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100話
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エストとカイに真継承の慣らしのやり方を教えると暴走した時のために《障壁》を張って城に戻る。現場にはシアンを残しておけば大丈夫だろう。俺には他にもやることがある。
シアンたちの反応を見るに何とか平静を装えていたのだろう。今も体の中で激しく衝突が起こっていて正直、今にも倒れそうだ。
これなら今まで継承されてこなかった理由が分かる。アイツの力が強過ぎて継承した方の体がもたないのだ。流石は原初の子、その力が色濃く出ている。
「腐れ、少しメナの治療代われ」
城に戻って自室に行くと相変わらず腐れがメナの治療をしていた。腐れは自分にできる最善を尽くしていたと思うが責任を感じているのだろう。顔つきや手つきには明らかな疲れが出ている。
「分かりました。魔力回路の再接続の方を重視して治療を行いましたので、魔力は流せるかと」
「そうか。俺が治療してる間くらい腐れも少し休め。明らかに効率が落ちてるぞ」
「はい、分かっています。ただ、ゼギウス様に代わるまでに魔力回路の再接続を……すー、すー」
そう言いながら腐れはバタンッ!と地面に倒れると寝息を立てる。これだけ働いた腐れを地面に寝かせておく訳にもいかず、メナの奥に寝かせた。
さて、今のメナの状態を確認するか。メナの生存は確認したが、すぐにシアンのところに行ったため深くは確認していない。腐れの言動からすると余程重症なのは分かるが……
そう考えながら魔力を流して状態を見る。
頭から見ていくが、とりあえず上半身は問題ない。他の傷の影響と生命力の低下で魔力が乱れているが、これは他を治せば自然治癒できる。
だが、この腹部は深いな。表面は出血を抑え皮膚の再生はできているが、内側はズタズタだ。腐れが言ったように魔力回路は再接続、補助をつけて魔力を流せるようにしつつメナ本来の魔力回路を再生させようとしているが、それ以外の部分は未だに凍っている。
次に両太腿、こっちも腐れが腹部と同じように魔力回路の再接続をできるようにしているが、ってこっちの方が酷いな。腕の良い医術師に任せても2度と自分の足では歩けないほどに重症だ。神経はズタズタだし氷近辺は完全に壊死している。
壊死した部分が再生を阻害し、残っている氷がそれを広げている。腐れはこれの進行を遅くするために付きっ切りだったのか。
意識を失っている原因も弱った体に残っている力を壊死の進行を遅らせるのに割いているためのようだ。まぁ、単純に傷の深さも影響しているが。
他の部位の状態も見たが、さっきの3箇所をどうにかできれば自然治癒が可能くらい軽傷だった。
さて、どうしたものか。出しゃばって交代したのはいいものの、俺は専門的な医術を使える訳じゃない。強引な治療はある程度できるが、それはある程度体力がある状態での話、今のメナには耐えられない。
(儂に体を貸せ、弟よ)
(誰が弟だ…ってゲンか、喋り方が変わってねぇか?)
誰かと思ったら元老院で原初の子を名乗り貫禄のある光だった奴だ。城に戻っている間に名乗られたのだが、まだ慣らしで取り込んでいないからかコイツもナナシみたいに意識が残っている。
(あんなもの他所向きの喋り方に決まっておろう。弟にまでそんな堅苦しく話す必要があるか?)
(あのなぁ、弟って俺とお前がどれだけ歳離れてると思ってるんだよ)
(どれくらいだろうな。万か?)
ボケているのか本気で言っているのかが分からねぇ…
(もう年数も分からねぇくらいボケてんじゃねぇか。そんな兄いらねぇよ)
(そう言うな。それはさて置き、体を貸せ)
(お前が原因で始まったんだけどな。メナを治せるのか?)
