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第三章 見えない幼馴染と見られる幼馴染
第28話 鈴菜の気持ちと見えないくんの気持ち
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「へぇ~! ここが凪の部屋になるのか。いいな、羨ましい」
支店の中で工事していた倉庫の新区画に、以前から聞かされていた凪の部屋が完成し、そのお披露目がされた。
支店で働く従業員には部屋を一応見てもらい、その後は隣の部分を見せたようだ。社長である母さんの当初の話では、凪の専用部屋と聞いていた。
しかし流石に店舗内ということで単独の部屋にはならず、壁向こうには新たに冷蔵倉庫を設けたらしい。むしろこっちがメイン?
コンビニでいうところのウィークインのようなもので、夏に限って売り出すドリンクを入れるための場所らしい。
夏以外は冷蔵スペースといったところ。
「何言ってるの? ここはあんたの部屋にもなるって言ったでしょ。話聞いてなかった?」
「え? そうだっけ? というか、俺の部屋って……どう見ても仕切られてないけど……」
てっきり俺は事務室のスペースに残るものだとばかり。
「この場に凪がいないから言うけど、あの子が望んだことだからあんた、黙ってなさいよ?」
「凪の希望が俺と一緒にってこと?」
「そう」
父親公認だからなのか、母さんも俺に甘えてる凪を見てみぬふりしていて俺としてはかなり困る問題なんだがそこはいいんだろうか?
「え、でも、同い年だし、流石にまずいんじゃないの?」
「変なことしてないんでしょ? だったら気にしすぎ。それに、あんたには鈴菜ちゃんがいるでしょ」
「ん~……」
鈴菜のことを言われると何も答えられなくなる。脱力系女子がどこか遠くに旅立ってしまったことで、以前の鈴菜と同じ感情を向けるのは厳しくなってしまったというのもある。
外だけならまだしも、学校でもイケメン女子と化してしまった以上は俺の意識を思いきり変えていかなくてはならないわけで。
そんな状態で義妹と同部屋は、感情がえぐいことになりそう。
「んで、凪はいつ頃部屋に?」
「隣の冷蔵の稼働が優先だから、やっぱり七月に入ってからになると思うけど」
「俺はいつものところに?」
「あんたは大して荷物ないんだし、今すぐここで寝ていいんじゃない?」
凪は義妹だから気を遣っているようだが、元々事務室に雑魚寝していた俺には本当に適当な対応だ。
――ということがありつつ、翌朝になった。
季節はすっかり梅雨のジメッとした空気に変わり、教室の中では半袖の奴も増えた。
井澄学園の制服は特に決まりはないものの、夏に限っていえばよほどだらしなくなければ私服でもオーケーとなっている。
そうは言いつつ、実際に私服率が高いのは女子だったりするが。
「貴俊。お前、まだ長袖だけど暑くないの?」
河神はそう言って、半袖のスクールシャツを俺にアピールしてくる。こいつの場合、普段は神社にいるから学校の時だけ開放的になるとしか思えない。
「慣れだ」
「じゃあ、あいつも慣れてんのかな」
「あいつ?」
「浅木。お前と同じ長袖だぞ。他の女子は私服だけど、浅木はお前と同じ長袖なんだよね」
……たかが制服に偶然も何もないとは思うが、河神はそういうのをやたらと気にする奴だ。
「しかし変わったもんだね」
言いながら河神は鈴菜がいるところを見ている。俺は一瞬だけチラ見したが、そこまで見ても意味がないのですぐに視線を逸らした。
「ショートだと途端にボーイッシュっぽくなるからな。そんなもんだろ」
あれだけ長く伸ばしていた髪をバッサリ切るんだから、気持ちの変化があったってことだろ。
「髪の話じゃなくて、性格的なもの。貴俊が原因って聞いたけど?」
まさかと思うが、音川と木下がデマを広めてるんじゃ?
「俺は関係ないぞ」
「じゃあ義理の妹が原因?」
「……さぁ」
鈴菜の前で凪が俺に思いきり甘えていたのも少しは関係していたかもしれないが、だからといってあそこまで劇的に変わるものだろうか。
性格も口調も何もかもがすでに脱力系から脱していて、以前の鈴菜を思い出せなくなっている。
「そうは言うけど、明らかに貴俊の――あ……」
ん?
「河神、何をそんなに驚いて――」
「――見えないところで人のウワサをするのは感心しないな。そう思わない? 河神君」
「……そ、そう思う」
河神が女子に――というか、鈴菜に驚いて腰が引けてるとか珍しいな。そのまま俺にすまんと口パクしている。
まさか地獄耳か?
「だよね! わたしもそう思ってた。君はどう思う? 貴俊」
「俺?」
「君」
気づいたら河神がこの場から離れていて、教室のみんなの視線が俺と鈴菜に向いているようだった。
「感心はしないだろ。誰でも」
「見えないくんなのに、そこは曲げないんだ?」
……見えないくんって何だ?
「なぁ、その見えないくんってどういう意味――」
いくら何でも冗談を言うタイプじゃないだろうし、だからといってあからさまに嫌味のようなものを言う奴じゃなかったが。
俺の問いに、鈴菜は俺と目を合わせるように顔を近づけてくる。
そして、
「わたしは君が見えている。気持ちなんかはずっと。でも、君は未だに見えてないし見る気もない。それだけ」
そう言って俺から顔を離した。
まさか、ずっと俺に怒ってるのか?
