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おまけ あの戦いの続き2
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メナドールの登場はこの戦場に大きな変化をもたらした。それはメナドールが何かしたという訳ではない。メナドールがここに来たという意味とその表情によってもう1つの戦場、ゼギウスの安否が決まってしまったからだ。
「メナドールさん!」
そうエストは近くに現れたメナドールの無事を確認するなり喜ぶが、シアンの反応は対照的だった。
エストの言葉でメナドールの登場を知ったシアンは、メナドールの表情を見ると「あぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」と雄叫びのような声を上げる。その雄叫びには怒りや悲しみ、憎しみといった感情が籠められていて暴走したかのように動きが単調になった。
それをグリードたちは見逃さない。
「チッ、ゼギウスでも足りねぇのか。最期はアイツと戦いたかったんだけどな。つまらねぇ!」
「はぁ、ゼギウスが来ないならこんな茶番、終わらせていいよね?」
「あぁ。さっさと終わらせるぞ」
そうゼギウスの死を決定づけるような会話が行われると個で戦っていたグリードたちは連携を取り始める。それに対してシアンは《暴食》も交ぜて対応するが、それでも動きが単調で無駄が多く追い込まれていく。
そこへエストは後方支援しようとするが、メナドールが無事なことに対する安堵からか後方のグリードが妨害する必要もなく中央の戦況に影響を及ぼせない。もう集中の糸が完全に緩んでいた。
「本当に手応えねぇな。止めはやるよ」
「あー、そう言って私に押し付けたいだけでしょ。でも、いいよ。今、凄くムカついてるから。《炎狐》」
最早、会話をしながら片手間でシアンの相手をすると息を合わせて片方のグリードがシアンの体勢を崩し、もう片方のグリードがスキルを使って体を炎に変えて止めを刺そうとする。
《暴食》を使えず無防備な状態にもかかわらず、シアンの表情に絶望はなかった。それどころか清々しいように見える。
「《燃___
「《絶炎》」
___え、え?」
シアンはカイゼルの使ったスキルを使おうとしたのだが、それを唱え切る前にゲンが間に割って入ってきた。
ゲンのスキルは体が炎になったグリードを消そうとする。が、魔力濃度の濃いその炎は今のゲンの魔力では消し切れず指先程度の小さな炎が残った。
僅かに残ったその炎は魔力濃度を薄くしながら元の大きさに戻ると実体へと戻り、対照的にゲンの体は小さく、ナナシのようにドロドロとした姿になった。
「ねぇ、この人って頭悪いの?」
「知らねぇよ。でも、馬鹿なのは間違いねぇな。なぁ?」
前線のグリードは後方のグリードの方を向いてそう言う。その表情は戦闘中に浮かべるような張りつめたものではない。グリードたちの中ではこの戦闘はもう終わっているようだ。
「私に振らないでよ。ねぇ?」
後方のグリードは更に後方に控える5体のグリードに振ると、目が髪で隠れているグリードが答える。
「うん。このお爺さんの魔力体の魔力総量は私たち1体1体の魔力総量より少ない。その時点で完全に打ち消すのは不可能。だから精々できるのは私たちの弱体化だけど、このお爺さんは魔力体が定形を保てる最低限の魔力量も残さずに消滅させようとした。それは私たちの1体を倒すための行動だけど、先に述べたことから不可能。私には理解できない」
そう説明するが最初に話を振ったグリードは頭にハテナを浮かべている。
「よく分かんねぇけどそういうことだ。なぁ?」
「分からないならそういう話振らないでよ、面倒くさい」
どうやらグリードたちの目的はシアンたちを心理的にも崩すことだったようだ。
