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召集再び (セグラー家)

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また召集をかけられた。
さすがに断ろうと思った。内容はクララのことに決まっているし。
セドリックには悪いけどセグラー兄弟は頭がいい分、余計に怖い。
それなのに。
研究室にいてもざわめきが聞こえた。窓から覗くと、セドリックが迎えにきていた。

そっと裏口から帰ろうとしたら、肩を叩かれた。

「待ってたぞ」

「なんで……!」

「逃げるかと思って」

逃げるよ!
僕のテリトリーで神々しい威圧感を出さないで!

馬車に半ば押し込まれる形で座席の奥に座らされる。向かいにセドリックが座る。
狭い。足がなんでそんなに長いのさ。

「少し寄るところがある」

着いたのはクララの通う学園。
「もしかしてクララも呼ぶの?」

「いや、カイルを乗せようかと」

あからさまにホッとしてたんだろう

「クララと喧嘩したのか?」

「そうじゃないけど」

なんとなく一緒に降りた。
セドリックはカイルを呼びに行ったらしい。

僕は
もしクララに会ったらどうしようかと考えていた。とりあえず軽く挨拶して、怒ってるようなら謝って。これからエスコートは今まで通りセドリックやセグラー兄弟に頼むように言おう。

出会わないならそれが一番いい

それなのに、回廊の途中で女子グループのなかにいるクララを見つけてしまった。
慌てて庭園側の壁に隠れる。
「クララ様は美男子に囲まれ過ぎて目が贅沢になっていますのよ」

「それではそこら辺の男性になんて恋できませんよ」

「顔だけじゃありませんわ、恋に落ちるのはもっといろいろな偶然が必要だと本にありましたわ」

「クララ様は本を信じていらっしゃるの?なんてお可愛らしい」

クスクスと笑い声が聞こえる。クララがからかわれているらしい。悪意があるのかないのか微妙だが、ここで男が、しかもいきなり口を出すわけにはいかない。

「ねえ、本当にクララ様はカイル様と恋人にはならないんですの?カイル様にアプローチしたい生徒もいるんですよ」

クララのせいでできないって言いたいのか?彼らが過保護なのはクララのせいじゃないのに。
「恋愛感情じゃなくても彼らを独り占めして見せびらかしたり優越感はあるんじゃないですか?」

「あなたたち、いい加減に……!」

クララの友達が言いかけたときに、クララがやっと声を出した

「私が彼らを物のように見せびらかしていると?」
その声の冷たさに相手が止まった。

「彼らへの侮辱は親戚として見過ごせませんわ。私が彼らに恋愛感情をこれからも持たないとしても、私を守ろうとしてくれたことは感謝しています」
「私たちはそんな、別にそこまで」
「私は誰かを素敵だと思ったりお近づきになりたいと思うこともなく、皆さんの期待に沿うように従兄弟としか縁がないのでしょうか。それもいいのかもしれませんね、邪推で誰かを傷つけたりはしませんもの。」

クララ怒っている

「自分のパートナーは自分で選びます。ご心配には及びませんわ」

(クララ、怒り方が冷静でネチネチしてエドガー様にそっくりだ)

「クララも言うようになったねえ」
カイルの明るい声がした。
クララは苦い顔をしている。相手の女子が悲鳴のような声をあげる。
セドリックもいる。
「なんで兄さまもいるのよ。」
「セグラー家に寄ろうと思ってな。お前は寄り道せずに帰れよ」
セドリックはキョロキョロしている。
「嫌よ。甘いものを買って帰るわ。この前新しいお店が……」

「ルー!どこ行ったんだ」

「ちょっと待って、ルーも来てるの?」

「ああ。」

「兄さんのバカ!」

クララは走った。

「行っちゃったね。出てきなよ、ルー」

カイルに言われて渋々身体を出した。

「なんで行っちゃったかわかるか?」

カイルがにこにこしている。
「……知られたくなかったのかな」
「そうだろうね!良かった、セドリックと同じレベルかと思ったよ。」

「あんなに怒り方がエドガー様に似てるなんてクララに言わない方が良いよね」

「え?」

「違った?」

「違う。君全然わかってない」

歳上を可哀相な目で見るカイル。

「なんで怒られたんだ、オレ」

全くわかってないセドリック。

「とりあえず、続きは家でしようか」

カイルはこの二人に説明するのには兄の助けが欲しいと思った。



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