女たちの㊙ストリー〜秘密の花園〜

橘希帆

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夫の浮気の復讐として若い男性と不倫したシタ妻の末路

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「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
いつもと変わらない朝。いつものように会社に向かう夫を見送る私。いつもと変わらない日常が続くと思っていた。
私は莉乃。30歳、パート主婦。夫の和也と結婚して2年、私達夫婦の間にまだ子供はいない。
夫の浮気を知ったのは、1週間前。洗濯機の上に脱ぎ捨ててあった夫のワイシャツに口紅がついていた。知らないボディーソープの香りもほのかに残っていて、不審に思った私は和也の車のカーナビの履歴を調べた。履歴に表示されたホテル名を検索すると、案の定ラブホテルだった。
和也は浮気をしている、そう確信した私は問い詰めずあえて知らないふりをする事にした。問い詰めてもはぐらかされるのわかっていたから…。
数日後。その日は午後から雨が降り、私は傘を持っていなかった。
「お疲れ様です」
帰り際、タクシーでも呼ぼうとスマホを操作していると一歳下の同僚が声をかけてきた。
「俊君…今終わったの?」
彼とは挨拶程度であまり話した事はなかったがまともに会話をしたのはこの時がほぼ初めてだった。
「僕、送っていきますよ?」
「じゃあ…お願いしても良いかな?」
あまり話した事のない私を車に乗せるなんて、どうしてだろう…?
「あの…今日はありがとう」
「いえ、莉乃さん最近なんか元気ないみたいだったから気になって。僕で良かったらいつでも話聞きますよ」
私は彼の優しさに甘えたくなっていた。
「じゃあ今度、時間ある時話聞いてくれる?」
「もちろん」
「あ、連絡先聞いても良い?」
その日から私は彼と連絡を取るようになり、パート先でも時々話すようになった。その分、夫には今まで以上に優しく出来たし家事も頑張れた。
ただ、夫の浮気だけはどうしても許せずにいた…。
「莉乃さん、結婚してたんだ」
仕事帰り、私は彼を食事に誘った。他の従業員達の目が気になっていたのもあり郊外のカフェを選んだ。
「…旦那、浮気してるけどね」
「えっ?」
「でもね、知らないふりしてる。どうせはぐらかされるだけだし」
「それは酷いですね…僕が旦那さんだったら、絶対そんな事しないのに」
彼の言葉に、少し戸惑った。
「莉乃さん…僕、莉乃さんが好きです。ずっと前から…気になってました」
「でもあたし、結婚してるよ?」
「それでも良いです。莉乃さんの側にいられるなら」
だめだとわかっていながらも、私は彼に惹かれていった。
「俊君…これからも、時々会わない?」
「僕で良ければ」
それからというもの、私は夫の目を盗んで彼と食事やドライブに出かけた。彼と会う度に、いつの間にか後ろめたさは無くなっていた。
しかし、現実はそう甘くなかった。
周囲が私と彼の関係に気づくのに時間はかからなかった。
「莉乃さんと俊君でしょ?やっぱりあの二人付き合ってるのかな?」
ある日の勤務中、同僚が私達の事で何か話しているようだった。
「まさか、莉乃さん結婚してるしそれはさすがにないんじゃない?」
「でもさあの二人ほぼ毎日一緒に帰ってるよね?」
私は気まずくなり、その場を離れた。
その日、仕事を終えると私はすぐに帰る用意をした。逃げるように会社を出ると、彼が追いかけてきた。
「莉乃さん!」
「俊君…ごめん、もう一緒に帰れない。みんな、私達が会ってる事気づいてる。だから…話すのも会社では控えよう」
「わかった…莉乃さん、会社の外では今まで通り会えるんだよね?俺、本気で好きなんだ。誰になんて言われても構わない」
夫と別れて彼と一緒になる…?  
それとも離婚せずこのまま今の関係を続ける…?
彼の気持ちを考えると、離婚も選択肢の1つかもしれない。
夫と離婚すべきか、彼と一緒になるか悩み始めた私は仕事にも家事にもだんだん身が入らなくなっていった。
仕事中はミスが増え度々注意されでも頭に入らず、家の中はこれまでにないくらい荒れていったが片付けも掃除も面倒になっていた。
「莉乃!?何だよこの部屋。どうしたんだよ、最近おかしいぞ」
「別に」
夫に何を言われても鬱陶しくなり、会話も少しずつ減っていき夫婦仲は冷めきっていた。
それでも私は彼と会う事をやめなかった。彼の事を本気で好きになっていた私は、とうとう彼と身体の関係を持ってしまった。同僚達の陰口など、どうでも良くなっていた。
何より、浮気をする事によって夫に復讐しているという優越感がたまらなかった。
だけど、そんな日々はもうすぐ終わりに近づいていた。
会社で彼と顔を合わせる事はあっても、彼はだんだんそっけなくなりあれだけ早かったメールの返信も遅くなるようになっていた。
「俊君、あのさ…」
「莉乃さん、ごめん」
会話も少しずつ減り休みの日に会う事も拒まれるようになった。
数日後、私は仕事帰りに彼の自宅を訪ねた。インターホンを押すと、中から出てきたのは見知らぬ女性だった。
「えっ…誰!?」
私は言葉を失った。
「美緒?どうしたの?」
中から聞こえてきたのは彼の声だった。私は咄嗟に中に乗り込んだ。
「俊君!?どういう事!?」
「莉乃さん…どうして…」
「私の事本気じゃなかったの!?私を騙してたって事!?」
「莉乃さんだって…俺の事利用してたじゃない。旦那さんに復讐する為だったんでしょ?」
彼はまるで、別人のように変わっていた。
「俊!?どういう事!?その女何なの!?」
彼女らしき女性は、酷く混乱していた。
「あー…本当うぜぇ。マジで、面倒。美緒、お前だって俺と別れるって言ってたじゃん。さっさと出ていけよ」
私は彼の頬を思い切り強く平手打ちした。
「最低。もう二度と目の前に現れないで」
彼は何と交際している彼女がいながら夫の浮気に悩んでいた私に近づいてきたのだ。弱みに付け込まれたのだ。

その後、私が彼と不倫関係にあった事はあっという間に会社に広まり、同僚達はまるで腫れ物に触るかのように私を避けるようになった。あの後、彼は結局彼女に見捨てられ一緒に住んでいた部屋を追い出されたらしいが彼の事などもう気にならなくなっていた。彼は会社を去っていったが、その後の事はわからない。

そして、夫にも彼との事がバレてしまった。私の浮気を疑った夫は探偵に依頼して浮気の証拠を掴んでいたのだ。
「一体どういう事…?よりによって、社内不倫って…」
退職にならずに済んだものの、私は誰からも無視され続けている。
「和也だって…浮気してたじゃない。ワイシャツに口紅ついてたし、カーナビの履歴にだって残ってた。ラブホテル、行ったでしょ…?今更私の事責める権利ある…?」
「莉乃、俺が悪かった。あれは本当に、ただの出来心で」
「離婚して下さい」
私は夫と離婚、勤めていた会社を辞め実家に帰った。
離婚してすぐ後だったのもあり、精神的に憔悴していた私はしばらく家に引きこもる日々が何日か続いたが何とか新しいバイト先を見つける事が出来た。
だけど、あの時味わった背徳感を今でも時々思い出す。

こんな私でも、いつかは幸せになれるのだろうか…?
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