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序章
あの女のせいよ!! ―アリエッタside
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彼女は不機嫌な表情で馬車に乗っていた。
「何よっ!あの女を学園から追い出しただけじゃない!!
私は何も悪くないわ!」
アリエッタが苛立っている原因―。
それはミカエラを学園から追放した後の事だった。
(いくら意地悪されたからって、相手の婚約者を横取りしなくてもいいのに…。)
(殿方に色仕掛けで迫ったんじゃないなくて?
あんな風に迫られたら誰でも堕ちると思うわ、同じ女として恥ずかしいですわ。)
(ミカエラ様は、正式な発表でやっと人前で殿下に愛を囁くことが許されたと言うのに…なんて酷い扱いだわ。
確かに悪戯が過ぎていたかも知れませんけれど、私も同じ事をされていたらと思うと…。
ミカエラ様がお可哀想だわ…。)
ヒソヒソと周りが陰口を言う。
次第にアリエッタから距離をおいて目も合わせようとしなくなった。
答えは至極当然、何かの拍子に彼女を怒らせれば明日は我が身と思っているからだ。
あの日からシュヴァルツ殿下と話もしていない。
(シュヴァルツ様もシュヴァルツ様よ!いくら忙しいからって、婚約者の私を放置するなんて最低ねっ)
馬車の中で一人、愚痴を溢していた。
「そこの馬車、止まれっっ!!!」
外で鋭い声がしたと思ったら、急に馬車が停止した。
(えっ!?何事よもう!!
私は疲れたから早く帰りたいのにっ!)
アリエッタは外の人物を見もしないまま怒りだす。少しして馬車の扉が若干乱暴に開けられると、彼女は驚きで声をあげた。
「シュ、シュヴァルツ殿下にアルフレッド殿下!?」
アリエッタの目の前には、二人が立っていた。
いつになく厳しい表情でシュヴァルツ殿下が話し出す。
「貴殿を徹底的に調べさせてもらった。
ミカエラ付きの侍女が全て自白したぞ。」
「な、何の事でしょう?」
扇で口元を隠し、しらを切るアリエッタにシュバルツ殿下の追及が止まらない。
「隠しても無駄だ。
貴様にある事を命令されてやったと証言が上がってるのだ。」
「確かにその侍女との接点はありましたけれども、その侍女がお金に目が眩んでブローチを盗んだのと私に何の関係があるのよっ!!」
しかしアルフレッド殿下はこの言葉を聞き逃さなかった。
「へぇ…、何で侍女が盗んだって分かったんだよ?俺達は全て自白したと、
ある事をお前から命令されたとしか言ってないけどさ??」
「あっ!」
アリエッタは咄嗟に口を押さえたが、もう遅い。
すかさずシュヴァルツ殿下が追及する。
「侍女に余が贈ったブローチや髪飾りを盗ませ、現場にわざと置いていったそうだな?
そうすれば、必然的に疑いの目が彼女にいく。お粗末なやり口に気づけなかった余にも落ち度はあるが、貴様は私と彼女の仲を引き裂いた張本人だ。
どうやって責任をとってもらおうか…?」
怖い目でアリエッタを睨む。
それでも彼女は強気に言い返した。
「あの女が全部悪いのよっ!!殿下や周りにちやほやされていい気にのっているからっっ、それなのに平然とした顔で男を侍らせて私を見下してっ…ムカつくのよ!!ビッチなあの女を学園から追い出せて精々するわっ、
アハハっ、あんな顔が見れて愉快で堪らない!!」
アリエッタの歪んだ感情を目の当たりにした二人は、思わず身を引いた。
「お前っ…おい、こっちに騎士を何人か寄越してくれ。
こいつを国王陛下の御前に連れていき、洗いざらい吐かせろ!」
アルフレッド殿下は怒りを露にし、騎士達に命令する。シュヴァルツ殿下は何も言わず、ただ冷めた目でアリエッタを見ていた。
「シュヴァルツ殿下も、あんな鉄仮面を婚約者にするなんて本当に気の毒ですわ!
私はただ、あの女を追放しただけっ!
フフッ…貴方が気に病む必要はどこにもないのですよ?だって私と貴方は婚―。」
―ダンッッ!
「何を勘違いしているか知らないがお前と婚約するなどと誰が言った?
余が、恥知らずの大嘘つきな女と婚約するとでも??
―笑わせるな。お前は生涯死を望んでも叶わぬ苦痛と絶望を味わえ…、二度とその身が太陽の光を浴びれぬ暗闇の底で地獄を知れ。」
アリエッタの顔面すれすれに愛剣を刺し冷酷な表情で淡々と告げる。
その光景に、誰も口出し出来ぬままただ茫然と眺める事しか出来なかった。
その後、デール家を捕縛しアリエッタ以外の者は従者を含め、皆縛り首に処された。
アリエッタとミカエラの元従者付きは、王宮の地下に幽閉された。
ここで二人は自然の理によって死が彼女たちを受け入れるその日が訪れない限り、死にかける一歩手前まで拷問され回復薬で快復しては休む暇も与えられないまま拷問が繰り返される。
これがデール・アリエッタの生涯であり哀れな女の末路である。
「何よっ!あの女を学園から追い出しただけじゃない!!
