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41話
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「ご主人様、行ってきます」
「戻ってきたら話があるから覚悟しときなよ」
「あー、はいはい。さっさと行ってこい。それでそのまま戻ってくんな」
適当にシアンの言っていた言葉を流すと、腐れの持っていたお手製の魔導馬車に乗ってシアンとララは出発した。
これでひとまずは問題児が2人減った。残りはナナシとグラか…
残っている2人は送り出した2人よりも面倒だ。どうやって躱そうか考えていると城の上からナナシが「ゼーギーウース―!」と声を上げながら下りてくる。本当に何で学習しないんだか…
いつも通りナナシの顔面を掴んで受け止める。
「もう見張りは終わりでいいの?」
「あぁ。次の雑用はまだいいから少し休んでいいぞ」
「え…次の雑用ってまだ何かあるの?」
そうナナシは固まる。
「当たり前だろこんな下らねぇ雑用のためにナナシを呼ぶ訳ねぇだろ」
雑用を腐るほど任せてナナシが音を上げて帰るのを待つ。そうすればナナシの遊びに付き合わなくてもいいし雑用を大量に任せられる一石二鳥の作戦だ。
「今、悪い事考えたでしょ」
「まぁな」
「まぁな、じゃない!その被害を受けるのは私なの!報酬の前払いを要求する!」
手を前に出し金をくれと言わんばかりのアピールをする。だが、ナナシが求めているのは金じゃない。俺との戦闘だ。
「ナナシにしては難しい言葉を使えたな。偉いぞー」
そう誤魔化すためにナナシの頭を撫でる。と、ナナシは目を細めて頭をこちらに委ねてきた。
「えへへー、私も勉強してるからね」
ナナシは褒められたのを嬉しそうにしているが、もう頭には報酬の前払いなんてないだろう。
ちょろい。ちょろ過ぎるぞ、ナナシ。枷が外れかけている影響で賢くなったかと思えばこれだ。少しは枷が戻ったということか?
そんなことを考えているとグラが近づいてきた。来たか、問題児2号。
「ゼギウス―、シアンどこに居るか知らない?」
同じ皇国を拠点にする冒険者だからかシアンとグラはよく一緒に居る。いや、グラが頼りなくてシアンが面倒を見ているだけか。
「シアンなら1回、皇国に戻ったぞ」
「そっか。じゃあゼギウス、おいらと戦ってよ」
何がじゃあ、なのかは分からないが考えるだけ無駄だ。しかし、こうなることは分かっていた。
「面倒くせぇから断る」
「ダメだよ。ゼギウスの連れが約束してくれたもん」
ん?そんな話に聞き覚えはない。まぁ、聞いていたところで守る気はないが…
「腐れ、出てこい」
こんなことをする奴で思い当たるのは腐れしかいない。そう呼び掛けると腐れは近くに居たのかすぐに姿を現す。
「はい、お呼びでしょうか」
「グラと何か約束したのか?」
「あっ……しました…ですが、結果として強欲様と暴食様がこちらについたという事実はないので報酬を払う必要はないと思います」
寝返らせるために俺との戦闘を約束したのか。先約があるっていうのはマルスじゃなくてこれの事だったのか。俺が単体で約束すると反故にするが、間に違う奴を挟めば守ると思ったと。
勝手に約束を取り付けたのはいただけないが、あの状況なら仕方ないか。
「そういうことだ。取引は成立してないみたいだぞ」
「ダメだよ!おいら難しい話は分からないけど約束は約束!守らないとおいら怒るよ」
グラにこういった話が通用しないのは分かっていたが、相変わらずだ。しかし、それについても既に対策済みだ。
「分かった。だったらナナシと戦え」
「ナナシってそこの魔物と?強そうだからいいよ。勝ったら次はゼギウスとね」
「え、嫌だよ。私は七罪の掃除屋じゃないもん。もう傲慢に憤怒を倒したのに今度は暴食とだなんて嫌だ。つまらない。ゼギウスとの戦闘を要求する!」
