怠惰すぎて冒険者をクビになった少年は魔王の城で自堕落に生活したい

桒(kuwa)

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おまけ 後処理4

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夜が明けるまで話していた3人は眠そうにしながら前日と同じ会議の場所へ向かっていた。朝まで話していたとあって楽しい談笑だけでなく今日の会議のことについても話しており大体の方向性も決めていた。

「ご主人様、過度な自己犠牲はしないでくださいね」

「おい、その呼び方は止めろ」

「ごめんなさい。でも、今の私はララであってレイネシアではありません。レイネシアの時はちゃんとゼギウス様と呼びます」

その屁理屈のような言い分にゼギウスは釘を刺す。

「それで殺されかけたんだぞ。会議が終わるまではレイネシアのつもりでいろ」

「はーい」

そう言われることが分かっていたようにララが返事すると会議の場所に着いた。

そこには既に3人以外の当事者が集まっている。皇国は今日、帝国の責任を問うつもりなのかベネッタ以外にも数人内政担当をしているような人が来ていた。

「遅れて悪いな。って言ってもまだ時間前か。じゃあメナ、任せたぞ」

昨日のことを鑑みてゼギウスは適当な場所に寝転ぼうとすると意外にもベネッタが止める。

「いや、進行はゼギウス様で構わない。冷静になってから考えれば貴方のやろうとしていたことは分かる。それに今回の会議にはゼギウス様の意見が重要になるだろう」

ゼギウスは面倒くさそうにそれなら違う奴が進行した方がいいだろ、と思いながら寝転ぶのを諦めて席に着く。

「さて、じゃあ昨日に続いて会議を始めるぞ。その顔触れ的に帝国の責任についてでいいのか?」

「そうだ。昨日のような逃げ道を作られても困るからな。早い内に決めさせてもらおう」

「メルダもいいか?」

ゼギウスは断らないと分かっていながら形式的に聞くと、メルダは予想通り「はい。構いません」と同意した。

メルダの合意も得られたところで帝国の処遇についての話に移る。

「まぁ、昨日の証拠映像からも帝国の裏切りがあったのは疑いようもないから処罰の話に移るぞ。七英雄からはメルダの処刑を提案するが、皇国は?」

「皇国は帝国にて不当に扱われている皇国民の解放及び帝国軍の縮小と皇国方面への軍の配備の禁止、そしてメルダの処刑を要求する」

要求内容を聞くとゼギウスは意外そうな顔をする。要求内容は大体想像通りだったが、その中に金銭に関する話も含まれると思っていた。

帝国から莫大な金銭を要求すれば帝国は現状の軍隊を維持できなくなり実質的な軍縮にはなる。加えて、昨日ゼギウスが提案した王国再興の資金に充てることもできるはずだ。

もう1つおまけに金額によって罪の重さが調整が楽になるという側面もある。

それなのにそうしないところにゼギウスは何かしらの意図を感じていた。

「帝国の意見は?」

「その内容であれば構いません。七英雄と皇国との間で話し合って正式なものを決めてください」

メルダは本当に口を挟むつもりはないようで自分の処刑がほぼ確定したというのに一切取り乱さず受け入れていた。

「メルダの処刑については合致してるからいいとして、皇国民の解放と軍の縮小は帝国の罪の重さを決めてから判断するから後回しだ。ただ、皇国方面への軍の配備禁止は呑めねぇな」

そうゼギウスは探りを入れるように皇国の意図が含まれていそうな内容を拒否する。

「何故だろう。理由を聞かせてもらえるか?」

「帝国が軍の配備をしないのは当然、皇国が侵攻しないことが前提になる。だが、その監視をする者が居ねぇ。七英雄がやればいいって意見が上がるんだろうが、七英雄も所詮は国に所属してる。その七英雄がまともな監視体制を取れるとは思えねぇ」

