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序章
舞台公演ー初日①ー
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ここは王宮のとある控え室。
ミラは舞台公演の打ち合わせをしていた。
内容は、世にも美しいお姫様が継母の嫉妬で城を追われ獣の棲む森へ逃げ込む。そこで7人の小人に助けられ一緒に住むことになるが、あることがきっかけでお姫様が死んでいないと気づいた継母。狩人を殺しおばあさんになりすます。
実は継母は悪魔と契約した悪い魔女で、お姫様を魔法で永遠の眠りへと誘ってしまう。
森に棲む妖精達が小人に知らせるも一足遅かったために涙を流す。
やがて月日が経ち、森に棲む者たちが悲しみに暮れていると王子様がやってきてお姫様の元へ歩み寄り口付けをする。
すると、永遠の眠りが解けてお姫様が目を覚ます。かけられた魔法は継母の元へ返り、悪魔に魂を奪われる。
2人はお城へ戻り悪魔を倒して幸せに暮らした…という話。
「気に食わないけど継母役はあたし、お姫様役はエリスね」
「…はい、その…やっぱり自信ない……よ」
エリスと呼ばれた少女は周りを伺いながら今にも消え入りそうな声で呟いた。それに対しバーバラは困った表情で優しく叱咤する。
「エリス、あなたはもっと自信を持っていいよ!
次、狩人兼王子様役はアロウよ。当然出来るわね?」
「あぁ、問題ない」
「次、森の妖精その3「俺っす!」
ちょっとカルロス!あんたは呼ばれるまで待ってなさい!!」
「すいませんっす……!!」
「全く…っ!
次、7人の小人はそこのチームで1人1人配役が決まってるわね」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「森の妖精その1はノア、準備は……ばっちりね」
「……♪」
「森の妖精その2はミラだけどサポートでカルロスとノアがいるから安心なさい。
間違えても2人がカバーしてくれるわ」
「「まかせて(っす)」」
ノアとカルロスの自信に満ちた表情に和む。
「2人ともありがとう、私頑張るね!」
「で、最後に悪魔役はキュスラさんよ。
キュスラさんは別の部屋で待機してるわ」
それぞれの配役が決まり衣装合わせを行なうのだか………。
『ー我が主には可憐な桃色が似合うであろう。うむ、良き色である』
桃色のレースをふんだんに使ったドレスを手にバーバラへ見せる。
「風の大精霊様は分かっていないわ!!!
森を背景に写すのだから黄色が相場って決まっているのよっ、大体桃色はノアと衣装が被るから駄目よ!!」
『ならば橙色でも良いではないか』
「何それっっ!それこそありえないわ!?!?
理想からかけ離れるっっ、駄目よ駄目!」
「「いやバーバラ(さん)の方が大精霊様と言いあっている地点で駄目な気がするぞ(っす)」」
他の団員も含め苦笑いしているが、バーバラからしたら衣装のことが大問題である。
「それに森の妖精は導く者なのよっ!?
なのにどれも相応しくないわ!」
『では、主様のお衣装でございますが黄色を主体に青や白を組み合わせたらよろしいかと…。
このように刺繍を施せばー…』
ウンディーネはバーバラが手にしていた黄色の衣装を受け取り、それを早業で肩幅や胸元、曲線に細やかな刺繍を施す。
「!!」
バーバラは食い入るように見つめ、やがてボソリと
「凄い…凄いわ……っ!ミラの服を見て思っていたけれど水の大精霊様がお作りになっていたのね!」
「可愛い…ありがとうっウンディーネ!」
『主様もお喜び頂けて何よりでございまし。
僭越ながら、他の衣装も似たように施してよろしいでしょうか?』
「……ノアのも可愛いの、してくれる??」
「お、オレはひかえめがいいっす」
森の妖精役であるノアとカルロスの衣装も刺繍してくれると申し出にノアは喜び、カルロスは緊張気味に話した。
『全ては我が主様の御為、主様の願いを叶えるのも当然のお役目でございまし。
しかし、面と向かって礼を言われるのも悪うございませんね』
ウンディーネは微笑み、セラフィは力強く頷く。
そうして全ての団員の衣装をウンディーネが手直し、衣装が行き渡るとそれぞれが着替えを始める。
「バーバラ姉さん、背中のチャックがしまらないっす……」
ナレーターと妖精役を演じなければいけないカルロスはバーバラの元で時間を測り早着替えを行なっていた。
「ナレーターは前さえ良ければ何とかなるわ、身だしなみはすぐ直せるからさっきの感覚を覚えておきなさい」
「了解っす!」
「バーバラさん…っっおばあさんとのかけあいが……!頭が真っ白だよどうしよう!」
「エリス、とりあえず落ち着くのよ。
はい深呼吸!!」
「スーー、ハーー、スーー、ハーーー…」
『わしを助けてくれた礼じゃよ、お前さんにはとっておきの赤い赤い林檎をあげよう』
バーバラは彼女の様子を見計らい台詞を言えば、
『まぁ!なんて美味しそうな赤い林檎でしょう。でも…そのような高価な果実を頂けませんわ』
『何故じゃ?わしの好意を受け取ってくれんのかい…寂しいのぅ』
『ご、ごめんなさい!
