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おまけ あの戦いの続き6
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グリードの炎を纏った拳が目の前まで迫る中、メナドールの世界はゆっくりになっていた。
その時の流れの中で大切な記憶が頭の中を駆け巡る。これが走馬灯かな?と思う程、今のメナドールには余裕があった。
私、少しは役に立てたかな?ずっと足手纏いだったかもしれないけど、これでも結構、頑張ったつもりだよ?だから向こうで再会したら褒めてね。それで、できたら向こうでも私を傍に置いてほしいな。これは贅沢過ぎるかな?でも、ゼギくんは優しいから何だかんだで受け入れてくれるよね。
そう先に逝っているだろうゼギウスに向けて心の中で最期の言葉を紡ぐ。これでメナドールには後悔はない。目の前に迫る拳を受け入れるだけだった。
しかし、目の前に迫ってくる拳は更に遅くなった。流石にじれったくなったのかメナドールは目を瞑り、ゼギウスとの思い出に浸る。
コツン…
メナドールの頭を金属の何かが軽く叩く音がする。大凡、拳で殴られたのとは違うその音と感触に目を開けると、目の前にはゼギウスがいた。
「ゼギくん!」
そうメナドールは何も考えずに飛びつく。色々と考えながらも向こうでゼギウスに会えるか心配だった。それが払拭された喜びから無邪気に甘える。
「遅くなってごめんね。だけど、私も頑張ったんだよ。褒めて褒めて~」
「何言ってんだ?遅くなったのは俺の方だろ。つか、時と場所を考えろ」
相変わらずの肩透かしな言葉にツンデレだなと思いながらもメナドールは周りに目を向ける。すると、メナドールが最期に見た現実と変わらない光景が広がっていた。
ただ1つ違うのはゼギウスがいること。そのことに頭が混乱する。
全員が死んだのだろうか。だけど、全員が死ぬのは考えられない。この場にはエストたちだけでなくグリードもいる。メナドールが死ぬまで生きていた全員がいるのだ。
「ゼギぐん、生ぎでだの?」
今までどんな逆境をも退け誰もの常識を覆してきたゼギウスなら、そう期待を込めて通常なら最もあり得ないはずの可能性に辿り着く。
「まぁ、色々とあって生きてるな。遅くなって悪い」
「うわ~ん!ゼギぐんのバガ~」
少しバツが悪そうに頭を掻くゼギウスにメナドールは屈んで胸をポカポカと叩く。それをゼギウスは苦笑いしながら受け入れていた。
「何でアンタが生きてるのよ」
近くで呆然としていたエストも近づいてくるとジト目でゼギウスを見る。それはメナドールと違って疑っているように見えて、口角が少し上がっていた。
「色々あったんだよ。遅くなって悪いな」
「バカ…責められる訳ないでしょ…アンタが戦ってたのは元々、私たちの敵だったんだから……」
普段なら叱責しそうなエストも今回ばかりは安堵の方が強かったようだ。だが、そんな穏やかな空気は続かない。
「ラストでしたーなんてオチはねぇよな?」
残った片割れのグリードがにやけてそう言う。少しでもメナドールとエストの動揺を誘おうとしたのだろう。普通に考えるのならその可能性の方が高い。
しかし、その言葉にメナドールもエストも揺るがない。それどころかメナドールはゼギウスの胸板に頬擦りしていてエストはそれを嫉妬したように見ていた。
「じゃあ証明してやるよ。《滅雷》」
そうゼギウスの唱えたスキルは天高く閃光を走らせていく。一瞬にして見えなくなると、少しして雷が鳥籠のようなケージの形に降り注いだ。
「ゼギウス~!やっと戦える!」
今のスキルを見てかナナシと戦っていたはずのグリードがゼギウスに飛び掛かる。その様子はナナシに似ていた。
「メナ、少し離れてろ」
「嫌っ!」
