モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
9 / 284
第1章 悪役令嬢は目立ちたくない

第8話 魔力ゼロなのです!

しおりを挟む
クリフはウォーレン侯爵家の子息となっているが、実は先皇帝の隠し子である。

 クリフのルートではヒロインは王位継承権争いに巻き込まれる。そして、選択ミスると殺害されるバッドエンドなんかもあるのだ。

 (やっぱマジで関わりたくないんだけどな・・・。ミリアの弟の友達なのかぁ・・・。)

 でも、当のクリフはアリアナには全く興味無さそうだ。軽い挨拶の後、ノエルとばかり喋っている。馬車は一緒だけど、もともとゲームでは2部からしか登場しないし、アリアナとは全く絡まない人物だ。こっちかあ近づかない限り大丈夫だろう・・・

 (・・・と思いたい)

 「アリアナ様、さぁ乗りましょう」

 「えっ、ええ」

 ミリア達に促されて私は馬車に乗り込んだ。




 馬車の中では女子トークに花が咲いた。

 (こ、これは、なんて楽しいのっ!)

 破滅回避にばかり気を使ってたから、正直友達を作る事なんて頭になかった。

 (でも私はもう意地悪な悪役令嬢ではないつもりだし、普通の令嬢として友人と楽しく過ごしたって良いわよね?)

 「アリアナ様、ミリーはこう見えて凄いのですよ。5歳の時には魔力を操れるようになったのですよ」

 「まぁ!凄いのね、ミリア」

 ジョージアの言葉に私は本気で驚いていた。

 確かこの世界での常識では魔力を操れるようになるのは10歳過ぎのはず。だから貴族の子供は13歳でこの学園に入る事になっている。5歳とか早い時期に操れるようになる者は、総じて魔力の強いものが多いらしい。

 これらの知識はゲームの説明書にも書いてあった。まさか主要登場人物ではないミリアが(だってゲームでは名前も出てこなかったぞ)そんな能力の持ち主とは驚きでしかないのだ。

 ミリアは頬を染めて、

 「恥ずかしいわ、ジョー・・・。アリアナ様、たまたまですのよ。私の家族は魔力が強い者が多くて、魔力を早く扱うのが普通の環境だっただけなのですわ。それにジョーやレティだって10歳前には魔力を扱えるようになったんですよ」

 「多分、それはミリーの影響だと思うわ。」

 「そうそう、普段からミリーが使うのを見ていたから、私たちも自然に覚えたというか・・・」

 ジョージアとレティシアは笑いながらそう言った。

 3人は領が近く屋敷も近かったらしい。だから家族ぐるみで仲が良く、小さい頃からよく遊んでいたらしいのだ。

 3人がお互いをミリー、ジョー、レティと愛称で呼んでいるのも、仲の良さが伺える。

 「3人の魔力の属性は何なのですか?もう色んな魔術が使えるの?」

 私がそう聞くと、

 「私は土系が得意です、それとあと治癒魔法が使えますわ。ジョーは雷属性が得意でしたわよね。」

 「そう、それに炎系。でも攻撃しか出来ないのよね~。レティは氷系が得意よね。」

 「ええ、それから簡単な治癒とあと植物系も少し・・・」

 (学園に入る前にそれだけ出来れば、大したものだわ!)

 正直私は驚いていた。

 主人公や主要登場人物以外は、魔力を使えるようになるのは学園に入ってからの方が多いはず。もしかしてこの3人、どっかのルートで出てくる主要キャラだったりするのかしら?

 「3人とも凄いわ!びっくりよ。」

 すると、ずっと男同士で喋っていたミリアの弟のノエルが話に入ってきた。

 「アリアナ嬢、この3人は特別なんですよ。こんなに早く魔力を開眼するものはほとんど居ないです。僕だって学園に入る直前で使えるようになったぐらいで・・・」

 少し恥ずかしそうに赤くなりながら、それでも笑ってそう言った。

 うん、性格良いな~この子。普通双子の片割れが優秀だと嫉妬して拗ねたりしそうだけど、そういう気配は微塵も無い。

 「あっ、それに実はクリフも使えるんですよ!なっクリフ?。こいつも結構早いうちから魔術が使えて、しかも色んな属性を操れるんです」

「まぁ、そうなのですか。」

 私は感心した素振りでそう言ったけど、内心(そりゃ、そうでしょ)と思っていた。

 何せクリフ・ウォーレンは攻略対象で、先の皇帝の息子なんだもん。確か能力値においては現皇太子と同レベルだったはず・・・

 (おお怖っ)

 この世界では数種類の属性を操れる者が多いが、ほとんどは貴族の人間だ。というよりも魔力を持っている一族が貴族になったというのが正しい。

 ただ、ごくたまに平民でも魔力を有する者が現れる。そう言った者たちは、魔力の大小に応じて魔術学校に奨学生として通わされ、長じては低位の貴族に抜擢されるものもいる。このへんの知識は屋敷に居た1か月で知ったことだ。

 ただし、平民でどんなに魔力が強くても、貴族だけのアンファエルン学院に通うのは難しい。だけど、ヒロインは入学できた。

 それはヒロインが光の魔力を持ち、世界でも扱い手が少ないという光属性の魔術を操れるからだ。

 魔力の大小に関わらず、どの属性の魔術が使えるかは、そのものの生まれた時の資質によるものらしい。ある程度は鍛錬によって使えるようになるらしいが、それでも持って生まれたセンスには叶わないのだ。そして光属性に関しては、どんなに鍛錬しても元々の資質が備わっていないと全く育たない才能なのだ。

 (まぁ、私には関係ない事だけどね・・・)
 
 「うらやましいわ。私は全く魔術が使えないから」

 私は小さくため息を落とした。

 「アリアナ様も2年進級時の魔力テストできっと発現されますわ」

 ミリアは力づける様にそう言ってくれたが、

 「ううん、もう分かってるの、私は魔力ゼロなのです」

 私がそう言うと、皆は「えっ?」という風にこちらを見た。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...