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第十四章 手のひらを太陽に

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「あいつ・・・!申し訳ありません、姉の非礼を
心より詫びます!」

第二殿下には違う意味で世話になったって、それは
もしかしてエル君に対する嫌がらせやリオン様本人
へのアプローチのことかな?

ミリアム殿下はリオン様の言い方から何かを察した
らしく、王子様らしからぬ勢いで頭を下げた。

「僕はルーシャ国の第二王子だから君達の国の後継
争いには介入出来ないし、介入するほどの権限も
持っていないからね。それを期待されても困るよ。
皇太子殿下はそれをよく分かってくれていて、僕が
少しでも早くモリー公国へ行けるようにと随分心を
砕いてくれたけど。」

・・・暗に権力争いでルーシャ国を味方につけようと
した第二殿下に足止めされていて迷惑だったと言って
いる。

「君達はもうユーリが癒し子だと分かっているみたい
だけど、僕達が帰った後もユーリがフィリオサ殿下を
治して薬花にも加護を付けた事はバロイ国には秘密に
していてくれると助かるな。」

ひたすら頭を下げているミリアム殿下や私と手を
繋いで立っているフィー殿下にリオン様は言った。

「それは、勿論・・・!俺の弟にも等しいフィーを
助けてもらったんです、癒し子にもルーシャ国にも
恩義しかありません‼︎」

ミリアム殿下はまた頭を下げてそう言って、フィー
殿下も頷いた。そしてフィー殿下は

薬花の栽培予定地の薬草園にも、たくさんその花芽が
出てるんですよ、お姉様が何かしてくれたんでしょ?
と教えてくれた。どうやらそれを早く教えたくて
ここまで来たらしい。

「ありがとう。予定外にバロイ国に足止めをされて
ユーリに会えるのが遅くなった時はどうしたものかと
思ったけど、何とかなって良かったよ。お礼に君の
兄上にはいくつか助言をして来たから、君もバロイ国
に戻ったらよくよくその手助けをしてあげてね。」

「え?」

リオン様の言葉にミリアム殿下は顔を上げた。

「この先バロイ国が平和で良い国になるようにとね。
僕の助言には君の手助けが必要な案もいくつか
入っているんだ。頼んだよ。来年のルーシャ国の
僕の兄上の戴冠式にはバロイ国から君の兄上か、
名代として君が来ることになるだろう。その時に
また会えるのを楽しみにしているよ。」

えーとリオン様、それってもしかして皇太子殿下が
第二殿下との権力争いに勝てるようなアドバイスを
して来たってことかな?

それも、来年の大声殿下の式典には今の国王じゃ
なくてミリアム殿下のお兄さんが来るだろうって
ことは、遅くても来年のその頃までにはバロイ国の
国王が変わるような策を授けたという事だよね
・・・?

『いくつかの助言』という辺りに、それは一つだけ
ではなく様々なパターンに備えた策を講じてきたって
いうのも察することが出来るし。

え?思ったより本気で介入しているっぼいのが
ちょっと怖いんですけど・・・。

シェラさんやエル君の方を見れば、エル君は

「第二殿下はかなりしつこかった上、バロイ国王も
それを容認なさるようなところもあったためユーリ様
に会えるまで日にちがかかった分、殿下には色々な
策を考える時間がありましたので。」

とかぶりを振った。シェラさんは

「発覚しない出来事は起こっていないと同義だと
言いましたでしょう?リオン殿下がバロイ国の後継者
選びに介入した証拠などどこにもありません。
ユーリ様にお会い出来ない苛立ちや悩みをバロイ国の
皇太子殿下へ愚痴られただけですよ。」

そう言って微笑んだ。シェラさんのその言葉を受けて

「まあユーリに会えない時間が長かった分、バロイの
皇太子殿下と色々話す時間はあったよね。おかげで
随分と気が紛れたよ。」

そんな風に言ってリオン様は私の肩を抱いた。
それを見て、

「話に聞いていた以上の溺愛ぶりで怖い・・・。
絶対敵に回したくないタイプの人だ。終わったな、
姉上・・・父上も・・・」

ミリアム殿下が呆然として呟いたのが聞こえた。
あいつら二人ともロクなもんじゃねえけど、少しだけ
同情する・・・とも言っている。

いや、ちょっと待って欲しい。

それだと私に会えなくて苛ついたリオン様がその原因
の一国の王様まで変えてしまうってことだ。

え?何そのスケールの大きい話。私のせいでどこかの
国の王様が変わっちゃうの?

