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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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「キャーッ!」「うわぁっ!」と言う叫び声が辺りに響き渡る。
(な、何?!。何が起きたの?)
一瞬、透明なドームの中に居て、その周りが炎に囲まれたように見えた。そして、その炎が消えると、周りは大変な事になっていた。
私達の居るテーブルを中心に5メートルくらいの円の中は、何事も無かったように綺麗なのに、その外側はまるで爆発に巻き込まれた風に吹き飛ばされている。
ミリアに抱きつかれたまま振り向くと、クリフが両手を広げて私達をかばうよう様に立っていた。
(さっきのドームって、もしかしてクリフのシールド?。)
辺りを見ると、壊れた椅子やテーブルの間に、数人の生徒が倒れてうめき声をあげていた。もしかして、ガス爆発でも起きたのだろうか?
「た、大変!」
助けようと、倒れている人に駆け寄ろうしたところを、
「駄目です、アリアナ様!」
ミリアに再び押し倒される様にのしかかられた。
「ダガンッ!!」
再び鼓膜が破れそうなほどの破裂音がしたと思うと、シールドで守られた外を炎が舐める様に走っていく。
(う、嘘!また爆発!?。倒れてた人達は!?)
最悪の状態が目に浮かんだ。けれど、炎と煙が去ると驚きの光景がそこにあった。なんと、シールドの周りに大きな土壁の様なものが立ち並んでいたのだ。
「な、何これ!?」
目を丸くしている私に、
「土魔法で炎を遮蔽しました。倒れてた方達も多分大丈夫かと。」
私を起こしてくれながら、ミリアがそう言った。彼女の額から汗がポタリと落ちた。
「何ていう事でしょう・・・。まさかこんな事をするなんて。」
レティシアが椅子の陰で震えている。
「ここまで頭が悪いとは思わなかったな。」
軽口を言ってる風で、ジョージアの顔も真っ青だ。
(とういう事は、まさか・・・!)
前方に作られた土壁の一つが、爆発音と共にバラバラに砕け散った。その破片がクリフのシールドに当たって、白い光を散らす。
そして土ぼこりの向こうに赤い髪を激しい風に乱しながらエメライン王女が立っていた。彼女の顔は無表情なのに、目は怒りに燃え上がっている。正直、私はその目を見ただけで腰が抜けそうになった。
(こ、怖っ・・・)
エメラインは私達の方へゆっくり近づきながら、手の平を上に向ける。その手の上にテニスボールくらいの大きさの火の塊が現れた。その火は見ているうちに大きくなり、やがてエメラインの頭上で1メートルぐらいの大きな炎の球になる。
(ま、マジか!?。あれをぶつけようって言うの!?)
「お前の様な小娘に、あのお方を奪われようとは・・・。許さない。」
エメラインは低い声でそうつぶやくと、ゆらりと手を振った。先ほどの火球が私達に向かって襲い掛かってきた。
「うわっ!」
どうしょうも無く私は、頭を抱えてしゃがみ込む。
再び爆発音と共に、クリフの作ったシールドに炎がぶつかる音がした。
「エメライン様!。お静まり下さいっ!」
ミリアの声に顔を上げると、エメラインを囲むように土壁が地面から隆起した。
「私が!」
レティシアがそう言うと、エメラインの周りの土壁が氷で固められた。
「エメライン様!お覚悟!」
ジョージアが飛び出し、右手を振りかざした。すると、空中に大きな稲妻が走り、エメラインの閉じ込められている土壁に衝撃音と共に落ちた。しかし・・・、
(駄目だ。これでは無理だよ!。)
この世界において、魔力的にはエメラインは超チートである。設定ではトラヴィスの次ぐらいに強かったはずなのだ。ミリア達が強いのも知っているが、エメラインとは比較にはならない。
そもそも、乙女ゲーム『アンファエルンの光の聖女』のストーリーでは、ミリア、レティシア、ジョージアはエメラインの取り巻きだ。2部のクライマックスではエメライン(ラスボス)と共に攻撃してくる中ボス的な立ち位置だった。それが、なんの因果か私と友達になって、エメラインと戦ってるのだけれど、ゲーム設定では実力の差は歴然だったはず。
「あっ」
「きゃあ!」
ミリアとレティシアが声をあげた。
思った通り、エメラインの周りの土壁は最初から無かったかのように吹き飛ばされ、そこには全く無傷のエメラインが立っていた。そして、まるでピアノを奏でるかの様に両手を上げると、ミリア達3人に向かって炎が襲い掛かってきた。
「いやぁ!」
「きゃあ!」
間一髪で、クリフのシールドが3人を守った。でも、クリフの額から流れる汗の量が尋常じゃない。さっきから一言も喋らないし、シールドを張るのにかなり無理をしているんじゃないだろうか?。
(こ、これはヤバいんじゃない!?)
さっき言ったエメラインのセリフ
『お前の様な小娘に、あのお方を奪われようとは・・・。許さない。』
(なんでここで、このセリフが出るのよ!?)
