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閑話3 この世の春(ノエル)
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次の日、女の子達が買い物に行っている間、僕達はクラーク殿の案内で、遠乗りにも出かけた。
僕は乗馬があまり得意じゃない。だから貸して貰った馬は、凄く良い馬だったけど、皆について行くのがやっとだった。
クリフはそんなに乗馬の練習している様では無かったのに、かなり上手く乗りこなしている。あいつは僕と違って器用な奴なのだ。
遠乗りの途中で、すごく景色の良い場所を見つけた。柔らかい牧草が広がってて、綺麗な花が沢山咲いている所もある。
「ここは良いね。二人乗りでも来れそうだから、アリアナ達も連れてきてあげたいな。明日はここでピクニックをしようか。」
クラーク殿がそう言った。
確かに、皆ここに来たら喜ぶだろう。でも、僕は二人乗りはあまり自信が無かった。
(男は5人。女の子は6人。ジョーは馬に乗れるから良いとして、僕も誰かと二人乗りしなきゃいけないのかな?。だとしたら困ったなぁ・・・。)
でも、心配は杞憂に終わった。グローシア嬢も馬に乗れることが、次の日分かったのだ。僕はホッとして胸を撫で下ろした。
その日は快晴で、馬に乗ってても、とても気持ちが良かった。何より、遠乗りの時と違って、皆も女の子と二人乗りしているから、ゆっくり進んでくれる。僕も落ち着いて馬に乗れるからありがたかった。
ジョーとグローシア嬢は、ちゃんと馬を乗りこなしていて、正直僕より上手なのが、ちょっと悔しい。
(僕だって、もうちょっと慣れれば、女の子よりは上手く乗れるようになるさ。)
そう思って、しばらくは馬を操る事に集中していた。そのかいあってか、少しずつコツを掴めてきたような気がする。
(ふふん、ほら、やれば出来るのさ。)
でもしばらくしたら、なんだかちょっと寂しくなった。だって、ジョーとグローシア嬢は二人で自由に馬を走らせていってしまうし、二人乗りの皆は、それぞれ楽しそうにお喋りしているのだ。
前を見ると、クラーク殿とミリアは、魔術についての難しい話をしている様だった。斜め横を見るとディーン殿とリリー嬢が、何か学校の話をしているようだ。
(それにしても二人は、さすがに噂になっただけあって、美男美女でお似合いだよなぁ。でもディーン殿はアリアナ嬢の婚約者だもんな。不仲説はどうなってるんだろう?。)
僕が見る限り、三人のそれぞれに対する態度は普通に見える。というか、アリアナ嬢とリリー嬢が凄く仲が良い。
(噂が本当なら、アリアナ嬢とリリー嬢が仲良くなる筈無いよな。)
僕は後ろの方へも目をやった。すぐ後ろで、レティとクリフが馬に乗っていたが、何故かレティは無表情で目が虚ろだ。具合でも悪いのかな?。気づいているのか、気づいて無いのか、クリフは様子はいつもと変わらない。
そして最後尾で、アリアナ嬢とパーシヴァル殿下が、何か話しているのが見えた。アリアナ嬢はしきりと後ろを向いたり前を向いたりしている。きっと会話に花が咲いているのだろう。
(良いなぁ。僕も女の子とお喋りしながら、馬に乗りたいなぁ。)
高原に着いたら、思ってた通り女の子達は大喜びだった。景色は良いし、お弁当も美味しいし、僕もピクニックを多いに楽しんだ。
でも、クラーク殿が「そろそろ帰ろうか」と言った時、僕は行きの寂しさを思い出していた。
(折角のピクニックだ。僕だって楽しい思い出を作りたい!)
だから、思い切って提案してみる事にした。
「あのさ、帰りは僕も、二人乗りしてみたいんだけど・・・。」
「ああ良いんじゃないか。ノエルも馬を操るのが上手くなったよ。」
クラーク殿もそう言ってくれたので、僕はすっかり舞い上がってしまった。
(やったー!。これで僕も女の子と馬に乗れる!)