しかし、シアンには動揺があるもののゲンは挑発をするように高笑いをする。
「ク、ハハハハハハッ。理解できないのはお前たちの見識が狭いだけだ。青いな小娘」
「あ?死にぞこないが調子に乗るなよ?それならどんな意味があるのか言ってみろよ」
ゲンの思惑通りにグリードが熱くなると、ゲンは更に挑発する。
「教えてください、も言えないのか。自分を偉いと勘違いしているようだな。愚か過ぎて呆れもしないぞ」
「テメェ、潰___」
「意味なんてどうでもいいよ。どんな意味があろうと私たちを倒せなかったら何の意味もない。だからこの人の言ってることは何の意味もないよ」
言葉遊びに苛立ちを覚えたのか熱くなっているグリードを諭す。その言葉にも説得力があったものの、熱くなっていたグリードは違う要素で冷静になり、更に恐怖を覚えていた。
諭したグリードの纏う雰囲気が冷たくなっていたのだ。それは普段のそのグリードの無邪気さからは想像できないような冷たさで、本気で怒った時にしか表に出ない。
「ほぉ、それなら証め___」
ゲンはその変化に気づかなかったのか、気づいた上で煽ろうとしたのか、その意図は分からないが更に煽ろうとしたゲンの体は一瞬にして燃え尽きた。
その動きは間近にいたシアンを始めエストやメナドール、そして同じグリードでさえ見えていなかった。
しかし、その炎は《炎狐》のような大きく力強い炎ではなく、違うグリードの使った《煉獄》のような浄化するような落ち着いた炎だった。
「ほらね?何の意味もなかったでしょ?」
グリードは他のグリードの方へ振り返ると歩いて戻ってくる。
「そ、そうだな。こ、このまま一気に片付けるか?」
「私は興味ないから好きに終わらせなよ」
恐る恐る尋ねたグリードにそう答えるとゲンに止めを刺したグリードは後方のグリードが5体控えている場所に歩いていく。そこへシアンが無言で飛び出そうとする。
だが、何も言わずに向かっていったのは不意を衝くためといった戦略的なものではない。ただ単に恐怖で口が開かなかったのだ。そんなシアンの体を動かしたのは使命感のようなヤケクソのような感情だった。
だが、それはメナドールを抱えた魔力体が間に入り止められた。
「…どういうつもりさ!」
正気に戻ったシアンがそう声を荒げる。水を差されたのが気に入らないのだろう。その言葉に生気の無い瞳をしたメナドールが無気力な声で返答する。
「ゼギくんからの最後の指示、この場にいる全員の魔力を《暴食》を使ってシアンに集めれば倒せるかもしれないって。この魔力体はゼギくんの残ってる魔力の大半だよ」
その瞳に、声にシアンは冷静さを取り戻す。ゼギウスがいなくなった今の自分の役割を思い出した。
「じゃあゼギウスは___」
「自分を犠牲にした。私たちの力不足のせいでね」
感情的になりそうな言葉も今のメナドールは無気力な声でしか言えなかった。それはもう生きているのか死んでいるのか分からない。生を諦め死を受け入れている者の様相だ。
「でも、メナドールさんが無事でよかったです。アイツも最後はカッコいいとこがあったってことですね」
エストは場の空気を変えようとしたのだろうが、メナドールの無事に安堵し過ぎたのに加え元からゼギウスに対して突っかかるような態度を取っていたのもあり普段と同じような言い方をしてしまう。だが、それはこの場では、今のメナドールに対しては不味かった。
「エス___」
それに気づいたシアンが止めようとするも遅かった。メナドールの正気の無い瞳がエストに向けられる。
「そっか、エストちゃんはそういう人だったんだ。見損なったよ」
その言葉を聞いた瞬間、エストは「え……」と表情が淀み絶望したように崩れ落ちた。そこへすかさずシアンがフォローを入れる。
「エストだってそういうつもりじゃないさ」
「それは分かるけど、今は許容できるほど心に余裕ないよ」
その言葉が全てだった。
