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漆頁:極めの帰結
140.予感
しおりを挟む召喚獣の威力は相当なものだった。少なくとも範囲魔法の比じゃなく、キリの無い魔物の群れをいとも簡単に一掃してくれたというのが大きい。
そして心配していたレシスへの影響は全く無いどころか、ティアマトから吐き出されたブレスの威力が何故か上がっていた。様子を見ただけだが、レシスが範囲内にいるだけで効果があったらしい。
「不思議なこともあるものですねぇ」
「君が何かしたんじゃなくて?」
「エンジさんじゃあるまいし、出来っこないですよぉ」
本人は否定しているがレシスに上書きした光の防御魔法には、バフが付与された可能性がある。
気のせいでも無くレシスの顔色がいいし、肌もつやつやしている気がしてならない。
「…………そういう体質なのかな」
「ほえ? エンジさんに見つめられるとテンションが上がり過ぎて、おかしくなっちゃいますよぉ」
「もしかして体が軽くなったり?」
「ですです! とうとうエンジさんが私の全てを見通せるように!? えへへへへ」
――何とも言えないが、オーグリスの恩恵は計り知れないものがありそうだ。
「アルジさまっ! 上は掃討しましたわ」
「ヌシさま~! 全部いなくなったのでーす!」
そうこうしているうちに、上空の敵を相手していたルールイと魔獣を相手していたレッテが、無傷で戻って来た。"魔物の庭"の魔物は大した強さでは無かったとみえる。
「よし、それじゃあここを抜け――あれ? リウは?」
「レッテは見ていないでーす」
「わたくしも知りませんわ」
レッテを制することが出来ずに慌てていたところまでは、彼女の姿は見えていた。
だが、近くにリウの姿は見当たらない。
「ところで、アルジさま。レシスはどちらに?」
「……えっ? さっきまでそこに……いなくなってる!? レシスもか! 全く、喜んでいたかと思えばどこに行ってしまったんだ」
リウがどこにもいないことと関係ありそうだが、そうであって欲しいものだ。
そう思っていると、かなり遠くの方から俺を呼ぶ声が聞こえて来た。
「エンジさーーーーーん!! こっちに来てくださーーーーーーーーい! おーいおーい!」
「にぅぅぅ!! エンジさまーー! おっきい町が見えるにぁぁぁぁ!!」
どうやら二人一緒にいるらしい。
魔物を一掃したことで視界はひらけているが、目を凝らして遠くの方を見てみると、ぼんやりながらも高くそびえる建物のようなものが見えて来る。
大森林を強引に抜け、魔物の庭らしき場所の先にあったのは、規模の大きそうな町だったようだ。
そこがどういう町なのかはまだ分からないが、進むしか手は無い。
「ルールイ、レッテ。この先に大きめの町があるようだから、先を急ごう!」
「はいでーす!」
「お供致しますわ」
光の属性石は手に入れることが叶わなかったが、ルファス鉱山で戦って得たオーグリスから何か大きく動き出したような、そんな気がしている。
とにかくこの先に進んで、それから何かをつかむことが出来れば、きっと上手く行くはずだ。
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