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しおりを挟む三毛猫さんがトコトコと歩きだす。
後をついて歩いて行くとハリスさんにたどり着いた。
三毛猫さんっ! ありがとう!
「ハリスさん……」
「ノア、どうした?」
半泣きの私を見て戸惑うハリスさん……すみません……かくかくしかじか、とここまでの事を説明する。
「そうか……大変だったな。今日はもうクルクスの所へ行くか?」
でも……と言うと
「イアン様もいいと言っているし大丈夫だよ」
と微笑んでくれるハリスさん。泣いちゃいそう。
と、いう訳で三毛猫さんと寮の裏へ向かうとクルクスさんがテオにお手をしてテオがいいコだね、とクルクスさんを撫でている。
可愛い……
トマスは少し離れた所で横になっている。
私も混ぜてー、と近づいていくとクルクスさんが走ってきてくれた。
「クルクスさん!」
しゃがんでバッと腕をひろげるとクルクスさんは私の横を通りすぎて三毛猫さんの元へ……
テオが向こうを向いて肩を震わせている……珍しい……トマスは横になったまま笑い転げている。
ま……まぁいい……二人には見えていないけれど三毛猫さんとじゃれ合っている姿が可愛い。
それからお茶会が終わるまで三毛猫さんとクルクスさんとトマスとテオと一緒に過ごした。
お客様が帰ってからもう一度クルクスさんをトマスとテオにお願いして会場の片付けのお手伝いをしに行く。
アルとイーサンに会うと
「ノア、大変だったみたいだな」
と、気の毒そうに笑われた。
セオドアに会うと
「ノア、さすがだな」
と、普通に笑われた。
片付けが終わりクルクスさんをリアム様の元へ連れて行って寮へ戻ろうとした所でハリスさんとセドリックさんに声を掛けられた。
「ノア、お疲れ様。これを持っていくといい」
と、お菓子がたくさん入ったバスケットを渡された。
「焼き菓子は日持ちがするから一度にたくさん食べ過ぎないようにするのだよ」
セドリックさんに頭を撫でられる。子供じゃないのだけれど……
「ありがとうございます。友達と一緒にいただきます」
「友達?」
と、首をかしげるセドリックさん。
「はい。レクラス王国に着いた時からお世話になっている街の宿屋と服屋の友達です」
「それでは次の休みは街へ行くのかな」
「はい!」
という訳で休日、私はバスケットを持って街へと出てきた。
このお菓子を見たらマーサがすごく喜んでくれそう。想像すると頬が緩む。
鉄の鍵へ向かいながらお茶会でのご令嬢達の話を思い出す。
街の中にはやっぱり行方不明者の張り紙が多い……家族なのか恋人なのか道行く人に紙を見せて見たことはないかと必死に聞いて回っている人もいる……
旅行者だけではなく街の人もいなくなり始めた……と言っていた……一体何が……と考えながら歩いていると肩を掴まれた。
驚いて振り向くと
「ノアッ! マーサを見なかったか!?」
「ウィル!? どうしたの? マーサが……なに?」
嫌な感じがする……
「マーサがいないんだっどこにもいないんだよっ!」
「ウィル……痛い……落ち着いて」
肩を強く掴まれてそう言うとウィルは手を離し、すまない……と少し落ち着いてくれた。
「ウィル、マーサがどうしたの?」
ウィルを見るといつものふざけた感じはなく目の下には隈が……髭も少し伸びていてすごく必死な様子……
「マーサが……いないんだ……どこにも……ずっと探しているけど見つからないんだよ……」
そう言ってポロポロと泣き出してしまった。
ひとまず落ち着いて話せる場所を探してウィルを座らせる。
ちょっと待っていて、と言い屋台で飲み物を買って戻る。
バスケットのお菓子も食べさせて落ち着いてもらう。
「マーサがいないっていつから?」
聞くのが怖い……
「一週間前……いつも通り買い物に出たまま暗くなっても戻らない、とルークが俺の店に来て……」
一週間も……
「ルークはどこにいるの?」
「宿には客がいるから……おやじさんがなるべく仕事に出ている。おかみさんが……心労で体調を崩して……ルークもマーサを探しているけど宿やおかみさんのこともあるしおやじさんも年だし……」
「ウィルは? お店は大丈夫なの?」
「俺は……弟がいるから……大丈夫だ」
それじゃぁウィルはほとんど一人で……とにかくルークにも話を聞かなければ。
「ウィル、一緒にルークの所へ行こう」
ウィルには少し休んでもらわないと……
「あぁ……ノアッ……俺はどうしたら……」
そう言って再び泣き出してしまったウィルが落ち着くのを待ってから鉄の鍵へ向かう。
「ルーク……」
宿屋に入りルークを見つける。疲れている……眠れないのかウィルと同じように目の下に隈が……
「ノア……ウィル……」
「ルーク、ウィルから聞いた。マーサが……」
詳しく聞かせて欲しい、と言いその間ウィルにはソファーで休んでもらう。
「一週間前の午後マーサは買い出しに出たんだ。いつも行っているし日の出ている時間だからこんなことになるなんて……っ」
確かに、私が初めてこの街についてマーサに助けられた時も一人で買い出しをしていた帰りだった。
「帰りが遅いから荷物が増えて困っているのかも、と思って迎えにいったのにいつも通っている道にはいなくて……店の人に聞いたら買い物をして帰ったと言うし……」
マーサを見なかったか来た道を戻りながら尋ね歩いたが誰も見ていない……と。
まだ明るい時間に人通りの少なくない道で何かがあったとしたら誰も見ていないって……おかしい。
それにこれだけ行方不明者が出ているのに国は何か手を打たないのだろうか……
とにかく、マーサや行方不明になった人達を探さなければ。……でもどうやって……何でもいいから手がかりが欲しい。
明るい時間で人通りもある道で何かがあっても目撃者がいないという事は……マーサがいつもとは違う道を通ったか……人通りの少ない道へ自ら入って行ったか……どうしてそうしたかがわからないと進まない。
「マーサは出かける時に何か言っていなかった? どこかに寄るとか……」
ルークが首をふる。
「街にこれまでの行方不明者で見つかった人はいる?」
また首をふる。いないのか……これでは何もわからない。
「わかった。私も帰って旦那様方に聞いてみる。行方不明者の事は貴族の方々も調べているだろうから何か聞けるかもしれない」
そう言ってルークにバスケットを預けて宿を出る。
お屋敷へ戻りセオドアを探す。レクラス王国に着いてお城に滞在している時に何か聞いていないか確認するために。
セオドアを見つけて聞きたいことがある、と人のいない場所に連れていく。
三毛猫さんがどこからかトコトコとやって来て私の足元に座る。
セオドアがどうしたの? と驚いている。
「セオドア、レクラスのお城でこの国で行方不明になった人達の事を何か聞いていない?」
そう聞いた瞬間レオンから王族のセオドアに表情が変わった。
「何かあったのか?」
「友達が……この街に着いた時に私を助けてくれた宿屋の女の子が一週間前から帰っていないらしくて……」
「……この国で行方不明者が増えていることは知っている。国も調査はしていると言っていた」
「どこまでわかっているの? 行方不明者の居場所は?」
「トーカ、この国の事はこの国の者に任せた方がいい」
……そうかもしれないけれどジッとしていられない……
「……行方不明になった人達は生きている……?」
「……わからない……」
……そう………………結界を張る。
「トーカッ」
セオドアが呼ぶのを無視して私は三毛猫さんと一緒に飛び立った。
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