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5話
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すー、すー、と気持ちよく寝息を立てて寝ていたが隣の部屋の扉が開く気配で目が覚めた。
ここは魔物の城で魔物は人間に対して本能的に敵意を抱いている。だからララとルルの部屋に入り襲おうとする可能性があり、それを察知するために扉に魔力を纏わせていた。
どうやら魔物が襲おうとした訳ではなくララとルルが自らの意思で部屋を出たようだ。
向かってくる先は…この部屋か。アルが帰ってくるまでは出歩くなって言っただろ面倒くせぇ。
コンコンと扉をノックされ「ご主人様、入りますよ」という言葉と共にララとルルがこの部屋に入って来る。許可した覚えはねぇんだけど?
相手にするのが面倒で寝たふりをしているが2人は近づいてくる。
「寝ているのですか?……憎たらしい性格だと思っていましたが寝顔は可愛いですね」
そんなララの一切立場を弁えていない発言の後、頬をつんつんと突かれる。鬱陶しいことこの上ないが少し無視すれば帰るだろうと寝たふりを続ける。
しかし、2人が帰りそうな雰囲気はない。
「それではルル、始めますよ」
「分かった」
何やら面倒事が起きる気しかしない会話が行われると布団が少し捲られる。相手にするのは面倒くさいが、これ以上放置していても余計に面倒なことになりそうで起き上がる。
「何の用だ?」
「起きましたか。ご主人様、夜伽の相手に参りました」
訳の分からないことを口走ったかと思えばララはまだ布団を捲ろうとしている。
「いらねぇから帰れ」
「そういう訳にはいきません。私たちはご主人様の奴隷なのですから、捨てられないようにご奉仕しないといけません」
あー、なんとなく分かった。こいつら媚びを売らないと捨てられるとでも思ってるのか。確かにこんな魔物の拠点で捨てられたら終わりだわな。こいつら戦闘能力ねぇし。
「本当にいらねぇから止めろ。それとご主人様って呼び方もやめろ」
「ですが、ご主人様の名前を窺っていないのでこう呼ぶしかありません。ご不快にさせたなら申し訳ありませんでした」
ララの謝罪に合わせてルルもスカートを摘まみながら腰を60度に曲げて頭を下げる。その綺麗な所作に強引にでも腐れに違う奴に代えてもらえばよかったと後悔する。
地下で初めて見た時に気づいていたがこの2人は上流階級の出だ。服はボロボロだったのに肌は綺麗で煤や埃といった汚れが一切ついていなかった。それはあんな地下に居たらあり得ないことで、もしあるとしたら売り物ではなく腐れが丁寧にもてなしていた場合だ。
それは面倒事を抱えていて俺が巻き込まれることを表している。それでも、奴隷は買うよりかは幾分か気が楽だと思って飲み込んだが、やっぱり代えてもらうべきだった。
「本当は知ってるんだろ?まぁ、いいか。デュアル・S・ゼギウスだ」
「えぇ~~~~~!!!でゅ、でゅ、でゅ、デュアル・S・ゼギウスって《怠惰の双剣》!?あの七英雄の1人の?こんなに子供だったんですか!?」
そう大声を上げてララが驚く。最早わざとらしくすら見えるが本当に知らなかったようだ。対してルルの方は表情に一切変化がなく元から知っていたように見える。
「なぁ、お前失礼だって昔から言われてただろ」
「御転婆って言われてました。てへっ。ってそうじゃなくて何で七英雄がこんなところに居て魔物と暮らしているのですか?」
「うるせぇ、1回黙ってろ。それで知ってたのはルルの方か」
「気づいたのは会ってから。ララは気づかなかったみたいだけど王国領でその名前は疑いようがない」
なるほど。腐れは誰とは決めずに強い冒険者にでも渡すって言ったのか。それでそいつを利用して目的を果たせと…ララは知り合いで落ちてきたのを見てルルが拾ったのか。こりゃ貧乏くじを引かされたな。
「先に言っとくがやめといた方がいい。それに俺はお前たちに協力するつもりはねぇぞ」
「流石は七英雄の1人、理解が早い。でも協力してもらう。貴方にはその責任がある」
「知るか、他所を当たれ」
ルルに意識が向いているとララに抱き着かれる。
「そういう訳にはいきません。目的を果たせるかも分からないのに身を捧げるのは嫌でしたが七英雄なら申し分ありません。貴方を籠絡します」
ララはただ落ちただけだと思っていたが、こっちも訳ありか。
「もう1回言っとくがやめといた方がいいぞ」
「ご主人様もしかして焦っているのですか?可愛いですね」
俺が動揺していると勘違いしたのかララが前掛けを外してリボンを緩めて服を脱ごうとする。が、突然、部屋が真っ暗になった。窓から入ってきていた光が遮られたからだ。
「何が起こったのですか?」
ララもルルも何が起きたのか分からず怯えたように引っ付いてくる。
「だから言っただろ。やめといた方がいいって」
「どういうことですか?」
体を震わせながらララが聞いてくる。ルルも無言で体を震わせていた。
それはこれが単に光を遮られただけではないからだ。殺意すら芽生えていそうな怒りが2人を捉えて離さない。
あー、対象は2人だけじゃなくて俺もかよ。面倒くせぇ…
お灸をすえる意味で放置したいところだがそれだと後が面倒になる。もう手遅れなほど面倒にはなるが…
どうなろうと面倒なことは避けられないが少しでも楽にするために行動する。
「とりあえず服を着直せ」
「は、はい……あれ?あれ?」
流石にこんな時まで無駄なことは言わないと分かっているのかララは指示に従う。
しかし、体の震えでうまく着直せず無駄に時間がかかる。その間にも怒りは膨れ上がり2人の引っ付く力は強くなっていく。それが逆効果だと何故気づかない。
「もういい。俺がやる」
やむを得ずララを手伝おうと手を伸ばすと「あん」「や…」と少し艶めいた声が漏れてくる。
もう本当に黙っててくれねぇかな。
それでもララの服を着直させると窓の光を遮っていた何かはカサカサカサと足音を立てながら四方八方へ散っていく。向けられた怒りは消えたというのに2人は引っ付いたまま動かない。腰でも抜けたようだ。
「さっきのは何だったのでしょうか?」
「俺には監視がついてるんだよ。それがお前たちの行動を看過できないと判断しただけだ」
「それはここの城主?」
「いいや、別の奴だ。まぁ、誰かは知らない方が身のためだな。会ったらそこでこの世とはさよならだ」
2人はゴクリと喉を鳴らす。
「私たちに要求しないのも拒んだのもさっきのが理由ですか?」
「いや、単純に興味ないだけだな」
その返答にララは露骨に機嫌が悪くなる。
「私たちにはそこまで魅力がありませんか。そうですか。そうでしょうね。英雄様は嘸かし魅力的な女性と楽しんできたのでしょうね。いいですけど、私たちだって相手をしなくて済みますから」
そうララは完全に不貞腐れている。興味ない、という言葉がそこまでプライドを傷つけたのだろうか。面倒くせぇ。
「そこは喜んどけよ……まぁ、世間一般で見たら魅力的なんじゃねぇの?俺は興味ねぇけど」
「その言われ方は複雑です」
これで機嫌が直らないならお手上げだ。ってか何で俺がご機嫌取りしなくちゃいけねぇんだよ。逆だろ。
「んなことはどうでもいい。これで俺がお前たちに興味ないのが分かっただろ。魔物の餌にもしねぇからさっさと部屋に帰れ。俺は寝たいんだよ」
「じゃあ何で私たちを買ったのですか?」
「ただ料理人が欲しかっただけだ。スーにでも料理を教えたら勝手に出てけ」
「そんなこと信じられません。そう言って希望を与えて絶望する瞬間を楽しむつもりなのですね!?ご主人様ってそういう歪んだ趣味してそうですものね!」
どうやらララはアホな子のようだ。こういう奴は相手にするだけ無駄だ。
「お前なぁ…じゃあそれでいいからさっさと帰れ」
「そういう訳にはいきません。私たちには成し遂げなければならないことがあります」
「そういうことはせめて離れて言え。陳家に見えて仕方がねえ」
ララもルルもさっきの恐怖が抜けていないようで引っ付いたまま離れていない。今も監視されていると気づいていないのだろうか。
「もうあんな子供騙し怖くありません。では改めて、私たちは成し遂げなければならないことがあるので協力してもらいます」
そう離れて言っているもののララの足はガクガク震えていて決まっていなかった。
ここは魔物の城で魔物は人間に対して本能的に敵意を抱いている。だからララとルルの部屋に入り襲おうとする可能性があり、それを察知するために扉に魔力を纏わせていた。
どうやら魔物が襲おうとした訳ではなくララとルルが自らの意思で部屋を出たようだ。
向かってくる先は…この部屋か。アルが帰ってくるまでは出歩くなって言っただろ面倒くせぇ。
コンコンと扉をノックされ「ご主人様、入りますよ」という言葉と共にララとルルがこの部屋に入って来る。許可した覚えはねぇんだけど?
相手にするのが面倒で寝たふりをしているが2人は近づいてくる。
「寝ているのですか?……憎たらしい性格だと思っていましたが寝顔は可愛いですね」
そんなララの一切立場を弁えていない発言の後、頬をつんつんと突かれる。鬱陶しいことこの上ないが少し無視すれば帰るだろうと寝たふりを続ける。
しかし、2人が帰りそうな雰囲気はない。
「それではルル、始めますよ」
「分かった」
何やら面倒事が起きる気しかしない会話が行われると布団が少し捲られる。相手にするのは面倒くさいが、これ以上放置していても余計に面倒なことになりそうで起き上がる。
「何の用だ?」
「起きましたか。ご主人様、夜伽の相手に参りました」
訳の分からないことを口走ったかと思えばララはまだ布団を捲ろうとしている。
「いらねぇから帰れ」
「そういう訳にはいきません。私たちはご主人様の奴隷なのですから、捨てられないようにご奉仕しないといけません」
あー、なんとなく分かった。こいつら媚びを売らないと捨てられるとでも思ってるのか。確かにこんな魔物の拠点で捨てられたら終わりだわな。こいつら戦闘能力ねぇし。
「本当にいらねぇから止めろ。それとご主人様って呼び方もやめろ」
「ですが、ご主人様の名前を窺っていないのでこう呼ぶしかありません。ご不快にさせたなら申し訳ありませんでした」
ララの謝罪に合わせてルルもスカートを摘まみながら腰を60度に曲げて頭を下げる。その綺麗な所作に強引にでも腐れに違う奴に代えてもらえばよかったと後悔する。
地下で初めて見た時に気づいていたがこの2人は上流階級の出だ。服はボロボロだったのに肌は綺麗で煤や埃といった汚れが一切ついていなかった。それはあんな地下に居たらあり得ないことで、もしあるとしたら売り物ではなく腐れが丁寧にもてなしていた場合だ。
それは面倒事を抱えていて俺が巻き込まれることを表している。それでも、奴隷は買うよりかは幾分か気が楽だと思って飲み込んだが、やっぱり代えてもらうべきだった。
「本当は知ってるんだろ?まぁ、いいか。デュアル・S・ゼギウスだ」
「えぇ~~~~~!!!でゅ、でゅ、でゅ、デュアル・S・ゼギウスって《怠惰の双剣》!?あの七英雄の1人の?こんなに子供だったんですか!?」
そう大声を上げてララが驚く。最早わざとらしくすら見えるが本当に知らなかったようだ。対してルルの方は表情に一切変化がなく元から知っていたように見える。
「なぁ、お前失礼だって昔から言われてただろ」
「御転婆って言われてました。てへっ。ってそうじゃなくて何で七英雄がこんなところに居て魔物と暮らしているのですか?」
「うるせぇ、1回黙ってろ。それで知ってたのはルルの方か」
「気づいたのは会ってから。ララは気づかなかったみたいだけど王国領でその名前は疑いようがない」
なるほど。腐れは誰とは決めずに強い冒険者にでも渡すって言ったのか。それでそいつを利用して目的を果たせと…ララは知り合いで落ちてきたのを見てルルが拾ったのか。こりゃ貧乏くじを引かされたな。
「先に言っとくがやめといた方がいい。それに俺はお前たちに協力するつもりはねぇぞ」
「流石は七英雄の1人、理解が早い。でも協力してもらう。貴方にはその責任がある」
「知るか、他所を当たれ」
ルルに意識が向いているとララに抱き着かれる。
「そういう訳にはいきません。目的を果たせるかも分からないのに身を捧げるのは嫌でしたが七英雄なら申し分ありません。貴方を籠絡します」
ララはただ落ちただけだと思っていたが、こっちも訳ありか。
「もう1回言っとくがやめといた方がいいぞ」
「ご主人様もしかして焦っているのですか?可愛いですね」
