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序章
裏切ったのは彼女ではなく私だった。―シュヴァルツside
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婚約者であったセルディーア・ミカエラが、まさか陰でアリエッタ嬢を苛めていたとは思いもよらなかった。
だから、私はミカエラに婚約破棄を命じた。
それが、アリエッタ嬢に対する正当な謝罪になると考えていた。しかし、
「この馬鹿者っ!!我が息子であるにも関わらず、セルディーア嬢に何と言う無礼をっっ!
情けないにも程があるぞ!」
今回の婚約破棄について父である国王ラディッシュ陛下が嘆いていた。
「あの者は、私の婚約者でありながらこのような行いを隠していたのですよ?
それが何故、無礼だと言うのですか??」
言っている意味が分からないと反論を唱えるシュヴァルツに、第二王子のアルフレッドが怒りの声をあげた。
「兄上っ!!
ならば、彼女がアリエッタ嬢に対してやってきたという証拠があるのですか!?」
アルフレッドの問いに、シュヴァルツは
「勿論、ある。
私が彼女に贈ったブローチや髪飾りが次々と見つかっている…。これが動かぬ証拠だ!」
ここで国王が静かに口を開く。
「シュヴァルツ、お主がセルディーア嬢のどこに惹かれて婚約を申し込んだか覚えておるか?」
突然何を言い出すのかと、その場にいた二人は国王を見る。
「それは…。」
「それされも忘れおったか…。
セルディーア嬢は、幼き頃から王妃になるための教育を受けてきたのじゃ。
我々の隣に立つに相応しい人間になるために、人一倍努力したに違いないじゃろう。
その姿にお主は惚れて、儂が婚姻を願い出た。」
ここで国王は、言葉を止めて俯いた。
「しかし…周りの者は婚姻をきっかけに出来て当然と、当たり前だと捉え、誉める言葉も慰める言葉も無く強要させてしまった。
儂はこの事を知っていても、手を出すべきではないと思い目を瞑っていた。
彼女はお主と出逢って更に己を磨いておった…。
全ては、お主の隣に相応しい者になるために。」
「…っ、なら何故っ彼女は私を困らせるのような過ちを犯したのですか?!」
「アリエッタ嬢と言ったな…、あの者の傍に妖精や精霊がいるところをお主らの目で見たことがあるのか?
召喚に応えてくれた者が、一人でもおったか??」
「「!!!」」
シュヴァルツはハッとしてもう一度、国王を見る。
「では、今までの悪事は全て…アリエッタ嬢の自作自演だと?」
ここで、アルフレッドがある事を口にした。
「ミカエラ嬢が貴方から贈られた品を常に身に付けておりました。
しかし、それがあることをきっかけに身に付けるのを止めたのです。
これがどういう意味だかお分かりですか?
―自分の行いが原因で貴方の手を煩わせるなどしたくなかったのですよ…彼女は。
ただでさえ、注目の的になっている彼女は例え自分が傷ついていても貴方や私・家族にさえ相談しなかった。
いや、出来なかったから一人で抱え込んで平気なフリをして過ごしてきたのでしょう……。
貴方がアリエッタ嬢の言葉を鵜呑みにし、公の場で断罪されていた時の彼女の表情は…見ていられなかった。
それでなくとも噂のせいで心身共に疲労していたでしょうに。」
「噂とは何だ。
どういう事か説明しろ。」
「兄上は知らなかったのですか?
アリエッタ嬢と貴方が結ばれている―。」
アルフレッドは静かに口を閉じた。これ以上言わなくても分かっているだろうと思って。
しかし―。
「私がアリエッタ嬢と婚約だと…?そんな馬鹿な事を口にしていない!」
「!?」
アルフレッドは開いた口が塞がらなかった。てっきり、アリエッタに恋心が移ったのだと思っていたからだ。
「誰もが口を揃えてアリエッタ嬢が貴方の婚約者になったと言っておりましたが…、
それも嘘だったと?」
「何て事だ…。私は、何て愚かな選択をしてしまったのだろうかっ!
どうしてミカエラを信じてあげられなかったのだっ!!」
シュヴァルツは、自分の行動が更に誤解を生んで大事になったことを今更ながら自覚し、己を恥じた。
(裏切ったのはミカエラではなく、私の方だったのか…。)
国王は玉座に座り直し、整列していた騎士団に命令する。
「直ちに精鋭部隊を結成し、セルディーア・ミカエラ嬢を探すのだ!そして無事我が国に連れ帰るのじゃ!!
だか、気を付けよ、彼女の魔法は桁違いに強い。おまけに多数の精霊と契約を交わしておる…。
シュヴァルツッ!
誠心誠意、ミカエラ嬢に謝罪し婚姻破棄を取り消すのだぞ。」
更に国王は言葉を続ける。
「今回の件の首謀者であるデール・アリエッタ嬢とその一家を即刻、捕らえよ。
処刑ではあるが事の次第によってはそれ以上もあり得る。
―これは王族を蔑ろにした罪であり、それ相応の罰である。」
整列していた騎士団隊長と、彼の前に立つシュバルツとアルフレッドは、膝を折り頭を下げた。
「「「「「はっ!!!」」」」」
(ミカエラ…、お願いだ無事でいてくれ。)
だから、私はミカエラに婚約破棄を命じた。
それが、アリエッタ嬢に対する正当な謝罪になると考えていた。しかし、
「この馬鹿者っ!!我が息子であるにも関わらず、セルディーア嬢に何と言う無礼をっっ!