思い出したようにナナシは再び手を前に出す。
「我が儘言うな。俺とナナシがこんなとこで戦える訳ねぇだろ。グラで我慢しろ」
いつしか使った言い訳だが、この言い訳は有効だ。事実、俺とナナシが戦闘をするなら庭でなきゃ大事になる。
「私が庭に戻る時にゼギウスにも来てもらうからね」
流石に2回目は通用しないか。まぁ、雑用を押し付けている間に忘れるだろ。
「分かった。じゃあ戦う準備するから少し移動するぞ」
ナナシとグラを連れて少し拓けた場所に行く。
少し面倒だが、自分で戦うよりかはその場所を用意する方が楽だ。そう《障壁》を複数枚張り2重の直方体を作る。
「ナナシ、3割までな」
「はいはい。もう始めるね」
不機嫌なのか早く終わらせたいのかナナシから仕掛ける。だが、制限を掛けている今、簡単に終わると思っているなら大間違いだ。
「《滅火》《滅水》《滅風》《滅土》《滅雷》《滅氷》」
威力に制限を掛けたとはいえ、体内の魔力量に制限を掛けられた訳ではない。だから1発1発の威力を3割に抑えたスキルを連発している。スキルの噛み合わせを一切気にしていない無茶苦茶な戦い方だ。
6つのスキルがグラを襲い《障壁》内を煙が覆い尽くす。
「もういいでしょ。出してよ」
結果を見るまでもなく終わったと判断したナナシは今にも《障壁》を破りそうなほど苛立っている。だが、その苛立ちはすぐにより強い苛立ちに変わった。
「ナナシのスキルは美味しいね。もっと撃ってよ」
煙が晴れると傷1つついていないグラがポンポンとお腹を叩いて笑顔を浮かべている。
「あー、もうっ!本当に面倒くさい!」
どういう原理で防がれたかは分かっていないが、スキルは通用しないと判断したのか今度は接近戦に持ち込む。
ナナシの接近を防ごうともせず、グラはナナシを懐に潜らせる。そこからナナシの拳が腹に抉り込むが、貫通した様子はない。
そう、グラは耐久に特化した七英雄で相手にするのはただただ面倒くさい。その癖、質が悪いのは___
そう思っていると早速、その質の悪さが出た。
「《放出》」
ナナシのスキルを受けても無傷だった理由に繋がるが、グラは《暴食》によって相手のスキルを食べる。それを自分の魔力に変換することもできるしこうやって吐き出すこともできる。
しかし、ナナシのスキル、それも威力を3割に抑えた攻撃がナナシに通用する訳もなく何もせず至近距離でそれを受け止めた。
「何をしたいのかな?私をバカにできるくらい強いの?だったらその強さ見せてよ」
いつになくナナシは怒っている。七英雄の底は知れてもう楽しめすらしないということか。シアンもグラもどうせ俺と戦いと言うだろうからナナシに押し付けようと思っていたが、流石にできそうにない。
「そういうことはおいらに傷をつけてから言ってよ」
あ…
そう思った時にはもう遅かった。
ナナシの怒りは限界を超え、グラの腹を貫いていた。俺に配慮する程度の余裕はあったのかスキルを使って跡形もなく消すことは避けてくれたようだ。
しかし、困ったものだ。シアンとグラの扱いを含めナナシへのフォローも考えなければならない。
「腐れ、治療してやれ」
こっそりと見に来ていた腐れにそう指示をするとナナシに近寄る。
「何?いくらゼギウスでもやっていいことと悪いことがあるよ」
「そこまで怒るとは思ってなかった。七英雄級の強さなら制限掛ければ楽しめると思ったんだよ」
事実、本当にそう思っていた。だが、ラクルとの戦いでの失望が大き過ぎたようだ。
これだけ怒っていると仕方がないが、俺が戦うしかない。
「つまらないもん。人間の七罪は弱すぎて相手にならないもん」
「悪かったな。お詫びにスキル縛りでいいなら俺と戦うか?」
「本当に!?また約束破ったりしない?」
今まではぐらかし過ぎたか。疑り深くなっている。
今後の扱いやすさも含めてここらでリセットしとくか。
