69 / 284
第3章 悪役令嬢は関わりたくない
19
しおりを挟む
パーシヴァルは「何をばかな・・・。」とか「そんな訳ないだろう。」とか色々良い訳をし始めたが、明らかに声が動揺している。
「ぼ、僕はあくまでディーンの親友として・・・。」
と、弁明をしようとしたが、私の態度を見て取り繕えないと思ったのだろう、自分を落ち着かせるためか、大きく息を吐いた。
「君が・・・こんな策士だとは知らなかったよ・・・。」
(いえ、企んだわけではありませんが・・・。)
「前とはまるで別人だ。」
(・・・仰る通り別人です。)
そのまま二人とも、しばらくは何も喋らなかった。
(どういう事?乙女ゲーの攻略者がそっちだなんて、あり得ないよ・・・。)
さすがに予想外過ぎて、私も上手く頭が働かない。
(あれ・・・?、でも・・・。)
「あの、あの、・・・ではどうして、ディーン様とリリーを結び付けようとするんです・・・?」
恐る恐るそう聞いた。
(だって、だって、ディーンの事を〇しちゃってるんだよね?)
だったら何故、こんなにもディーンの恋の応援をする?
私の後ろで、パーシヴァルの気配が揺れた。
「・・・幸せになって欲しいだろ・・・。・・・な人には・・・。」
いつもの陽気なパーシヴァルとは思えないような、かすれた声を聞いて、胸が詰まった。
(ああ、本気なんだ・・・。)と思って、なんだか切ない気持ちになった。
「・・・言わないで・・・ディーンには。」
「・・・言いませんよ。」
それから先は、二人とも黙ったままだった。
「さぁ、着いた!どうだい?良い所だろう?」
兄がそう言って馬を止めた場所は、岩場の陰に広がった草原だった。遮るものが無く、眼下に景色が広がっていた。
「凄い!昨日買物した街まで見えますわ。」
「あれが、私達のいる別荘ですね。」
私達は、指さしながら、その景色に見入って感動していた。
草原の一角には、綺麗な花が沢山咲いていて、まるで花畑だ。向こうの方には小川が流れている。
「なんて美しい所なんでしょう・・・!。」
「花冠を作りたいわ!。」
女子は皆、歓声を上げた。
「あっちの方は崖になっているから、近寄らない方が良い。さぁ、ここにピクニックシートを広げよう。」
クラークは使用人にてきぱきと指図している。
私は皆と一緒に、花畑の中に座った。大きさや色も様々な花達が、風に揺れる度にその甘い香りを運んでくる・・・。
(自分の幸せよりも、好きな人の幸せか・・・。)
私は先ほどのパーシヴァルを思い出していた。
(ディーンとリリーを純粋だって言ってたけど、あんたの方こそ、純粋だよ。)
私は今更ながら、グスタフ避けにディーンを使った事を後悔していた。
(結局、ディーンを利用してるって事なんだもんね・・・。これは久しぶりに自分が嫌いになりそうだわ・・・。)
自己嫌悪感に沈みながら、私は花畑にうつ伏せになった。
(・・・大丈夫・・・底まで落ち込んだら・・・、後は浮上するだけだから・・・。)
うつ伏せのまま、目をつぶる。
これは私のいつもの儀式だ。どんなに嫌な事があっても、辛い事があっても、自分を嫌いになっても、底まで行った後は切り替えて、とにかく動くだけで良い・・・。
しばらくして、私は握りしてめいた手から力を抜いた。目を開けて横を向くと花の蜜を吸いにミツバチが飛んできている。目に見えるだけの世界は、あまりにものどかだ。
(うん。やっぱりディーンとは、婚約解消しよう・・・!。)
後の問題は、全部自分で引き受ける。グスタフの事だって、なんとか解決して見せる。
少しスッキリした気分で、私はそのまま仰向けに寝転がって空を見上げた。怖いくらい真っ青な空を、作り物のような雲がゆっくりと滑っていく。
(パーシヴァルは、ディーンがアリアナと婚約した時、どう思っただろう・・・?。アリアナがあんな風じゃ無かったら、やっぱり親友として祝福するつもりだったのだろうか?。)
だとしたら、どんな気持ちだっただろう。私だったら、きっとしんどい。
私は空に向かって、右手をかざした。太陽が少し眩しい・・・。
「それに・・・いったい、何が起きてるのだろう・・・?」
もう一つ、私には疑問があった。
アリアナ(私)以外の人物の設定が、ゲームとは、がらりと違っている事に、私は不安を感じていた。
(私と接触のある人は、私が悪役令嬢しない事で影響を受けるかもしれない。でもパーシヴァルは・・・。)
正直、この別荘で会うまで、ほとんど話もした事無いのだ。
う~ん、と顔をしかめていると、誰かが上から私を覗きこんだ。
「・・・リリー?」
気付かないうちに、リリーは私の傍に座っていたようだ。そして、手には花で編んだ冠を持っていた。私は起き上がって、その花冠をよく見た。
「ええ~!凄い。リリーが作ったのですか?」
「はい。」
「うわぁ、器用ねぇ!。」
幾重にも編まれた花が、見事に輪っかを作っている。
「どうぞ、アリアナ様。」
そう言って、リリーはその花冠を私の頭に乗せた。私はそれを両手で抑えながら、見上げてみる。
「とてもお似合いです。」
リリーが少し首を傾けながら、ふわりと微笑んだ。彼女のピンク色の髪が太陽の光を受けながら。柔らかく流れる。
(もっ、もっ、もっ、最高~!・・・マジで花の精霊だって!)
