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ウィリアムsidei ナージャ
「朝の散歩をご一緒されたのですね。ステラ様はどうでしたか?」
自室に戻ると、待ち構えていたようにジェイが訊ねてきた。
「どうでしたもなにも、彼女は無駄なことを話さなかった。手を貸す必要があれば、申しつけ下さいと言った。私の半歩後ろを歩き、ただ静かについてきた」
ステラは綺麗な王女だと思った。正直に言うと、じっくり顔を見たのは今日が初めてだ。
令嬢にはあまり興味がなかったが、ステラの事は私の妻なのだから気になった。彼女は凛としていて、目が釘付けになるほど美しかった。
「無言ですか……」
「私から彼女の機嫌をとり、話しかける必要があるか」
「何を意味の分からないことを言ってるんですか。話すことなら山ほどあるでしょうに」
話すことがあるのなら、彼女が話せばよいのだ。
「時間はある。明日もまた散歩に同行するよう言った」
ジェイは嘆息をした。
昼食後の茶を飲もうとしたところへ、ナージャがやってきた。
一緒にお茶をと言われ、断る理由を思いつかなかった。
仕方なく、彼女の席を用意し、ジェイも一緒に茶を飲むことにした。
「ウィリアム様、今朝はステラ様と庭園を散歩されたようですね」
彼女は拗ねたようにそう言った。
「正妃のステラ様と散歩をするのに何の問題があるんだ」
ジェイが横から口を挟んだ。
「意識がない間、ウィリアム様の看病もせずにいらしたのに、意識が戻ったとたん殿下のお傍に居ようとされるなんてと思いまして」
「医者じゃないんだから、傍にいたところで何もできなかっただろう。ステラ様は、政務を手伝って下さっていた」
「ジェイ……ステラ様は、私が先に殿下の御子を身ごもった事に不満があるようなの。私には声もかけて下さいませんし、お茶を誘っても忙しいとお断りになります。側妃の私に対して嫉妬心を持ってらっしゃるようだと侍女たちが話していました」
嫉妬?ステラが嫉妬などするはずがない。そもそも私に興味がない。
「彼女が忙しいのは執務を手伝っているからだ。わざと茶の誘いを断っている訳ではないだろう」
私は興奮するナージャを窘めた。
「必要がない政務にまで口を出していると噂になっています。私はステラ様に悪い噂が立たないよう、気を配っています。正妃として王宮で穏やかに過ごされることを願っているんです」
「ナージャはステラ様の秘書をしていたから気になるだろう。けれど、そんなに気を配る必要はないのでは?今は御子を身ごもったばかりで大事な時期でしょう。何も気にせず、ローズ宮でゆっくり過ごされたら良いのではないですか」
「ジェイは関係ないでしょう。私はステラ様と仲良くしたいのです。冷たくされたままでは、ストレスも溜まりますし、お腹の御子にも影響が出てしまいますわ」
ストレスを溜めないようにステラと仲良くしたいという事か。
「殿下のお身体がまだ完全に回復していないのに、散歩に同行されるなんて良くないですわ。気遣いを少し持たれたほうが良いかと思います。庭園の散歩はリハビリの一環ですよね、邪魔になるだけでしょうし」
「それは、殿下が……」
私は言い返そうとするジェイを手で制した。
「ナージャは今、大事な時期だろう。腹の子に影響が出てしまっては元も子もない。ローズ宮は広く贅沢なつくりになっている。ゆっくりとした気持ちで過ごせるように配慮してあると聞いている。君はわざわざ宮殿にまで足を運んでこなくても良い」
「そうですね。ここに来るだけでも負担になってしまいます。ローズ宮殿にいればステラ様と接触する事もないですし落ち着いて過ごせるでしょう」
ジェイはナージャに対してかなり辛辣に対応している。
彼女は部下だったからそう接するのも分からないではないが、もう少し側妃を尊重すべきだ。
「だから私は仲良くなりたいと思っているんです。それと、殿下の邪魔をされているのならば、止めなければと思いました。ステラ様は少しでしゃばった……いえ、ご自分の意見をしっかりお持ちですから控えるべきだと。周りの者にも面倒な妃だと思われていますし悪評がたちますわ」
「おい、正妃に向かって失礼だぞ」
ジェイが眉間にしわを寄せ、ナージャを諫めた。
「ジェイ、ナージャは側妃だ。わきまえろ」
ナージャは目に涙を浮かべる。
彼女は冷静で、すぐに泣くような女性ではなかった。なのに今の姿は弱々しく儚げだ。