(あぁ。儂は最初の子であり、発展に必要なことは粗方仕込まれとる。その中には勿論、医術もある)
(じゃあ任せるぞ)
自分でも出会って数時間の相手に任せるのはどうかと思うが何故か委ねても大丈夫だと思ってしまう。ナナシと同じように魔力体を生成してそこにゲンの意識を移す。
魔力体はただの人型に生成したのだが、ゲンの意識を移すと長老という言葉がしっくりとくるような長くて白い髪と髭を蓄えたガタイのいい男性になった。その姿からは俺が魔力を与えたはずなのに、それ以上の力を感じる。
「始めるぞ」
そう言うとゲンはメナの包帯を外す。そこからは華麗な手つきだった。
《魔刀》《魔針》《魔糸》3つのスキルを立て続けに使うと《魔刀》で作ったメスを使い、切ると腐れの再接続した魔力回路を《魔糸》を通した《魔針》で縫い合わせていく。
体への適合を考えると腐れがやったように補助を作ってメナの自然回復を利用して体に適合したものを作らせると思ったのだが、ゲンはそのまま縫い合わせた。しかも、それが何故か繋がっている魔力回路と同化している。
どうやらただの魔力の糸という訳でなさそうだ。
そのまま他の魔力回路も縫い合わせると今度は壊死した皮膚の治療に入る。先に体内の氷を処理するかと思ったら、それは放置して壊死した皮膚を切り取っていく。そして残った皮膚の先端を《魔糸》で覆うように縫った。
これで治療が終わったのか《魔包帯》と唱えて両太腿と腹にスキルで生成した包帯を巻く。
「これで終わりだ」
「体内の氷は消さないのか?」
「それはお前の仕事だろ。絶を使え」
今までのは手術と同時に絶を使った後の出血を防ぐ処置だったのか。だから氷には手を付ける気もなかった。それなら最初から言えよ。
そう思いながら《絶氷》と唱えてメナの体内の氷を消す。
「これでしばらくすれば目を覚ますだろう。だが、無茶はさせるなよ。今、縫い合わせた魔力回路は不安定だ。少しずつ慣らさないと破裂するぞ」
「そのくらい分かってる。用が済んだなら戻すぞ?」
そう手を翳しゲンの魔力体を回収しようとすると、ゲンが手で制止する。
「待て、お前の治療が残ってる。他の者は騙せても儂は騙せぬぞ。お前の体内はボロボロだ」
「そりゃ、お前が衝突を起こしたからな。騙すも何も原因は全部お前だ、アホ」
「ガハハ、そうだったな。だが、想像以上に手強いな、魔物の七罪は。万全ではないとはいえ、《嫉妬》と《憤怒》の2つを使っても押されたわ」
どうやら衝突しながら怠惰の力を見ていたようだ。だからそういうことやるなら言えよ。
「そりゃそうだろ。ってか勝手にそういうことするんじゃねぇよ」
「済まんな。それで、分かったのはお前と完成したとしてシアン、その2人以外は話にもならんぞ」
話しながらゲンは俺の体の治療を始める。メナと違って目立った外傷はないため傷のある部分に触れて塞いでいく程度だ。
確かに現状の戦力、というか成長後の戦力を考えても庭に対抗できる領域まで持っていくのは不可能だ。ゲンが言うように良くて俺とシアンがさしで戦えるようになれば上等と言った感じだ。
だから俺に求められるのは同時に複数体の相手か、さしの戦いで早急にケリをつけて次の戦場に行くかだ。そのどっちになるかはカイやエストの成長度合いと状況にもよるが、ほぼ決まっている。
「足りねぇ戦力を嘆いても仕方がねぇだろ。今ある戦力でどう戦うか。それ以外、考える必要ねぇだろ」
「思っていたよりも残酷のようだ。見ていた様子やマルスの話から理想主義だと思っていたが、現実主義な一面もあるのだな」
ゲンの言っている意味は分かっている。だが、そのことには何も触れず、治療が終わったのを確認して魔力体を回収すると俺も疲れが溜まっていたのか、座っていた椅子から上体だけベッドに倒れ込むと眠ってしまった。
シアンたちの反応を見るに何とか平静を装えていたのだろう。今も体の中で激しく衝突が起こっていて正直、今にも倒れそうだ。
これなら今まで継承されてこなかった理由が分かる。アイツの力が強過ぎて継承した方の体がもたないのだ。流石は原初の子、その力が色濃く出ている。
「腐れ、少しメナの治療代われ」
城に戻って自室に行くと相変わらず腐れがメナの治療をしていた。腐れは自分にできる最善を尽くしていたと思うが責任を感じているのだろう。顔つきや手つきには明らかな疲れが出ている。
「分かりました。魔力回路の再接続の方を重視して治療を行いましたので、魔力は流せるかと」
「そうか。俺が治療してる間くらい腐れも少し休め。明らかに効率が落ちてるぞ」
「はい、分かっています。ただ、ゼギウス様に代わるまでに魔力回路の再接続を……すー、すー」
そう言いながら腐れはバタンッ!と地面に倒れると寝息を立てる。これだけ働いた腐れを地面に寝かせておく訳にもいかず、メナの奥に寝かせた。
さて、今のメナの状態を確認するか。メナの生存は確認したが、すぐにシアンのところに行ったため深くは確認していない。腐れの言動からすると余程重症なのは分かるが……
そう考えながら魔力を流して状態を見る。
頭から見ていくが、とりあえず上半身は問題ない。他の傷の影響と生命力の低下で魔力が乱れているが、これは他を治せば自然治癒できる。
だが、この腹部は深いな。表面は出血を抑え皮膚の再生はできているが、内側はズタズタだ。腐れが言ったように魔力回路は再接続、補助をつけて魔力を流せるようにしつつメナ本来の魔力回路を再生させようとしているが、それ以外の部分は未だに凍っている。
次に両太腿、こっちも腐れが腹部と同じように魔力回路の再接続をできるようにしているが、ってこっちの方が酷いな。腕の良い医術師に任せても2度と自分の足では歩けないほどに重症だ。神経はズタズタだし氷近辺は完全に壊死している。
壊死した部分が再生を阻害し、残っている氷がそれを広げている。腐れはこれの進行を遅くするために付きっ切りだったのか。
意識を失っている原因も弱った体に残っている力を壊死の進行を遅らせるのに割いているためのようだ。まぁ、単純に傷の深さも影響しているが。
他の部位の状態も見たが、さっきの3箇所をどうにかできれば自然治癒が可能くらい軽傷だった。
さて、どうしたものか。出しゃばって交代したのはいいものの、俺は専門的な医術を使える訳じゃない。強引な治療はある程度できるが、それはある程度体力がある状態での話、今のメナには耐えられない。
(儂に体を貸せ、弟よ)
(誰が弟だ…ってゲンか、喋り方が変わってねぇか?)
