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61話
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ゼギウスの話を聞いてもすぐには答えが出せないでいた。それは話の規模の大きさに頭がついていっていないのが主な要因だと思う。
ゼギウスが今話したのは世界の先を決める話だ。しかし、我は柱だ何だと言っても所詮は人間で言うところの1国の主、とても世界を動かす存在ではない。小さい意味で言えば世界を動かすかもしれないし他の柱と協力すれば種の命運を懸ける戦いにはなるだろう。
しかし、我はその戦いから逃げた。中立という名のどちらにもつかない選択をした。
人間との共存も父上が目指した夢でそれを引き継いだだけに過ぎず、我が決めたのではないと覚悟の弱さから思い知らされる。我が自分自身で決めたのであれば即答できたはずだ。
だって我の望むものとゼギウスの目指す先が同じになったのだから迷う要素がない。
そう自分の弱さを思い知っているとララが口を開く。
「この世界に安全な場所などあるのですか?七英雄と庭が戦えばどちらが負けるかは明白。それなら私は私の生きたいように生きます」
「庭は七英雄を始末しても人間を滅ぼしはしない。だから俺の元に居るよりかは安全だし生き延びるくらいはできると思うぞ」
ゼギウスはララとルルを巻き込みたくないように見える。2人は戦闘要員ではないから無駄に戦場に身を置く必要がない。それには我も同意じゃ。
だから強引にでも突き放せばいいのにゼギウスはそうはしない。
「そうですか。ですが、私の気持ちは変わりません。生き延びた先にご主人様がいないのであれば意味はありません。私は私の名付け親を見殺しにするような人にはなりたくないです」
「ララは簡単に決め過ぎだ、もっと真剣に考えろ。あと誰が名付け親だ、ルルからも言ってやれ」
そうゼギウスは無言のルルに話を振る。
「パパの言うことにも一理ある。だけど私たちの考えは変わらない」
「誰がパパだ…腐れ何とか言ってやれ」
「名付けてもらったのは私が最初なので私が長女ですね」
「あのなぁ……」
真面目な話をしているのにゼギウス以外はふざけている。それは聞くまでもないという返答なのだろう。何も迷いがないように見えた。
「では、おふざけなく話します。私はゼギウス様に助けてもらいました。その時にこの恩は生涯を捧げ返すと誓いました。私の存在が邪魔になるのならどこへでも消えます。ですが、ゼギウス様は判断を私たちに任せました。それは居ても邪魔にはならないとゼギウス様が判断したということ、それなら残って役に立てるよう尽くすのが私のやりたい事です」
3人とも考えているのだろうが、考えていないような即答だ。それだけ自分の中での優先順位が決まっていてそれに従って判断したのだろう。その決断力には驚かされる。
しかし、3人の答えを聞いても我は答えを出せないでいた。
「ゆっくり考えろ。少し席を外すぞ」
我に気を遣ってかゼギウスはララとルル、闇商人を連れて部屋を出る。周りに影響されないように考える時間をくれた。
そこで改めて考える。我がやりたいこと、我の望み……
思い浮かんだのはこの城や四獣、スー、父上から引き継いだものと未熟な我についてきてくれた配下たちを護りたいということ。これは誰に言われるでもなく我が自分で決めたことだ。
次はそれらを護るために最善のことを考える。
ゼギウスに協力すると配下たちは危険に曝される。この城も戦場になるだろう。ナナシよりも強い者が居るということはこの城も無事では済むまい。
じゃあゼギウスたちがこの場を去ったら?
我と四獣、スー、戦力になるのはこれだけでこの大戦を乗り切らなくてはならない。ゼギウスが居なくなるということは七罪もここへ攻めてくるということ。スカーを倒したことは影響しないだろうが、他の柱と手を組めるかは分からない。
仮に手を組めたとしてもやがてはゼギウスたちと戦うことになる。それは嫌じゃ。
考えても分からない。どっちにせよ危険は付き纏い、1歩間違えれば全てを失う。
「スーよ、我はどうすればいいのじゃ……」
(それはアルメシアが決めること。でも私なら迷わない)
スーでさえも即答した。みんな即答できるのに何故、我だけが答えを出せないのじゃ…
「アルメシアちゃんは背負い過ぎなのよ」
そう我の心を見透かしたような言葉がベッドから聞こえてくる。メナドールが目を覚ましたようだ。
「お主、体は大丈夫なのか?」
「えぇ、この部屋に来た時にはもう意識はあったわ。ただ、今はゼギくんと話したくなかったの」
いつもゼギウスにべったりなメナドールが話したくないとは余程のことがあったのだろうが、今は気にしている余裕はない。
「そうであったか。それで我が背負い過ぎというのはどういう意味じゃ?」
「アルメシアちゃんは身の丈にあってないものを背負っているのよ。アルメシアちゃんの力だと自分の身も守れるか怪しいわ。それなのにこの城や配下、多くのものを護ろうとしている。だから何を選ぼうとしても不安になるの。だって何をするにも自分の力が足りてないから」
忖度の無い厳しい言葉だが、言っていることは分かった。
思い返せばスカーとの戦いも自身には繋がったもののゼギウス無しでは勝てなかった。ゼギウスがここに来てからというもの頼り切りだった。
その恩を返すまではゼギウスと共に居たいという気持ちはある。まだまだ力を借りっぱなしにはなると思うがいつの日か恩を返せるような成長した我を見せたい。
しかし、それは我の個人的な願いであって配下を導く立場の我が優先すべきことではない。いつものゼギウスにならその信頼度から迷いもなくついていくが、あのゼギウスが勝てないと言った。