「妊娠すると……涙もろくなるらしく。感情が抑えられなくなってしまいます。殿下の御前ですのに申し訳ありません」
ハンカチで目頭を押さえた。
「身ごもると、そうなると聞いた。男には分からないが、子のためにも、あまり感情的になるな。今後は私の体調を気遣う必要ない。ゆっくりローズ宮で過ごすように。宮殿への立ち入りは、火急の要件でない限りは禁止する」
みるみるナージャの顔が赤くなった。
先程までの涙は何処へやら怒っているようだ。
「な……なぜですか。私はウィリアム殿下のことを一番に考えて、こちらに来ていますのに……」
「一番に考えるべきは腹の子のことだろう。ロース宮で静かに過ごすように、これは命令だ」
私は部屋の隅に控える侍女に、ナージャを連れて行くように命じた。
彼女は泣きながら侍女に連れられて部屋を出て行った。
「今までは側近の一人として私に口出しなどしてくるような者ではなかった。ナージャは側妃になって変わってしまったのだな」
深い溜息を吐いた。
「少なくとも記憶をなくす前、殿下はナージャを部下として扱っていました。彼女に特別な感情を持たれてはいませんでした。ナージャはあくまでも側妃ですし、正妃はステラ様です」
「もう、いい加減にしてくれ。私は正妃と側妃が揉めているなんて聞いていないぞ」
「揉めていると言っているのはナージャでしょう。ステラ様は何も言ってない」
「もうよい面倒だし、くだらないことに神経を使いたくはない。子を産むまでナージャと接触する必要はないだろう。彼女は無事に世継ぎを出産してくれればそれで問題はない」
王宮にちょくちょく足を運ばなくてもよいのに、ナージャも何を考えているんだ。
ただでさえ身体が不自由で思うように仕事ができないというのに、妃たちの嫉妬だのなんだの煩わしい。
だいたい側妃など娶ってしまったら、トラブルになるに決まっている。
なぜこんなにも早く側妃を決めてしまったんだ。
「ジェイ……」
「なんでしょう?」
「ステラと私は本当に閨を共にしていたのか?寝室は同じだったとしても、夜伽を行っていたかどうかわからないのではないか?」
誰かに直接見られたわけではないのだから、したかどうか真実は誰も分からない。
ジェイたち側近が知るはずはないだろう。
「殿下……俺に訊かないでください」
「……」
ステラ本人に確認しろ、か……
自室に戻ると、待ち構えていたようにジェイが訊ねてきた。
「どうでしたもなにも、彼女は無駄なことを話さなかった。手を貸す必要があれば、申しつけ下さいと言った。私の半歩後ろを歩き、ただ静かについてきた」
ステラは綺麗な王女だと思った。正直に言うと、じっくり顔を見たのは今日が初めてだ。
令嬢にはあまり興味がなかったが、ステラの事は私の妻なのだから気になった。彼女は凛としていて、目が釘付けになるほど美しかった。
「無言ですか……」
「私から彼女の機嫌をとり、話しかける必要があるか」
「何を意味の分からないことを言ってるんですか。話すことなら山ほどあるでしょうに」
話すことがあるのなら、彼女が話せばよいのだ。
「時間はある。明日もまた散歩に同行するよう言った」
ジェイは嘆息をした。
昼食後の茶を飲もうとしたところへ、ナージャがやってきた。
一緒にお茶をと言われ、断る理由を思いつかなかった。
仕方なく、彼女の席を用意し、ジェイも一緒に茶を飲むことにした。
「ウィリアム様、今朝はステラ様と庭園を散歩されたようですね」
彼女は拗ねたようにそう言った。
「正妃のステラ様と散歩をするのに何の問題があるんだ」
ジェイが横から口を挟んだ。
「意識がない間、ウィリアム様の看病もせずにいらしたのに、意識が戻ったとたん殿下のお傍に居ようとされるなんてと思いまして」
「医者じゃないんだから、傍にいたところで何もできなかっただろう。ステラ様は、政務を手伝って下さっていた」
「ジェイ……ステラ様は、私が先に殿下の御子を身ごもった事に不満があるようなの。私には声もかけて下さいませんし、お茶を誘っても忙しいとお断りになります。側妃の私に対して嫉妬心を持ってらっしゃるようだと侍女たちが話していました」
嫉妬?ステラが嫉妬などするはずがない。そもそも私に興味がない。
「彼女が忙しいのは執務を手伝っているからだ。わざと茶の誘いを断っている訳ではないだろう」
私は興奮するナージャを窘めた。
「必要がない政務にまで口を出していると噂になっています。私はステラ様に悪い噂が立たないよう、気を配っています。正妃として王宮で穏やかに過ごされることを願っているんです」
