【完結】ちょっと読みたい本があるので後宮に行ってきます

仙桜可律

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本さえ読めればいいですよ

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「おじさんって、そんなに差があったのか?お前いくつだ」

「16です」

「にしては、」

腕組みして頭の先から足まで二往復ほど検分される。

「成長期です」

「いや、もっと体型以外にも雰囲気とか恥じらいとかさ」

「成長期ですってば」


「12歳差か、うーん」

蒼の宮は髪をかきあげた。

「まさか、昔から私を狙っていたと?」

梨杏が拳で胸を突くと、造作もないというように手のひらだけで止められた。

「いや、母親に似たら美人になるかもしれないなと一応気にかけていた程度だ」

正直すぎやしませんか。
確かに母は楽士のなかでも美人歌姫と有名だったと聞く。

「まあいい。お前、後宮を出て俺のとこへ来い。まだ見習いだから問題ない」


「はい?」

「お前みたいなのがちょうど良いんだよ、俺には」

ちょっと待って、という声も誰にも届かないまま、宮女見習いが一人消えた。

宮女見習いが逃げ出したり不始末で処分されたりすることは、よくあることなので特に関心を集めなかった。

「あのですね、なぜ私はこんな目に」

離宮である蒼流殿に担いで運ばれたら、湯殿に放り込まれ女官に世話をされた。

「いやー、磨きがいがあります。こんな若いお嬢さんを宮さまが連れ込まれることなんてないので!」

「人聞きが悪いな。ここに連れ込んだ女はいないだろう。勝手に来た奴はいるが。
それと、そいつ正妃だから気を遣ってやってくれ」

キャー!

という女官の声があがる。

「せ?せいひ?なんで」

「ちょうど良いんだよ。お前が。というわけで報告も済ませてくるからよろしくな正妃」

「お飾りの妻ということですね。私は本が読めればそれでいいので後宮でもどこでも変わりないといえば変わりないし、……いいですよ」

「多分理解してないだろうけど好都合だな」


そのあと皇帝陛下に報告した。
「そうか……もう捕まったのか。アレの娘にしては鈍くさ、いや純粋なんだな、」

「兄上の側室になるのを逃げ回ってましたもんね。」

「側室ではなく、あの美声を聞かせてくれと言っただけなのに他の妃たちが殺気立ってしまってな。信頼できる師に縁を結んだ」

「十年前にお前が六才の娘と婚約したいと言い出したときには、さすがに幼女に無体を強いてはご先祖に申し訳ないと思ったが。」

「兄上も十くらいで婚約していたくせに」

「家同士の口約束だ。お前みたいに、しつこくはない」

「甥の後宮に入るとは思いませんでしたがね」

「しかし、大丈夫なのか?まだ宮女見習いの教育は閨の方面まで進んでないのだろう?くれぐれも、女性を傷つけることのないように」

たくさんの女性に囲まれている皇帝は、扱いの難しさを経験的に知っている。
震えながら告げる。
「女の恨みはこわいぞ。後で謝って物で釣れるなんて、ゆめゆめ思うなよ?」


何があったんだ、国の最高権力者。
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