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102話
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はぁ…アルメシアは本当にセンスがない。というか学習しない。
戦い始めて数時間、私がその気ならもう千回は殺せた。だけど、アルメシアの戦い方を見ていると懐かしい気持ちにもなる。それが関係しているのか少しは気が晴れていた。
私が生まれてすぐにゼギウスに戦闘を仕込まれた時もこんな感じだった。流石にここまで酷くはなかったと思うけど、私も物覚えは悪かったと思う。ゼギウスはいつも呆れていた。
だから何度も半殺しにされては雑に回復させられて、また戦わされて、そうやって実戦の中で戦いを学んでいった。
もしかしたらゼギウスはそれと同じことを期待しているのかもしれない。それなら考えが甘い。私とアルメシアでは持っているものが違い過ぎる。
私はゼギウスの一部、言ってしまえばゼギウス自身だ。その私とただの柱、明らかに格が違う。
「早く起き上がらないと止め刺しちゃうよ?」
そう倒れたまま起き上がれないアルメシアに言葉をかける。何度も立ち上がろうとしているが、踏ん張りがきかず倒れ、その度に起き上がろうとしてを繰り返していた。
「まだまだじゃ。我はこんなところでは死ねぬ」
私が殺気を強めたのに本能が反応したのかアルメシアは気合いで立ち上がる。だが、手が地面から離れていない。もう気合いを以てしても足だけで立つのは無理なようだ。
それならもう存在価値はないかな。
「気合はいいけど、気合でどうにかなるほど甘くないよ」
そう隙だらけのアルメシアの懐に潜り込み蹴り飛ばす。もう私の動きに反応できていなければ、受け身も取れていない。勢いも殺せず転がっていくと木に衝突して止まった。
いっそのこと止めを刺した方がアルメシアのためになるしゼギウスも見切りをつけられる。庭に対抗できるのはゼギウスだけだ。その現実をゼギウスに見せるいい機会になる。
ゼギウスまで現実を見れなくなっては母様の仇を討てなくなる。
ゆっくりと近づいていき倒れたまま動かないアルメシアを見下ろす。そして心臓を貫こうと腕を振り下ろ___!?
得体の知れない力を感じると手を止めて距離を取る。今、何か悍ましい気配がした。
アルメシアが何か力を温存していたとは思えない。もし温存していたのなら救いようのないバカだ。
これは実戦ではなくアルメシアを鍛えるためのもの、それなのに格上の私を相手に力を温存などバカにし過ぎだ。だけど、そんなことができるほどアルメシアは器用ではないし、バカではないと思いたい。
だからこれはアルメシアの意思ではない。絶体絶命の状況で何かが目覚めた?
少し観察するようにアルメシアを見ているとさっきまでの動きからは想像できないほど、簡単に起き上がる。しかし、それは操り人形のように糸のような何かに引っ張られて強引に起こされたような動きだ。
「まだ戦えるの?」
「……」
そう自我があるのかの確認を含めて声をかけるが、返事はない。いや、返事はあったかな、行動で。
アルメシアは体の構造を無視したような不気味な動きで接近してくると、急停止、からの腕を鋭く伸ばしてくる。不規則な動きに反応が遅れるが、受け流す。
それからも不規則な攻撃が続くが、それらを受け流しながら今のアルメシアの状態について考える。
身体能力は明らかに上昇しているが、スキルを使ってくる様子はない。それに傀儡のような動きをしている。
能力の上昇量からは覚醒のような変化だが、自我の有無から違うように感じる。それなら暴走かとも思ったが、魔力が溢れ出ていないことからも暴走とも違う。
