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獣人の方は義理堅いのですね
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「本当に君に会えて良かった。公爵邸に、いやこの国に来て良かった」
セイ様に頭を下げられて、申し訳ないやら恥ずかしいやらで、慌ててしまいました。
「そんな、頭を下げないでください」
「この礼は必ず」
何度も振り返りながらセイ様は姫のあとを付いていった。
礼?いったい何のお礼だろう
公子様たちにも聞かれた。
「セイ殿と何があったの、サーラ」
「お庭を少し案内しただけなのですが。もしかしてうちの庭に感動されたということでしょうか。でしたら父に伝えないと。」
セイ様がカリム国の将軍で、国の英雄であること。獣人であること。こちらの騎士にも憧れている者が多く、訓練に参加してもらうこと。
そんなことを公子さまから聞いた。
そんなにすごい方なのですね、と言ったら微妙な顔をされた。
~~~
姫が滞在する国賓のための離宮で、セイは膝を付いていた。
姫様や侍女から睨まれている
「全く、セイ、あなたという人は。あんな純情そうな娘相手に気持ちをぶつけるなど論外です。もっと慎重になりなさい」
「将軍は威圧感があるんですから怯えられますよ!」
「うう、すまない。しかし、やっと番に会えたんだ、無理もないだろう」
「そんなのは獣人の勝手な本能で、お相手には関係ありません。
嫌われても良いんですか」
「嫌だ!」
興奮したら、ザッとしっぽが出た。
セイは雪豹の獣人だ。
「その姿も受け入れてくれるかしらね。私たちは見慣れているけれど」
「この国で育ったなら獣人の習性をよく知らないでしょうね。」
「いいですか、怖がらせたくないのなら獣化は絶対にやめたほうが良いです」
セイは誓った。
確かに、爪も彼女を傷つける可能性がある。
「彼女はどんな邸が好みだろう。」
うっとりと呟いたセイに、女性達が苦々しい顔をした。
「全くわかっていませんわ」
「将軍、それがダメなんですよ」
「なんでそんなに短絡的に相手が結婚してくれると思えるんですか」
「だって、番だぞ?彼女以外に私の伴侶はあり得ない」
「だーかーら!あなたにとってはそうでも、彼女にとっては違うの。あなた以外の伴侶を選ぶ自由もあるのよ」
姫様が言うと、セイはこぼれ落ちそうなほどに目を見開いた。
「そんなことになったらどうすれば良いんだ」
「先ほどから、繰り返し言っています。慎重に相手の心を得られるように努力するしかありません
」
こくこくと頷く将軍。
一同はこっそり可愛いと思った。
「まあ、あの娘を娶るのは良いと思うよ。」
姫様がお茶を飲んで言った。
「国内で将軍に娘を売り込む奴らも番なら黙るだろうし。今まで国と私に尽くしてくれていたから、本当に望む相手と添い遂げて欲しいと思う。それに」
「この大男が、あの小さな令嬢の気を引こうと振り回されるなんて面白そうじゃないか。」
「姫様、それが本音ですね」
セイ様に頭を下げられて、申し訳ないやら恥ずかしいやらで、慌ててしまいました。
「そんな、頭を下げないでください」
「この礼は必ず」
何度も振り返りながらセイ様は姫のあとを付いていった。
礼?いったい何のお礼だろう
公子様たちにも聞かれた。
「セイ殿と何があったの、サーラ」
「お庭を少し案内しただけなのですが。もしかしてうちの庭に感動されたということでしょうか。でしたら父に伝えないと。」
セイ様がカリム国の将軍で、国の英雄であること。獣人であること。こちらの騎士にも憧れている者が多く、訓練に参加してもらうこと。
そんなことを公子さまから聞いた。
そんなにすごい方なのですね、と言ったら微妙な顔をされた。
~~~
姫が滞在する国賓のための離宮で、セイは膝を付いていた。
姫様や侍女から睨まれている
「全く、セイ、あなたという人は。あんな純情そうな娘相手に気持ちをぶつけるなど論外です。もっと慎重になりなさい」
「将軍は威圧感があるんですから怯えられますよ!」
「うう、すまない。しかし、やっと番に会えたんだ、無理もないだろう」
「そんなのは獣人の勝手な本能で、お相手には関係ありません。
嫌われても良いんですか」
「嫌だ!」
興奮したら、ザッとしっぽが出た。
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「その姿も受け入れてくれるかしらね。私たちは見慣れているけれど」
「この国で育ったなら獣人の習性をよく知らないでしょうね。」
「いいですか、怖がらせたくないのなら獣化は絶対にやめたほうが良いです」
セイは誓った。
確かに、爪も彼女を傷つける可能性がある。
「彼女はどんな邸が好みだろう。」
うっとりと呟いたセイに、女性達が苦々しい顔をした。
「全くわかっていませんわ」
「将軍、それがダメなんですよ」
「なんでそんなに短絡的に相手が結婚してくれると思えるんですか」
「だって、番だぞ?彼女以外に私の伴侶はあり得ない」
「だーかーら!あなたにとってはそうでも、彼女にとっては違うの。あなた以外の伴侶を選ぶ自由もあるのよ」
姫様が言うと、セイはこぼれ落ちそうなほどに目を見開いた。
「そんなことになったらどうすれば良いんだ」
「先ほどから、繰り返し言っています。慎重に相手の心を得られるように努力するしかありません
」
こくこくと頷く将軍。
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「まあ、あの娘を娶るのは良いと思うよ。」
姫様がお茶を飲んで言った。
「国内で将軍に娘を売り込む奴らも番なら黙るだろうし。今まで国と私に尽くしてくれていたから、本当に望む相手と添い遂げて欲しいと思う。それに」
「この大男が、あの小さな令嬢の気を引こうと振り回されるなんて面白そうじゃないか。」
「姫様、それが本音ですね」
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