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55話
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少し気持ち悪そうに寝ているゼギウスを眺めながら少し寂しい気持ちになる。本人は否定しているが、その行動は人間を味方するもので今回のスキルを教えたのはやり過ぎだ。
それを教えたところで庭との戦力差が大して埋まる訳ではなければ庭も脅威と感じず見逃すだろうけど、ゼギウスの心の変化は受け取れる。多分庭も同じ判断をするはずだ。
いつもゼギウスとは戦いたいと思っているが敵として戦いたい訳じゃない。敵として戦えばどっちかが命を落とす。そうなれば遊び相手が居なくなる。
それにゼギウスの事は母様と同じくらい好きだ。だって家族だから。
だけど、ゼギウスに味方はできない。
母様や庭の方針は決まっている。それに敵対するようなことはできない。だけど、ゼギウスとは敵として戦いたくない。どうすればいいんだろう……
難しいことを考えるのは嫌いなのに否応なく考えさせられる。きっとゼギウスは何の気なしに私に考えさせるような行動をしているのだろう。もう少し自分の行動の重みを考えた方がいい。
いや、ゼギウスのことだから重みを理解しているし考えもあるか。じゃあやっぱり人間に味方するので心が固まった…そう判断せざるを得ない。
「はぁ……」
もういっそのこと七罪を全員始末しようか。そうすればゼギウスの目も覚めるはず。
いや、それは庭の、あいつ等の意思に反する。従いたくはないけど母様が従えと言うから仕方がない。
一瞬そんな考えが浮かんだが即座に否定される。それはゼギウスの立場を悪くしてしまう。
「あー、もう!ゼギウスのバカ!」
難しいことを考えさせる原因のゼギウスを蹴ってからその場を離れる。
空に飛びあがり辺りの気配を探ると、強欲だっけ?さっきゼギウスがスキルを教えた女が離れた場所に向かっている。他には暴食がゼギウスに押し付けられた防衛として魔物を狩っていたり……嫉妬と色欲かな?庭のある方向に2人が別々に居たりする。
色欲が嫉妬を追っているのだろう。遠回りや別道を挟みながら嫉妬を尾行しているように見える。
一応ここに居る目的として七罪の監視も含まれていた。
主目的はゼギウスの雑用だが、一応こっちの目的もある程度はやっておかないと庭がうるさい。それに庭から違う奴が出てきたらゼギウスが怒る。そうさせないためにも私がしっかりと動かないといけない。
強欲はスキルの調整、暴食はゼギウスの雑用、と目を離していても問題ない。それよりも気になるのは嫉妬と色欲だ。
偶然か狙ってかは分からないが庭の場所に近づいているのなら見過ごす訳にはいかない。
そう嫉妬と色欲の索敵に引っ掛からない程度に気配を消す。
でも、どうやって庭の場所を見つけたのだろうか。傲慢の時は誘き寄せたが、今は違う。それに庭の場所に関する記憶は消したはず、だったらどうして?
考えていると1つ思い当たった。
憤怒を連れて来た時に転送ではなく普通に地上を移動した。もしかしたらその痕跡を辿ったのかもしれない。
そうなるとゼギウスはそのことも見越して憤怒を招き入れた?じゃあやっぱり…あー、もう!