ゼギウスが勝てない相手に我を含めここにいる全員が戦力になる訳がない。そんな勝てない戦いに配下を巻き込み無駄死にさせるなんてことはできない。
そう悩んでいるとまたメナドールに声を掛けられる。
「身の丈に合わないものを背負っていた先輩として1つアドバイスをするわ。私の故郷は魔界から近い場所にあったの。だけど私の居た国は人間との争いが絶えなくて魔物に向けて戦力を割いている余裕はなかったわ」
そうメナドールは語り始める。
「だけど当時の私には故郷を護り切れるような力はなくて冒険者を雇おうと稼ぐのに必死だったわ。稼いで稼いで稼いで大勢の冒険者を雇って故郷を護ってもらったの。だけどそんな私の努力を嘲笑うようにハオが全てを壊していった」
そのことを話すメナドールからは虚無のように感情が一切感じ取れない。きっと悲しみや怒りといった感情がなくなるまで出し尽くしたのだろう。そして悟りを開かなければ前を向けなかった。
だからハオに止めを刺した時も我よりも早く次を見据えていた。
「私は当時の私の判断が最善だったとは思ってる。私1人が故郷に残るより広い範囲を護れるし戦力も上だったことは間違いなかった。だけど、凄く後悔したの。何で他人に任せたんだろうって。自分が護ろうとして護りたかったはずなのに、なんで最後の時に自分がその場に居なかったんだって今でも後悔してる」
後悔していると言いながらもやはり感情は感じられない。
「だからやるべきことよりも自分が後悔しないことを優先するといいわ。どの道を選んでも失敗すれば後悔はする。だから失敗した時に後悔の少ない道を選ぶの。これが身の丈に合わないものを背負っていた先輩からのアドバイスよ」
そう言うとメナドールも部屋を出ていった。
「スーよ、迷惑をかけるかもしれないがよいか?」
(アルメシアが迷惑をかけているのはいつもの事。今更言われても困る)
「本当にお主という奴は……ゼギウスたちを呼んできてくれぬか?」
いつも通りのスーに呆れながらもゼギウスたちを呼んできてもらう。もう迷いはない。
「決まったか?」
少しするとゼギウスたちが戻ってきた。
「我もその話に乗るのじゃ。我が居なくなってはお主たちが家無しになってしまうからの」
「いいんだな?」
「うむ。覚悟は決まったのじゃ」
これが我の悔い少なくなる選択じゃ。
ゼギウスが今話したのは世界の先を決める話だ。しかし、我は柱だ何だと言っても所詮は人間で言うところの1国の主、とても世界を動かす存在ではない。小さい意味で言えば世界を動かすかもしれないし他の柱と協力すれば種の命運を懸ける戦いにはなるだろう。
しかし、我はその戦いから逃げた。中立という名のどちらにもつかない選択をした。
人間との共存も父上が目指した夢でそれを引き継いだだけに過ぎず、我が決めたのではないと覚悟の弱さから思い知らされる。我が自分自身で決めたのであれば即答できたはずだ。
だって我の望むものとゼギウスの目指す先が同じになったのだから迷う要素がない。
そう自分の弱さを思い知っているとララが口を開く。
「この世界に安全な場所などあるのですか?七英雄と庭が戦えばどちらが負けるかは明白。それなら私は私の生きたいように生きます」
「庭は七英雄を始末しても人間を滅ぼしはしない。だから俺の元に居るよりかは安全だし生き延びるくらいはできると思うぞ」
ゼギウスはララとルルを巻き込みたくないように見える。2人は戦闘要員ではないから無駄に戦場に身を置く必要がない。それには我も同意じゃ。
だから強引にでも突き放せばいいのにゼギウスはそうはしない。
「そうですか。ですが、私の気持ちは変わりません。生き延びた先にご主人様がいないのであれば意味はありません。私は私の名付け親を見殺しにするような人にはなりたくないです」
「ララは簡単に決め過ぎだ、もっと真剣に考えろ。あと誰が名付け親だ、ルルからも言ってやれ」
そうゼギウスは無言のルルに話を振る。
「パパの言うことにも一理ある。だけど私たちの考えは変わらない」
「誰がパパだ…腐れ何とか言ってやれ」
「名付けてもらったのは私が最初なので私が長女ですね」
「あのなぁ……」
真面目な話をしているのにゼギウス以外はふざけている。それは聞くまでもないという返答なのだろう。何も迷いがないように見えた。
「では、おふざけなく話します。私はゼギウス様に助けてもらいました。その時にこの恩は生涯を捧げ返すと誓いました。私の存在が邪魔になるのならどこへでも消えます。ですが、ゼギウス様は判断を私たちに任せました。それは居ても邪魔にはならないとゼギウス様が判断したということ、それなら残って役に立てるよう尽くすのが私のやりたい事です」
3人とも考えているのだろうが、考えていないような即答だ。それだけ自分の中での優先順位が決まっていてそれに従って判断したのだろう。その決断力には驚かされる。
しかし、3人の答えを聞いても我は答えを出せないでいた。
「ゆっくり考えろ。少し席を外すぞ」
我に気を遣ってかゼギウスはララとルル、闇商人を連れて部屋を出る。周りに影響されないように考える時間をくれた。
そこで改めて考える。我がやりたいこと、我の望み……
思い浮かんだのはこの城や四獣、スー、父上から引き継いだものと未熟な我についてきてくれた配下たちを護りたいということ。これは誰に言われるでもなく我が自分で決めたことだ。
次はそれらを護るために最善のことを考える。
ゼギウスに協力すると配下たちは危険に曝される。この城も戦場になるだろう。ナナシよりも強い者が居るということはこの城も無事では済むまい。
じゃあゼギウスたちがこの場を去ったら?