私はヘラ~と笑い返しながら心の中で、(リリー可愛い!可愛い!可愛い!・・・!)を連呼していた。自分でも単純だと思うが、一気に元気が回復した。
「ぼ、僕はあくまでディーンの親友として・・・。」
と、弁明をしようとしたが、私の態度を見て取り繕えないと思ったのだろう、自分を落ち着かせるためか、大きく息を吐いた。
「君が・・・こんな策士だとは知らなかったよ・・・。」
(いえ、企んだわけではありませんが・・・。)
「前とはまるで別人だ。」
(・・・仰る通り別人です。)
そのまま二人とも、しばらくは何も喋らなかった。
(どういう事?乙女ゲーの攻略者がそっちだなんて、あり得ないよ・・・。)
さすがに予想外過ぎて、私も上手く頭が働かない。
(あれ・・・?、でも・・・。)
「あの、あの、・・・ではどうして、ディーン様とリリーを結び付けようとするんです・・・?」
恐る恐るそう聞いた。
(だって、だって、ディーンの事を〇しちゃってるんだよね?)
だったら何故、こんなにもディーンの恋の応援をする?
私の後ろで、パーシヴァルの気配が揺れた。
「・・・幸せになって欲しいだろ・・・。・・・な人には・・・。」
いつもの陽気なパーシヴァルとは思えないような、かすれた声を聞いて、胸が詰まった。
(ああ、本気なんだ・・・。)と思って、なんだか切ない気持ちになった。
「・・・言わないで・・・ディーンには。」
「・・・言いませんよ。」
それから先は、二人とも黙ったままだった。
「さぁ、着いた!どうだい?良い所だろう?」
兄がそう言って馬を止めた場所は、岩場の陰に広がった草原だった。遮るものが無く、眼下に景色が広がっていた。
「凄い!昨日買物した街まで見えますわ。」
「あれが、私達のいる別荘ですね。」
私達は、指さしながら、その景色に見入って感動していた。
草原の一角には、綺麗な花が沢山咲いていて、まるで花畑だ。向こうの方には小川が流れている。
「なんて美しい所なんでしょう・・・!。」
「花冠を作りたいわ!。」
女子は皆、歓声を上げた。
「あっちの方は崖になっているから、近寄らない方が良い。さぁ、ここにピクニックシートを広げよう。」
クラークは使用人にてきぱきと指図している。
私は皆と一緒に、花畑の中に座った。大きさや色も様々な花達が、風に揺れる度にその甘い香りを運んでくる・・・。
(自分の幸せよりも、好きな人の幸せか・・・。)
私は先ほどのパーシヴァルを思い出していた。
(ディーンとリリーを純粋だって言ってたけど、あんたの方こそ、純粋だよ。)
私は今更ながら、グスタフ避けにディーンを使った事を後悔していた。
(結局、ディーンを利用してるって事なんだもんね・・・。これは久しぶりに自分が嫌いになりそうだわ・・・。)
自己嫌悪感に沈みながら、私は花畑にうつ伏せになった。
(・・・大丈夫・・・底まで落ち込んだら・・・、後は浮上するだけだから・・・。)
うつ伏せのまま、目をつぶる。
これは私のいつもの儀式だ。どんなに嫌な事があっても、辛い事があっても、自分を嫌いになっても、底まで行った後は切り替えて、とにかく動くだけで良い・・・。
しばらくして、私は握りしてめいた手から力を抜いた。目を開けて横を向くと花の蜜を吸いにミツバチが飛んできている。目に見えるだけの世界は、あまりにものどかだ。
(うん。やっぱりディーンとは、婚約解消しよう・・・!。)
後の問題は、全部自分で引き受ける。グスタフの事だって、なんとか解決して見せる。
少しスッキリした気分で、私はそのまま仰向けに寝転がって空を見上げた。怖いくらい真っ青な空を、作り物のような雲がゆっくりと滑っていく。
(パーシヴァルは、ディーンがアリアナと婚約した時、どう思っただろう・・・?。アリアナがあんな風じゃ無かったら、やっぱり親友として祝福するつもりだったのだろうか?。)
だとしたら、どんな気持ちだっただろう。私だったら、きっとしんどい。
私は空に向かって、右手をかざした。太陽が少し眩しい・・・。
「それに・・・いったい、何が起きてるのだろう・・・?」
もう一つ、私には疑問があった。
アリアナ(私)以外の人物の設定が、ゲームとは、がらりと違っている事に、私は不安を感じていた。
(私と接触のある人は、私が悪役令嬢しない事で影響を受けるかもしれない。でもパーシヴァルは・・・。)
正直、この別荘で会うまで、ほとんど話もした事無いのだ。
う~ん、と顔をしかめていると、誰かが上から私を覗きこんだ。
「・・・リリー?」
気付かないうちに、リリーは私の傍に座っていたようだ。そして、手には花で編んだ冠を持っていた。私は起き上がって、その花冠をよく見た。
「ええ~!凄い。リリーが作ったのですか?」
「はい。」
「うわぁ、器用ねぇ!。」
幾重にも編まれた花が、見事に輪っかを作っている。
「どうぞ、アリアナ様。」
そう言って、リリーはその花冠を私の頭に乗せた。私はそれを両手で抑えながら、見上げてみる。
「とてもお似合いです。」
リリーが少し首を傾けながら、ふわりと微笑んだ。彼女のピンク色の髪が太陽の光を受けながら。柔らかく流れる。
(もっ、もっ、もっ、最高~!・・・マジで花の精霊だって!)
私はヘラ~と笑い返しながら心の中で、(リリー可愛い!可愛い!可愛い!・・・!)を連呼していた。自分でも単純だと思うが、一気に元気が回復した。
18
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる