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70話
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食事を終えてからしばらく、ゼギくんの近くで皇城の動きを監視しているとようやく動きがあった。
ゼギくんの言う通り姿の消えた謁見の間に6人は戻ってきたが、特に変わった様子はない。全員、体調も良さそうだ。いや、戦っていたのだから全員が元気というのはおかしいよね。
「ゼギくん、戻って来たよ」
「そうか。そのまま監視を続けろ」
マルスとシアンは戦っていたことからも揉めているのは想像できたが、和解はできていないようでシアンとグラはすぐに皇城を出る。残りの4人は城内で話していた。
それには正直、助かる。ゼギくんにマルス以外の全員を監視しろと言われていたが5人も別の視点に集中するのは大変だ。動かすだけなら何万と同時に動かせるが、目は複眼になった感じがして気持ち悪い。
4人が話しているのも主にマルスがこれからの動きについて指示を出しているだけだ。それも柱を倒す算段で庭についての話はない。
それなら今はシアンとグラに意識を6割割いて、他の4人に4割でいいかな。
そう主にシアンとグラの方に意識を向けていると早速、変化に気づく。
シアンがグラに向かってスキルを撃っているのだ。それだけならスキルの効かないグラを相手に新しいスキルや戦術を試しているだけだが、その威力がおかしい。
シアンお得意の陣を描いた狡猾なスキルが致命傷を与えそうな威力をしているのだ。それをグラも驚いた様子で《暴食》を使って食べている。
「シアンの陣を描くスキルの威力が上がってるよ」
そう意識はシアンとグラに向けたままゼギくんに話しかける。
「どのくらいだ?」
「うーん、相手がグラだから何ともないけど、攻撃って言えるような威力?」
「分かりにくいな。共有してくれ」
その言葉を待っていた。
目を開けてゼギくんのおでこを私のおでこに引っ付ける。それでゼギくんにも見えるように《共有》を使う。
《共有》は滅多に使わないゼギくん専用のスキルだ。いくら私でも興味の無い人とおでこを合わせる趣味はない。
「確かに威力が上がってるな。だが、この程度じゃ分からねぇ。もっと分かりやすく強くなってるはずだ」
これでも十分桁外れに強くなってるよ。なんてことは言えなかった。
それよりも今は意識を割かれることがある。
吐息が当たる距離、少し口を伸ばせば接吻できるその距離でゼギくんと話している。目を開けていたら抑えられなかっただろう。目を閉じていても口を伸ばそうか迷ってしまう。
「おい、集中しろ。乱れてるぞ」
「失礼だよ!淫らじゃないもん!」
「は?アホか、目が乱れてるって言ってるんだよ。脳みそ腐ってんのか」
あぅ…恥ずかしい聞き間違いだ。これじゃあゼギくんに変態だって思われちゃう。
そう思うと集中しようとしても集中できない。意識が閉じている目の先、ゼギくんの口へと吸い寄せられる。
「もういい。1人で監視してろ」
ゼギくんはそう言って離れてしまう。それを止めようと目を開けてしまった。
あっ…視界にゼギくんの唇が映り、もう抑えられなかった。ゼギくんの口に吸い寄せられ接吻する。
しかし、寸でのところでゼギくんの手に阻まれた。
「最近、おとなしいと思ったら発情期か」
「ゼギくん、私は色欲よ?ゼギくんも七英雄の称号を持ってるんだからその意味、分かるでしょ?」
七英雄というのは単なる称号ではない。自分の潜在的な力を引き出す選ばれし者にのみ与えられるもの。だから七英雄は他の冒険者と比べ物にならないほど強い。元から他の冒険者よりも優れている者がなるのだからその差は歴然だ。
しかし、当然いい効果だけではない。その反動もある。その称号の欲望や感情に駆られるのだ。
だから私の場合は性欲という衝動に駆られる。ゼギくんの怠け癖も怠惰が影響している。
「俺は何の影響もねぇよ」
「そんなことはどうでもいいの。ゼギくんいいでしょ?」
そう甘えるような声で目を潤ませてゼギくんを見上げる。ゼギくんは大人なお姉さんよりも甘えられる方が弱い。
「アホか、何で俺がそれに付き合わなきゃいけねぇんだよ」
「だってここに居る男はゼギくんだけだよ?」
「なら街にでも行ってこい」
「もしかしてゼギくんって初心なの?私って魅力の塊だと思うんだけどな~」
そう誘惑するように胸を強調する。思えばゼギくんからそういった話は聞いたことがない。ここにはララちゃんやルルちゃん、私以外にも魅力的な子が多い。男の子なら夢見るハーレムという状況なのにだ。
「あのなぁ、今がどういう状況か分かってるのか?」
「うん。私とゼギくんの2人きり何も邪魔するものはない、でしょ?」
「そうか。《幻影夢現》」
ゼギくんは溜息を吐いてスキルを唱えたかと思えば急に激しく襲い掛かって来る。「あぁんっ」と甘い声が漏れゼギくんに身を委ねた。
これじゃあバケモノじゃなくてケダモノだよ。
ゼギくんの激しい愛を前にそれから程なくして私は意識を失った。
「う~ん」
どれくらい意識を失っていただろうか。これ程までに気持ちのいい目覚めは初めてだ。
愛しのゼギくんが視界に入り思わず抱き着く。
「ゼ~ギくんっ!ぎゅ~!」
「いつも通りの鬱陶しさだな。戻ったのか?」
素っ気ない反応だ。あれだけ愛し合ったというのに、ゼギくんったら照屋さんなんだか、ら!
そうゼギくんの頬をつつく。
「もう恥ずかしがらなくていいのに。ゼギくんだってあんなに積極的だったじゃない」
「俺は何もしてねぇよ」
「もう、そんな嘘いらないのに」
「いや、マジで」
あまりにもゼギくんの素っ気ない態度に自分の格好を確認する。上から下へと何度も見直す。そうして気づいたのだが、私は服を着ている。それも情事に至る前と寸分違わず変わらない着方で。
私が着直した覚えはないから服を着せるとしたらゼギくんだが、ゼギくんがそんなことをするとは思えなければ少しは縛り方に違いが生じるはずだ。それなのに同じということは脱いでいないということ。ゼギくんの言っていることが正しいということだ。
その事実に顔が青ざめていく。
「えーっと…私って意識を失う前、どんな感じだった?」
「1人で勝手にモジモジって動いて腰が跳ねて気絶した。地面で寝られても邪魔だから面倒くせぇけどベッドに泣かせてやった」
最悪だ…これじゃあ私、ただの欲求不満な妄想女じゃん。おまけにその様子を全部ゼギくんに見られていたなんて……ここから遠くへ行って消えて無くなりたい。
「ゼギくん、その、ね?勘違いしないでね?私、そんな変態さんじゃないよ?」
「正常に戻ったならシアンとグラを見ろ。淫乱」
「う、うん。誠心誠意頑張らせていただきます。だから軽蔑しないで~!」
ゼギくんからの信用を取り戻すためにもう1度シアンとグラを確認する。しかし、さっき見た場所、その周辺にはシアンとグラの姿はない。
本当に最悪だ。恥ずかしい姿を見られただけでなく私がここに居る存在理由まで疎かにしてしまった。これじゃあ限りなく低いだろう私の名誉が挽回不能なところまで落ちてしまう。
そう必死にシアンとグラを探していると魔界の真ん中辺りで激しい爆発が起こる。シアンとグラを捜したいのに!と思いながらも万が一のことを考えて目を切り替えると、そこにシアンとグラが居た。
前までのシアンとグラなら考えられない移動速度だが、そこに居る以上、信じない訳にはいかない。