この先の戦闘も考えエストを庇おうとしたシアンも今のメナドールの心情を考えればそれ以上は何も言えない。それにシアンは戦力面でエストを庇ったものの心情的にはメナドールと同じだ。
今のやり取りは団結しなければならない3人の間に大きな亀裂を入れてしまった。
「メナドールさん!」
そうエストは近くに現れたメナドールの無事を確認するなり喜ぶが、シアンの反応は対照的だった。
エストの言葉でメナドールの登場を知ったシアンは、メナドールの表情を見ると「あぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」と雄叫びのような声を上げる。その雄叫びには怒りや悲しみ、憎しみといった感情が籠められていて暴走したかのように動きが単調になった。
それをグリードたちは見逃さない。
「チッ、ゼギウスでも足りねぇのか。最期はアイツと戦いたかったんだけどな。つまらねぇ!」
「はぁ、ゼギウスが来ないならこんな茶番、終わらせていいよね?」
「あぁ。さっさと終わらせるぞ」
そうゼギウスの死を決定づけるような会話が行われると個で戦っていたグリードたちは連携を取り始める。それに対してシアンは《暴食》も交ぜて対応するが、それでも動きが単調で無駄が多く追い込まれていく。
そこへエストは後方支援しようとするが、メナドールが無事なことに対する安堵からか後方のグリードが妨害する必要もなく中央の戦況に影響を及ぼせない。もう集中の糸が完全に緩んでいた。
「本当に手応えねぇな。止めはやるよ」
「あー、そう言って私に押し付けたいだけでしょ。でも、いいよ。今、凄くムカついてるから。《炎狐》」
最早、会話をしながら片手間でシアンの相手をすると息を合わせて片方のグリードがシアンの体勢を崩し、もう片方のグリードがスキルを使って体を炎に変えて止めを刺そうとする。
《暴食》を使えず無防備な状態にもかかわらず、シアンの表情に絶望はなかった。それどころか清々しいように見える。
「《燃___
「《絶炎》」
___え、え?」
シアンはカイゼルの使ったスキルを使おうとしたのだが、それを唱え切る前にゲンが間に割って入ってきた。
ゲンのスキルは体が炎になったグリードを消そうとする。が、魔力濃度の濃いその炎は今のゲンの魔力では消し切れず指先程度の小さな炎が残った。
僅かに残ったその炎は魔力濃度を薄くしながら元の大きさに戻ると実体へと戻り、対照的にゲンの体は小さく、ナナシのようにドロドロとした姿になった。
「ねぇ、この人って頭悪いの?」
「知らねぇよ。でも、馬鹿なのは間違いねぇな。なぁ?」
前線のグリードは後方のグリードの方を向いてそう言う。その表情は戦闘中に浮かべるような張りつめたものではない。グリードたちの中ではこの戦闘はもう終わっているようだ。
「私に振らないでよ。ねぇ?」
後方のグリードは更に後方に控える5体のグリードに振ると、目が髪で隠れているグリードが答える。
「うん。このお爺さんの魔力体の魔力総量は私たち1体1体の魔力総量より少ない。その時点で完全に打ち消すのは不可能。だから精々できるのは私たちの弱体化だけど、このお爺さんは魔力体が定形を保てる最低限の魔力量も残さずに消滅させようとした。それは私たちの1体を倒すための行動だけど、先に述べたことから不可能。私には理解できない」
そう説明するが最初に話を振ったグリードは頭にハテナを浮かべている。
「よく分かんねぇけどそういうことだ。なぁ?」
「分からないならそういう話振らないでよ、面倒くさい」
どうやらグリードたちの目的はシアンたちを心理的にも崩すことだったようだ。
しかし、シアンには動揺があるもののゲンは挑発をするように高笑いをする。
「ク、ハハハハハハッ。理解できないのはお前たちの見識が狭いだけだ。青いな小娘」
「あ?死にぞこないが調子に乗るなよ?それならどんな意味があるのか言ってみろよ」
ゲンの思惑通りにグリードが熱くなると、ゲンは更に挑発する。
