魔術師の先輩が言うことには

「シャワー使って行ったら」

間の悪いことは重なるもので。

その日、新人魔術師の失敗だそうで、アリスだけが雨に濡れた。

しかも嵐の前で落ち葉や草が舞う日だった。

職場の人は早退するように言ってくれた

同居人のエリーが鍵を失くして、合鍵を作るというのでアリスの鍵を渡したところだった。夜はエリーのほうが早く帰宅するので問題ないと思った。

そんなことが重なり、濡れっぱなしで道で途方にくれていたら、ヒューイ先輩が走って追いかけてきた。

「大丈夫だったか？災難だったな。
うちのシャワー使って良いから。」

「いえいえ、そんなわけには」

「緊急事態だろ。送っていくよ」

肩を押されて、流されるまま歩いていく。　

同じ建物なのに先輩が一緒というだけで緊張している。

先輩がただの親切心なのに変に断るのも自意識過剰かもしれない。　アリスは甘えることにした。
それでも独身男性、しかも憧れの人の部屋に入るなんて緊張しないほうがおかしい。しかもシャワーの間も上がってからも恥ずかしい。
ヒューイ先輩は浴室を簡単に説明してくれた。同じものなのでわかる。

「じゃあ、俺は悪いけど仕事に戻るから。ゆっくりしててくれていいよ。エリーが帰ったらわかるだろ。」

先輩は仕事を抜け出してきてくれたんだな。
改めて感謝した。
冷蔵庫のものも食べて良いと言われた。

先輩がでていったあと、シャワーを浴びた。

先輩は本当にいい人だと思った。