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31.魔女と奴隷と嫉妬心

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 オーウェンはダリアの求婚を断ったことを悔いている時間が長かったので、せめて彼女を自分の代わりに受けてめてあげられる相手がいればいいとは思っていたが、それによって人の道を踏み外してしまっているとなるとかなり複雑だった。

「ううん……別にねえさんがどんな男とつき合おうがそんなのはねえさんの自由だからアタシがどうこういう義理はないんだが……どんな奴なの? そいつは」
「変な奴だよ。顔はすげえイケてる。顔中にじゃらじゃらついてる輪っかがなければ貴族とか王子様みてえな顔してるけど、目つきが気持ち悪くてな。でも女を扱うのはべらぼうにうまいから、親父が調教師として雇ってるんだよ」

「あ!! ああ!!! それ! あたしの処女を破った調教師ですよ!! やだ~!!! オーウェン様の姉弟子さんと竿姉妹なの、嫌ぁ!!!」

 お茶のおかわりを注ぎに来たザジが大声を出した。その内容にオーウェンは眉をひそめる。

「あ゛?」

 何故だろう。なんだかものすごく、頭にカッと怒りのようなものが沸き上がった。オーウェンが今まで一度も感じたことのない感情だったのでわからなかったが、それは嫉妬の炎に他ならなかった。

「魔女、お前……へえ~……」
「なんだよ。ニヤニヤしやがって。それで? そいつがどうしたって?」
「怒るな怒るな」
「怒ってなんかないよ。嫌だねえ」

 オーウェンはむくれてぷいとそっぽを向いた。ウィニーは面白そうにその横顔を見つめたが、すぐに話を再開した。

「そいつはリチャードっていう名前なんだが、チンポで堕とした女がなんでも言うことを聞くようになるって言う才能があるんだ。もう五年くらい前になるかな、そいつが覆面の女を連れてきて、奴隷紋のアイデアを売り込んで来たんだよ。俺はその女の声を聞いたことあったし、休憩中に顔を洗ってるのを見たからわりとすぐお前の姉貴だって気が付いたけどな。どうやらリチャードがあの女の姿を人に見せるのを嫌がってるようなんだよな。相当惚れ込んでるぜ、あれ」
「まあ……愛されてるのは結構なことだけど……嫌だねえ。あたしはなんかそういう女を『堕とす』みたいな考え方好きじゃない」
「お前はそう言う奴だよな。まあ聞けよ。俺らが商売してるところの奥にスラムがあるだろ。買われた先から逃げた奴隷ってわりとあそこに逃げ込むんだよな。一応野良になった奴隷は拾った奴が連れてくればまた商品にするために引き取ったりするんだけどさ。スラムに逃げ込まれちまうとどうにもな。だから奴隷が逃げないようにする方法を親父はずっと考えてて、そこに奴隷紋を売り込まれたもんで採用するようになって、今ではほぼ全部の奴隷に紋が入ってるんだ」

 思ったより酷い情報が立て続けに耳から流れ込んできて、疲れたオーウェンは眉間を指でつまんで揉んだ。まとめると、悪い男の言いなりになっているダリアが奴隷たちに奴隷紋を施していると……そういうことになる。

「これは……思ったよりも……」
「とりあえず、リチャードも女も仕事にこないとなると、お前が納品したスキンを渡すことが出来ないから、このあとリチャードが住んでるところに届けに行くつもりでいるけど。ついでに仕事に来いってどやして来いって親父に言われてるからな。別に? スキンの製作者が商品の使い心地とかを顧客に聞きたいってついてきたとしても? 俺は別にまあそういうこともあるかもなって思うだけだし?」
「……ウィニー」
「勘違いすんなよな。別にお前のためじゃねえよ。俺別にお前とそんなに仲良くないしな。でもまあ? 俺あの奴隷紋嫌いだから。早めに使われなくなったら愉快だなって思うだけだよ」

 ザジは台所から二人の話に聞き耳を立てていた。なあんだ、オーウェン様、男の友達もいるんじゃないの。と彼女は思った。
 そのころ、リチャードの屋敷の地下で、ダリアは彼に後ろから貫かれ、猿轡の間から唾液と喘ぎを断続的に漏らしていた。
 オーウェンからの手紙を手にして名前を呟いたダリアを見咎めたリチャードは彼女を力いっぱい平手打ちし、手紙を奪ってビリビリに破くと火をつけて燃やしてしまう。ダリアのぽってりとした唇から、自分以外の男の名前が紡がれたことに、リチャードは憤慨していた。しかもかつてダリアが愛して、一つ屋根の下に住んでいたことがある男の名前を!!