「ナージャはステラ様の秘書をしていたから気になるだろう。けれど、そんなに気を配る必要はないのでは?今は御子を身ごもったばかりで大事な時期でしょう。何も気にせず、ローズ宮でゆっくり過ごされたら良いのではないですか」
「ジェイは関係ないでしょう。私はステラ様と仲良くしたいのです。冷たくされたままでは、ストレスも溜まりますし、お腹の御子にも影響が出てしまいますわ」
ストレスを溜めないようにステラと仲良くしたいという事か。
「殿下のお身体がまだ完全に回復していないのに、散歩に同行されるなんて良くないですわ。気遣いを少し持たれたほうが良いかと思います。庭園の散歩はリハビリの一環ですよね、邪魔になるだけでしょうし」
「それは、殿下が……」
私は言い返そうとするジェイを手で制した。
「ナージャは今、大事な時期だろう。腹の子に影響が出てしまっては元も子もない。ローズ宮は広く贅沢なつくりになっている。ゆっくりとした気持ちで過ごせるように配慮してあると聞いている。君はわざわざ宮殿にまで足を運んでこなくても良い」
「そうですね。ここに来るだけでも負担になってしまいます。ローズ宮殿にいればステラ様と接触する事もないですし落ち着いて過ごせるでしょう」
ジェイはナージャに対してかなり辛辣に対応している。
彼女は部下だったからそう接するのも分からないではないが、もう少し側妃を尊重すべきだ。
「だから私は仲良くなりたいと思っているんです。それと、殿下の邪魔をされているのならば、止めなければと思いました。ステラ様は少しでしゃばった……いえ、ご自分の意見をしっかりお持ちですから控えるべきだと。周りの者にも面倒な妃だと思われていますし悪評がたちますわ」
「おい、正妃に向かって失礼だぞ」
ジェイが眉間にしわを寄せ、ナージャを諫めた。
「ジェイ、ナージャは側妃だ。わきまえろ」
ナージャは目に涙を浮かべる。
彼女は冷静で、すぐに泣くような女性ではなかった。なのに今の姿は弱々しく儚げだ。
「妊娠すると……涙もろくなるらしく。感情が抑えられなくなってしまいます。殿下の御前ですのに申し訳ありません」
ハンカチで目頭を押さえた。
「身ごもると、そうなると聞いた。男には分からないが、子のためにも、あまり感情的になるな。今後は私の体調を気遣う必要ない。ゆっくりローズ宮で過ごすように。宮殿への立ち入りは、火急の要件でない限りは禁止する」
みるみるナージャの顔が赤くなった。
先程までの涙は何処へやら怒っているようだ。
「な……なぜですか。私はウィリアム殿下のことを一番に考えて、こちらに来ていますのに……」
「一番に考えるべきは腹の子のことだろう。ロース宮で静かに過ごすように、これは命令だ」
私は部屋の隅に控える侍女に、ナージャを連れて行くように命じた。
彼女は泣きながら侍女に連れられて部屋を出て行った。
「今までは側近の一人として私に口出しなどしてくるような者ではなかった。ナージャは側妃になって変わってしまったのだな」
深い溜息を吐いた。
「少なくとも記憶をなくす前、殿下はナージャを部下として扱っていました。彼女に特別な感情を持たれてはいませんでした。ナージャはあくまでも側妃ですし、正妃はステラ様です」
「もう、いい加減にしてくれ。私は正妃と側妃が揉めているなんて聞いていないぞ」
「揉めていると言っているのはナージャでしょう。ステラ様は何も言ってない」
「もうよい面倒だし、くだらないことに神経を使いたくはない。子を産むまでナージャと接触する必要はないだろう。彼女は無事に世継ぎを出産してくれればそれで問題はない」
王宮にちょくちょく足を運ばなくてもよいのに、ナージャも何を考えているんだ。
ただでさえ身体が不自由で思うように仕事ができないというのに、妃たちの嫉妬だのなんだの煩わしい。
だいたい側妃など娶ってしまったら、トラブルになるに決まっている。
なぜこんなにも早く側妃を決めてしまったんだ。
「ジェイ……」
「なんでしょう?」
「ステラと私は本当に閨を共にしていたのか?寝室は同じだったとしても、夜伽を行っていたかどうかわからないのではないか?」
誰かに直接見られたわけではないのだから、したかどうか真実は誰も分からない。
ジェイたち側近が知るはずはないだろう。
「殿下……俺に訊かないでください」
「……」
ステラ本人に確認しろ、か……
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