「教えてください、も言えないのか。自分を偉いと勘違いしているようだな。愚か過ぎて呆れもしないぞ」
「テメェ、潰___」
「意味なんてどうでもいいよ。どんな意味があろうと私たちを倒せなかったら何の意味もない。だからこの人の言ってることは何の意味もないよ」
言葉遊びに苛立ちを覚えたのか熱くなっているグリードを諭す。その言葉にも説得力があったものの、熱くなっていたグリードは違う要素で冷静になり、更に恐怖を覚えていた。
諭したグリードの纏う雰囲気が冷たくなっていたのだ。それは普段のそのグリードの無邪気さからは想像できないような冷たさで、本気で怒った時にしか表に出ない。
「ほぉ、それなら証め___」
ゲンはその変化に気づかなかったのか、気づいた上で煽ろうとしたのか、その意図は分からないが更に煽ろうとしたゲンの体は一瞬にして燃え尽きた。
その動きは間近にいたシアンを始めエストやメナドール、そして同じグリードでさえ見えていなかった。
しかし、その炎は《炎狐》のような大きく力強い炎ではなく、違うグリードの使った《煉獄》のような浄化するような落ち着いた炎だった。
「ほらね?何の意味もなかったでしょ?」
グリードは他のグリードの方へ振り返ると歩いて戻ってくる。
「そ、そうだな。こ、このまま一気に片付けるか?」
「私は興味ないから好きに終わらせなよ」
恐る恐る尋ねたグリードにそう答えるとゲンに止めを刺したグリードは後方のグリードが5体控えている場所に歩いていく。そこへシアンが無言で飛び出そうとする。
だが、何も言わずに向かっていったのは不意を衝くためといった戦略的なものではない。ただ単に恐怖で口が開かなかったのだ。そんなシアンの体を動かしたのは使命感のようなヤケクソのような感情だった。
だが、それはメナドールを抱えた魔力体が間に入り止められた。
「…どういうつもりさ!」
正気に戻ったシアンがそう声を荒げる。水を差されたのが気に入らないのだろう。その言葉に生気の無い瞳をしたメナドールが無気力な声で返答する。
「ゼギくんからの最後の指示、この場にいる全員の魔力を《暴食》を使ってシアンに集めれば倒せるかもしれないって。この魔力体はゼギくんの残ってる魔力の大半だよ」
その瞳に、声にシアンは冷静さを取り戻す。ゼギウスがいなくなった今の自分の役割を思い出した。
「じゃあゼギウスは___」
「自分を犠牲にした。私たちの力不足のせいでね」
感情的になりそうな言葉も今のメナドールは無気力な声でしか言えなかった。それはもう生きているのか死んでいるのか分からない。生を諦め死を受け入れている者の様相だ。
「でも、メナドールさんが無事でよかったです。アイツも最後はカッコいいとこがあったってことですね」
エストは場の空気を変えようとしたのだろうが、メナドールの無事に安堵し過ぎたのに加え元からゼギウスに対して突っかかるような態度を取っていたのもあり普段と同じような言い方をしてしまう。だが、それはこの場では、今のメナドールに対しては不味かった。
「エス___」
それに気づいたシアンが止めようとするも遅かった。メナドールの正気の無い瞳がエストに向けられる。
「そっか、エストちゃんはそういう人だったんだ。見損なったよ」
その言葉を聞いた瞬間、エストは「え……」と表情が淀み絶望したように崩れ落ちた。そこへすかさずシアンがフォローを入れる。
「エストだってそういうつもりじゃないさ」
「それは分かるけど、今は許容できるほど心に余裕ないよ」
その言葉が全てだった。
この先の戦闘も考えエストを庇おうとしたシアンも今のメナドールの心情を考えればそれ以上は何も言えない。それにシアンは戦力面でエストを庇ったものの心情的にはメナドールと同じだ。
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