しかも、驚いた事に、なんとアリアナ嬢が僕の馬に乗る事になったのだ!こんなラッキーな事があるだろうか!?
「では、ノエル様、よろしくお願いします。」
そう言って微笑むアリアナ嬢があまりに可愛くて、僕は少しポーっとなりながら、彼女が馬に乗るのに手を貸した。
(やったー!。アリアナ嬢と二人乗り出来るなんて!)
興奮気味に、僕も馬に乗ろうとあぶみに足をかけた。すると、その瞬間、何処からか飛んできた虻が、僕を刺そうと頭の周りを回り始めたのだ。
「うわっ、なんだ・・・くそっ!こいつ。」
僕は虻を追い払おうと、両手を振り回した。でもなかなか虻は逃げて行かない。
(くそっ!早くどっかに行っちまえ!)
そう思って、大きく腕を振った時、あろうことか、僕は誤ってあぶみにかけていた足で、馬の腹を思いっきり蹴ってしまったのだ。
「ブルルルルッ!」
「うわっ!」
驚いた馬が前足を上げたせいで、僕はあぶみから足を踏み外して、思いっきり地面に転がってしまった。顔から落ちたので、口の中に草が入ってしまった。
(不味っ!)
ペッペと吐き出していると、周りから皆の慌てた声が聞こえてきた。
「アリアナ!」
「アリアナ様!」
(えっ!?。そういえば、馬にはアリアナ嬢が乗ってたんだった!)
慌てて顔を上げると、アリアナ嬢を乗せた馬は真っすぐ崖に向かっていた。
「危ない!」
誰かが叫んでいる。アリアナ嬢の馬はどんどん崖に近づいて行く。そしてその後を、ディーン殿とクラーク殿、そしてクリフがそれぞれ馬に乗って、追いかけて行くのが見えた。僕は動転してしまい、地面に四つん這いになったまま、その光景を見ているだけだった。
「アリアナ様!」
声を上げたのはリリー嬢だっただろうか?。馬は、アリアナ嬢を乗せたまま、崖の向こうに消えた。そしてそれを追って、ディーン殿の馬も見えなくなった。
僕は乗馬があまり得意じゃない。だから貸して貰った馬は、凄く良い馬だったけど、皆について行くのがやっとだった。
クリフはそんなに乗馬の練習している様では無かったのに、かなり上手く乗りこなしている。あいつは僕と違って器用な奴なのだ。
遠乗りの途中で、すごく景色の良い場所を見つけた。柔らかい牧草が広がってて、綺麗な花が沢山咲いている所もある。
「ここは良いね。二人乗りでも来れそうだから、アリアナ達も連れてきてあげたいな。明日はここでピクニックをしようか。」
クラーク殿がそう言った。
確かに、皆ここに来たら喜ぶだろう。でも、僕は二人乗りはあまり自信が無かった。
(男は5人。女の子は6人。ジョーは馬に乗れるから良いとして、僕も誰かと二人乗りしなきゃいけないのかな?。だとしたら困ったなぁ・・・。)
でも、心配は杞憂に終わった。グローシア嬢も馬に乗れることが、次の日分かったのだ。僕はホッとして胸を撫で下ろした。
その日は快晴で、馬に乗ってても、とても気持ちが良かった。何より、遠乗りの時と違って、皆も女の子と二人乗りしているから、ゆっくり進んでくれる。僕も落ち着いて馬に乗れるからありがたかった。
ジョーとグローシア嬢は、ちゃんと馬を乗りこなしていて、正直僕より上手なのが、ちょっと悔しい。
(僕だって、もうちょっと慣れれば、女の子よりは上手く乗れるようになるさ。)
そう思って、しばらくは馬を操る事に集中していた。そのかいあってか、少しずつコツを掴めてきたような気がする。
(ふふん、ほら、やれば出来るのさ。)
でもしばらくしたら、なんだかちょっと寂しくなった。だって、ジョーとグローシア嬢は二人で自由に馬を走らせていってしまうし、二人乗りの皆は、それぞれ楽しそうにお喋りしているのだ。
