怠惰すぎて冒険者をクビになった少年は魔王の城で自堕落に生活したい

桒(kuwa)

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3話

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あれから少しの口論の後、アルメシアはゼギウスに言い負かされゼギウスを人間界の街へ運び一緒に入っていた。

街に入る際の詰所の突破をどうするか気掛かりだったが、どういう訳か素通りできた。それでも大手を振って表を歩きたくはないのか今は裏路地を歩いている。

この裏路地は不気味な雰囲気が漂い得体の知れない魔が潜んでいる。それは魔を好む魔物ですら不快感を覚えるほどでアルメシアの足取りを重くする。だが、ゼギウスは何の躊躇いもなく歩いていく。

「偉く気味の悪い場所だがここは何なのじゃ?」

「闇商人の拠点だ。魔物の城で料理人をやってくれそうな奴なんて表には居ないからな」

「それは分かるがここは嫌な気配に満ちておるぞ」

「そりゃ闇商人の拠点だからな。入るぞ、腐れ」

アルメシアに対し適当な返事をしながらゼギウスは黒い小さなテントへ入っていく。

テントの中はゼギウスよりも背が低くローブで身を包んでいる人がいるだけで何1つ商品が置かれていない。この怪しい人物が腐れと呼ばれていた闇商人だとアルメシアは察する。

「おやおや、ゼギウス様ではありませんか。もうこの街には居ないと聞いていたのですが聞き間違いでしたかな?」

高い声と低い声の重なった機械声で闇商人は聞く。

「今はそこの奴の世話になってる。ただ、飯が不味くてな」

ゼギウスが手でアルメシアを指すと闇商人はアルメシアのことをまじまじと見つめる。ローブの影から覗くその眼に対しアルメシアは本能的に恐怖を覚えた。

「ほぉ、ドラルの娘ですか。また厄介の多いところに行きましたな。食事が不味いということでしたら探しているのは料理人、それも魔界領なら魔食材も料理できた方がいい…となると何人か適した者がいるかと」

闇商人が足元をコンコンと靴で叩くと地下へと通じる階段が現れ地下へと進んでいく。闇商人に続いてゼギウスも階段を下りて行き、それにおいて行かれないようにゼギウスに引っ付いてアルメシアもついて行く。

地下へ下りるとアルメシアは驚き言葉を失った。

そこには檻の中に入れられ首輪を着けられている人間が見渡す限りいた。所謂奴隷というやつだ。それがこの闇商人の提供する商品なのは言われるまでもなく分かった。

アルメシアが驚いたのも魔物には奴隷のような風習がないからだ。魔物は強さが全ての縦社会で弱き者は強き者に従うが、そこに隷属的な意味はない。魔物が他の魔物に従うのは生きるために、若しくは自分が強くなるために、自らの意思で従う。従わなければ葬るが、それは敵対したことによる当然の処置でこれ以上恥辱を与えないという同じ種に対する最低限の礼儀だ。そして、隷属支配するとしてもそれは他種族に限り同族にこうして恥辱を与えるなど考えられない。

アルメシアは嫌悪感を抱いた魔の正体はこれだと悟り虫唾が走る。

「お主、人間じゃろう?同族がこうなっていて何とも思わぬのか?」

「魔物の価値観はそうでしょうね。無数に生まれる魔物はその労力も無限です。だから気に入らない者は殺せばいい。ですが人間は違います。その数は限られ最大限利用しないと回らないのですよ。それでは商品を探してきますね」

闇商人は淡々と答えると奥へ歩いて行った。

「お主もそう思うのか?」

「そうだな。奴隷制度は今に始まったことじゃない。上に立つ人間はその期間が長くなればなるほど屑になる。その結果がこれだ」

その返答にアルメシアは心底失望した。

確かに人間と魔物に価値観の違いはある。目立つところで言えば魔物は強者が上に立つが人間は歴史や貢献が評価され弱者でも上に立つ。それは文化の違いでまだ納得できる。だが、これは看過できる範囲を超えていた。