そうなると私には分からない状態だ。きっとゼギウスはこれを知っていてアルメシアを育てようとした?だけど、これでも話にならない。現に私に掠り傷1つ負わせられない。
「まぁ、いいや。動けなくしてゼギウスに見せればいっか」
受け流すのを止めて反撃に出る。アルメシアの腕が伸び切って戻り、だらーんと力なく垂れる。その硬直の時間、そこに手刀で肩を突き、骨を砕く。これで腕は動かせない。同じようにもう片方の肩、続いて股関節の付け根の骨を砕いた。
アルメシアは当然、動けなくなり地面に倒れる。適当に首根っこを掴んで引き摺って持ち帰ろうとすると、本能が警鐘を鳴らす。
振り返るとアルメシアは大きく口を開けていた。その口の中には魔力が練られていて今にも放出されそうだ。
即座に防御姿勢を取って受け止める。低い位置から放たれたこともあり宙に吹っ飛ばされていく。
この威力、《龍王の咆哮》よりも強い。それに触れているのに属性が分からない。この体だと《絶》は使えないから属性が分からないと打ち消せない。
相当高くまで飛ばされ、これ以上この攻撃を受け続ける意味を感じず体を横に滑らせる。私が躱した後も放出された魔力は天高く見えない所まで伸び続ける。受け止めていて分かったが、相当な魔力濃度だ。
攻勢に出ようと腕を下げると痛みが走る。疑問に思って腕を見ると骨が剥き出しになっていた。
骨が剥き出しになっている部分を上からなぞり肌を再生させる。今は魔力体だからこうやって修復できるから楽だ。
「でも、これはちょっとムカつくなぁ。少し本気だそっと。それでもし死んでもゼギウスには殺してもいいって言われてたし、いいよね。《爆ぜろ》」
もう使い慣れた即席のスキルを唱えてアルメシアの体を爆発させながらアルメシアに向かって急降下する。
今のアルメシアはこの程度じゃ壊れない。爆発の煙が視界を隠す中、アルメシアの居た場所に向けて腕を伸ばす。
しかし、手は既に地面に刺さっているのに肉を貫いた感触がない。躱された?関節部の骨を砕いて動けなくしたはずなのに…
そう思っているとアルメシアとは違う気配を感じる。その気配の方に振り返ると、そこにはドラゴンがいた。
気配は完全にアルメシアと違うのに、その姿にはアルメシアの面影がある。体の大きさもアルメシアを少し大きくしたような感じだ。
近くには他の魔物の気配もなかったしこれがアルメシアで間違いない。
「へぇ、《龍王》っていうのは知ってたけど完全にドラゴンになれるんだ。これで少しは楽しめるかな」
今までアルメシアに見せてきたよりも速く懐に潜り込み手刀を構えて腕を伸ばす。
躱す様子はない。もらった。ドラゴンになっても所詮はこの程___
カーンッ!
私の手刀が、爪が弾かれた?面白い。
貫くのを諦めて蹴り上げる。だが、重過ぎてアルメシアの体は宙に浮かない。
「あはは、最高!今度はそっちから仕掛けてきなよ」
返事はないが、言葉は伝わったようでアルメシアは口を大きく開ける。
「また咆哮?私には効かないよ?」
アルメシアは口の中で魔力を練り、放出する。その行動には《龍王の咆哮》と同じように無駄が多い。
だから今度は受け止めてもあげない。ギリギリ当たらない距離で飛行して接近して顔面を蹴り飛ばす。全身は吹っ飛ばせなくても顔くらいは蹴り飛ばせる。
これで頭に血が上ったのかアルメシアは爪で引っ搔こうとする。それを回避すると尻尾での横薙ぎが、それを受け止めて遠心力を使って投げ飛ばす。
「立派になったのは図体だけだね。でも、憂さ晴らしには丁度いいよ!」
アルメシアが人型だった時のように無駄な行動をする度に攻撃を加えて矯正していく。人型だった時よりも学習能力が高い。
そうやって戦い続けること数時間、一撃一撃は効かなくても流石に堪えたのかアルメシアは倒れる。それと同時にドラゴンの姿から人型に戻った。