ゼギウスは戦闘態勢を取ろうとするが、メナドールが離れない。すっかり戦闘中ということを忘れているようだ。それはメナドールだけでなく、この場にいる誰からも殺伐とした雰囲気は消えていた。
「それだと戦えねぇだろ」
「ゼギくんならそのまま戦えるよ」
メナドールの言うようにゼギウスはそう言いながらグリードの攻撃を剣で軽々と受け続けていた。
「加勢した方がいい?」
グリードに無視されて暇になったナナシもゼギウスの元へ駆けつけてくる。ナナシはメナドールやエストのように安堵した様子はない。元からゼギウスの生存を信じていたようだ。
「それよりアルを起こしてこい」
「えー…分かった」
少し面倒くさそうに返事をするとナナシは離れた場所で《龍装》を練っているアルメシアの元に行く。
「ゼギウス、誰が戦い方を教えてやったのか忘れたのか?」
「少なくともお前に教わった覚えはねぇよ」
「へっ、生意気言いやがって。ガキだったテメェに私が教えてやったんだよ」
もう片方のグリードが加勢するが、それでもゼギウスは軽々と受け続ける。
その戦いは凄く綺麗で敵という間柄ではなく家族との戯れや競技といった相手への思いやりのようなものに溢れているように見えた。
それもそのはず、グリードからすればゼギウスが見逃がすかは別としてゼギウス以外を狙えばいい。そうすることでグリードたちが散ったとしても後の世界の構成は変わる。それなのにグリードたちはじゃれるようにゼギウスとだけ戦っていた。
その戦い方にゼギウスも応える。
「メナ、やっぱ離れてろ。こいつ等とはちゃんと終わらせないといけねぇからな」
「うー。でも、後で構ってよ」
「気が向いたらな」
「それって構ってくれないでしょ…」
そう言いながらもメナドールはゼギウスから離れてエストの隣に行く。そこにナナシとアルメシアも加わる。
「お主はいつも我を驚かせるでないわ。わざとやっているのではあるまいな?」
「んな訳ねぇだろ。まぁ、詳しい話は後でな」
「うむ、分かったのじゃ。ここでお主の戦いを見守るとしよう」
全員で戦った方が楽なはずなのに誰も加勢する気はなかった。それはゼギウスの勝利を信じていたのもあるが、それだけではない。どんな結果になろうとこの戦いに割って入ってはいけない気がしたからだ。
「始めるか」
「やっと本気出していいんだな?」
「ゼギウスと全力でやれる!」
どうやらグリードたちも加減していたようだ。これが世界の今後を左右するものだとは誰も思わないだろう。だが、先に逝った誰がこの場にいても怒りそうにない。
互いに距離を取り周りも静観している中で、戦いは始まった。
だが、両者の力の差は歴然だった。
個と個を合わせてグリードは戦うがゼギウスはさっきまでと変わらないように軽々と受け止める。そこまでならさっきと同じだが、ゼギウスはグリードの一撃一撃に反撃を入れていた。
自分の攻撃が通用せず、重く痛い反撃があるというのにグリードたちは楽しそうな表情を浮かべている。その昂揚がグリードたちの潜在能力を引き出すのか、《炎装・焔》や《炎狐》を使う攻撃は全てのグリードが1つの体に集まっていた時よりも苛烈を極めていた。
それでもゼギウスは変わらずに受け止めて反撃を入れ続ける。
「やっぱゼギウスは最高だな!」
「うん!ゼギウスと戦うのが1番楽しい!」
無邪気な笑顔を浮かべながら2体は戦うが、長くは続かなかった。
「そろそろ終わらせるぞ。《絶滅》」
ゼギウスがそう唱えると一瞬にしてグリードたちは消滅した。たった1回、ゼギウスがスキルを唱えただけでこの戦いは終わった。
庭との戦いの幕に全員が安堵したようにゼギウスに駆け寄る。喜びや甘え、素直じゃない棘のある言葉、呆れといった様々な感情がゼギウスに向けられるが、ゼギウスだけは戦闘中と変わらないような緊張感を漂わせていた。というか、戦闘が終わってから漂わせていた。
「まだ戦いは終わってねぇぞ。ここ以外にも戦ってる奴等がいるだろ?」