情けないにも程があるぞ!」
今回の婚約破棄について父である国王ラディッシュ陛下が嘆いていた。
「あの者は、私の婚約者でありながらこのような行いを隠していたのですよ?
それが何故、無礼だと言うのですか??」
言っている意味が分からないと反論を唱えるシュヴァルツに、第二王子のアルフレッドが怒りの声をあげた。
「兄上っ!!
ならば、彼女がアリエッタ嬢に対してやってきたという証拠があるのですか!?」
アルフレッドの問いに、シュヴァルツは
「勿論、ある。
私が彼女に贈ったブローチや髪飾りが次々と見つかっている…。これが動かぬ証拠だ!」
ここで国王が静かに口を開く。
「シュヴァルツ、お主がセルディーア嬢のどこに惹かれて婚約を申し込んだか覚えておるか?」
突然何を言い出すのかと、その場にいた二人は国王を見る。
「それは…。」
「それされも忘れおったか…。
セルディーア嬢は、幼き頃から王妃になるための教育を受けてきたのじゃ。
我々の隣に立つに相応しい人間になるために、人一倍努力したに違いないじゃろう。
その姿にお主は惚れて、儂が婚姻を願い出た。」
ここで国王は、言葉を止めて俯いた。
「しかし…周りの者は婚姻をきっかけに出来て当然と、当たり前だと捉え、誉める言葉も慰める言葉も無く強要させてしまった。
儂はこの事を知っていても、手を出すべきではないと思い目を瞑っていた。
彼女はお主と出逢って更に己を磨いておった…。
全ては、お主の隣に相応しい者になるために。」
「…っ、なら何故っ彼女は私を困らせるのような過ちを犯したのですか?!」
「アリエッタ嬢と言ったな…、あの者の傍に妖精や精霊がいるところをお主らの目で見たことがあるのか?
召喚に応えてくれた者が、一人でもおったか??」
「「!!!」」
シュヴァルツはハッとしてもう一度、国王を見る。
「では、今までの悪事は全て…アリエッタ嬢の自作自演だと?」
ここで、アルフレッドがある事を口にした。
「ミカエラ嬢が貴方から贈られた品を常に身に付けておりました。
しかし、それがあることをきっかけに身に付けるのを止めたのです。
これがどういう意味だかお分かりですか?
―自分の行いが原因で貴方の手を煩わせるなどしたくなかったのですよ…彼女は。
ただでさえ、注目の的になっている彼女は例え自分が傷ついていても貴方や私・家族にさえ相談しなかった。
いや、出来なかったから一人で抱え込んで平気なフリをして過ごしてきたのでしょう……。
貴方がアリエッタ嬢の言葉を鵜呑みにし、公の場で断罪されていた時の彼女の表情は…見ていられなかった。
それでなくとも噂のせいで心身共に疲労していたでしょうに。」
「噂とは何だ。
どういう事か説明しろ。」
「兄上は知らなかったのですか?
アリエッタ嬢と貴方が結ばれている―。」
アルフレッドは静かに口を閉じた。これ以上言わなくても分かっているだろうと思って。
しかし―。
「私がアリエッタ嬢と婚約だと…?そんな馬鹿な事を口にしていない!」
「!?」
アルフレッドは開いた口が塞がらなかった。てっきり、アリエッタに恋心が移ったのだと思っていたからだ。
「誰もが口を揃えてアリエッタ嬢が貴方の婚約者になったと言っておりましたが…、
それも嘘だったと?」
「何て事だ…。私は、何て愚かな選択をしてしまったのだろうかっ!
どうしてミカエラを信じてあげられなかったのだっ!!」
シュヴァルツは、自分の行動が更に誤解を生んで大事になったことを今更ながら自覚し、己を恥じた。
(裏切ったのはミカエラではなく、私の方だったのか…。)
国王は玉座に座り直し、整列していた騎士団に命令する。
「直ちに精鋭部隊を結成し、セルディーア・ミカエラ嬢を探すのだ!そして無事我が国に連れ帰るのじゃ!!
だか、気を付けよ、彼女の魔法は桁違いに強い。おまけに多数の精霊と契約を交わしておる…。
シュヴァルツッ!
誠心誠意、ミカエラ嬢に謝罪し婚姻破棄を取り消すのだぞ。」
更に国王は言葉を続ける。
「今回の件の首謀者であるデール・アリエッタ嬢とその一家を即刻、捕らえよ。
処刑ではあるが事の次第によってはそれ以上もあり得る。
―これは王族を蔑ろにした罪であり、それ相応の罰である。」
整列していた騎士団隊長と、彼の前に立つシュバルツとアルフレッドは、膝を折り頭を下げた。
「「「「「はっ!!!」」」」」
(ミカエラ…、お願いだ無事でいてくれ。)
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