「あー、スッキリした。ありがとね」
息の浅いアルメシアの首根っこを掴んで引き摺ってゼギウスの元に帰る。
戦い始めて数時間、私がその気ならもう千回は殺せた。だけど、アルメシアの戦い方を見ていると懐かしい気持ちにもなる。それが関係しているのか少しは気が晴れていた。
私が生まれてすぐにゼギウスに戦闘を仕込まれた時もこんな感じだった。流石にここまで酷くはなかったと思うけど、私も物覚えは悪かったと思う。ゼギウスはいつも呆れていた。
だから何度も半殺しにされては雑に回復させられて、また戦わされて、そうやって実戦の中で戦いを学んでいった。
もしかしたらゼギウスはそれと同じことを期待しているのかもしれない。それなら考えが甘い。私とアルメシアでは持っているものが違い過ぎる。
私はゼギウスの一部、言ってしまえばゼギウス自身だ。その私とただの柱、明らかに格が違う。
「早く起き上がらないと止め刺しちゃうよ?」
そう倒れたまま起き上がれないアルメシアに言葉をかける。何度も立ち上がろうとしているが、踏ん張りがきかず倒れ、その度に起き上がろうとしてを繰り返していた。
「まだまだじゃ。我はこんなところでは死ねぬ」
私が殺気を強めたのに本能が反応したのかアルメシアは気合いで立ち上がる。だが、手が地面から離れていない。もう気合いを以てしても足だけで立つのは無理なようだ。
それならもう存在価値はないかな。
「気合はいいけど、気合でどうにかなるほど甘くないよ」
そう隙だらけのアルメシアの懐に潜り込み蹴り飛ばす。もう私の動きに反応できていなければ、受け身も取れていない。勢いも殺せず転がっていくと木に衝突して止まった。
いっそのこと止めを刺した方がアルメシアのためになるしゼギウスも見切りをつけられる。庭に対抗できるのはゼギウスだけだ。その現実をゼギウスに見せるいい機会になる。
ゼギウスまで現実を見れなくなっては母様の仇を討てなくなる。
ゆっくりと近づいていき倒れたまま動かないアルメシアを見下ろす。そして心臓を貫こうと腕を振り下ろ___!?
得体の知れない力を感じると手を止めて距離を取る。今、何か悍ましい気配がした。
アルメシアが何か力を温存していたとは思えない。もし温存していたのなら救いようのないバカだ。
これは実戦ではなくアルメシアを鍛えるためのもの、それなのに格上の私を相手に力を温存などバカにし過ぎだ。だけど、そんなことができるほどアルメシアは器用ではないし、バカではないと思いたい。
だからこれはアルメシアの意思ではない。絶体絶命の状況で何かが目覚めた?
少し観察するようにアルメシアを見ているとさっきまでの動きからは想像できないほど、簡単に起き上がる。しかし、それは操り人形のように糸のような何かに引っ張られて強引に起こされたような動きだ。
「まだ戦えるの?」
「……」
そう自我があるのかの確認を含めて声をかけるが、返事はない。いや、返事はあったかな、行動で。
アルメシアは体の構造を無視したような不気味な動きで接近してくると、急停止、からの腕を鋭く伸ばしてくる。不規則な動きに反応が遅れるが、受け流す。
それからも不規則な攻撃が続くが、それらを受け流しながら今のアルメシアの状態について考える。
身体能力は明らかに上昇しているが、スキルを使ってくる様子はない。それに傀儡のような動きをしている。
能力の上昇量からは覚醒のような変化だが、自我の有無から違うように感じる。それなら暴走かとも思ったが、魔力が溢れ出ていないことからも暴走とも違う。
そうなると私には分からない状態だ。きっとゼギウスはこれを知っていてアルメシアを育てようとした?だけど、これでも話にならない。現に私に掠り傷1つ負わせられない。
