クラス転移したら追い出されたので神の声でモンスターと仲良くします

ねこねこ大好き

文字の大きさ
69 / 73
最終章:皆と一緒に最悪の敵を打ち倒そう

因縁の対決

しおりを挟む
 真の勇者は夢の中で何度も助けてくれたグランドさんだった。
「両名、揃いました」
 王様がコロシアムの玉座に座るグランドさんの前で膝を付き、首を垂れる。

「ご苦労」
 グランドさんは具合が悪そうな表情で呟く。

「おい! 頭を下げろ!」
 イーストさんに叱られたので慌てて跪く。

 何が起きるんだ?

「へへ」
 対してミサカズはムカつくほど余裕だ。皆が跪いている中、一人だけ立って居る。

 周りの兵士たちは咎めない。王様や貴族も見て見ぬふりをしている。

 指名手配されていたのになぜ?

「そろそろ、私は死ぬ」
 グランドさんは重い口を開く。

「だからこそ、後継者を決める。名はミサカズだ」
「何だって!」
 信じられない! 思わず立ち上がって抗議しようとするが、グランドさんの顔を見て、何も言えなくなる。

「ははは!」
 それを良いことにミサカズは笑う!

 畜生! お前みたいな屑が何で!

 真の勇者になりたい訳じゃない! だけどミサカズは許せない! そんな資格ない! それなのにグランドさんはどうして!

 グランドさんがミサカズを選んだ。
 とてつもないショックが心臓を打ち砕く。

「お言葉ですが、それは少々不味いと思います」
 王様が顔を上げる。

「なぜだ?」
「ミサカズは大量殺人鬼です。必ずや我が国を滅ぼします」

「何が問題だ?」
「え!」
 コロシアムに居る人々が全員顔を上げる。

「お前たちは戦争を終わらせるためにミサカズを転移させた。そしてお前たちの望み通り、ミサカズにはその力がある」
「し、しかし! それは我が国を滅ぼすためではありません!」

「うるせえな! ぐちゃぐちゃ負け犬どもがよ!」
 ミサカズは両手を広げて嘲笑う。

「俺は真の勇者に選ばれた! それに文句があるってのか!」
「お前は人を食った! 許されないことだ!」
 イーストさんが睨む。

「おいおい! 俺は戦争を終わらせるために強く成ろうとしただけだ! そして強くなった! だろ! そこのくそ女!」
 ミサカズはレビィさんを笑う。

「ええ。見ただけで分かる。あなたは私よりも強い。私たちを食べ続ければ、たった一人で戦争を終わらせることも可能でしょう」
「ほら見たか!」
 ミサカズは人々を笑う。

「俺はお前らのために強くなった! これが勇者でなくて何だ! だいたい戦争は死人がつきものだろ! 高が百人千人万人殺されたからって騒ぐのは可笑しいだろ! それとも戦場で死ぬのは上等で、俺に食われるのは下等か! 戦争を終わらせることができないお前らが下等だ! 俺はそれを助けるんだ! ほら! 涙を流して感謝しろ! 俺を称えろ! 文句がある奴は来いよ! 殺してやる!」
 全員、何も言えない。

「意義のあるものは居るか」
 グランドさんの静かな声がコロシアムに響く。

「なら、決まりだな」
 グランドさんの言葉に、ミサカズは笑う。

「心配するな! これからは俺が王様だ! ちゃんと俺に従えば、殺しはしねえよ! ハハハハハハハハハ!」
 ミサカズの高笑いが響く。

「意義あり!」
 我慢できずに叫ぶ!



「やっぱりな。馬鹿はどこまでも馬鹿だ」
 ミサカズは舌なめずりするが、構っていられない!

「こいつは真の勇者に相応しくない!」
「ならば誰が相応しい?」
 グランドさんは静かに聞く。

「僕だ! 僕が真の勇者になる!」
「クハハハハハハ! マジで言ってんのか! 弱虫のお前が! ギャクか! そうだろ! 最高だ! 笑い死ぬぜ!」
 腹を抱えて笑う。だからどうした。

「本気で言っているのだな」
 グランドさんはミサカズと違い、少しも笑わない。
 真っすぐに僕の目を見て喋る。

「本気です」
 声がコロシアムの静寂に溶ける。

「ならば、戦って決めるしかない」
 グランドさんが合図すると、僕とミサカズ以外、闘技場から下りる。

「ゼロは特別に赤子とスラ子と一緒に戦うことを認める。それ以外の者は手出し無用。勝負はどちらかの死で決まる。さあ、二人とも、準備をするがいい」
「分かってるよ、くそ爺」
 ミサカズはポケットから布を取り出すと、手に被せる。

「確か、クラウンって奴の力だったな」
 そして剣を出現させる!

「お前! クラウンさんの死体を食べたのか!」
「不味かったぜ! 鼻をつまんで食った!」

「許せない!」
 構える。するとミサカズは肩を震わせて笑う。

「まあ、こうなるかなって思ってたんだよ。お前は馬鹿だからな」
「そう」

「だが、最後にチャンスを与えてやる。昔みたいに、俺の靴を舐めろ。そうすれば許してやる」
「ふざけるな」
 集中して、気合を高める。

「お前を殺して弱かった自分に終止符を打つ! お前との因縁を終わらせる! 殺された人々の仇を討つ!」
「因縁? そんな上等な物じゃねえと思うが。まあいい。それより、マジで勝つ気か?」

「今の僕には赤子さん、スラ子が居る! 皆が居る! お前なんかに負けるか!」
「皆ね……実は、俺も居るぜ」
 ミサカズは腹を摩る。

「この中にな!」
「お前!」

「ああ! 嘘だった! 食った奴ら全員」
 鼻で笑う。

「ケツから出て行ったよ」
「……殺してやる」



「初め」
 グランドさんの合図とともに、因縁の対決が始まった。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...