その言葉に全員、緩んでいた気を引き締める。
そう、戦場はここだけではない。今も戦っている可能性のあるもう1つの戦場へゼギウスたちは向かった。
その時の流れの中で大切な記憶が頭の中を駆け巡る。これが走馬灯かな?と思う程、今のメナドールには余裕があった。
私、少しは役に立てたかな?ずっと足手纏いだったかもしれないけど、これでも結構、頑張ったつもりだよ?だから向こうで再会したら褒めてね。それで、できたら向こうでも私を傍に置いてほしいな。これは贅沢過ぎるかな?でも、ゼギくんは優しいから何だかんだで受け入れてくれるよね。
そう先に逝っているだろうゼギウスに向けて心の中で最期の言葉を紡ぐ。これでメナドールには後悔はない。目の前に迫る拳を受け入れるだけだった。
しかし、目の前に迫ってくる拳は更に遅くなった。流石にじれったくなったのかメナドールは目を瞑り、ゼギウスとの思い出に浸る。
コツン…
メナドールの頭を金属の何かが軽く叩く音がする。大凡、拳で殴られたのとは違うその音と感触に目を開けると、目の前にはゼギウスがいた。
「ゼギくん!」
そうメナドールは何も考えずに飛びつく。色々と考えながらも向こうでゼギウスに会えるか心配だった。それが払拭された喜びから無邪気に甘える。
「遅くなってごめんね。だけど、私も頑張ったんだよ。褒めて褒めて~」
「何言ってんだ?遅くなったのは俺の方だろ。つか、時と場所を考えろ」
相変わらずの肩透かしな言葉にツンデレだなと思いながらもメナドールは周りに目を向ける。すると、メナドールが最期に見た現実と変わらない光景が広がっていた。
ただ1つ違うのはゼギウスがいること。そのことに頭が混乱する。
全員が死んだのだろうか。だけど、全員が死ぬのは考えられない。この場にはエストたちだけでなくグリードもいる。メナドールが死ぬまで生きていた全員がいるのだ。
「ゼギぐん、生ぎでだの?」
今までどんな逆境をも退け誰もの常識を覆してきたゼギウスなら、そう期待を込めて通常なら最もあり得ないはずの可能性に辿り着く。
「まぁ、色々とあって生きてるな。遅くなって悪い」
「うわ~ん!ゼギぐんのバガ~」
少しバツが悪そうに頭を掻くゼギウスにメナドールは屈んで胸をポカポカと叩く。それをゼギウスは苦笑いしながら受け入れていた。
「何でアンタが生きてるのよ」
近くで呆然としていたエストも近づいてくるとジト目でゼギウスを見る。それはメナドールと違って疑っているように見えて、口角が少し上がっていた。
「色々あったんだよ。遅くなって悪いな」
「バカ…責められる訳ないでしょ…アンタが戦ってたのは元々、私たちの敵だったんだから……」
普段なら叱責しそうなエストも今回ばかりは安堵の方が強かったようだ。だが、そんな穏やかな空気は続かない。
「ラストでしたーなんてオチはねぇよな?」
残った片割れのグリードがにやけてそう言う。少しでもメナドールとエストの動揺を誘おうとしたのだろう。普通に考えるのならその可能性の方が高い。
しかし、その言葉にメナドールもエストも揺るがない。それどころかメナドールはゼギウスの胸板に頬擦りしていてエストはそれを嫉妬したように見ていた。
「じゃあ証明してやるよ。《滅雷》」
そうゼギウスの唱えたスキルは天高く閃光を走らせていく。一瞬にして見えなくなると、少しして雷が鳥籠のようなケージの形に降り注いだ。
「ゼギウス~!やっと戦える!」
今のスキルを見てかナナシと戦っていたはずのグリードがゼギウスに飛び掛かる。その様子はナナシに似ていた。
「メナ、少し離れてろ」
「嫌っ!」
ゼギウスは戦闘態勢を取ろうとするが、メナドールが離れない。すっかり戦闘中ということを忘れているようだ。それはメナドールだけでなく、この場にいる誰からも殺伐とした雰囲気は消えていた。
「それだと戦えねぇだろ」
「ゼギくんならそのまま戦えるよ」
