女たちの㊙ストリー〜秘密の花園〜

橘希帆

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ホストに本気で恋をしたキャバ嬢の末路

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最初は、ほんの軽い気持ちだった。
こんな私がホストになんかハマるわけない、そう思っていた。
「別れよう」
ある日突然、私は付き合っていた彼氏に振られてしまった。
「どうして?嘘だよね?」
「もう限界なんだわ。話し合いしても毎回しょうもない事で喧嘩になるし。俺じゃ香帆を幸せに出来ない」 
私は香帆。25歳、飲食店従業員。同じ職場で出会った彼とはここ最近、些細な事でぶつかる事が多くなり喧嘩が絶えなくなっていた。別れて数日後、彼は職場を去っていったが私はどうしても別れた理由が納得いかずにいた。
そんなある日、仕事帰りに何となく繁華街を歩いていると一人の男性とぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
「すみません、俺目が悪くて…お姉さんもう帰っちゃうんですか?」
私の目の前に現れた男性はSNSでも人気を誇る北条セナというホストだった。
「あれ…セナさん?」
「あ!僕のこと知ってるんですか?嬉しいなぁ。良かったらこれから一緒に飲みません?初回は安いんで!」
「ごめんなさい、私急いでて」
セナの事は前から知っていたが、お店に行く気にはなれなかった。しかし、この日は何故か真っ直ぐ家に帰る気になれず気づけば彼の在籍するホストクラブをネットで検索し、軽い気持ちで店に向かっていた。
「さっきのお姉さん!やっぱり来てくれたんだ!」
セナは常にナンバー上位のトップランカーだった。
「今日は、何となくまだ帰る気になれなくて。SNSは、何回か見た事あるよ」
「ありがとう!もしかして、ホスト初めて?」
「どうしてわかるの?」
「顔に書いてある。私ホスト初めてなんですーって」
彼の接客は、どこか憎めなかった。
「これ、俺の名刺。いつでもラインして!」
セナからはラインのIDと電話番号が書かれた名刺を渡された。
見た目も接客も魅力的でどこか憎めない彼に興味を持ち始め、私はセナ指名でお店に通うようになった。
だんだん彼の虜になり飲み代を少しでも稼ごうと副業でキャバクラの仕事を始めたが水商売の世界は甘くなかった。
面倒な客から嫌な事を言われたり、ボーイからは仕事の事で度々注意を受けたり精神的には苦痛だったがセナに会う為だと思うとキャバクラの仕事を辞めずにはいられなかった。
「香帆ちゃん最近来てくれて嬉しいよ。でも、無理はしないでね?」
「無理なんかしてないよ、大丈夫だから」
私はすっかり、セナに会いに行く事が生き甲斐になっていた。彼を支えたいという気持ちが日に日に強くなり、とうとう消費者金融から借金までするようになってしまっていた。
罪悪感と後ろめたさはあったがそれでも彼に一日でも多く会えると思うと嬉しくてたまらなかった。
しかし、彼の正体を知るのに時間はかからなかった。
「何…これ」
SNSにはなんと半裸でベッドに横たわるセナの寝姿が挙げられていた。投稿者は店に通っているセナの指名客らしきユーザーだった。
まさか彼女…?不審に思った私はセナに直接聞いてみることにした。
「あのさ、SNSの写真の事なんだけど…」
「あーあれね!YouTubeの撮影の一環で撮ったやつなんだ!多分カメラマンの人が挙げたのかな?ごめんね、不安にさせちゃったよね」
セナからはそう言われたが、私の不安は消えなかった。
ダメだとわかっていたが私はセナを尾行する事にした。営業が終わるころであろう時間帯にセナのホストクラブがあるビルのエントランスで待ち伏せをしていると、エレベーターからセナが出てくるのが見えた。
「お待たせ」
「もうー、遅いよ」
セナはエレベーター前に立っていた女性と手を繋ぎ、繁華街へ向かっていった。私とは全く手を繋いでくれなかったのに…。
これまでセナとは店の外で会う事はあっても、お店に来る女の子達に嫉妬されるからという理由で手を繋ぐ事だけは拒まれていた。

思い知らされた。セナにとって、私はただの客だったのだと。今までの甘い言葉は全て営業だったなんて思ってもいなかった。
私はその場で泣き崩れた。
彼を本気で好きだった事を改めて実感した。
ホストの世界とは縁を切ろうと心に誓った。

その後、私はキャバクラの仕事を辞め本業だけの生活に戻った。セナとは連絡を断ち切り、SNSのアカウントも全て削除した。消費者金融から借りたお金は今まで貯めていた貯金で何とか返せたが、虚しさだけが残った。

半年後、職場の同僚の紹介で知り合った男性と交際を始めた。
私は今、新たな人生を歩んでいる。
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