考えたところで分からないのに考えてしまう。直接聞いてもはぐらかされるのが目に見えているから聞いても無駄だ。
本当にゼギウスは……
イライラして頭を掻いていると嫉妬と色欲に動きがあった。
まだ庭からは離れているのに嫉妬は立ち止まり色欲の居る方を向く。どうやらつけられていることに気づいたようだ。
目を向けて耳を傾けて2人の会話が聞こえるようにする。
「僕に何か用かな?」
「そうね、貴方を殺しに来た。と言えばいいかしら?」
色欲の物騒な言葉に嫉妬は落ち着いている。それだけのことをした自覚があったり来ることを分かっていたりする反応だ。
「ゼギウスのおかげで呪いの全てを解除されて勘違いしたのかな?今この状況で僕を殺す。その重みを分かっているのかい?」
この喋り方は嫌いだ。紳士を装って無駄に賢ぶり人を見下している人がする言葉遣いに似ている。
「嫉妬が貴方である必要はないわ。七英雄は揃っていれば誰でも構わない。どうせ傲慢と憤怒の替えは用意しているのでしょう?」
「ははは、そうだね。憤怒は候補止まりだけど傲慢は継承済みだよ。でも僕に歯向かうよりおとなしく飼われていた方が君のためだと思うけど、甘やかし過ぎたかな」
人間の七英雄が継承で戦力の維持をしているのは聞いたことがあるような気がするけど、面白い話だ。これが全て庭に筒抜けだと分かっているのだろうか?いや、庭はもう全部知っているか。
「ゼギくんには迷惑をかけ過ぎたからね。これ以上は迷惑をかけられないの」
「そうか、教育が足りなかったんだね。もういい、使えない駒は必要ない。でも、君のスキルは継承させたいからここで息の根までは止めないよ」
化けの皮が剥がれたように似非紳士から性格の悪さが滲み出てくる。
完全に見下している発言だが、確かに嫉妬の方が強く見える。スキルの相性や戦術、環境といった要素で覆る可能性はあるが、嫉妬が待ち構えていた時点で覆る可能性もないだろう。
もう戦いが始まりそうな雰囲気だが、ゼギウスに知らせてきた方がいいだろうか。確か、前ここに来た時に色欲は居たような気がする。
そうなるとゼギウスのお気に入りで居なくなったらきっと悲しむ。それはそれで都合がいいけどゼギウスが悲しむ顔は見たくない。
あー、もう!今日は本当にゼギウスに考えさせられてばっかりだ!
これはまたゼギウスと遊んでもらわなきゃ割に合わない。そう思いながら報告のご褒美に戦いを要求しようとゼギウスの元へ戻る。
相変わらずゼギウスは少し気持ち悪そうな表情を浮かべて眠っているが体を揺すって起こす。
「ゼギウス、起きて」
「んぇ、ナナシか。今は気持ち悪ぃから後にしろ」
さっきよりも体調が悪そうだ。それもそのはず、魔力系統を変化させた直後はその魔力で体が満たされているが、時間が経てば元々の魔力系統で魔力が生成され体内に2種類の魔力が存在することになる。
それは比率が近くなるほど体の拒絶反応が強くなり常人であれば死に至る。ってゼギウスが言っていた気がしないでもない。だからゼギウス以外からは直接魔力を貰うなって言われていた…はず。
「自分で言ってたこと忘れたの?」
ゼギウスの手を取り魔力を流す。ハオの時と違って今は体の状態も万全に近いから一気に大量の魔力を流し込むとゼギウスの表情はいつもの怠そうな感じに戻った。
「最初からこうしろよ」
助けてあげたのに酷い言われようだ。ゼギウスは感謝というものが足りない。
「別に助けなくてもよかったんだよ?って、そうじゃなくて嫉妬と色欲が本気で戦いそうだからその報告」
やはり色欲はゼギウスのお気に入りなのか表情が険しくなる。
「どのくらい本気だった?」
「色欲は殺す気だったよ。嫉妬の方は継承のために連れて帰るって言ってたかな?」
「はぁ…馬鹿だな。ルルを呼んで来い」
ゼギウスは呆れたように溜息を吐くが、ルルが誰か分からない。
「ルルって言われても分からないよ」
「銀髪の小さい少女って言えば分かるか?」
あー、そんな子が居たような気がする。でも、何で私が…
つい最近戦ってもらったから文句は言えないがこれじゃあ小間使いだ。普段と変わらないって?そうだね、その通りだよ!
