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第1章 悪役令嬢は目立ちたくない
第7話 三人目の攻略者
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私は頭を下げたまま捲し立てた。
「あの頃の私は子供だったのです。本当に物の道理が分かっていなかったのです。レティシア様にご不快な思いをさせていたのでしたら、謝罪いたします。本当にごめんなさい!」
一気にそう言い終えると、レティシアは驚いた表情でこちらを見ていた。ミリアもジョージアもぽかんとしている。
(しまった、やりすぎたか!?」
「す、すみません・・・。あの・・実は私、先日馬車の事故にあってから、ショックで昔の記憶が曖昧な部分があるのです。それで、レティシア様の事もよく覚えてなくて・・・その・・・ごめんなさい・・・」
(・・・ヤバい、これじゃただの変な子だ!)
段々恥ずかしくなり、最後の方は小声になって俯いてしまった。
(どうしよう・・・せっかくグループに誘ってくれたのに。ドン引きされたかもしれない・・・)
皆の反応が怖くて、顔が上げられない・・・。
でも予想に反して、聞こえてきたのだとても優しい言葉だった。
「まぁ・・・そうだったのですか・・・。もしかして、ご入学が1か月も遅れてしまったのはその為ですか?」
顔を上げるとレティシアは、心底気の毒そうな表情で私を見つめていた。見回すとミレイもジョージアも同様だ。ミリアなんか目に涙を浮かべている。
レティシアは胸の前で手を組んで
「お可哀そうに・・・。すみません、私が昔の話なぞしてしまったので、お辛い事を思い出させてしまいました」
「えっ?、いえいえ、そんなことは」
絶対私の方が前に嫌な思いをさせているであろうに、レティシアは、
「お許しくださいませ、アリアナ様」
そう言って、すまなそうに目をうるうるさせて私を見つめた。
(な、な、なんて良い子なんだ!こんな子をイジメるなんて、アリアナのばか!ばか!ばか!)
「レティシア様!」
私はレティシアの組んだ手を両手で包んで言った。
「レティシア様こそ、私の昔の過ちをゆるしてくださいますか?私、本当に悪かったと思っていますのよ」
「まぁ、そんな!。もちろんですわ。昔の事です。お互い子供だった頃の事ですもの。きっと色々誤解もあったのですわ」
優しいレティシアはそう言って微笑んでくれた。私もホッとして心から笑みを返す事が出来たのだ。
そして、次の日から私のお昼休みは「ぼっち」ではなくなった。
「お兄様!私っ、友達ができたかもしれませんっ!。」
あの日寮に戻ってそう告げると、兄は涙ぐみながら
「良かった!良かったよ。アリアナ!」
そう言って私の両肩を優しくポンポン叩いて喜んでくれた。相変わらずのシスコンぶりの兄だ。でもクラークが大好きな私にはそれが心地良い。
そして毎日が楽しくなってきたある日の事、私はふと気になった。
(馬車って6人乗りだけど、ミリア、ジョージア、レティシア、私で4人。あと一人、もしくは二人は誰だろう?)
お昼休みは4人で食べているのだが、実はそれが楽し過ぎて聞くのを忘れていた。「ぼっち」での昼休みは思ってたより辛かったのだ、私。
(ふむ、でも当日に分かれば良いか。ミリア達の友人なら良い人達に違いないよね)
気が重かったはずのピクニックが、いつの間にか待ち遠しくなっていた。
そして何だかんだであっという間に「ドキドキハプニングピクニック」の日がやってきた。
集合時間に校庭に行くと、ミリアが声をかけてくれた。
「アリアナ様、こちらですわ。」
私に向かって手を振ってくれている。もう皆揃っているようだ。そしてそこには二人の男子生徒も立っていた。
「アリアナ様、紹介いたしますわ。私の双子の弟のノエルです。そして隣は弟の友人のクリフ・ウォーレン様。ウォーレン侯爵のご子息ですわ」
「ノエル・バークレイです。ミリアがいつもお世話になってます。今日はよろしく、アリアナ嬢」
ミリアとそっくりの髪色と瞳の少年はそう言った。性格もミリア同様優しそうだ。ただ私は紹介されたもう一人の少年に、すっかり気を取られてしまった。
(この人って、まさか・・・。)
「クリフ・ウォーレン。よろしく」
ぶっきら棒に、そう言ったこの少年!やっぱりそうだ!
青みがかった銀髪、そして紫の瞳。見る者をあっという間に魅了する美しいお顔。
クリフ・ウォーレン侯爵子息!!
2部から現れる攻略対象じゃないのー!!?
(こいつ、アリアナと同じクラスだったのか!)
