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序章
ルーゼ王国にて
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「ルーゼ王国へようこそ、貴殿らを歓迎します!」
旅の一行は、立派な城門を潜り入国許可の手続きをする。ミラだけが初入国でありその為の審査を受けなければならないという。
座長のキュスラはミラを連れてギルドホールへ行き近くにいた受付嬢に話しかける。
「久しいさね、メイ。
早速で悪いけど彼女の入国カードを申請したいのさ、ちょいと急ぎさね。」
「まぁっ!キュスラさん!!
お久しぶりでございますわっ、今ギルドマスターをお呼びしますから少しお待ちになって。」
「ここで待つさね…、ミラ、話が長くなると思うからその前にこれを食べな。」
渡されたのは少し固めの黒いパンに干し肉と野菜がのったサンドだ。
「いえ、でもこれはキュスラさんの朝ご飯…。」
「あたしが良いって言ったんだ、ここは甘えとき。」
「ありがとうございます、あ…っそうだ!」
ミラはパンを風魔法で半分に切ってキュスラに渡す。
「一緒に食べたらもっと美味しくなるかなと思って…。」
「ミラ……ふっ、だったら貰うしかないさね?」
(本当に…この子は優しい、いや…優しすぎる子さね。精霊達が集まるわけだわさ。)
仲良く食事をした後、先程の受付嬢に案内され部屋に入る。
「やあ、キュスラ。3年ぶりだな?」
「ザイトーエ、あたしは芸を売る座長、そう長く留まらぬ自由気ままな人間なのさね。」
「知っているとも。
それで?今回私を呼んだという事は新しい子でも入団したのかね?」
目線がキュスラの後ろへと移り、ミラはおずおずと前に出た。
「こ…こんにちは。ミラと申します、よろしくお願いします。」
「随分可愛らしいうえに礼儀正しい子供だが…」
「ちょっとした縁さ、まぁ詳しくはこうさね。」
キュスラは彼女に出会った経緯を話す。話を聞くうちにザイトーエは真剣な表情になっていくのが見てわかる。
「魔物を退治した挙句治療まで施すとは…キュスラ、君に感謝しなければならんな。
ミラ君?私はザイトーエ、この国のギルドマスターをしている者だ。キュスラとその団員達を助けてくれた事は私からもお礼が言いたい、どうもありがとう。
だからこそ、君に1つ聞きたい。
君は何故あの森に1人でいたのだ?低レベルの魔物ばかりとはいえ、君のような子供が1人で旅をするところではない。」
「…ごめんなさい、答えたく、ありません。」
「そうか、では君の入国許可は出来ない。
お帰り願おう。」
「ザイトーエっ!ミラはあたしらを助ーー
『人間ごときが我が主の真意を問うとは愚かなり。』
な、なんだい?!」
突然ザイトーエの喉元に鋭い刃が当てられ、キュスラが目を見開いた。
今まで黙ってミラの後ろに控えていたセラフィがザイトーエの言葉に怒りを露わにし刃を向けたのだった。
『ーこれ以上我が主のお心を傷つけてみよ、我らの持つ力の全てをもって貴様を排除する。』
「この魔力…ミラ君と混ざり合っている、つまりは君は契約者……成程そういうわけか。
ミラ君には申し訳ないが試させてもらったよ。それで悪いが…。」
「セラフィ、もういいから。」
『ー御意。』
ふわりと刃は風のように消え、緊張が解けた。
ザイトーエが何故彼女を試したのか…。
それは10年前、彼のギルド出身である冒険者を似た状況で救助した者がおり、その際は快く受け入れたにも関わらず、国の内乱に発展する大きなきっかけを作ったという。
「親切を装って国を消しかけるなど許される行いでは無い。だからミラ君、先程入国出来ないと言った発言を許してくれ。
言い方が悪いが、その内乱させるきっかけを作ったのは君よりも歳が上の少女だった…、人の心を上手く利用する手腕は信じ難いものだよ。」
ミラは彼の言っている言葉に嘘偽りのない気持ちだと分かった。信じる心を踏みにじられる思いは痛いほど分かる。
この人なら信じられる気がした。
「ーーーギルドマスター、キュスラさん。
これから私が言う内容をどうか他言無用でお願いします。」
信じてほしい、その気持ちで彼女は過去を語る。
旅の一行は、立派な城門を潜り入国許可の手続きをする。ミラだけが初入国でありその為の審査を受けなければならないという。
座長のキュスラはミラを連れてギルドホールへ行き近くにいた受付嬢に話しかける。
「久しいさね、メイ。
早速で悪いけど彼女の入国カードを申請したいのさ、ちょいと急ぎさね。」
「まぁっ!キュスラさん!!