メナドールの言うようにゼギウスはそう言いながらグリードの攻撃を剣で軽々と受け続けていた。
「加勢した方がいい?」
グリードに無視されて暇になったナナシもゼギウスの元へ駆けつけてくる。ナナシはメナドールやエストのように安堵した様子はない。元からゼギウスの生存を信じていたようだ。
「それよりアルを起こしてこい」
「えー…分かった」
少し面倒くさそうに返事をするとナナシは離れた場所で《龍装》を練っているアルメシアの元に行く。
「ゼギウス、誰が戦い方を教えてやったのか忘れたのか?」
「少なくともお前に教わった覚えはねぇよ」
「へっ、生意気言いやがって。ガキだったテメェに私が教えてやったんだよ」
もう片方のグリードが加勢するが、それでもゼギウスは軽々と受け続ける。
その戦いは凄く綺麗で敵という間柄ではなく家族との戯れや競技といった相手への思いやりのようなものに溢れているように見えた。
それもそのはず、グリードからすればゼギウスが見逃がすかは別としてゼギウス以外を狙えばいい。そうすることでグリードたちが散ったとしても後の世界の構成は変わる。それなのにグリードたちはじゃれるようにゼギウスとだけ戦っていた。
その戦い方にゼギウスも応える。
「メナ、やっぱ離れてろ。こいつ等とはちゃんと終わらせないといけねぇからな」
「うー。でも、後で構ってよ」
「気が向いたらな」
「それって構ってくれないでしょ…」
そう言いながらもメナドールはゼギウスから離れてエストの隣に行く。そこにナナシとアルメシアも加わる。
「お主はいつも我を驚かせるでないわ。わざとやっているのではあるまいな?」
「んな訳ねぇだろ。まぁ、詳しい話は後でな」
「うむ、分かったのじゃ。ここでお主の戦いを見守るとしよう」
全員で戦った方が楽なはずなのに誰も加勢する気はなかった。それはゼギウスの勝利を信じていたのもあるが、それだけではない。どんな結果になろうとこの戦いに割って入ってはいけない気がしたからだ。
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「やっと本気出していいんだな?」
「ゼギウスと全力でやれる!」
どうやらグリードたちも加減していたようだ。これが世界の今後を左右するものだとは誰も思わないだろう。だが、先に逝った誰がこの場にいても怒りそうにない。
互いに距離を取り周りも静観している中で、戦いは始まった。
だが、両者の力の差は歴然だった。
個と個を合わせてグリードは戦うがゼギウスはさっきまでと変わらないように軽々と受け止める。そこまでならさっきと同じだが、ゼギウスはグリードの一撃一撃に反撃を入れていた。
自分の攻撃が通用せず、重く痛い反撃があるというのにグリードたちは楽しそうな表情を浮かべている。その昂揚がグリードたちの潜在能力を引き出すのか、《炎装・焔》や《炎狐》を使う攻撃は全てのグリードが1つの体に集まっていた時よりも苛烈を極めていた。
それでもゼギウスは変わらずに受け止めて反撃を入れ続ける。
「やっぱゼギウスは最高だな!」
「うん!ゼギウスと戦うのが1番楽しい!」
無邪気な笑顔を浮かべながら2体は戦うが、長くは続かなかった。
「そろそろ終わらせるぞ。《絶滅》」
ゼギウスがそう唱えると一瞬にしてグリードたちは消滅した。たった1回、ゼギウスがスキルを唱えただけでこの戦いは終わった。
庭との戦いの幕に全員が安堵したようにゼギウスに駆け寄る。喜びや甘え、素直じゃない棘のある言葉、呆れといった様々な感情がゼギウスに向けられるが、ゼギウスだけは戦闘中と変わらないような緊張感を漂わせていた。というか、戦闘が終わってから漂わせていた。
「まだ戦いは終わってねぇぞ。ここ以外にも戦ってる奴等がいるだろ?」
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