乙女ゲーム「アンファエルンの光の聖女」は美形男子攻略ゲームとしては珍しい、3部構成になっていた。
1部はヒロインが学園に入り2年生になるまでの1年間。ここでのヒロインの攻略対象は、
アリアナの婚約者:ディーン・ギャロウェイ公爵子息
アリアナの兄:クラーク・コールリッジ公爵子息
アンファエルン皇国の第二皇子:パーシヴァル・レイヴンズクロフト
この3人だ。
そしてヒロインに対する試練として立ちはだかるのが悪役令嬢アリアナ。
1部に関してはかなり軽い乙女ゲームという感じで、イベントでの選択肢も少なく攻略も簡単である。悪役令嬢にしても子供っぽい意地悪や、嫌みを言う程度だ。
むしろディーンや、クラークにいたっては、その悪役令嬢の意地悪のおかげで、ヒロインとの距離が縮まる仕掛けになっている。
要するに、ほぼ肩慣らしなのだ。
2部は2年生から卒業する5年生まで。ここでは攻略対象が増え、国の皇太子であり、メイン攻略者であるトラヴィス:レイヴンズクロフトに始まり、あと3人ほど増える。
隠しキャラなんかもいたはずだ。
2部から出てくる攻略対象は、1部からの3人に比べて攻略が難しい。出会う時間が遅い事もあるが、イベントでの選択肢も増える上「右に行く」「左に行く」などの「こんなことで変わるの~~~!!」的な意地悪選択も多い。
だからむしろ「アンファエルンの光の聖女」のほんとの意味でのゲームはここから始まると言っても過言では無いのだ。
そしてクリフ・ウォーレンは2部から攻略対象の中でも、結構癖が強くて難しめの相手だ。
(そういえば、クリフって攻略した事無かったなぁ・・・。)
彼はゲーム内ナンバーワンと言われる超絶美形の為、プレーヤー達は皆こぞって攻略に情熱を燃やしていた。そしてその攻略の難しさに歯噛みする者も多かったらしい。
でも重いストーリーが苦手な私は、クリフルートは避けて他の攻略対象ばかりコンプリートしていたのだ。
(クリフって少し捻くれてるし、なんか無気力な感じで苦手なんだよなぁ。出生が複雑だから仕方ないかもしれないけど)
私は彼を横目で観察した。
(まつ毛、長っ・・・)
紫の瞳は宝石の様だし、お肌もつやっつやでニキビ一つ無い。顔の造りがとにかく美しくて眩しい程だ。中性的な雰囲気だけど背が高くて足も長い。
(おおお・・・)
クラークやディーンでも思ったが、ゲームのイラストよりも実写は数段ヤバい。イケメン好きの私はその破壊力に目が眩み、数歩後ろによろめいてしまった。
「あの頃の私は子供だったのです。本当に物の道理が分かっていなかったのです。レティシア様にご不快な思いをさせていたのでしたら、謝罪いたします。本当にごめんなさい!」
一気にそう言い終えると、レティシアは驚いた表情でこちらを見ていた。ミリアもジョージアもぽかんとしている。
(しまった、やりすぎたか!?」
「す、すみません・・・。あの・・実は私、先日馬車の事故にあってから、ショックで昔の記憶が曖昧な部分があるのです。それで、レティシア様の事もよく覚えてなくて・・・その・・・ごめんなさい・・・」
(・・・ヤバい、これじゃただの変な子だ!)
段々恥ずかしくなり、最後の方は小声になって俯いてしまった。
(どうしよう・・・せっかくグループに誘ってくれたのに。ドン引きされたかもしれない・・・)
皆の反応が怖くて、顔が上げられない・・・。
でも予想に反して、聞こえてきたのだとても優しい言葉だった。
「まぁ・・・そうだったのですか・・・。もしかして、ご入学が1か月も遅れてしまったのはその為ですか?」
顔を上げるとレティシアは、心底気の毒そうな表情で私を見つめていた。見回すとミレイもジョージアも同様だ。ミリアなんか目に涙を浮かべている。
レティシアは胸の前で手を組んで
「お可哀そうに・・・。すみません、私が昔の話なぞしてしまったので、お辛い事を思い出させてしまいました」
「えっ?、いえいえ、そんなことは」
絶対私の方が前に嫌な思いをさせているであろうに、レティシアは、
「お許しくださいませ、アリアナ様」
そう言って、すまなそうに目をうるうるさせて私を見つめた。
(な、な、なんて良い子なんだ!こんな子をイジメるなんて、アリアナのばか!ばか!ばか!)