そのゼギウスの意見にベネッタの後ろにいる男性が意見する。

「それには一定の理解ができる。しかし、これまでの歴史を見て皇国から仕掛けたことは1度もない。それでも監視が必要だと?」

「過去はあくまで過去でしかなく参考程度にしかならねぇ。それにアンタの好きな歴史を見るなら皇国の皇が帝国によって暗殺されたことがあったか?ねぇだろ。その報復に帝国へ侵攻するっていうのは考えられない話じゃねぇ。だから監視は必要だ。これは2国間の話じゃない、人間界に置ける秩序を保つための問題だ」

「では、皇国はいつ進軍してくるかも分からない帝国軍に怯えろと言うのか!」

今度は違う男性が声を荒げる。そこからはこの条件をどうしても呑みたくないという意思を感じた。

「そうは言ってねぇ。だから俺は王国の再興を提案する。王国が監視となることで事態の把握、皇国又は帝国が破った場合に制裁を加えることができる」

「昨日もそう言っていたな。さっきの意見で監視の目が必要なのも頷ける。しかし、王国を再興させるとして再興に取り掛かる王国が監視の役割を果たせるだろうか。暴走する帝国に何もできないというのが現実であろう」

そのベネッタの指摘は至極真っ当だった。事実、王国が存在していた時に王国は帝国に対して何もできないでいた。その時よりも更に国力が落ちている王国が歯止めになるか疑問に思うのは皇国としては当然だ。

「王国だけだと無理だろうな。だが、帝国が破った場合は王国と皇国が手を組み制裁を、皇国が破った場合は王国と帝国が手を組んで制裁を加えればいい。もし両国が破る又は王国がそれに加担した場合は人間界を滅ぼす」

その言葉にこの場に居る全員が息を呑む。ゼギウス、益してや七英雄全員が手を組もうと人間界を滅ぼすというのは現実的ではないだろう。

しかし、今のゼギウスの言葉には本気でそれを実現するという圧が籠められていた。その中で怖いもの見たさかベネッタが質問する。

「どうやって滅ぼすというのだ?」

「今、押さえつけてる魔物の群れを開放する。現状、魔物の群れは昨日ここに居た魔物2体に押さえつけさせてるだけだ。まぁ、それでも全ては無理だから進攻されてるんだけどな」

ここにアルメシアとナナシがいないのはゼギウスが言うように魔界で魔物を押さえつけているからだ。この方法でずっとどうにかできるとは思っていないが、両国首脳が集まるこの会議の間だけはそうやって対応せざるを得ない。

「なっ!貴様、七英雄でありながら魔物の力を借りるとは何事だ!即刻、処刑するべきだ!」

「昨日ここに居た魔物の片方は確かドラルだったはず。王国領の被害が少なかったのもドラルの協力があったからか」

ベネッタの後ろで声を荒げる男性とは逆にベネッタは冷静にそう考える。

「そういうことだ。これなら抑止としては十分だろ?」

「話を進めるな!貴様はそうやって魔物と手を組み人間界を陥落させるつもりなのだろ!即刻処刑するべきだ!」

相変わらず男性が声を荒げているとベネッタが男系の口に剣を突っ込む。

「黙れ。ゼギウス様が人間界を落とすつもりがないのは庭との戦闘で明らかだ。魔物に加担しているのなら、それに乗じて人間界を落とす。冷静に物事が見えないのならこの場から去れ!」

その言葉に男性がコクコクと小さく早く頷くとベネッタは男性の口から剣を抜いた。だが、ベネッタの言い分に全員が納得したという訳ではなく違う男性が疑問を呈する。

「待て。その庭の存在を知っているだろう人物は七英雄を除き全員死んでいる。庭との戦いというのは虚言で人間界を落とそうとするゼギウス側と護ろうとする側の七英雄で戦ったということも考えられるのではないか?」

それは庭の存在を今まで知らなかった人からすれば考えついてもおかしくないものだろう。ゼギウスの言動には不可解なものが多かった。

その疑念は皇国と帝国の代表の中に深く根付くと会議を混沌とさせた。
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