「ゼギくん、動きがあった」
そう言うとゼギくんは真剣なトーンを感じ取ってくれたのか嫌味の1つも言わずにおでこを合わせてくれる。今度は自制心を持ってゼギくんに視界を共有した。
ゼギくんの言う通り姿の消えた謁見の間に6人は戻ってきたが、特に変わった様子はない。全員、体調も良さそうだ。いや、戦っていたのだから全員が元気というのはおかしいよね。
「ゼギくん、戻って来たよ」
「そうか。そのまま監視を続けろ」
マルスとシアンは戦っていたことからも揉めているのは想像できたが、和解はできていないようでシアンとグラはすぐに皇城を出る。残りの4人は城内で話していた。
それには正直、助かる。ゼギくんにマルス以外の全員を監視しろと言われていたが5人も別の視点に集中するのは大変だ。動かすだけなら何万と同時に動かせるが、目は複眼になった感じがして気持ち悪い。
4人が話しているのも主にマルスがこれからの動きについて指示を出しているだけだ。それも柱を倒す算段で庭についての話はない。
それなら今はシアンとグラに意識を6割割いて、他の4人に4割でいいかな。
そう主にシアンとグラの方に意識を向けていると早速、変化に気づく。
シアンがグラに向かってスキルを撃っているのだ。それだけならスキルの効かないグラを相手に新しいスキルや戦術を試しているだけだが、その威力がおかしい。
シアンお得意の陣を描いた狡猾なスキルが致命傷を与えそうな威力をしているのだ。それをグラも驚いた様子で《暴食》を使って食べている。
「シアンの陣を描くスキルの威力が上がってるよ」
そう意識はシアンとグラに向けたままゼギくんに話しかける。
「どのくらいだ?」
「うーん、相手がグラだから何ともないけど、攻撃って言えるような威力?」
「分かりにくいな。共有してくれ」
その言葉を待っていた。
目を開けてゼギくんのおでこを私のおでこに引っ付ける。それでゼギくんにも見えるように《共有》を使う。
《共有》は滅多に使わないゼギくん専用のスキルだ。いくら私でも興味の無い人とおでこを合わせる趣味はない。
「確かに威力が上がってるな。だが、この程度じゃ分からねぇ。もっと分かりやすく強くなってるはずだ」
これでも十分桁外れに強くなってるよ。なんてことは言えなかった。
それよりも今は意識を割かれることがある。
吐息が当たる距離、少し口を伸ばせば接吻できるその距離でゼギくんと話している。目を開けていたら抑えられなかっただろう。目を閉じていても口を伸ばそうか迷ってしまう。
「おい、集中しろ。乱れてるぞ」
「失礼だよ!淫らじゃないもん!」
「は?アホか、目が乱れてるって言ってるんだよ。脳みそ腐ってんのか」
あぅ…恥ずかしい聞き間違いだ。これじゃあゼギくんに変態だって思われちゃう。
そう思うと集中しようとしても集中できない。意識が閉じている目の先、ゼギくんの口へと吸い寄せられる。
「もういい。1人で監視してろ」
ゼギくんはそう言って離れてしまう。それを止めようと目を開けてしまった。
あっ…視界にゼギくんの唇が映り、もう抑えられなかった。ゼギくんの口に吸い寄せられ接吻する。
しかし、寸でのところでゼギくんの手に阻まれた。
「最近、おとなしいと思ったら発情期か」
「ゼギくん、私は色欲よ?ゼギくんも七英雄の称号を持ってるんだからその意味、分かるでしょ?」
七英雄というのは単なる称号ではない。自分の潜在的な力を引き出す選ばれし者にのみ与えられるもの。だから七英雄は他の冒険者と比べ物にならないほど強い。元から他の冒険者よりも優れている者がなるのだからその差は歴然だ。
しかし、当然いい効果だけではない。その反動もある。その称号の欲望や感情に駆られるのだ。
