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失敗を恐れるな
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食あたりからしばらくすると、少しずつ回復の兆しが見えた。どうやら俺は軽傷で済んだようだ。だが三人の容体は悪化し続けている。
声をかけたり、薬を飲ませる。口移しにも慣れてしまった。ロマンチックもくそも無い。
汗をかいたままだと体が冷えるので、服を脱がして体を拭く。皆美人で本来なら嬉しいはずだが、そんな気分に成れないし、体型を覚える暇さえない。
着ていた服は洗濯し、替えの服に着替えさせる。体を冷やさないように時折摩る。暖炉の火は絶やさない。
吐しゃ物で喉を詰まらせないように注意する。
気絶して床に倒れている時があった。体中の関節がガタガタで動くと針を突き刺したかのような痛みが走る。それでも三人が生きていると分かると、力が出た。
時間の感覚は気絶と覚醒、意識混濁でおぼろげだが、三日くらい経つとようやく全員の容体が回復に向かった。熱が引き、呼吸が大人しくなった。吐しゃ物も無くなった。
「れい?」
意識がもうろうとする中、リリーの声が聞こえる。
リリーが目を覚ました!
「大丈夫か!」
「まだ……ねむい」
「寝るな! その前に飯を食え!」
携帯食料を湯で溶かし込んで食べさせる。
「まずい……」
「我慢しろ」
リリーはなんとか、吐き出さずに食べることができた。そして食べ終わるとすぐに眠った。
「れいさん?」
リリーが寝て少しするとチュリップが目を覚ます!
「良かった! 飯を食え!」
「はい……」
同じく茹でた携帯食料を食べさせる。
「もうしわけありません……ちょうりのしかたがまずかったのかも……」
「気にするな。とにかく寝ろ」
「もうしわけ……ありません」
食べ終わるとやはり気絶するように眠った。
「れい?」
額の汗を拭いている最中、ついにローズも目を覚ました!
「飯を食え」
「たべ……させて」
「良いぞ! どんどん食べろ!」
少しずつ、ゆっくりと食べさせる。
「れい……だいすき……」
おぼろげな目で微笑む。
「俺も好きだ! さあ、全部食った! ゆっくり寝ろ!」
「うん……」
ローズは微笑みながら眠りについた。
山場は超えた。そう思うと力が抜けた。一気に意識が遠くなる。
「全く、冒険者を舐めていた」
薬はすでに底をついていた。食料はまだあるが、もはや風前の灯だ。
それでも諦めない。必ず手はある。
「十二階だ……あそこには生き物がいる」
皆には言っていなかったが、生き物の気配が確かにした。最も、それが食えるかどうかは別問題だ。
だが生き物であることに変わりはない。そして生き物が居るのなら、必ず食べられるものが存在する。
「食えるかどうか? 違う、食ってやる! 生き延びるために!」
一度の失敗で挫けている場合ではない。今回は失敗した。それに怯え、何も食べないという選択肢はない。
生きるためには、毒も食らう。その危険を冒す必要がある。
「絶対に、皆と一緒に脱出する!」
再び眠くなる。必ず起きてやると拳を握りしめた。
声をかけたり、薬を飲ませる。口移しにも慣れてしまった。ロマンチックもくそも無い。
汗をかいたままだと体が冷えるので、服を脱がして体を拭く。皆美人で本来なら嬉しいはずだが、そんな気分に成れないし、体型を覚える暇さえない。
着ていた服は洗濯し、替えの服に着替えさせる。体を冷やさないように時折摩る。暖炉の火は絶やさない。
吐しゃ物で喉を詰まらせないように注意する。
気絶して床に倒れている時があった。体中の関節がガタガタで動くと針を突き刺したかのような痛みが走る。それでも三人が生きていると分かると、力が出た。
時間の感覚は気絶と覚醒、意識混濁でおぼろげだが、三日くらい経つとようやく全員の容体が回復に向かった。熱が引き、呼吸が大人しくなった。吐しゃ物も無くなった。
「れい?」
意識がもうろうとする中、リリーの声が聞こえる。
リリーが目を覚ました!
「大丈夫か!」
「まだ……ねむい」
「寝るな! その前に飯を食え!」
携帯食料を湯で溶かし込んで食べさせる。
「まずい……」
「我慢しろ」
リリーはなんとか、吐き出さずに食べることができた。そして食べ終わるとすぐに眠った。
「れいさん?」
リリーが寝て少しするとチュリップが目を覚ます!
「良かった! 飯を食え!」
「はい……」
同じく茹でた携帯食料を食べさせる。
「もうしわけありません……ちょうりのしかたがまずかったのかも……」
「気にするな。とにかく寝ろ」
「もうしわけ……ありません」
食べ終わるとやはり気絶するように眠った。
「れい?」
額の汗を拭いている最中、ついにローズも目を覚ました!
「飯を食え」
「たべ……させて」
「良いぞ! どんどん食べろ!」
少しずつ、ゆっくりと食べさせる。
「れい……だいすき……」
おぼろげな目で微笑む。
「俺も好きだ! さあ、全部食った! ゆっくり寝ろ!」
「うん……」
ローズは微笑みながら眠りについた。
山場は超えた。そう思うと力が抜けた。一気に意識が遠くなる。
「全く、冒険者を舐めていた」
薬はすでに底をついていた。食料はまだあるが、もはや風前の灯だ。
それでも諦めない。必ず手はある。
「十二階だ……あそこには生き物がいる」
皆には言っていなかったが、生き物の気配が確かにした。最も、それが食えるかどうかは別問題だ。
だが生き物であることに変わりはない。そして生き物が居るのなら、必ず食べられるものが存在する。
「食えるかどうか? 違う、食ってやる! 生き延びるために!」
一度の失敗で挫けている場合ではない。今回は失敗した。それに怯え、何も食べないという選択肢はない。
生きるためには、毒も食らう。その危険を冒す必要がある。
「絶対に、皆と一緒に脱出する!」
再び眠くなる。必ず起きてやると拳を握りしめた。
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