私は何も悪くないわ!」
アリエッタが苛立っている原因―。
それはミカエラを学園から追放した後の事だった。
(いくら意地悪されたからって、相手の婚約者を横取りしなくてもいいのに…。)
(殿方に色仕掛けで迫ったんじゃないなくて?
あんな風に迫られたら誰でも堕ちると思うわ、同じ女として恥ずかしいですわ。)
(ミカエラ様は、正式な発表でやっと人前で殿下に愛を囁くことが許されたと言うのに…なんて酷い扱いだわ。
確かに悪戯が過ぎていたかも知れませんけれど、私も同じ事をされていたらと思うと…。
ミカエラ様がお可哀想だわ…。)
ヒソヒソと周りが陰口を言う。
次第にアリエッタから距離をおいて目も合わせようとしなくなった。
答えは至極当然、何かの拍子に彼女を怒らせれば明日は我が身と思っているからだ。
あの日からシュヴァルツ殿下と話もしていない。
(シュヴァルツ様もシュヴァルツ様よ!いくら忙しいからって、婚約者の私を放置するなんて最低ねっ)
馬車の中で一人、愚痴を溢していた。
「そこの馬車、止まれっっ!!!」
外で鋭い声がしたと思ったら、急に馬車が停止した。
(えっ!?何事よもう!!
私は疲れたから早く帰りたいのにっ!)
アリエッタは外の人物を見もしないまま怒りだす。少しして馬車の扉が若干乱暴に開けられると、彼女は驚きで声をあげた。
「シュ、シュヴァルツ殿下にアルフレッド殿下!?」
アリエッタの目の前には、二人が立っていた。
いつになく厳しい表情でシュヴァルツ殿下が話し出す。
「貴殿を徹底的に調べさせてもらった。
ミカエラ付きの侍女が全て自白したぞ。」
「な、何の事でしょう?」
扇で口元を隠し、しらを切るアリエッタにシュバルツ殿下の追及が止まらない。
「隠しても無駄だ。
貴様にある事を命令されてやったと証言が上がってるのだ。」
「確かにその侍女との接点はありましたけれども、その侍女がお金に目が眩んでブローチを盗んだのと私に何の関係があるのよっ!!」
しかしアルフレッド殿下はこの言葉を聞き逃さなかった。
「へぇ…、何で侍女が盗んだって分かったんだよ?俺達は全て自白したと、
ある事をお前から命令されたとしか言ってないけどさ??」
「あっ!」
アリエッタは咄嗟に口を押さえたが、もう遅い。
すかさずシュヴァルツ殿下が追及する。
「侍女に余が贈ったブローチや髪飾りを盗ませ、現場にわざと置いていったそうだな?
そうすれば、必然的に疑いの目が彼女にいく。お粗末なやり口に気づけなかった余にも落ち度はあるが、貴様は私と彼女の仲を引き裂いた張本人だ。
どうやって責任をとってもらおうか…?」
怖い目でアリエッタを睨む。
それでも彼女は強気に言い返した。
「あの女が全部悪いのよっ!!殿下や周りにちやほやされていい気にのっているからっっ、それなのに平然とした顔で男を侍らせて私を見下してっ…ムカつくのよ!!ビッチなあの女を学園から追い出せて精々するわっ、
アハハっ、あんな顔が見れて愉快で堪らない!!」
アリエッタの歪んだ感情を目の当たりにした二人は、思わず身を引いた。
「お前っ…おい、こっちに騎士を何人か寄越してくれ。
こいつを国王陛下の御前に連れていき、洗いざらい吐かせろ!」
アルフレッド殿下は怒りを露にし、騎士達に命令する。シュヴァルツ殿下は何も言わず、ただ冷めた目でアリエッタを見ていた。
「シュヴァルツ殿下も、あんな鉄仮面を婚約者にするなんて本当に気の毒ですわ!
私はただ、あの女を追放しただけっ!
フフッ…貴方が気に病む必要はどこにもないのですよ?だって私と貴方は婚―。」
―ダンッッ!
「何を勘違いしているか知らないがお前と婚約するなどと誰が言った?
余が、恥知らずの大嘘つきな女と婚約するとでも??
―笑わせるな。お前は生涯死を望んでも叶わぬ苦痛と絶望を味わえ…、二度とその身が太陽の光を浴びれぬ暗闇の底で地獄を知れ。」
アリエッタの顔面すれすれに愛剣を刺し冷酷な表情で淡々と告げる。
その光景に、誰も口出し出来ぬままただ茫然と眺める事しか出来なかった。
その後、デール家を捕縛しアリエッタ以外の者は従者を含め、皆縛り首に処された。
アリエッタとミカエラの元従者付きは、王宮の地下に幽閉された。
ここで二人は自然の理によって死が彼女たちを受け入れるその日が訪れない限り、死にかける一歩手前まで拷問され回復薬で快復しては休む暇も与えられないまま拷問が繰り返される。
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