「そんなに心配なら今からでいいぞ」
「やったー!すぐやろ!」
そう子供のようにぴょんぴょんと跳ねているナナシを横に《障壁》を張り直した。
「戻ってきたら話があるから覚悟しときなよ」
「あー、はいはい。さっさと行ってこい。それでそのまま戻ってくんな」
適当にシアンの言っていた言葉を流すと、腐れの持っていたお手製の魔導馬車に乗ってシアンとララは出発した。
これでひとまずは問題児が2人減った。残りはナナシとグラか…
残っている2人は送り出した2人よりも面倒だ。どうやって躱そうか考えていると城の上からナナシが「ゼーギーウース―!」と声を上げながら下りてくる。本当に何で学習しないんだか…
いつも通りナナシの顔面を掴んで受け止める。
「もう見張りは終わりでいいの?」
「あぁ。次の雑用はまだいいから少し休んでいいぞ」
「え…次の雑用ってまだ何かあるの?」
そうナナシは固まる。
「当たり前だろこんな下らねぇ雑用のためにナナシを呼ぶ訳ねぇだろ」
雑用を腐るほど任せてナナシが音を上げて帰るのを待つ。そうすればナナシの遊びに付き合わなくてもいいし雑用を大量に任せられる一石二鳥の作戦だ。
「今、悪い事考えたでしょ」
「まぁな」
「まぁな、じゃない!その被害を受けるのは私なの!報酬の前払いを要求する!」
手を前に出し金をくれと言わんばかりのアピールをする。だが、ナナシが求めているのは金じゃない。俺との戦闘だ。
「ナナシにしては難しい言葉を使えたな。偉いぞー」
そう誤魔化すためにナナシの頭を撫でる。と、ナナシは目を細めて頭をこちらに委ねてきた。
「えへへー、私も勉強してるからね」
ナナシは褒められたのを嬉しそうにしているが、もう頭には報酬の前払いなんてないだろう。
ちょろい。ちょろ過ぎるぞ、ナナシ。枷が外れかけている影響で賢くなったかと思えばこれだ。少しは枷が戻ったということか?
そんなことを考えているとグラが近づいてきた。来たか、問題児2号。
「ゼギウス―、シアンどこに居るか知らない?」
同じ皇国を拠点にする冒険者だからかシアンとグラはよく一緒に居る。いや、グラが頼りなくてシアンが面倒を見ているだけか。
「シアンなら1回、皇国に戻ったぞ」
「そっか。じゃあゼギウス、おいらと戦ってよ」
何がじゃあ、なのかは分からないが考えるだけ無駄だ。しかし、こうなることは分かっていた。
「面倒くせぇから断る」
「ダメだよ。ゼギウスの連れが約束してくれたもん」
ん?そんな話に聞き覚えはない。まぁ、聞いていたところで守る気はないが…
「腐れ、出てこい」
こんなことをする奴で思い当たるのは腐れしかいない。そう呼び掛けると腐れは近くに居たのかすぐに姿を現す。
「はい、お呼びでしょうか」
「グラと何か約束したのか?」
「あっ……しました…ですが、結果として強欲様と暴食様がこちらについたという事実はないので報酬を払う必要はないと思います」
寝返らせるために俺との戦闘を約束したのか。先約があるっていうのはマルスじゃなくてこれの事だったのか。俺が単体で約束すると反故にするが、間に違う奴を挟めば守ると思ったと。
勝手に約束を取り付けたのはいただけないが、あの状況なら仕方ないか。
「そういうことだ。取引は成立してないみたいだぞ」
「ダメだよ!おいら難しい話は分からないけど約束は約束!守らないとおいら怒るよ」
グラにこういった話が通用しないのは分かっていたが、相変わらずだ。しかし、それについても既に対策済みだ。
「分かった。だったらナナシと戦え」
「ナナシってそこの魔物と?強そうだからいいよ。勝ったら次はゼギウスとね」
「え、嫌だよ。私は七罪の掃除屋じゃないもん。もう傲慢に憤怒を倒したのに今度は暴食とだなんて嫌だ。つまらない。ゼギウスとの戦闘を要求する!」
思い出したようにナナシは再び手を前に出す。
