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離宮に招待されました
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「サーラ、そんなに緊張しなくていいよ」
「すっ、すみません!」
公子様二人がカリム国の姫様から招待を受けました。
離宮でのお茶会にわざわざ招くなんて姫様ももしかして公子様ともっと近づきたいということですよね。
ああ、本当に結婚されたらなんて素敵なんでしょうか。
何て呑気に思っていたら、私も連れていくと仰って。
ドレスを仕立てて下さると奥様が仰ったのですが申し訳なくてお断りしました。
すると、お嬢様の昔のワンピースをお直ししてくださいました。
それでも私からすれば上等なもので恐縮ですが、少なくともドレスよりは丈が短いので踏む心配はありません。
水色に白のレースの襟がついたワンピースです。袖口と裾に白い花の刺繍が入っています。
形はストンとしていてウエストにもレースのリボンがついています。
これをお嬢様は12歳の頃にお召しになっていたそうです。
私は16歳だというのにピッタリというのは、少し悲しいですが。
しかも胸の辺りも全く問題なく着ることが出来てしまいました。
「姉さんが着るよりサーラのほうが似合っているよ。」
「めっそうもないです」
公子様たちは令嬢にも使用人にも大変人気があります。私に気安く話してくださるのは幼い頃から敷地内に住んでいるからです。また、お二人が小さい頃に庭で遊んでいて父や祖父がイタズラを叱ったり危険な場所や毒虫について注意をするなど、公爵様と奥様から信頼されていたからです。
お二人は令嬢方の理想の貴公子との評判なので、きっと外での振る舞いは完璧なのでしょう。私のような者の前では息抜き
になるのかもしれません。
「縁談なんて、ずっと先だと思ってたのにね」
公子様が窓の外をみて呟かれました。
「カリム国の姫様は、とても美しい方でしたよ!」
「いや、僕らじゃなくてね」
(今日は実質、サーラの見合いみたいなもんなんだけど)
馬車がついて、公子たちが先に降りた。サーラに手を貸そうとして、威圧感に恐る恐る振り向くと。
出迎えの使用人に混じって、銀髪の将軍が早足で馬車に向かっていた。
苦笑いで手を引っ込める。
セイは馬車の中にいるサーラに手を伸ばした。
「ようこそいらっしゃいました。歓迎いたします。どうぞゆっくりとおくつろぎください」
おずおずと手を重ねると、ゆっくりと促されて地面に足が付く……前に抱き上げられた。
「え?」
「セイ殿……」
カリム国の使用人がため息をついていた。
「だってこんなに固い地面に足を下ろすなんて耐えられない」
「は?」
公子たちは笑っている。
「ねえ、将軍。ちょっとは我慢してください。
ええと、公子様すみません。」
「いえ、書物で知ったつもりでいましたが、すごいですね。しかし、サーラも戸惑っているようです。お手柔らかに、私たちからもお願いいたします。」
セイは、渋々サーラを下ろした。
しかし手は離さない。
「あの、将軍様」
サーラが上目遣いになるのは好意があるからではなく単に身長のせいだ。
それなのにセイは
震えて可愛さに耐えている。
「私、背は低いですが幼子ではないので一人で歩けます。今日は公爵家の使用人として参りました。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ末永くよろしくお願いしたい」
(待って、将軍の脳内で何か変換されてるよね!?)
(絶対に嫁のセリフで再生されてるよね)
サーラは公爵家の恥にならないように所作に気をつけていた。
そんなサーラを目に焼き付けようとするかのようにセイは見続けていた。
「すっ、すみません!」
公子様二人がカリム国の姫様から招待を受けました。
離宮でのお茶会にわざわざ招くなんて姫様ももしかして公子様ともっと近づきたいということですよね。
ああ、本当に結婚されたらなんて素敵なんでしょうか。
何て呑気に思っていたら、私も連れていくと仰って。
ドレスを仕立てて下さると奥様が仰ったのですが申し訳なくてお断りしました。
すると、お嬢様の昔のワンピースをお直ししてくださいました。
それでも私からすれば上等なもので恐縮ですが、少なくともドレスよりは丈が短いので踏む心配はありません。
水色に白のレースの襟がついたワンピースです。袖口と裾に白い花の刺繍が入っています。
形はストンとしていてウエストにもレースのリボンがついています。
これをお嬢様は12歳の頃にお召しになっていたそうです。
私は16歳だというのにピッタリというのは、少し悲しいですが。
しかも胸の辺りも全く問題なく着ることが出来てしまいました。
「姉さんが着るよりサーラのほうが似合っているよ。」
「めっそうもないです」
公子様たちは令嬢にも使用人にも大変人気があります。私に気安く話してくださるのは幼い頃から敷地内に住んでいるからです。また、お二人が小さい頃に庭で遊んでいて父や祖父がイタズラを叱ったり危険な場所や毒虫について注意をするなど、公爵様と奥様から信頼されていたからです。
お二人は令嬢方の理想の貴公子との評判なので、きっと外での振る舞いは完璧なのでしょう。私のような者の前では息抜き
になるのかもしれません。
「縁談なんて、ずっと先だと思ってたのにね」
公子様が窓の外をみて呟かれました。
「カリム国の姫様は、とても美しい方でしたよ!」
「いや、僕らじゃなくてね」
(今日は実質、サーラの見合いみたいなもんなんだけど)
馬車がついて、公子たちが先に降りた。サーラに手を貸そうとして、威圧感に恐る恐る振り向くと。
出迎えの使用人に混じって、銀髪の将軍が早足で馬車に向かっていた。
苦笑いで手を引っ込める。
セイは馬車の中にいるサーラに手を伸ばした。
「ようこそいらっしゃいました。歓迎いたします。どうぞゆっくりとおくつろぎください」
おずおずと手を重ねると、ゆっくりと促されて地面に足が付く……前に抱き上げられた。
「え?」
「セイ殿……」
カリム国の使用人がため息をついていた。
「だってこんなに固い地面に足を下ろすなんて耐えられない」
「は?」
公子たちは笑っている。
「ねえ、将軍。ちょっとは我慢してください。
ええと、公子様すみません。」
「いえ、書物で知ったつもりでいましたが、すごいですね。しかし、サーラも戸惑っているようです。お手柔らかに、私たちからもお願いいたします。」
セイは、渋々サーラを下ろした。
しかし手は離さない。
「あの、将軍様」
サーラが上目遣いになるのは好意があるからではなく単に身長のせいだ。
それなのにセイは
震えて可愛さに耐えている。
「私、背は低いですが幼子ではないので一人で歩けます。今日は公爵家の使用人として参りました。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ末永くよろしくお願いしたい」
(待って、将軍の脳内で何か変換されてるよね!?)
(絶対に嫁のセリフで再生されてるよね)
サーラは公爵家の恥にならないように所作に気をつけていた。
そんなサーラを目に焼き付けようとするかのようにセイは見続けていた。
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