花壇担当ですが獣人将軍に愛されてます

仙桜可律

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お茶会

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 カリム国の威信をかけて開かれたといっても過言ではない、お茶会。
 カリムの姫も侍女も招かれた公子も社交的な会話を続けながら、セイとサーラの様子に意識を向けていた。

 どうか二人が上手くいきますように。
 まだそれは早いかもしれない。
 せめて、怖がられませんように。
 カリム国の将軍が女性に襲いかかるような事態にならないようにしないと、国際問題だ。

隣の席に自然に案内した侍女は、大仕事を終えた顔をしていた。
セイは体を完全にサーラに、向けているので他の席から見ると壁のようだ。
サーラを囲い込んでいる大男。
絵面がすでにヤバい。

「この菓子もどうぞ、それからこちらも人気らしい、お茶のおかわりは、果物はどうですか」

 サーラの皿に山のように菓子を積み上げている

「ありがとうございます、でもこんなに食べられません。 もし良ければ食べるのを手伝ってくださいませんか」

「食べるのを……手伝……う?」

 ごくり、と将軍の喉が動く。

「いいのか?」

 (将軍、絶対想像してるのと違いますからね!)

 クッキーをつまんでサーラの口元にもっていく。
侍女たちは青くなった。
サーラは赤くなって、首を少し傾げて、
手で受け取った。

「ありがとうございます……?」

サーラはまだ幼い子と間違えられているのかと思った。
「カリム国の皆さんは子供に優しいのですね」

「子供?そうですね、子供は好きだ。何人でも欲しい」

侍女は将軍の前にお茶の二杯目をおいた。

(黙ってください、将軍!)

「もしよろしければ、庭を案内したらどうかしら。セイ」

姫が侍女を呼んで、
「例の作戦で頼むわ。これ以上セイが変なことを口走らないように」

と囁いた。

「お庭を見せて頂けるのですか?」

サーラが喜んでるのでセイは立ち上がって今にも抱き上げようとした。

が、全員が視線で止めた。

しばらくしてお菓子を食べ終えてから、ソワソワしながら庭にいくサーラと、その後ろをもっとソワソワしながらセイが付いていく。

「なんだか将軍が可愛らしく見えますね」

公子は笑っていたが

「ご安心ください。庭にも警備のものを配置して、サーラ嬢に身の危険がないように何度もシュミレーションしてますので。」

というカリム国の皆の真剣な様子を見て、番ってそんなに警戒するものなのかと認識を改めた。

「わあ、素敵ですね」

「離宮は庭を楽しむために作られたそうだ。ここに、友好の証しとしてうちの国の植物を植えたのたが……」

「わあ!本でみたことがあります。」

「夜にだけ咲く花で、国のほうにはたくさん植えていて、その花をみるために宴をすることもある。」

「素敵ですね」

「夜の庭園も灯りを置いて昼とはまた違った様子で」

「良いですね、羨ましいです」

「家族や、恋人と楽しむために、その、良い雰囲気だそうだ」

「ロマンチックでしょうね」

「もし、よかったら見にこないか。この花も来月あたり咲きそうだし、国にはたくさん植えるから」

「ありがとうございます!ぜひ見たいです」


そのあと庭を一周したところで侍女の判断でこれ以上は危険ということで
茶会に戻ってきた。


「セイ、どうでしたか」

「サーラ嬢に夜のお誘いを承諾していただきました」

公子がお茶をむせた。
「え?」

姫も咳き込んだ

「夜の花見の宴にまたサーラ嬢を招待したいということです。」

護衛が額を押さえている。

「良かった……。

ではその宴には公子様も是非いらっしゃってください。もちろん、それまでにもサーラ嬢、気軽に遊びにきてくださると嬉しいわ」

サーラは感激して頷いていた。

帰りの馬車に乗り込むときもセイがサーラを馬車にそっと上げて、なかなか手を離さないので困った。  

やっと次の約束を取り付けて手を離してもらえた。


公子たちの馬車を見送ってから

セイへの説教が始まった。

「あんなにサーラ嬢にくっついてはいけません」
「見すぎです」
「距離感も作戦も、あんたそれでも戦士ですか」
「我慢をしてください」
「匂いを嗅がないでください」

「サーラ嬢に嫌われたくないんでしょ?」


皆に言われて小さくなっていたが、どうしてもサーラに嫌われたくないので真剣に聞いた。





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