誰かと思ったら元老院で原初の子を名乗り貫禄のある光だった奴だ。城に戻っている間に名乗られたのだが、まだ慣らしで取り込んでいないからかコイツもナナシみたいに意識が残っている。
(あんなもの他所向きの喋り方に決まっておろう。弟にまでそんな堅苦しく話す必要があるか?)
(あのなぁ、弟って俺とお前がどれだけ歳離れてると思ってるんだよ)
(どれくらいだろうな。万か?)
ボケているのか本気で言っているのかが分からねぇ…
(もう年数も分からねぇくらいボケてんじゃねぇか。そんな兄いらねぇよ)
(そう言うな。それはさて置き、体を貸せ)
(お前が原因で始まったんだけどな。メナを治せるのか?)
(あぁ。儂は最初の子であり、発展に必要なことは粗方仕込まれとる。その中には勿論、医術もある)
(じゃあ任せるぞ)
自分でも出会って数時間の相手に任せるのはどうかと思うが何故か委ねても大丈夫だと思ってしまう。ナナシと同じように魔力体を生成してそこにゲンの意識を移す。
魔力体はただの人型に生成したのだが、ゲンの意識を移すと長老という言葉がしっくりとくるような長くて白い髪と髭を蓄えたガタイのいい男性になった。その姿からは俺が魔力を与えたはずなのに、それ以上の力を感じる。
「始めるぞ」
そう言うとゲンはメナの包帯を外す。そこからは華麗な手つきだった。
《魔刀》《魔針》《魔糸》3つのスキルを立て続けに使うと《魔刀》で作ったメスを使い、切ると腐れの再接続した魔力回路を《魔糸》を通した《魔針》で縫い合わせていく。
体への適合を考えると腐れがやったように補助を作ってメナの自然回復を利用して体に適合したものを作らせると思ったのだが、ゲンはそのまま縫い合わせた。しかも、それが何故か繋がっている魔力回路と同化している。
どうやらただの魔力の糸という訳でなさそうだ。
そのまま他の魔力回路も縫い合わせると今度は壊死した皮膚の治療に入る。先に体内の氷を処理するかと思ったら、それは放置して壊死した皮膚を切り取っていく。そして残った皮膚の先端を《魔糸》で覆うように縫った。
これで治療が終わったのか《魔包帯》と唱えて両太腿と腹にスキルで生成した包帯を巻く。
「これで終わりだ」
「体内の氷は消さないのか?」
「それはお前の仕事だろ。絶を使え」
今までのは手術と同時に絶を使った後の出血を防ぐ処置だったのか。だから氷には手を付ける気もなかった。それなら最初から言えよ。
そう思いながら《絶氷》と唱えてメナの体内の氷を消す。
「これでしばらくすれば目を覚ますだろう。だが、無茶はさせるなよ。今、縫い合わせた魔力回路は不安定だ。少しずつ慣らさないと破裂するぞ」
「そのくらい分かってる。用が済んだなら戻すぞ?」
そう手を翳しゲンの魔力体を回収しようとすると、ゲンが手で制止する。
「待て、お前の治療が残ってる。他の者は騙せても儂は騙せぬぞ。お前の体内はボロボロだ」
「そりゃ、お前が衝突を起こしたからな。騙すも何も原因は全部お前だ、アホ」
「ガハハ、そうだったな。だが、想像以上に手強いな、魔物の七罪は。万全ではないとはいえ、《嫉妬》と《憤怒》の2つを使っても押されたわ」
どうやら衝突しながら怠惰の力を見ていたようだ。だからそういうことやるなら言えよ。
「そりゃそうだろ。ってか勝手にそういうことするんじゃねぇよ」
「済まんな。それで、分かったのはお前と完成したとしてシアン、その2人以外は話にもならんぞ」
話しながらゲンは俺の体の治療を始める。メナと違って目立った外傷はないため傷のある部分に触れて塞いでいく程度だ。
確かに現状の戦力、というか成長後の戦力を考えても庭に対抗できる領域まで持っていくのは不可能だ。ゲンが言うように良くて俺とシアンがさしで戦えるようになれば上等と言った感じだ。
だから俺に求められるのは同時に複数体の相手か、さしの戦いで早急にケリをつけて次の戦場に行くかだ。そのどっちになるかはカイやエストの成長度合いと状況にもよるが、ほぼ決まっている。
「足りねぇ戦力を嘆いても仕方がねぇだろ。今ある戦力でどう戦うか。それ以外、考える必要ねぇだろ」
「思っていたよりも残酷のようだ。見ていた様子やマルスの話から理想主義だと思っていたが、現実主義な一面もあるのだな」
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