お久しぶりでございますわっ、今ギルドマスターをお呼びしますから少しお待ちになって。」
「ここで待つさね…、ミラ、話が長くなると思うからその前にこれを食べな。」
渡されたのは少し固めの黒いパンに干し肉と野菜がのったサンドだ。
「いえ、でもこれはキュスラさんの朝ご飯…。」
「あたしが良いって言ったんだ、ここは甘えとき。」
「ありがとうございます、あ…っそうだ!」
ミラはパンを風魔法で半分に切ってキュスラに渡す。
「一緒に食べたらもっと美味しくなるかなと思って…。」
「ミラ……ふっ、だったら貰うしかないさね?」
(本当に…この子は優しい、いや…優しすぎる子さね。精霊達が集まるわけだわさ。)
仲良く食事をした後、先程の受付嬢に案内され部屋に入る。
「やあ、キュスラ。3年ぶりだな?」
「ザイトーエ、あたしは芸を売る座長、そう長く留まらぬ自由気ままな人間なのさね。」
「知っているとも。
それで?今回私を呼んだという事は新しい子でも入団したのかね?」
目線がキュスラの後ろへと移り、ミラはおずおずと前に出た。
「こ…こんにちは。ミラと申します、よろしくお願いします。」
「随分可愛らしいうえに礼儀正しい子供だが…」
「ちょっとした縁さ、まぁ詳しくはこうさね。」
キュスラは彼女に出会った経緯を話す。話を聞くうちにザイトーエは真剣な表情になっていくのが見てわかる。
「魔物を退治した挙句治療まで施すとは…キュスラ、君に感謝しなければならんな。
ミラ君?私はザイトーエ、この国のギルドマスターをしている者だ。キュスラとその団員達を助けてくれた事は私からもお礼が言いたい、どうもありがとう。
だからこそ、君に1つ聞きたい。
君は何故あの森に1人でいたのだ?低レベルの魔物ばかりとはいえ、君のような子供が1人で旅をするところではない。」
「…ごめんなさい、答えたく、ありません。」
「そうか、では君の入国許可は出来ない。
お帰り願おう。」
「ザイトーエっ!ミラはあたしらを助ーー
『人間ごときが我が主の真意を問うとは愚かなり。』
な、なんだい?!」
突然ザイトーエの喉元に鋭い刃が当てられ、キュスラが目を見開いた。
今まで黙ってミラの後ろに控えていたセラフィがザイトーエの言葉に怒りを露わにし刃を向けたのだった。
『ーこれ以上我が主のお心を傷つけてみよ、我らの持つ力の全てをもって貴様を排除する。』
「この魔力…ミラ君と混ざり合っている、つまりは君は契約者……成程そういうわけか。
ミラ君には申し訳ないが試させてもらったよ。それで悪いが…。」
「セラフィ、もういいから。」
『ー御意。』
ふわりと刃は風のように消え、緊張が解けた。
ザイトーエが何故彼女を試したのか…。
それは10年前、彼のギルド出身である冒険者を似た状況で救助した者がおり、その際は快く受け入れたにも関わらず、国の内乱に発展する大きなきっかけを作ったという。
「親切を装って国を消しかけるなど許される行いでは無い。だからミラ君、先程入国出来ないと言った発言を許してくれ。
言い方が悪いが、その内乱させるきっかけを作ったのは君よりも歳が上の少女だった…、人の心を上手く利用する手腕は信じ難いものだよ。」
ミラは彼の言っている言葉に嘘偽りのない気持ちだと分かった。信じる心を踏みにじられる思いは痛いほど分かる。
この人なら信じられる気がした。
「ーーーギルドマスター、キュスラさん。
これから私が言う内容をどうか他言無用でお願いします。」
信じてほしい、その気持ちで彼女は過去を語る。
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