花壇担当ですが獣人将軍に愛されてます

仙桜可律

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庭を案内しました

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セイ様は斜め後ろを歩くことにしたらしい。
偉い方の前を歩くなんて緊張するけれど、並んで歩くのもおかしい気がする。
庭を案内するのだから先に歩くのが自然かもしれない。

「ここの岩は……」

「こちらは水辺の花園で……」

「温室には暑い国の植物や季節を先取りしたい植物があります」

説明をすると蕩けそうな視線で頷いてくれる。

嬉しくなった。
異国の方にもうちの庭の素晴らしさが通じるなんて。

カリム国に多い種族は目が鋭いと聞いていた。武人が多いとも。
姫様も何かの武術をされているのか、足の運び方ひとつでさえ美しい方だった。
セイ様の銀色の髪もこの国では珍しい。 目の色は赤みの強い、銅のような色。

「そんなに見つめられると困るのだが」

「すみません!つい」

「何か気になることでもあるのだろうか、その、君にとって私の容姿は」

さっと目をそらして遠くの景色を見るようにして聞かれる。

「えっと、失礼に当たったらすみません。こちらの国ではセイ様のような銀髪は珍しくて、陽に透けるのが綺麗で見とれていました。」

「名前……!」

セイ様が顔を覆った。

「軽々しく呼んではいけませんでしたね、すみません。私ここの下働きをしていて学校もほとんど言ってないのでマナーも知らなくて」

「名前など、いくらでも」
(いくらでも呼んで欲しい、いややっぱり心臓に悪いから控えて欲しい。普段は呼ばすに時々照れながら呼んで欲しいし、慣れて呼び捨てにされても俺は尻尾を振って寄っていくだろうし。呼ばれなくても寄っていくけどやっぱり呼ばれたら嬉しいだろうし

あー、どうしよう名前、俺の名前こんなに良いものだったんだな、可愛い声で呼ばれたら初めて音に色が付くかと思ったもう一度聞きたいけど聞いたら絶対抱き締めてしまうし
番の破壊力こわい!)

「すまない」

「どうして謝られるのですか」

「ちょっと言語化しにくい感情に襲われてしまった。」

「ああ、やっぱり細かな部分などは大陸共通語で表せないこともあるでしょうね」

「そうだな。しかしこの国と我が国で夫婦になる者も多いらしい」

「はい?」


(しまった、焦りすぎた)

「その、二つの国の交流もすすんでいるし、個人レベルでももっと親しくなれば良いと思っている。個人的に」

「まあ、私も実はそう思っていたんです」

「じゃあ結婚、」

「このお屋敷の公爵様も奥さまも優しい方で、公子様達もとても勉学に励んでらっしゃって、お姫様とお似合いだと思うんです」

「あ、うん」

「王子様も素敵な方だそうですが、私は公子様と結ばれて欲しいです。それならお姫様をまたこのお屋敷でこっそり見れたらな、なんて」

頬に手をあてて、うっとりした様子のサーラ。

尾行していたカリム国の騎士は、もう疲れてきていた。

「姫様、先輩がドロドロに甘い顔して女の子に近寄って襲いかかりそうです」

「セイがそんなことに!他国で番を見つけるなんてどうしましょう。とりあえず」

姫は、通信用の魔法蝶々に囁いた。

「そのお嬢さんはまた改めてお招きするとして、セイに、戻るように伝えてくれる?」

「引き離したら殺されそうです」

後輩の騎士は、遠目にもわかるくらいブンブンと首を振っている。


「仕方ないわねえ」

姫はお茶会にいた公子に庭の案内を頼んだ

「うちの護衛が、お宅のメイドかしら、使用人に一目惚れをしてしまったようなの。また連れて遊びに来てくださるかしら」

「へえ。あれは、サーラか。セイ殿の好みは意外ですね」

「サーラはどんな子ですの?」

「庭の花壇を真面目に世話してくれるので母のお気に入りですよ。
色目を使ってくる他の使用人より安心できますね。まだあの通り子供でしょう?面白そうだから連れていきます。」





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