ーでは、1口…頂きますね……、…』
エリスは目を輝かせてそれを噛んだ。
まるでそこに林檎があるかのように。
そして、フラフラと身体が揺れ身体が床へ倒れ込む。無意識にミラは身を乗り出していた。
「え、あ…ミラ、ちゃん?」
「ごっごめんなさい!!危ないって思ったらつい…」
「分かったかしらエリス?あなたの演技が上手くなければここにいる皆の目線を独り占め出来ないわ、もっと自信を持ちなさい。
あくまで周りはあなたの引き立て役よ、沢山のサポートがいて自信がないなんて言わせないわ!!」
「う、うん。頑張るよ」
「バーバラ…小道具、ない」
「探知魔法っ!!
そこのあなたっ1番奥の左の箱から煌びやかな華の杖を出して頂戴!」
「ありました!どうぞ!!」
「……………ありがとう」
「バーバラ、頼まれていた道具を持ってきた。どこへ持っていけばいいんだ?」
「キュスラさんの所に行って渡して頂戴」
「了解した」
「次ーーー」
と、指示が飛ぶ。
慌ただしい中、舞台が始まる予定時刻となっていった。
ミラは舞台公演の打ち合わせをしていた。
内容は、世にも美しいお姫様が継母の嫉妬で城を追われ獣の棲む森へ逃げ込む。そこで7人の小人に助けられ一緒に住むことになるが、あることがきっかけでお姫様が死んでいないと気づいた継母。狩人を殺しおばあさんになりすます。
実は継母は悪魔と契約した悪い魔女で、お姫様を魔法で永遠の眠りへと誘ってしまう。
森に棲む妖精達が小人に知らせるも一足遅かったために涙を流す。
やがて月日が経ち、森に棲む者たちが悲しみに暮れていると王子様がやってきてお姫様の元へ歩み寄り口付けをする。
すると、永遠の眠りが解けてお姫様が目を覚ます。かけられた魔法は継母の元へ返り、悪魔に魂を奪われる。
2人はお城へ戻り悪魔を倒して幸せに暮らした…という話。
「気に食わないけど継母役はあたし、お姫様役はエリスね」
「…はい、その…やっぱり自信ない……よ」
エリスと呼ばれた少女は周りを伺いながら今にも消え入りそうな声で呟いた。それに対しバーバラは困った表情で優しく叱咤する。
「エリス、あなたはもっと自信を持っていいよ!
次、狩人兼王子様役はアロウよ。当然出来るわね?」
「あぁ、問題ない」
「次、森の妖精その3「俺っす!」
ちょっとカルロス!あんたは呼ばれるまで待ってなさい!!」
「すいませんっす……!!」
「全く…っ!
次、7人の小人はそこのチームで1人1人配役が決まってるわね」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「森の妖精その1はノア、準備は……ばっちりね」
「……♪」
「森の妖精その2はミラだけどサポートでカルロスとノアがいるから安心なさい。
間違えても2人がカバーしてくれるわ」
「「まかせて(っす)」」
ノアとカルロスの自信に満ちた表情に和む。
「2人ともありがとう、私頑張るね!」
「で、最後に悪魔役はキュスラさんよ。
キュスラさんは別の部屋で待機してるわ」
それぞれの配役が決まり衣装合わせを行なうのだか………。
『ー我が主には可憐な桃色が似合うであろう。うむ、良き色である』
桃色のレースをふんだんに使ったドレスを手にバーバラへ見せる。
「風の大精霊様は分かっていないわ!!!
