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クララは激怒していた
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王族に講義をするというのは学者にとっての誉れである。望んだからといって機会が与えられるとは限らない。
青年になる前の王族には教師がつく。それは人格や実績で選ばれる。
しかし、特別講義は王族が望んだ時に、望んだ学者を呼べる。
一回限りの王族の気まぐれといってもいい。
自由に選べることの少ない彼らが、知見を広めるために専門家を呼ぶ。
王女がルーベンスを呼んだことは話題となった。貴族だけでなく平民の間でも噂が広がった。
跪いて王女にバラを差し出す青年の絵が新聞に載った
「な、なによこれ」
新聞を握り締めた両手が震える。
グシャリ、と形をかえた紙を床に投げて、クララは踏みつけようとした。
けれど嘘でも想像でも人の姿をしたものを踏みつけることはできず、蹴って部屋の端っこに追いやった。
朝食を食べた後に新聞に目を通すというのがエドガーの日課だった。ライラや家族と朝食をとるのはエドガーにとって喜びだった。
「クララ、落ち着きなさい」
「落ち着いてます!」
「お茶を代えましょう。ハーブティーにするわね」
ライラが部屋を出た。料理やお茶を入れるのが好きなライラは厨房にもよく出入りしている。
「夜会でもルーと王女様のことばっかり聞いたわ。絶対違うのに!」
「クララ」
エドガーの低い声に、クララの姿勢が伸びた。
「なぜそんなにお前が悲しんでいるんだ」
じっと見つめられて、クララは視線をそらす。
お父様に監査される人もこんな気持ちなんだわ。
「だって、ルーはそんなことするわけないもん。王女様に報われない恋なんてしてないわ」
「なぜそう思う」
「だって、ルーはそんな憧れで動くようなロマンチックなタイプじゃないし、誠実だし、そんなことがあったら隠せる人じゃないし」
「クララ、私はルーベンスのことを聞いているんじゃない。人の行動の理由を考えても推測にすぎない。お前が悲しむ理由はお前がわかるはずだ。」
お茶を出してくれたライラに蕩けるような笑顔を一瞬向けて、声は低いままクララを追い詰める。
「それは、私、」
ライラがクララの前にお茶をおいて、肩に手を置いてくれた。
温かい。
「私、ルーが好きなの。ルーじゃなきゃ嫌だ。」
ぶわっ、と涙が溢れた。
「そうか」
エドガーはハーブティーを飲んだ
「それだけ?父様怒ってないの」
「怒る必要はない。お前が一方的に好きなら心を手に入れるために策を練る……いや、ひたむきに伝えるしかないだろう。頑張れ。私から縁談を持ちかけたら断らないだろう。焦る必要はない」
「お父様ありがとう。絶対反対されると思った」
「私はそんなに物わかりが悪いわけではない。クララに幸せになって欲しいから案じている」
「お父様大好き」
「良かったわね、クララ」
「お母様も大好き。そうよね、こんな記事は嘘に決まってるわ。ルーも私のこと大事だって言ってくれたもの。」
エドガーが新聞をグシャリとテーブルに置いた。
「クララ、ルーベンスとはもう心を通じてじているのか」
「そうよ。ルーも私と一緒にいたいって言ってくれたもの」
「念のために聞くが子供の頃の『結婚しよう』等ではなく、最近のことだな?」
「そうだけど、なぜ怒ってるの!?」
「恋人がいながらゴシップ記事をまんまと書かれるような隙があるのは許せないしクララに釈明に来ないだと?こんな事態を放置していられる呑気さも苛立つしクララを泣かせて、許すものか」
暗黒オーラが立ち始めている。
「待って、お父様そんなに怒らないで。私大丈夫だから。ルーを信じているもの」
「信じているクララを泣かせるなどと不貞と何が違うんだ」
怖い!