俺が動揺していると勘違いしたのかララが前掛けを外してリボンを緩めて服を脱ごうとする。が、突然、部屋が真っ暗になった。窓から入ってきていた光が遮られたからだ。
「何が起こったのですか?」
ララもルルも何が起きたのか分からず怯えたように引っ付いてくる。
「だから言っただろ。やめといた方がいいって」
「どういうことですか?」
体を震わせながらララが聞いてくる。ルルも無言で体を震わせていた。
それはこれが単に光を遮られただけではないからだ。殺意すら芽生えていそうな怒りが2人を捉えて離さない。
あー、対象は2人だけじゃなくて俺もかよ。面倒くせぇ…
お灸をすえる意味で放置したいところだがそれだと後が面倒になる。もう手遅れなほど面倒にはなるが…
どうなろうと面倒なことは避けられないが少しでも楽にするために行動する。
「とりあえず服を着直せ」
「は、はい……あれ?あれ?」
流石にこんな時まで無駄なことは言わないと分かっているのかララは指示に従う。
しかし、体の震えでうまく着直せず無駄に時間がかかる。その間にも怒りは膨れ上がり2人の引っ付く力は強くなっていく。それが逆効果だと何故気づかない。
「もういい。俺がやる」
やむを得ずララを手伝おうと手を伸ばすと「あん」「や…」と少し艶めいた声が漏れてくる。
もう本当に黙っててくれねぇかな。
それでもララの服を着直させると窓の光を遮っていた何かはカサカサカサと足音を立てながら四方八方へ散っていく。向けられた怒りは消えたというのに2人は引っ付いたまま動かない。腰でも抜けたようだ。
「さっきのは何だったのでしょうか?」
「俺には監視がついてるんだよ。それがお前たちの行動を看過できないと判断しただけだ」
「それはここの城主?」
「いいや、別の奴だ。まぁ、誰かは知らない方が身のためだな。会ったらそこでこの世とはさよならだ」
2人はゴクリと喉を鳴らす。
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「いや、単純に興味ないだけだな」
その返答にララは露骨に機嫌が悪くなる。
「私たちにはそこまで魅力がありませんか。そうですか。そうでしょうね。英雄様は嘸かし魅力的な女性と楽しんできたのでしょうね。いいですけど、私たちだって相手をしなくて済みますから」
そうララは完全に不貞腐れている。興味ない、という言葉がそこまでプライドを傷つけたのだろうか。面倒くせぇ。
「そこは喜んどけよ……まぁ、世間一般で見たら魅力的なんじゃねぇの?俺は興味ねぇけど」
「その言われ方は複雑です」
これで機嫌が直らないならお手上げだ。ってか何で俺がご機嫌取りしなくちゃいけねぇんだよ。逆だろ。
「んなことはどうでもいい。これで俺がお前たちに興味ないのが分かっただろ。魔物の餌にもしねぇからさっさと部屋に帰れ。俺は寝たいんだよ」
「じゃあ何で私たちを買ったのですか?」
「ただ料理人が欲しかっただけだ。スーにでも料理を教えたら勝手に出てけ」
「そんなこと信じられません。そう言って希望を与えて絶望する瞬間を楽しむつもりなのですね!?ご主人様ってそういう歪んだ趣味してそうですものね!」
どうやらララはアホな子のようだ。こういう奴は相手にするだけ無駄だ。
「お前なぁ…じゃあそれでいいからさっさと帰れ」
「そういう訳にはいきません。私たちには成し遂げなければならないことがあります」
「そういうことはせめて離れて言え。陳家に見えて仕方がねえ」
ララもルルもさっきの恐怖が抜けていないようで引っ付いたまま離れていない。今も監視されていると気づいていないのだろうか。
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