森を背景に写すのだから黄色が相場って決まっているのよっ、大体桃色はノアと衣装が被るから駄目よ!!」
『ならば橙色でも良いではないか』
「何それっっ!それこそありえないわ!?!?
理想からかけ離れるっっ、駄目よ駄目!」
「「いやバーバラ(さん)の方が大精霊様と言いあっている地点で駄目な気がするぞ(っす)」」
他の団員も含め苦笑いしているが、バーバラからしたら衣装のことが大問題である。
「それに森の妖精は導く者なのよっ!?
なのにどれも相応しくないわ!」
『では、主様のお衣装でございますが黄色を主体に青や白を組み合わせたらよろしいかと…。
このように刺繍を施せばー…』
ウンディーネはバーバラが手にしていた黄色の衣装を受け取り、それを早業で肩幅や胸元、曲線に細やかな刺繍を施す。
「!!」
バーバラは食い入るように見つめ、やがてボソリと
「凄い…凄いわ……っ!ミラの服を見て思っていたけれど水の大精霊様がお作りになっていたのね!」
「可愛い…ありがとうっウンディーネ!」
『主様もお喜び頂けて何よりでございまし。
僭越ながら、他の衣装も似たように施してよろしいでしょうか?』
「……ノアのも可愛いの、してくれる??」
「お、オレはひかえめがいいっす」
森の妖精役であるノアとカルロスの衣装も刺繍してくれると申し出にノアは喜び、カルロスは緊張気味に話した。
『全ては我が主様の御為、主様の願いを叶えるのも当然のお役目でございまし。
しかし、面と向かって礼を言われるのも悪うございませんね』
ウンディーネは微笑み、セラフィは力強く頷く。
そうして全ての団員の衣装をウンディーネが手直し、衣装が行き渡るとそれぞれが着替えを始める。
「バーバラ姉さん、背中のチャックがしまらないっす……」
ナレーターと妖精役を演じなければいけないカルロスはバーバラの元で時間を測り早着替えを行なっていた。
「ナレーターは前さえ良ければ何とかなるわ、身だしなみはすぐ直せるからさっきの感覚を覚えておきなさい」
「了解っす!」
「バーバラさん…っっおばあさんとのかけあいが……!頭が真っ白だよどうしよう!」
「エリス、とりあえず落ち着くのよ。
はい深呼吸!!」
「スーー、ハーー、スーー、ハーーー…」
『わしを助けてくれた礼じゃよ、お前さんにはとっておきの赤い赤い林檎をあげよう』
バーバラは彼女の様子を見計らい台詞を言えば、
『まぁ!なんて美味しそうな赤い林檎でしょう。でも…そのような高価な果実を頂けませんわ』
『何故じゃ?わしの好意を受け取ってくれんのかい…寂しいのぅ』
『ご、ごめんなさい!
ーでは、1口…頂きますね……、…』
エリスは目を輝かせてそれを噛んだ。
まるでそこに林檎があるかのように。
そして、フラフラと身体が揺れ身体が床へ倒れ込む。無意識にミラは身を乗り出していた。
「え、あ…ミラ、ちゃん?」
「ごっごめんなさい!!危ないって思ったらつい…」
「分かったかしらエリス?あなたの演技が上手くなければここにいる皆の目線を独り占め出来ないわ、もっと自信を持ちなさい。
あくまで周りはあなたの引き立て役よ、沢山のサポートがいて自信がないなんて言わせないわ!!」
「う、うん。頑張るよ」
「バーバラ…小道具、ない」
「探知魔法っ!!
そこのあなたっ1番奥の左の箱から煌びやかな華の杖を出して頂戴!」
「ありました!どうぞ!!」
「……………ありがとう」
「バーバラ、頼まれていた道具を持ってきた。どこへ持っていけばいいんだ?」
「キュスラさんの所に行って渡して頂戴」
「了解した」
「次ーーー」
と、指示が飛ぶ。
慌ただしい中、舞台が始まる予定時刻となっていった。
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