……だけど酸欠? 俺は三村のチートでどんな状態異常も効かないのに?」
「状態異常は石化や腐食、毒などに限定される。酸素不足は状態異常に定義されない」
「そんなバカな!」
「こればかりはしっかりと調べておいた方が良かったな」
 朱雀が言うと、佐伯拓郎の背後に立って居たカーミラに頷いて見せる。

「お前たちの敗因の一つは自分の能力を過信したこと。不死身でも無敵でも空気が無ければ苦しいという当たり前のことを忘れてしまった」
 カーミラは血の縄を作って佐伯拓郎を縛り上げる。

「ちくしょう……でも、だったらどうしてお前たちは酸欠に成らないんだ?」
 佐伯拓郎の目がゆっくりと閉じていく。

「俺は不死鳥の魔王。空気が無くても苦しくねえんだ」
「私は影に生きる吸血鬼の魔王。影に空気は必要ないということだ」
 朱雀とカーミラは苦笑する。

「そんなのありかよ……」
 佐伯拓郎の体からガクリと力が抜けた。

「お前たちの最大の敗因は私たち魔王を舐めた事」
「もう少し、俺たちのことを調べておくべきだったな」
 朱雀とカーミラは天井を指さす。

「すぐにそこに行く。待ってろよ」
 そして、【神の千里眼】で監視している三村たちに言った。



■■■【三村視点】■■■

「畜生! 狭い通路だったらボクシングの強みが活きると思ったのに! 裏目に出た!」
 三村は唇を噛む。

「しかし、こんなに早く攻略されるだと? 実戦経験の差か! ちくしょう……確かに俺たちは、あんなに強い奴らと戦うのは初めてだ!」
 三村の額に冷や汗が浮かぶ。

「三村君! 三木君が危ない!」
 高木真矢が叫んだ。
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