青くなった私をフォローするようにシェラさんが、

「今回第二殿下の嫌がらせの標的になったのは幸い
にも身代わりのエルでしたが、もしそれがユーリ様
本人だったらと思えばリオン殿下のお気持ちも理解
出来ます。これは決して大袈裟な意趣返しなどでは
ありませんから気にしなくてよろしいかと。オレも
ユーリ様がそのような目に遭えばすぐにでもその相手
の首を取ってきますし。」

なんの慰めにもフォローにもならない事を言う。

青くなっている私を見たリオン様は少し困ったような
笑顔を見せた。

「そんなに心配しないで。ユーリのことだけでなく、
実際バロイ国の内情を目にしたらこのまま今の国王で
いるよりも皇太子殿下が国の舵取りをした方が僕達
ルーシャ国ももっと友好的に付き合えると思っただけ
なんだ。それに僕は皇太子殿下の相談に乗っただけ
だから、それをどうするかは殿下の判断次第だよ。」

「そ、そうですか・・・」

これ以上私が言えることは何もない。バロイ国の王様
が皇太子殿下へなるべく穏便に変わることを祈るのみ
だ。

心臓に悪い話を聞いてしまって、ふうとため息を
ついた私を見ながらリオン様は聞いてきた。

「しかし困ったね。せっかくユーリに会えたしその姿
でいるところを見られるのは嬉しいけど、このまま
だと今夜の宴席に一緒には出られないなあ。いつまで
その大きさなの?」

「どうなんでしょう。前みたいに力をたくさん使えば
戻れるのか・・・。離宮の時は今よりも酔っていて
制御できないままその力を使い尽くしてから戻った
んでしたっけ?今回はまだそこまで力を使った感じは
しないんですよね。」

オレはまだ全力を出していない。

まるでニートのようなセリフが頭に浮かんだけど
気分的にはそんな感じだ。

「あと私に出来ることと言えば、フィー殿下の庭園に
作られた噴水に毒消しの効能がある加護をつける位
しか思いつきませんけど、それだけでいつもの姿に
戻るかなあ・・・」

「お姉様、毒消しの効果のある水も作れるんですか?」

フィー殿下が目を丸くして聞いてくる。かわいい。

「はい、そうですよ。この先の事も考えて加護を
つけておきますね。フィー殿下もエーリク様も、ぜひ
水差しに取っていつも枕元に置いて下さい!」

「お姉様がルーシャ国に帰っても、あの果物の木や
噴水を見る度にお姉様のことを思い出しますね。
頑張って体力をつけて今度は僕がルーシャ国に遊びに
行きます!その時は薬花もたくさん持って行きます
から。」

さらさらの薬花みたいな色の髪の毛を揺らして私を
見上げてそう言ってくれる殿下はすごくかわいい。

いつかあの夢の中のように両手いっぱいに抱えた薬花
を携えたフィー殿下とルーシャ国で会えるだろうか。

「あーもう、すっごくかわいいです!」

思わずぎゅっと抱き締めると胸の下にフィー殿下の
顔が埋もれて、苦しいですと背中をぽんぽんタップ
された。

非力な私の腕から抜け出せないあたり、フィー殿下
もまだまだひ弱だ。早くもっと丈夫になって欲しい。

そう思って抱きしめながらその頭を撫でてさらさらの
髪の毛の手触りを堪能していたら、

「ユーリ、それはないよ!その薄いドレス姿で
そんなにきつく抱き締めるのはどうかと思う。」

リオン様に引き剥がされてしまった。ミリアム殿下も

「フィー!お前も離れろ、大丈夫か、窒息しなかった
か⁉︎」

真っ赤になって私からフィー殿下を離すと、当の殿下
に柔らかかったので痛くなかったし大丈夫ですよと
言われてまた赤くなった。

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