そんなくだらない自問自答をする。
「うん。このお礼はスキル有りの戦いね」
ゼギウスからの返事を聞かず城の中へ行きルル?を探す。魔力が少ないから索敵には引っ掛からない。代わりに単純な気配で探るとゼギウスの部屋の隣に2人いた。
その部屋に入ると金髪の少女と目的の銀髪の少女が居た。
「ナナシさんですね、どうかしたのですか?」
「ルルだっけ?ゼギウスが呼んでるよ」
そう伝えると何故か金髪の少女が不貞腐れる。どうしてかは分からないが相手にしている暇はない。
「多分、あの件。ララも来るといい」
「ですがご主人様が呼んだのはルルだけです」
「何でもいいけど急いでるから2人とも連れてくね」
もう戦闘が始まっていてもおかしくない状況だから強引に2人を抱えてゼギウスの元に戻る。そのままゼギウスも抱えると嫉妬と色欲の場所へ向かった。
それを教えたところで庭との戦力差が大して埋まる訳ではなければ庭も脅威と感じず見逃すだろうけど、ゼギウスの心の変化は受け取れる。多分庭も同じ判断をするはずだ。
いつもゼギウスとは戦いたいと思っているが敵として戦いたい訳じゃない。敵として戦えばどっちかが命を落とす。そうなれば遊び相手が居なくなる。
それにゼギウスの事は母様と同じくらい好きだ。だって家族だから。
だけど、ゼギウスに味方はできない。
母様や庭の方針は決まっている。それに敵対するようなことはできない。だけど、ゼギウスとは敵として戦いたくない。どうすればいいんだろう……
難しいことを考えるのは嫌いなのに否応なく考えさせられる。きっとゼギウスは何の気なしに私に考えさせるような行動をしているのだろう。もう少し自分の行動の重みを考えた方がいい。
いや、ゼギウスのことだから重みを理解しているし考えもあるか。じゃあやっぱり人間に味方するので心が固まった…そう判断せざるを得ない。
「はぁ……」
もういっそのこと七罪を全員始末しようか。そうすればゼギウスの目も覚めるはず。
いや、それは庭の、あいつ等の意思に反する。従いたくはないけど母様が従えと言うから仕方がない。
一瞬そんな考えが浮かんだが即座に否定される。それはゼギウスの立場を悪くしてしまう。
「あー、もう!ゼギウスのバカ!」
難しいことを考えさせる原因のゼギウスを蹴ってからその場を離れる。
空に飛びあがり辺りの気配を探ると、強欲だっけ?さっきゼギウスがスキルを教えた女が離れた場所に向かっている。他には暴食がゼギウスに押し付けられた防衛として魔物を狩っていたり……嫉妬と色欲かな?庭のある方向に2人が別々に居たりする。
色欲が嫉妬を追っているのだろう。遠回りや別道を挟みながら嫉妬を尾行しているように見える。
一応ここに居る目的として七罪の監視も含まれていた。
主目的はゼギウスの雑用だが、一応こっちの目的もある程度はやっておかないと庭がうるさい。それに庭から違う奴が出てきたらゼギウスが怒る。そうさせないためにも私がしっかりと動かないといけない。
強欲はスキルの調整、暴食はゼギウスの雑用、と目を離していても問題ない。それよりも気になるのは嫉妬と色欲だ。
偶然か狙ってかは分からないが庭の場所に近づいているのなら見過ごす訳にはいかない。
そう嫉妬と色欲の索敵に引っ掛からない程度に気配を消す。
でも、どうやって庭の場所を見つけたのだろうか。傲慢の時は誘き寄せたが、今は違う。それに庭の場所に関する記憶は消したはず、だったらどうして?
考えていると1つ思い当たった。
憤怒を連れて来た時に転送ではなく普通に地上を移動した。もしかしたらその痕跡を辿ったのかもしれない。
そうなるとゼギウスはそのことも見越して憤怒を招き入れた?じゃあやっぱり…あー、もう!