「まぁ、いいや。動けなくしてゼギウスに見せればいっか」
受け流すのを止めて反撃に出る。アルメシアの腕が伸び切って戻り、だらーんと力なく垂れる。その硬直の時間、そこに手刀で肩を突き、骨を砕く。これで腕は動かせない。同じようにもう片方の肩、続いて股関節の付け根の骨を砕いた。
アルメシアは当然、動けなくなり地面に倒れる。適当に首根っこを掴んで引き摺って持ち帰ろうとすると、本能が警鐘を鳴らす。
振り返るとアルメシアは大きく口を開けていた。その口の中には魔力が練られていて今にも放出されそうだ。
即座に防御姿勢を取って受け止める。低い位置から放たれたこともあり宙に吹っ飛ばされていく。
この威力、《龍王の咆哮》よりも強い。それに触れているのに属性が分からない。この体だと《絶》は使えないから属性が分からないと打ち消せない。
相当高くまで飛ばされ、これ以上この攻撃を受け続ける意味を感じず体を横に滑らせる。私が躱した後も放出された魔力は天高く見えない所まで伸び続ける。受け止めていて分かったが、相当な魔力濃度だ。
攻勢に出ようと腕を下げると痛みが走る。疑問に思って腕を見ると骨が剥き出しになっていた。
骨が剥き出しになっている部分を上からなぞり肌を再生させる。今は魔力体だからこうやって修復できるから楽だ。
「でも、これはちょっとムカつくなぁ。少し本気だそっと。それでもし死んでもゼギウスには殺してもいいって言われてたし、いいよね。《爆ぜろ》」
もう使い慣れた即席のスキルを唱えてアルメシアの体を爆発させながらアルメシアに向かって急降下する。
今のアルメシアはこの程度じゃ壊れない。爆発の煙が視界を隠す中、アルメシアの居た場所に向けて腕を伸ばす。
しかし、手は既に地面に刺さっているのに肉を貫いた感触がない。躱された?関節部の骨を砕いて動けなくしたはずなのに…
そう思っているとアルメシアとは違う気配を感じる。その気配の方に振り返ると、そこにはドラゴンがいた。
気配は完全にアルメシアと違うのに、その姿にはアルメシアの面影がある。体の大きさもアルメシアを少し大きくしたような感じだ。
近くには他の魔物の気配もなかったしこれがアルメシアで間違いない。
「へぇ、《龍王》っていうのは知ってたけど完全にドラゴンになれるんだ。これで少しは楽しめるかな」
今までアルメシアに見せてきたよりも速く懐に潜り込み手刀を構えて腕を伸ばす。
躱す様子はない。もらった。ドラゴンになっても所詮はこの程___
カーンッ!
私の手刀が、爪が弾かれた?面白い。
貫くのを諦めて蹴り上げる。だが、重過ぎてアルメシアの体は宙に浮かない。
「あはは、最高!今度はそっちから仕掛けてきなよ」
返事はないが、言葉は伝わったようでアルメシアは口を大きく開ける。
「また咆哮?私には効かないよ?」
アルメシアは口の中で魔力を練り、放出する。その行動には《龍王の咆哮》と同じように無駄が多い。
だから今度は受け止めてもあげない。ギリギリ当たらない距離で飛行して接近して顔面を蹴り飛ばす。全身は吹っ飛ばせなくても顔くらいは蹴り飛ばせる。
これで頭に血が上ったのかアルメシアは爪で引っ搔こうとする。それを回避すると尻尾での横薙ぎが、それを受け止めて遠心力を使って投げ飛ばす。
「立派になったのは図体だけだね。でも、憂さ晴らしには丁度いいよ!」
アルメシアが人型だった時のように無駄な行動をする度に攻撃を加えて矯正していく。人型だった時よりも学習能力が高い。
そうやって戦い続けること数時間、一撃一撃は効かなくても流石に堪えたのかアルメシアは倒れる。それと同時にドラゴンの姿から人型に戻った。
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