「お母様、ルーが殺されちゃう」
「大丈夫よ。今までの人もそう言ってたけど実際に殺された人はいないから」
「それ社会的な死とかでしょ、どうせ」
「まあ、クララも難しい言葉を覚えたのね」
「私、ルーにちゃんと聞いてくる!お父様、絶対に何もしないでね」
青年になる前の王族には教師がつく。それは人格や実績で選ばれる。
しかし、特別講義は王族が望んだ時に、望んだ学者を呼べる。
一回限りの王族の気まぐれといってもいい。
自由に選べることの少ない彼らが、知見を広めるために専門家を呼ぶ。
王女がルーベンスを呼んだことは話題となった。貴族だけでなく平民の間でも噂が広がった。
跪いて王女にバラを差し出す青年の絵が新聞に載った
「な、なによこれ」
新聞を握り締めた両手が震える。
グシャリ、と形をかえた紙を床に投げて、クララは踏みつけようとした。
けれど嘘でも想像でも人の姿をしたものを踏みつけることはできず、蹴って部屋の端っこに追いやった。
朝食を食べた後に新聞に目を通すというのがエドガーの日課だった。ライラや家族と朝食をとるのはエドガーにとって喜びだった。
「クララ、落ち着きなさい」
「落ち着いてます!」
「お茶を代えましょう。ハーブティーにするわね」
ライラが部屋を出た。料理やお茶を入れるのが好きなライラは厨房にもよく出入りしている。
「夜会でもルーと王女様のことばっかり聞いたわ。絶対違うのに!」
「クララ」
エドガーの低い声に、クララの姿勢が伸びた。
「なぜそんなにお前が悲しんでいるんだ」
じっと見つめられて、クララは視線をそらす。
お父様に監査される人もこんな気持ちなんだわ。
「だって、ルーはそんなことするわけないもん。王女様に報われない恋なんてしてないわ」
「なぜそう思う」
「だって、ルーはそんな憧れで動くようなロマンチックなタイプじゃないし、誠実だし、そんなことがあったら隠せる人じゃないし」
「クララ、私はルーベンスのことを聞いているんじゃない。人の行動の理由を考えても推測にすぎない。お前が悲しむ理由はお前がわかるはずだ。」
お茶を出してくれたライラに蕩けるような笑顔を一瞬向けて、声は低いままクララを追い詰める。
「それは、私、」
ライラがクララの前にお茶をおいて、肩に手を置いてくれた。
温かい。
「私、ルーが好きなの。ルーじゃなきゃ嫌だ。」
ぶわっ、と涙が溢れた。
「そうか」
エドガーはハーブティーを飲んだ
「それだけ?父様怒ってないの」
「怒る必要はない。お前が一方的に好きなら心を手に入れるために策を練る……いや、ひたむきに伝えるしかないだろう。頑張れ。私から縁談を持ちかけたら断らないだろう。焦る必要はない」
「お父様ありがとう。絶対反対されると思った」
「私はそんなに物わかりが悪いわけではない。クララに幸せになって欲しいから案じている」
「お父様大好き」
「良かったわね、クララ」
「お母様も大好き。そうよね、こんな記事は嘘に決まってるわ。ルーも私のこと大事だって言ってくれたもの。」
エドガーが新聞をグシャリとテーブルに置いた。
「クララ、ルーベンスとはもう心を通じてじているのか」
「そうよ。ルーも私と一緒にいたいって言ってくれたもの」
「念のために聞くが子供の頃の『結婚しよう』等ではなく、最近のことだな?」
「そうだけど、なぜ怒ってるの!?」
「恋人がいながらゴシップ記事をまんまと書かれるような隙があるのは許せないしクララに釈明に来ないだと?こんな事態を放置していられる呑気さも苛立つしクララを泣かせて、許すものか」
暗黒オーラが立ち始めている。
「待って、お父様そんなに怒らないで。私大丈夫だから。ルーを信じているもの」
「信じているクララを泣かせるなどと不貞と何が違うんだ」
怖い!
「お母様、ルーが殺されちゃう」
「大丈夫よ。今までの人もそう言ってたけど実際に殺された人はいないから」
「それ社会的な死とかでしょ、どうせ」
「まあ、クララも難しい言葉を覚えたのね」
「私、ルーにちゃんと聞いてくる!お父様、絶対に何もしないでね」
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