考えたところで分からないのに考えてしまう。直接聞いてもはぐらかされるのが目に見えているから聞いても無駄だ。
本当にゼギウスは……
イライラして頭を掻いていると嫉妬と色欲に動きがあった。
まだ庭からは離れているのに嫉妬は立ち止まり色欲の居る方を向く。どうやらつけられていることに気づいたようだ。
目を向けて耳を傾けて2人の会話が聞こえるようにする。
「僕に何か用かな?」
「そうね、貴方を殺しに来た。と言えばいいかしら?」
色欲の物騒な言葉に嫉妬は落ち着いている。それだけのことをした自覚があったり来ることを分かっていたりする反応だ。
「ゼギウスのおかげで呪いの全てを解除されて勘違いしたのかな?今この状況で僕を殺す。その重みを分かっているのかい?」
この喋り方は嫌いだ。紳士を装って無駄に賢ぶり人を見下している人がする言葉遣いに似ている。
「嫉妬が貴方である必要はないわ。七英雄は揃っていれば誰でも構わない。どうせ傲慢と憤怒の替えは用意しているのでしょう?」
「ははは、そうだね。憤怒は候補止まりだけど傲慢は継承済みだよ。でも僕に歯向かうよりおとなしく飼われていた方が君のためだと思うけど、甘やかし過ぎたかな」
人間の七英雄が継承で戦力の維持をしているのは聞いたことがあるような気がするけど、面白い話だ。これが全て庭に筒抜けだと分かっているのだろうか?いや、庭はもう全部知っているか。
「ゼギくんには迷惑をかけ過ぎたからね。これ以上は迷惑をかけられないの」
「そうか、教育が足りなかったんだね。もういい、使えない駒は必要ない。でも、君のスキルは継承させたいからここで息の根までは止めないよ」
化けの皮が剥がれたように似非紳士から性格の悪さが滲み出てくる。
完全に見下している発言だが、確かに嫉妬の方が強く見える。スキルの相性や戦術、環境といった要素で覆る可能性はあるが、嫉妬が待ち構えていた時点で覆る可能性もないだろう。
もう戦いが始まりそうな雰囲気だが、ゼギウスに知らせてきた方がいいだろうか。確か、前ここに来た時に色欲は居たような気がする。
そうなるとゼギウスのお気に入りで居なくなったらきっと悲しむ。それはそれで都合がいいけどゼギウスが悲しむ顔は見たくない。
あー、もう!今日は本当にゼギウスに考えさせられてばっかりだ!
これはまたゼギウスと遊んでもらわなきゃ割に合わない。そう思いながら報告のご褒美に戦いを要求しようとゼギウスの元へ戻る。
相変わらずゼギウスは少し気持ち悪そうな表情を浮かべて眠っているが体を揺すって起こす。
「ゼギウス、起きて」
「んぇ、ナナシか。今は気持ち悪ぃから後にしろ」
さっきよりも体調が悪そうだ。それもそのはず、魔力系統を変化させた直後はその魔力で体が満たされているが、時間が経てば元々の魔力系統で魔力が生成され体内に2種類の魔力が存在することになる。
それは比率が近くなるほど体の拒絶反応が強くなり常人であれば死に至る。ってゼギウスが言っていた気がしないでもない。だからゼギウス以外からは直接魔力を貰うなって言われていた…はず。
「自分で言ってたこと忘れたの?」
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「最初からこうしろよ」
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「別に助けなくてもよかったんだよ?って、そうじゃなくて嫉妬と色欲が本気で戦いそうだからその報告」
やはり色欲はゼギウスのお気に入りなのか表情が険しくなる。
「どのくらい本気だった?」
「色欲は殺す気だったよ。嫉妬の方は継承のために連れて帰るって言ってたかな?」
「はぁ…馬鹿だな。ルルを呼んで来い」
ゼギウスは呆れたように溜息を吐くが、ルルが誰か分からない。
「ルルって言われても分からないよ」
「銀髪の小さい少女って言えば分かるか?」
あー、そんな子が居たような気がする。でも、何で私が…
つい最近戦ってもらったから文句は言えないがこれじゃあ小間使いだ。普段と変わらないって?そうだね、その通りだよ!
そんなくだらない自問自答をする。
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ゼギウスからの返事を聞かず城の中へ行きルル?を探す。魔力が少ないから索敵には引っ掛からない。代わりに単純な気配で探るとゼギウスの部屋の隣に2人いた。
その部屋に入ると金髪の少女と目的の銀髪の少女が居た。
「ナナシさんですね、どうかしたのですか?」
「ルルだっけ?ゼギウスが呼んでるよ」
そう伝えると何故か金髪の少女が不貞腐れる。どうしてかは分からないが相手にしている暇はない。
「多分、あの件。ララも来るといい」
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