我と四獣、スー、戦力になるのはこれだけでこの大戦を乗り切らなくてはならない。ゼギウスが居なくなるということは七罪もここへ攻めてくるということ。スカーを倒したことは影響しないだろうが、他の柱と手を組めるかは分からない。
仮に手を組めたとしてもやがてはゼギウスたちと戦うことになる。それは嫌じゃ。
考えても分からない。どっちにせよ危険は付き纏い、1歩間違えれば全てを失う。
「スーよ、我はどうすればいいのじゃ……」
(それはアルメシアが決めること。でも私なら迷わない)
スーでさえも即答した。みんな即答できるのに何故、我だけが答えを出せないのじゃ…
「アルメシアちゃんは背負い過ぎなのよ」
そう我の心を見透かしたような言葉がベッドから聞こえてくる。メナドールが目を覚ましたようだ。
「お主、体は大丈夫なのか?」
「えぇ、この部屋に来た時にはもう意識はあったわ。ただ、今はゼギくんと話したくなかったの」
いつもゼギウスにべったりなメナドールが話したくないとは余程のことがあったのだろうが、今は気にしている余裕はない。
「そうであったか。それで我が背負い過ぎというのはどういう意味じゃ?」
「アルメシアちゃんは身の丈にあってないものを背負っているのよ。アルメシアちゃんの力だと自分の身も守れるか怪しいわ。それなのにこの城や配下、多くのものを護ろうとしている。だから何を選ぼうとしても不安になるの。だって何をするにも自分の力が足りてないから」
忖度の無い厳しい言葉だが、言っていることは分かった。
思い返せばスカーとの戦いも自身には繋がったもののゼギウス無しでは勝てなかった。ゼギウスがここに来てからというもの頼り切りだった。
その恩を返すまではゼギウスと共に居たいという気持ちはある。まだまだ力を借りっぱなしにはなると思うがいつの日か恩を返せるような成長した我を見せたい。
しかし、それは我の個人的な願いであって配下を導く立場の我が優先すべきことではない。いつものゼギウスにならその信頼度から迷いもなくついていくが、あのゼギウスが勝てないと言った。
ゼギウスが勝てない相手に我を含めここにいる全員が戦力になる訳がない。そんな勝てない戦いに配下を巻き込み無駄死にさせるなんてことはできない。
そう悩んでいるとまたメナドールに声を掛けられる。
「身の丈に合わないものを背負っていた先輩として1つアドバイスをするわ。私の故郷は魔界から近い場所にあったの。だけど私の居た国は人間との争いが絶えなくて魔物に向けて戦力を割いている余裕はなかったわ」
そうメナドールは語り始める。
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そのことを話すメナドールからは虚無のように感情が一切感じ取れない。きっと悲しみや怒りといった感情がなくなるまで出し尽くしたのだろう。そして悟りを開かなければ前を向けなかった。
だからハオに止めを刺した時も我よりも早く次を見据えていた。
「私は当時の私の判断が最善だったとは思ってる。私1人が故郷に残るより広い範囲を護れるし戦力も上だったことは間違いなかった。だけど、凄く後悔したの。何で他人に任せたんだろうって。自分が護ろうとして護りたかったはずなのに、なんで最後の時に自分がその場に居なかったんだって今でも後悔してる」
後悔していると言いながらもやはり感情は感じられない。
「だからやるべきことよりも自分が後悔しないことを優先するといいわ。どの道を選んでも失敗すれば後悔はする。だから失敗した時に後悔の少ない道を選ぶの。これが身の丈に合わないものを背負っていた先輩からのアドバイスよ」
そう言うとメナドールも部屋を出ていった。
「スーよ、迷惑をかけるかもしれないがよいか?」
(アルメシアが迷惑をかけているのはいつもの事。今更言われても困る)
「本当にお主という奴は……ゼギウスたちを呼んできてくれぬか?」
いつも通りのスーに呆れながらもゼギウスたちを呼んできてもらう。もう迷いはない。
「決まったか?」
少しするとゼギウスたちが戻ってきた。
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