「ちょっと目を離すとすぐこれだよ。売女が……。くそ。なんて書いてあったか読んでおくべきだったな。お前のくだらねえ弟とやらの下卑たラブレターなんか読みたくもないが……まあいい。お仕置きだ。三日はまともに小便できないようにしてやるよ」

 リチャードはぐったりと倒れ伏しているダリアの顔につばを吐くと、ずるずると地下室に引きずって連れて行き、奴隷調教用の拘束具を彼女に嵌めた。そしてまる二日、休憩を挟みながらずっとダリアのことを執拗に責め立てている。後ろから腰を打ち付けられてゆさゆさと揺れる彼女の大きな乳房の先端では、リチャードの顔じゅうについているのと同じ金属の輪がチャリチャリと音を立てていた。

「お゛ッ♡ んおおお゛……んぶ、んむぶぶぅ……♡♡♡」

 穿たれすぎて腫れあがったダリアの肉襞は、リチャードの肉竿に引きずられてめくれ上がりながらぐちゃぐちゃとはしたない音を立てている。理不尽な扱いを受けているのに、リチャードの肉体の暖かさを胎内に感じると愛されているという実感が沸き上がってしまう。ダリアはまさに、リチャードに『堕とされ』ていた。

「ダリア……、ダリアぁ、お前はおれの運命の女だよ……、髪も、体も、かあさんにそっくりだ。知らねえけど、神様とかいうやつが可愛そうなおれにくれた奇跡なんだよな……」
「ん、ぐ……♡ んお゛♡ んんおッ♡♡ んうう~ッ♡♡♡」

 ダリアは白目を剥いてビクビクと痙攣してリチャードの愛に応える。彼女の尿道にも肛門にも調教用の淫具が差し込まれ、体の揺れにあわせてぴょこぴょこと動いた。

「だ、ダリアッ♡ ダリアッ♡ イクぞッ♡ 中に出すよッ♡ ダリアッ♡ 受け止めてくれッ! おれを孕んでくれ!! おれを産め!! ううッ!! ぐうッ……♡♡」

 リチャードは支離滅裂なうわごとを呟きながら、またダリアの中に射精した。もうなんどもぶちまけられた精液は彼女の膣内から溢れ、床の上に精液だまりを作っていた。

「フーッ、フーッ♡」
「う……んん……♡ ンッ……♡♡」

 ダリアの豊満な体に覆いかぶさり、射精後の余韻に浸っていたリチャードの耳に、そのとき玄関の扉に取り付けられたドアノッカーの重い音が聞こえ、ずるり……とリチャードの陰茎がダリアの中を擦りながら抜かれた。ダリアはあっあっと小さく喘いでいる。

「なんだ……誰だ……おれたちの大事な時間を邪魔する奴は……ぶっ殺してやろうか……」

 立ち上がってシャツを羽織り、櫛で髪を整えると、先ほどまで髪を振り乱して女を犯していたとは思えないほどの清潔そうな美男子がそこにいた。顔の飾りの異様さはどうしてもそのままではあったが。

「はい、なんでしょう」

 ドアを開けると、そこには二人の男が立っていた。雇い主の息子であるウィニーと、ダリアの弟弟子のオーウェンであった。

「なんでしょうじゃねえよ。お前の彼女が無断で仕事休んでるから親父がカンカンだよ。お前もスキン受け取りに来ねえしよ。開発者クンが心配してついてきちまったじゃねえか」
「……どうも、スライムスキンを作ってる者です……」
「ああ~そうなんですか……彼女、ちょっと体調を崩してまして……辛そうなんで僕が休めって言ったんですよね……だからお叱りなら僕が受けます」
「あの……先日、ダリアさんに聞きたいことがあって手紙を渡したんですけど。ダリアさんそれについて何か言ってましたか?」

 にこにこと応対するリチャードに、オーウェンが尋ねる。

「さあ? 帰ってきてすぐに寝込んでしまったので。読んでないんじゃないですかねえ」
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