「……今の鈴菜を見えるようにするにはどうすれば?」
「貴俊がこそこそ隠れなければいいだけ。簡単だよ?」
よく分からない答えだったが、鈴菜は俺に満面の笑みを見せた。
そんな鈴菜を見て一瞬だけ緊張したのは多分気のせい。
支店の中で工事していた倉庫の新区画に、以前から聞かされていた凪の部屋が完成し、そのお披露目がされた。
支店で働く従業員には部屋を一応見てもらい、その後は隣の部分を見せたようだ。社長である母さんの当初の話では、凪の専用部屋と聞いていた。
しかし流石に店舗内ということで単独の部屋にはならず、壁向こうには新たに冷蔵倉庫を設けたらしい。むしろこっちがメイン?
コンビニでいうところのウィークインのようなもので、夏に限って売り出すドリンクを入れるための場所らしい。
夏以外は冷蔵スペースといったところ。
「何言ってるの? ここはあんたの部屋にもなるって言ったでしょ。話聞いてなかった?」
「え? そうだっけ? というか、俺の部屋って……どう見ても仕切られてないけど……」
てっきり俺は事務室のスペースに残るものだとばかり。
「この場に凪がいないから言うけど、あの子が望んだことだからあんた、黙ってなさいよ?」
「凪の希望が俺と一緒にってこと?」
「そう」
父親公認だからなのか、母さんも俺に甘えてる凪を見てみぬふりしていて俺としてはかなり困る問題なんだがそこはいいんだろうか?
「え、でも、同い年だし、流石にまずいんじゃないの?」
「変なことしてないんでしょ? だったら気にしすぎ。それに、あんたには鈴菜ちゃんがいるでしょ」
「ん~……」
鈴菜のことを言われると何も答えられなくなる。脱力系女子がどこか遠くに旅立ってしまったことで、以前の鈴菜と同じ感情を向けるのは厳しくなってしまったというのもある。
外だけならまだしも、学校でもイケメン女子と化してしまった以上は俺の意識を思いきり変えていかなくてはならないわけで。
そんな状態で義妹と同部屋は、感情がえぐいことになりそう。
「んで、凪はいつ頃部屋に?」
「隣の冷蔵の稼働が優先だから、やっぱり七月に入ってからになると思うけど」
「俺はいつものところに?」
「あんたは大して荷物ないんだし、今すぐここで寝ていいんじゃない?」
凪は義妹だから気を遣っているようだが、元々事務室に雑魚寝していた俺には本当に適当な対応だ。
――ということがありつつ、翌朝になった。
季節はすっかり梅雨のジメッとした空気に変わり、教室の中では半袖の奴も増えた。
井澄学園の制服は特に決まりはないものの、夏に限っていえばよほどだらしなくなければ私服でもオーケーとなっている。
そうは言いつつ、実際に私服率が高いのは女子だったりするが。
「貴俊。お前、まだ長袖だけど暑くないの?」
河神はそう言って、半袖のスクールシャツを俺にアピールしてくる。こいつの場合、普段は神社にいるから学校の時だけ開放的になるとしか思えない。
「慣れだ」
「じゃあ、あいつも慣れてんのかな」
「あいつ?」
「浅木。お前と同じ長袖だぞ。他の女子は私服だけど、浅木はお前と同じ長袖なんだよね」
……たかが制服に偶然も何もないとは思うが、河神はそういうのをやたらと気にする奴だ。
「しかし変わったもんだね」
言いながら河神は鈴菜がいるところを見ている。俺は一瞬だけチラ見したが、そこまで見ても意味がないのですぐに視線を逸らした。
「ショートだと途端にボーイッシュっぽくなるからな。そんなもんだろ」
あれだけ長く伸ばしていた髪をバッサリ切るんだから、気持ちの変化があったってことだろ。
「髪の話じゃなくて、性格的なもの。貴俊が原因って聞いたけど?」
まさかと思うが、音川と木下がデマを広めてるんじゃ?
「俺は関係ないぞ」
「じゃあ義理の妹が原因?」
「……さぁ」
鈴菜の前で凪が俺に思いきり甘えていたのも少しは関係していたかもしれないが、だからといってあそこまで劇的に変わるものだろうか。
性格も口調も何もかもがすでに脱力系から脱していて、以前の鈴菜を思い出せなくなっている。
「そうは言うけど、明らかに貴俊の――あ……」
ん?
「河神、何をそんなに驚いて――」
「――見えないところで人のウワサをするのは感心しないな。そう思わない? 河神君」
「……そ、そう思う」
河神が女子に――というか、鈴菜に驚いて腰が引けてるとか珍しいな。そのまま俺にすまんと口パクしている。
まさか地獄耳か?
「だよね! わたしもそう思ってた。君はどう思う? 貴俊」
「俺?」
「君」
気づいたら河神がこの場から離れていて、教室のみんなの視線が俺と鈴菜に向いているようだった。
「感心はしないだろ。誰でも」
「見えないくんなのに、そこは曲げないんだ?」
……見えないくんって何だ?
「なぁ、その見えないくんってどういう意味――」
いくら何でも冗談を言うタイプじゃないだろうし、だからといってあからさまに嫌味のようなものを言う奴じゃなかったが。
俺の問いに、鈴菜は俺と目を合わせるように顔を近づけてくる。
そして、
「わたしは君が見えている。気持ちなんかはずっと。でも、君は未だに見えてないし見る気もない。それだけ」
そう言って俺から顔を離した。
まさか、ずっと俺に怒ってるのか?
「……今の鈴菜を見えるようにするにはどうすれば?」
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