前を見ると、クラーク殿とミリアは、魔術についての難しい話をしている様だった。斜め横を見るとディーン殿とリリー嬢が、何か学校の話をしているようだ。
(それにしても二人は、さすがに噂になっただけあって、美男美女でお似合いだよなぁ。でもディーン殿はアリアナ嬢の婚約者だもんな。不仲説はどうなってるんだろう?。)
僕が見る限り、三人のそれぞれに対する態度は普通に見える。というか、アリアナ嬢とリリー嬢が凄く仲が良い。
(噂が本当なら、アリアナ嬢とリリー嬢が仲良くなる筈無いよな。)
僕は後ろの方へも目をやった。すぐ後ろで、レティとクリフが馬に乗っていたが、何故かレティは無表情で目が虚ろだ。具合でも悪いのかな?。気づいているのか、気づいて無いのか、クリフは様子はいつもと変わらない。
そして最後尾で、アリアナ嬢とパーシヴァル殿下が、何か話しているのが見えた。アリアナ嬢はしきりと後ろを向いたり前を向いたりしている。きっと会話に花が咲いているのだろう。
(良いなぁ。僕も女の子とお喋りしながら、馬に乗りたいなぁ。)
高原に着いたら、思ってた通り女の子達は大喜びだった。景色は良いし、お弁当も美味しいし、僕もピクニックを多いに楽しんだ。
でも、クラーク殿が「そろそろ帰ろうか」と言った時、僕は行きの寂しさを思い出していた。
(折角のピクニックだ。僕だって楽しい思い出を作りたい!)
だから、思い切って提案してみる事にした。
「あのさ、帰りは僕も、二人乗りしてみたいんだけど・・・。」
「ああ良いんじゃないか。ノエルも馬を操るのが上手くなったよ。」
クラーク殿もそう言ってくれたので、僕はすっかり舞い上がってしまった。
(やったー!。これで僕も女の子と馬に乗れる!)
しかも、驚いた事に、なんとアリアナ嬢が僕の馬に乗る事になったのだ!こんなラッキーな事があるだろうか!?
「では、ノエル様、よろしくお願いします。」
そう言って微笑むアリアナ嬢があまりに可愛くて、僕は少しポーっとなりながら、彼女が馬に乗るのに手を貸した。
(やったー!。アリアナ嬢と二人乗り出来るなんて!)
興奮気味に、僕も馬に乗ろうとあぶみに足をかけた。すると、その瞬間、何処からか飛んできた虻が、僕を刺そうと頭の周りを回り始めたのだ。
「うわっ、なんだ・・・くそっ!こいつ。」
僕は虻を追い払おうと、両手を振り回した。でもなかなか虻は逃げて行かない。
(くそっ!早くどっかに行っちまえ!)
そう思って、大きく腕を振った時、あろうことか、僕は誤ってあぶみにかけていた足で、馬の腹を思いっきり蹴ってしまったのだ。
「ブルルルルッ!」
「うわっ!」
驚いた馬が前足を上げたせいで、僕はあぶみから足を踏み外して、思いっきり地面に転がってしまった。顔から落ちたので、口の中に草が入ってしまった。
(不味っ!)
ペッペと吐き出していると、周りから皆の慌てた声が聞こえてきた。
「アリアナ!」
「アリアナ様!」
(えっ!?。そういえば、馬にはアリアナ嬢が乗ってたんだった!)
慌てて顔を上げると、アリアナ嬢を乗せた馬は真っすぐ崖に向かっていた。
「危ない!」
誰かが叫んでいる。アリアナ嬢の馬はどんどん崖に近づいて行く。そしてその後を、ディーン殿とクラーク殿、そしてクリフがそれぞれ馬に乗って、追いかけて行くのが見えた。僕は動転してしまい、地面に四つん這いになったまま、その光景を見ているだけだった。
「アリアナ様!」
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