「レティシア様!」
私はレティシアの組んだ手を両手で包んで言った。
「レティシア様こそ、私の昔の過ちをゆるしてくださいますか?私、本当に悪かったと思っていますのよ」
「まぁ、そんな!。もちろんですわ。昔の事です。お互い子供だった頃の事ですもの。きっと色々誤解もあったのですわ」
優しいレティシアはそう言って微笑んでくれた。私もホッとして心から笑みを返す事が出来たのだ。
そして、次の日から私のお昼休みは「ぼっち」ではなくなった。
「お兄様!私っ、友達ができたかもしれませんっ!。」
あの日寮に戻ってそう告げると、兄は涙ぐみながら
「良かった!良かったよ。アリアナ!」
そう言って私の両肩を優しくポンポン叩いて喜んでくれた。相変わらずのシスコンぶりの兄だ。でもクラークが大好きな私にはそれが心地良い。
そして毎日が楽しくなってきたある日の事、私はふと気になった。
(馬車って6人乗りだけど、ミリア、ジョージア、レティシア、私で4人。あと一人、もしくは二人は誰だろう?)
お昼休みは4人で食べているのだが、実はそれが楽し過ぎて聞くのを忘れていた。「ぼっち」での昼休みは思ってたより辛かったのだ、私。
(ふむ、でも当日に分かれば良いか。ミリア達の友人なら良い人達に違いないよね)
気が重かったはずのピクニックが、いつの間にか待ち遠しくなっていた。
そして何だかんだであっという間に「ドキドキハプニングピクニック」の日がやってきた。
集合時間に校庭に行くと、ミリアが声をかけてくれた。
「アリアナ様、こちらですわ。」
私に向かって手を振ってくれている。もう皆揃っているようだ。そしてそこには二人の男子生徒も立っていた。
「アリアナ様、紹介いたしますわ。私の双子の弟のノエルです。そして隣は弟の友人のクリフ・ウォーレン様。ウォーレン侯爵のご子息ですわ」
「ノエル・バークレイです。ミリアがいつもお世話になってます。今日はよろしく、アリアナ嬢」
ミリアとそっくりの髪色と瞳の少年はそう言った。性格もミリア同様優しそうだ。ただ私は紹介されたもう一人の少年に、すっかり気を取られてしまった。
(この人って、まさか・・・。)
「クリフ・ウォーレン。よろしく」
ぶっきら棒に、そう言ったこの少年!やっぱりそうだ!
青みがかった銀髪、そして紫の瞳。見る者をあっという間に魅了する美しいお顔。
クリフ・ウォーレン侯爵子息!!
2部から現れる攻略対象じゃないのー!!?
(こいつ、アリアナと同じクラスだったのか!)
乙女ゲーム「アンファエルンの光の聖女」は美形男子攻略ゲームとしては珍しい、3部構成になっていた。
1部はヒロインが学園に入り2年生になるまでの1年間。ここでのヒロインの攻略対象は、
アリアナの婚約者:ディーン・ギャロウェイ公爵子息
アリアナの兄:クラーク・コールリッジ公爵子息
アンファエルン皇国の第二皇子:パーシヴァル・レイヴンズクロフト
この3人だ。
そしてヒロインに対する試練として立ちはだかるのが悪役令嬢アリアナ。
1部に関してはかなり軽い乙女ゲームという感じで、イベントでの選択肢も少なく攻略も簡単である。悪役令嬢にしても子供っぽい意地悪や、嫌みを言う程度だ。
むしろディーンや、クラークにいたっては、その悪役令嬢の意地悪のおかげで、ヒロインとの距離が縮まる仕掛けになっている。
要するに、ほぼ肩慣らしなのだ。
2部は2年生から卒業する5年生まで。ここでは攻略対象が増え、国の皇太子であり、メイン攻略者であるトラヴィス:レイヴンズクロフトに始まり、あと3人ほど増える。
隠しキャラなんかもいたはずだ。
2部から出てくる攻略対象は、1部からの3人に比べて攻略が難しい。出会う時間が遅い事もあるが、イベントでの選択肢も増える上「右に行く」「左に行く」などの「こんなことで変わるの~~~!!」的な意地悪選択も多い。
だからむしろ「アンファエルンの光の聖女」のほんとの意味でのゲームはここから始まると言っても過言では無いのだ。
そしてクリフ・ウォーレンは2部から攻略対象の中でも、結構癖が強くて難しめの相手だ。
(そういえば、クリフって攻略した事無かったなぁ・・・。)
彼はゲーム内ナンバーワンと言われる超絶美形の為、プレーヤー達は皆こぞって攻略に情熱を燃やしていた。そしてその攻略の難しさに歯噛みする者も多かったらしい。
でも重いストーリーが苦手な私は、クリフルートは避けて他の攻略対象ばかりコンプリートしていたのだ。
(クリフって少し捻くれてるし、なんか無気力な感じで苦手なんだよなぁ。出生が複雑だから仕方ないかもしれないけど)
私は彼を横目で観察した。
(まつ毛、長っ・・・)
紫の瞳は宝石の様だし、お肌もつやっつやでニキビ一つ無い。顔の造りがとにかく美しくて眩しい程だ。中性的な雰囲気だけど背が高くて足も長い。
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