例えこの場で殺されようと、もうゼギウスと同じ場所で暮らし協力することは不可能だ。

「《龍王の___」

この一帯を吹き飛ばそうとスキルを唱えようとしたが即座にゼギウスに押さえつけられる。

「いきなりアホか」

「離せ!見損なったのじゃ!お主のような屑の力を借りてまで生きとうない!」

「あのなぁ…人の話は最後まで聞け」

「屑の言うことなど聞きとうない!」

ゼギウスから解放されるとすぐに両手で耳を塞ぐ。それでも頭の中に直接ゼギウスの声が聞こえてくる。

「俺は奴隷制度が嫌いだよ。こんな胸糞の悪いの好きな訳ねぇだろ」

「だったらここにおる者を皆救えばよいではないか。お主にはそれくらい造作もなかろう」

自分は魔物で人間のことは関係ないはずなのにアルメシアは熱くなっていた。アルメシア自身何で熱くなっているのかは分かっていないが抑えられない。

そこへ戻ってきた闇商人が口を挟む。

「割り込むようで申し訳ありませんが、もうすぐ準備が整います。それと今の話、それでは意味がありませんよ。ここにいる奴隷を解放したところで新しい奴隷が入るだけ。そして1度奴隷に堕ちた者は再び奴隷に堕ちる。この意味分かりますよね?」

「じゃったら___」

「その度に救う、ですか?それは不可能です。ゼギウス様は1人しかいません。救える範囲には限界があります。それに手の届くところだけ都合よく救ったところで起こる問題も考えてください」

「問題?」

「そう。奴隷になっても救われる、助けてもらえるという甘い考えです。奴隷を買う者など皆屑です。目的、方法は違えど己の欲求を満たすために奴隷を買います。希望を持った状態でそんな者の元へ行けばより絶望は大きくなる。だから奴隷に下手な希望を与えてはいけないのですよ」

「それが人間ということか…腐りきっておるな」

「それはもう。魔物の方が愛くるしく見えるほどにね。ですが、ゼギウス様を一緒にしないでください。ゼギウス様は___」

「腐れ、口が過ぎるぞ。料理人を連れてくるついでに仮面も付け直せ」

闇商人の意味深な言葉をゼギウスは遮る。その言葉の続きも気になるが、言葉の途中に向けられた憎しみのような感情の方がアルメシアには気になっていた。

「申し訳ありません。すぐに連れてきます」

「おい、今のは___」

アルメシアが続きを聞こうとするも取り合う間もなく闇商人は再び奥へ消えていく。

「お主今の話は何じゃ?」

「碌な話じゃねぇよ。それよりお前だ、アホ。魔物のくせして何で人間のことに深入りしようとする?面倒くせぇだけだろ」

「我にも分からぬ。ただ我の城に住む者が屑なのが嫌なだけじゃ」

「そりゃ残念だったな」

ゼギウスが何かを隠していることは疑いようもなかったがアルメシアはそれ以上追求しなかった。聞いたところでゼギウスが答えないというのもあったが、それ以上にそれを聞くだけの覚悟ができていなかった。

それでもゼギウスが余程の屑ではないことは分かった。今はそれだけでいい。

少しすると闇商人は2人の少女を連れて戻ってきた。

1人目は銀髪のショートカットに青色の瞳が特徴的な小柄な少女で来ている服はボロ雑巾のような灰色の布切れだったがどこか気品さが窺えた。

2人目は腰まで伸びた艶のある金髪に緑色の瞳が特徴的な1人目の少女よりは背の高い少女で要所に丸く弾力のありそうな膨らみを帯びている。この少女も1人目の少女と同じくボロ雑巾のような灰色の布切れを着ているがどこか気品さが窺えた。

美しい。それもこの場所に居るのが想像できないほどに。

それがアルメシアの抱いた感想だった。だが、ゼギウスはこの2人の少女が気に入らないようだ。

「チェンジで」

「ゼギウス様、当店にはそのようなシステムはございません。と、冗談はさて置き魔食材を料理できるのはこの2人だけなのです」

「何人か居るって言っただろ」

「この2人がゼギウス様に相応しい2人なのです」

その言葉に納得したのかゼギウスは「はぁ…」と溜息を吐く。

「対価は?」

「お主金を持っておるのか?まさか我に払えなど言わぬよな?人間界の金など持っておらぬぞ」

浅知恵ではあるが、人間は奴隷を高額な金銭で取引すると聞いたことがある。だが、ゼギウスは城に来た時には背中の大剣以外何も持っておらず、とても大金を持っているようには見えない。だから支払いができるのかと不安になって口を挟む。