だから私の場合は性欲という衝動に駆られる。ゼギくんの怠け癖も怠惰が影響している。
「俺は何の影響もねぇよ」
「そんなことはどうでもいいの。ゼギくんいいでしょ?」
そう甘えるような声で目を潤ませてゼギくんを見上げる。ゼギくんは大人なお姉さんよりも甘えられる方が弱い。
「アホか、何で俺がそれに付き合わなきゃいけねぇんだよ」
「だってここに居る男はゼギくんだけだよ?」
「なら街にでも行ってこい」
「もしかしてゼギくんって初心なの?私って魅力の塊だと思うんだけどな~」
そう誘惑するように胸を強調する。思えばゼギくんからそういった話は聞いたことがない。ここにはララちゃんやルルちゃん、私以外にも魅力的な子が多い。男の子なら夢見るハーレムという状況なのにだ。
「あのなぁ、今がどういう状況か分かってるのか?」
「うん。私とゼギくんの2人きり何も邪魔するものはない、でしょ?」
「そうか。《幻影夢現》」
ゼギくんは溜息を吐いてスキルを唱えたかと思えば急に激しく襲い掛かって来る。「あぁんっ」と甘い声が漏れゼギくんに身を委ねた。
これじゃあバケモノじゃなくてケダモノだよ。
ゼギくんの激しい愛を前にそれから程なくして私は意識を失った。
「う~ん」
どれくらい意識を失っていただろうか。これ程までに気持ちのいい目覚めは初めてだ。
愛しのゼギくんが視界に入り思わず抱き着く。
「ゼ~ギくんっ!ぎゅ~!」
「いつも通りの鬱陶しさだな。戻ったのか?」
素っ気ない反応だ。あれだけ愛し合ったというのに、ゼギくんったら照屋さんなんだか、ら!
そうゼギくんの頬をつつく。
「もう恥ずかしがらなくていいのに。ゼギくんだってあんなに積極的だったじゃない」
「俺は何もしてねぇよ」
「もう、そんな嘘いらないのに」
「いや、マジで」
あまりにもゼギくんの素っ気ない態度に自分の格好を確認する。上から下へと何度も見直す。そうして気づいたのだが、私は服を着ている。それも情事に至る前と寸分違わず変わらない着方で。
私が着直した覚えはないから服を着せるとしたらゼギくんだが、ゼギくんがそんなことをするとは思えなければ少しは縛り方に違いが生じるはずだ。それなのに同じということは脱いでいないということ。ゼギくんの言っていることが正しいということだ。
その事実に顔が青ざめていく。
「えーっと…私って意識を失う前、どんな感じだった?」
「1人で勝手にモジモジって動いて腰が跳ねて気絶した。地面で寝られても邪魔だから面倒くせぇけどベッドに泣かせてやった」
最悪だ…これじゃあ私、ただの欲求不満な妄想女じゃん。おまけにその様子を全部ゼギくんに見られていたなんて……ここから遠くへ行って消えて無くなりたい。
「ゼギくん、その、ね?勘違いしないでね?私、そんな変態さんじゃないよ?」
「正常に戻ったならシアンとグラを見ろ。淫乱」
「う、うん。誠心誠意頑張らせていただきます。だから軽蔑しないで~!」
ゼギくんからの信用を取り戻すためにもう1度シアンとグラを確認する。しかし、さっき見た場所、その周辺にはシアンとグラの姿はない。
本当に最悪だ。恥ずかしい姿を見られただけでなく私がここに居る存在理由まで疎かにしてしまった。これじゃあ限りなく低いだろう私の名誉が挽回不能なところまで落ちてしまう。
そう必死にシアンとグラを探していると魔界の真ん中辺りで激しい爆発が起こる。シアンとグラを捜したいのに!と思いながらも万が一のことを考えて目を切り替えると、そこにシアンとグラが居た。
前までのシアンとグラなら考えられない移動速度だが、そこに居る以上、信じない訳にはいかない。
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