しっかりと覚えてる。確かトラヴィス・ルートでエメラインを断罪した時に、ヒロインに向かって言ったセリフなのだ。
(な、何?!。何が起きたの?)
一瞬、透明なドームの中に居て、その周りが炎に囲まれたように見えた。そして、その炎が消えると、周りは大変な事になっていた。
私達の居るテーブルを中心に5メートルくらいの円の中は、何事も無かったように綺麗なのに、その外側はまるで爆発に巻き込まれた風に吹き飛ばされている。
ミリアに抱きつかれたまま振り向くと、クリフが両手を広げて私達をかばうよう様に立っていた。
(さっきのドームって、もしかしてクリフのシールド?。)
辺りを見ると、壊れた椅子やテーブルの間に、数人の生徒が倒れてうめき声をあげていた。もしかして、ガス爆発でも起きたのだろうか?
「た、大変!」
助けようと、倒れている人に駆け寄ろうしたところを、
「駄目です、アリアナ様!」
ミリアに再び押し倒される様にのしかかられた。
「ダガンッ!!」
再び鼓膜が破れそうなほどの破裂音がしたと思うと、シールドで守られた外を炎が舐める様に走っていく。
(う、嘘!また爆発!?。倒れてた人達は!?)
最悪の状態が目に浮かんだ。けれど、炎と煙が去ると驚きの光景がそこにあった。なんと、シールドの周りに大きな土壁の様なものが立ち並んでいたのだ。
「な、何これ!?」
目を丸くしている私に、
「土魔法で炎を遮蔽しました。倒れてた方達も多分大丈夫かと。」
私を起こしてくれながら、ミリアがそう言った。彼女の額から汗がポタリと落ちた。
「何ていう事でしょう・・・。まさかこんな事をするなんて。」
レティシアが椅子の陰で震えている。
「ここまで頭が悪いとは思わなかったな。」
軽口を言ってる風で、ジョージアの顔も真っ青だ。
(とういう事は、まさか・・・!)
前方に作られた土壁の一つが、爆発音と共にバラバラに砕け散った。その破片がクリフのシールドに当たって、白い光を散らす。
そして土ぼこりの向こうに赤い髪を激しい風に乱しながらエメライン王女が立っていた。彼女の顔は無表情なのに、目は怒りに燃え上がっている。正直、私はその目を見ただけで腰が抜けそうになった。
(こ、怖っ・・・)
エメラインは私達の方へゆっくり近づきながら、手の平を上に向ける。その手の上にテニスボールくらいの大きさの火の塊が現れた。その火は見ているうちに大きくなり、やがてエメラインの頭上で1メートルぐらいの大きな炎の球になる。
(ま、マジか!?。あれをぶつけようって言うの!?)
「お前の様な小娘に、あのお方を奪われようとは・・・。許さない。」
エメラインは低い声でそうつぶやくと、ゆらりと手を振った。先ほどの火球が私達に向かって襲い掛かってきた。
「うわっ!」
どうしょうも無く私は、頭を抱えてしゃがみ込む。
再び爆発音と共に、クリフの作ったシールドに炎がぶつかる音がした。
「エメライン様!。お静まり下さいっ!」
ミリアの声に顔を上げると、エメラインを囲むように土壁が地面から隆起した。
「私が!」
レティシアがそう言うと、エメラインの周りの土壁が氷で固められた。
「エメライン様!お覚悟!」
ジョージアが飛び出し、右手を振りかざした。すると、空中に大きな稲妻が走り、エメラインの閉じ込められている土壁に衝撃音と共に落ちた。しかし・・・、
(駄目だ。これでは無理だよ!。)
この世界において、魔力的にはエメラインは超チートである。設定ではトラヴィスの次ぐらいに強かったはずなのだ。ミリア達が強いのも知っているが、エメラインとは比較にはならない。
そもそも、乙女ゲーム『アンファエルンの光の聖女』のストーリーでは、ミリア、レティシア、ジョージアはエメラインの取り巻きだ。2部のクライマックスではエメライン(ラスボス)と共に攻撃してくる中ボス的な立ち位置だった。それが、なんの因果か私と友達になって、エメラインと戦ってるのだけれど、ゲーム設定では実力の差は歴然だったはず。
「あっ」
「きゃあ!」
ミリアとレティシアが声をあげた。
思った通り、エメラインの周りの土壁は最初から無かったかのように吹き飛ばされ、そこには全く無傷のエメラインが立っていた。そして、まるでピアノを奏でるかの様に両手を上げると、ミリア達3人に向かって炎が襲い掛かってきた。
「いやぁ!」
「きゃあ!」
間一髪で、クリフのシールドが3人を守った。でも、クリフの額から流れる汗の量が尋常じゃない。さっきから一言も喋らないし、シールドを張るのにかなり無理をしているんじゃないだろうか?。
(こ、これはヤバいんじゃない!?)
さっき言ったエメラインのセリフ
『お前の様な小娘に、あのお方を奪われようとは・・・。許さない。』
(なんでここで、このセリフが出るのよ!?)
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