「持ってねぇよ。この腐れは金じゃなくて情報とか依頼とか金銭以外でしか商品を売らない変人だ。まぁ、自分の腕次第で何倍にも利益が見込めるからそうしてるらしいけどな」

「そういうことです。この2人ですと衣服の新調も含めて3つでしょうか。1つ目は私の身の安全の更新。2つ目はドラルの方針。3つ目はこの2人の身の安全、ですかね」

「1つ目は承諾するが2つ目は俺じゃなくてアルに聞け。3つ目は俺の勝手だ」

闇商人の交渉に対してゼギウスはそう即答する。その即答ぶりからも幾度も取引をしているのが窺えた。

アルメシアはゼギウスにドラルの方針を話していいのか、この闇商人は信用できるのか、と目配せで確認するとゼギウスは小さく頷く。

「我は構わぬが、話せばその2人を渡すのじゃな?」

「私としては3つ目も約束してほしいですが、まぁゼギウス様なので大丈夫でしょう」

「うむ。ドラルとして人里に攻め入る気はない。魔物の方にもじゃがな。これでよいか?」

「進攻に対する防衛をしているだけ、と。分かりました。ではこの2人の衣服を新調してまいります」

そう闇商人は2人の少女を連れて裏へと消えていく。それを確認してアルメシアは小声でゼギウスに確認する。

「話してよかったのか?」

「どうせ防衛するのは俺なんだから関係無いだろ。それと俺たちが帰ってから数日後には南西の戦線から敵はいなくなる」

「なっ、どういうことじゃ!」

つい大声を上げると着替えが終わったのか闇商人が2人を連れて戻って来る。この早さで戻って来るということは予め替え服を用意していたのだろう。

戻ってきた2人の少女は黒を基調とした服とスカートに白い前掛けのついたシンプルなメイド服だ。それなのに輝いて見えるのは2人自身の美しさによるものだろう。

アルメシアは思わず「お~」と声を上げてしまうほどなのにゼギウスは趣味が違うのか2人を初めて見た時と同様に興味なさそうだ。

「これで如何でしょうか?」

「何でもいい。あと着替えも用意しといてくれ」

「そう言うと思いこちらに。一応の確認ですが首輪の方はどうしますか?」

首輪という言葉に今まで無表情だった2人の少女も体を震わせる。

人間界で使われている道具でもアルメシアはその首輪の効力を知っていた。

名称を隷属の首輪と言う魔道具で主となる者が奴隷となる者に装着し魔力を注ぐことで効力を発揮する。奴隷となった者は主には逆らえず一方的に思考を読まれる。逆らおうものなら全身に痛みが走り最悪の場合は死に至る。その反逆の基準も主が決められるため望むままに痛みを与えられる趣味の悪い物だ。他には両者は思念で繋がり離れていても会話ができるという実世的な効果もある。

「いらねぇよ。別に着けてようが着けてなかろうが大差ないだろ。アル、用も済んだし行くぞ。自分の荷物は自分で持てよ」

ゼギウスが2人にそう言うと2人は闇商人から着替えの入った紙袋を受け取りついて行く。

アルメシアはもう少し優しくできぬのか。と内心で思いながらも自分も大差ない扱いを受けていることを思い出し溜息を吐きながらついて行った。

「我はこの後食料調達に行くがお主はどうするのじゃ?」

「もう用事もねぇし帰るに決まってんだろ。アル、運んでくれ」

「無理を申すな。我が3人も運べるわけなかろうが」

「なら俺だけって…こいつら場所知らねぇし無理か。アルと一緒に行動させるのもこの2人に馬鹿が移っても困るしな。仕方ねぇ歩いて帰るか」

「お主は我を何だと思っているのじゃ!」

そう声を荒げながらも、2人のことを気遣っているのじゃな。と内心で微笑むが、すぐにゼギウスなら本気でそう思いかねぬな。と迷いも生じていた。
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