「我が儘言うな。俺とナナシがこんなとこで戦える訳ねぇだろ。グラで我慢しろ」
いつしか使った言い訳だが、この言い訳は有効だ。事実、俺とナナシが戦闘をするなら庭でなきゃ大事になる。
「私が庭に戻る時にゼギウスにも来てもらうからね」
流石に2回目は通用しないか。まぁ、雑用を押し付けている間に忘れるだろ。
「分かった。じゃあ戦う準備するから少し移動するぞ」
ナナシとグラを連れて少し拓けた場所に行く。
少し面倒だが、自分で戦うよりかはその場所を用意する方が楽だ。そう《障壁》を複数枚張り2重の直方体を作る。
「ナナシ、3割までな」
「はいはい。もう始めるね」
不機嫌なのか早く終わらせたいのかナナシから仕掛ける。だが、制限を掛けている今、簡単に終わると思っているなら大間違いだ。
「《滅火》《滅水》《滅風》《滅土》《滅雷》《滅氷》」
威力に制限を掛けたとはいえ、体内の魔力量に制限を掛けられた訳ではない。だから1発1発の威力を3割に抑えたスキルを連発している。スキルの噛み合わせを一切気にしていない無茶苦茶な戦い方だ。
6つのスキルがグラを襲い《障壁》内を煙が覆い尽くす。
「もういいでしょ。出してよ」
結果を見るまでもなく終わったと判断したナナシは今にも《障壁》を破りそうなほど苛立っている。だが、その苛立ちはすぐにより強い苛立ちに変わった。
「ナナシのスキルは美味しいね。もっと撃ってよ」
煙が晴れると傷1つついていないグラがポンポンとお腹を叩いて笑顔を浮かべている。
「あー、もうっ!本当に面倒くさい!」
どういう原理で防がれたかは分かっていないが、スキルは通用しないと判断したのか今度は接近戦に持ち込む。
ナナシの接近を防ごうともせず、グラはナナシを懐に潜らせる。そこからナナシの拳が腹に抉り込むが、貫通した様子はない。
そう、グラは耐久に特化した七英雄で相手にするのはただただ面倒くさい。その癖、質が悪いのは___
そう思っていると早速、その質の悪さが出た。
「《放出》」
ナナシのスキルを受けても無傷だった理由に繋がるが、グラは《暴食》によって相手のスキルを食べる。それを自分の魔力に変換することもできるしこうやって吐き出すこともできる。
しかし、ナナシのスキル、それも威力を3割に抑えた攻撃がナナシに通用する訳もなく何もせず至近距離でそれを受け止めた。
「何をしたいのかな?私をバカにできるくらい強いの?だったらその強さ見せてよ」
いつになくナナシは怒っている。七英雄の底は知れてもう楽しめすらしないということか。シアンもグラもどうせ俺と戦いと言うだろうからナナシに押し付けようと思っていたが、流石にできそうにない。
「そういうことはおいらに傷をつけてから言ってよ」
あ…
そう思った時にはもう遅かった。
ナナシの怒りは限界を超え、グラの腹を貫いていた。俺に配慮する程度の余裕はあったのかスキルを使って跡形もなく消すことは避けてくれたようだ。
しかし、困ったものだ。シアンとグラの扱いを含めナナシへのフォローも考えなければならない。
「腐れ、治療してやれ」
こっそりと見に来ていた腐れにそう指示をするとナナシに近寄る。
「何?いくらゼギウスでもやっていいことと悪いことがあるよ」
「そこまで怒るとは思ってなかった。七英雄級の強さなら制限掛ければ楽しめると思ったんだよ」
事実、本当にそう思っていた。だが、ラクルとの戦いでの失望が大き過ぎたようだ。
これだけ怒っていると仕方がないが、俺が戦うしかない。
「つまらないもん。人間の七罪は弱すぎて相手にならないもん」
「悪かったな。お詫びにスキル縛りでいいなら俺と戦うか?」
「本当に!?また約束破ったりしない?」
今まではぐらかし過ぎたか。疑り深くなっている。
今後の扱いやすさも含めてここらでリセットしとくか。
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