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13、イバドの町にやってきたけど……。
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今度こそ起きていた僕は、高熱の為ぐったりしているリータ君の為、おでこを濡れた布で冷やしたり水分補給させたりしていた。
2度ほど、トイレ休憩とお馬さんのもぐもぐタイムを取り日が沈む頃に到着した。
空はキレイな夕焼け、遠くからでも見えていた薄茶色で横長に広く大きな建物が間近で見えた時には語彙力がなくなってしまった。
もし、どぉ~しても声で表現するならば、うわぁ~とか、おおぉ~とかだ。
とにかくすごいとか、すばらしくごっつい?ごっつぅキレイ?まぁ、そんな感じだ。
門番さんのほとんどが白っぽい足首までの長さのゆったりとした服装だった。
アラビアンっぽい服装に似ていた。
初めての町、初めてのアジがある?門に入る時にはなぜかかなりドキドキしてしまった。
1人ずつ半球の水晶っぽい物に触れ検査された。
ただ身分証がない子が3人。
リータ君は10歳という事で、セブン町の冒険者ギルドで急遽身分証を作ったのだった。
ぐったりしているので不審に思われたみたいだったが、イバド町に行くのでと言ったら納得したらしい。
その時、理由はわからなかったがコリラックさんが保証人となりリータ君は、G級のプレートを首にぶら下げていた。
身分証がない者は1人につき銀貨1枚、大銅貨8枚、銅貨1枚支払わなければいけない。(約1810円)
やたらと細かいなぁと思ったけど、イバド→1、8、10…。まさか、ね?!そんな事って、あるのか?
かなり苦しいゴロ合わせなのかもしれないと思ったが、とりあえず考えるのをしばらくやめる事にした。
3人分の通行税は銀貨5枚、大銅貨4枚、銅貨3枚(5430円)はコリラックさんが支払った。
銅貨 1枚 10円
大銅貨 1枚 100円
銀貨 1枚 千円
金貨 1枚 1万円
白金貨 1枚 10万円
確認作業では、すんなりだったのに対して身分証がない3人には尋問?と思えるほど、別室で1人1人呼ばれ確認されたのだった。
小さいけど大丈夫かなあ、怖い事はされてないかなぁと子どもたちが取り調べの間、連れて行かれた別室の前から離れがたかった。
本当は同時期にそれぞれに門番さんが付き、個別に取り調べ?を受ける予定だった。
不安からか子どもたちが僕を含めコリラックさん、グリーコさんから離れず半泣きになってしまったのだった。
誘拐や親に売られてたり虐待を受けた子どもたちは、この短期間で僕やグリーコさんを信用?してくれたのかもしれない。
うれしいと思うと同時に守ってやる!!と謎の使命感が湧いてきたのだった。
それは僕だけではなくコリラックさんもグリーコさんもたぶんだけど同じような気持ちだったようだ。
ただ、オレ…僕の取り調べ?は他とは違った様で、どんな感じだったか答え合わせした時、なぜかコリラックさんもグリーコさんも怒っていた。
質問その一
門番:恋人、または将来を約束した相手はいますか?
シエル:いません。(前にいたけど、転生?初日に婚約破棄されたからいません。顔もうっすらとしか…ほぼ思い出せません。
(*注意*あまりにも緊張していた為、最初の質問からおかしい事にシエルは、まだ気づいてません)
質問そのニ
門番:恋人に対する希望、または好みのタイプは?
シエル:優しい人?そばにいて落ち着く人とか、柔らかい(もふもふ)雰囲気の人?まだ、よくわからないけど話合いができる人かな?
(*注意*シエルはわりと鈍感&天然です。ついでに前世も含み、未経験です)
質問その三
門番:こ、子どもは好きなのか?好きだとしたら何人欲しい?
シエル:好きと言えば好きかな?今回、病気になってる子を助ける為、この町に治せる人がいると聞いたから来たんだけど……。んっ?子どもが欲しい?どういう事?
門番:い、いやぁ。そ、その子どもに対して悪いことするヤツが、多いから……ゴニョゴニョ、ごほっ、そういった悪いヤツがいたとしたら、子どもに対してどう対応するかって感じ、だ。
シエル:あっ、なるほど~。ここは、治安悪いのかな?←ボソッと小声。
門番:治安は、残念ながら良いとはいえないが、自警団や冒険者ギルドと商業ギルドからの見回りもあるから、数年前より良くなったよ。
だけど、小さな子は特に気をつける様に目を光らしてるんだよ。
シエル:へぇ~そうなんだ。すごいんだね。毎日お疲れ様です。
門番:あ、ありがとう。と、ところで、こ、恋人が出来て、け、結婚したら…な、何人くらいこ、子作り…子ども欲しい?
シエル:えっ!!
この辺でやっと尋問内容がおかしい気がしたが、今まで取り調べやちゃんとした手続きを受けた事がないので、こんなものかな?となぜか、そう思ってしまったシエル。
質問に対して「子どもは、何人いても可愛いからたくさんいても大丈夫」と答えたのだった。
門番は、なぜか動きがぎこちなくなったあと、滞在先の事や滞在先に何日位居るのかとか聞いてきた。
滞在先不明、滞在日数不明。
コリラックさんとそしてリータ君の病気が治るまでかなぁと答えた。
グリーコさんは商人だし、この町まで乗せてもらう為ここまでの運賃は払っただけと答えた。
そう門番に伝えたとよ、と言った時のグリーコさんは、なぜか涙目になっていた。
門番さんの名前、たしか…アレ?聞いたはずなのに忘れてしまった。
しかも皆同じ様な白っぽいゆったりとした服をすっぽり着ていたから、見分けがつかない。
まっ、いいか。
この町の多くの人は、強い日差しを避ける為なのか頭をおおうように、首から足まである長袖の"トーブ"という服を着ていた。
基本、全身白色が一番涼しく過ごせるらしく、袖幅も幅も広で風通しがいいらしい。
ここの服装なら僕の体型も隠れるし、ダボっとしてコスプレ感もあるから着たいと思った。
あとで服屋さんも見ようと思った僕がいた。
なのに、まさか、こんなこと!!いゃ~ん♡って思う出来事があったのだった。
やっと終わった尋問?は無事に終わり、取り急ぎグリーコさんは商談の為、寂しそうに仕事に行った。
晩ご飯は一緒に食べよう!!と何度も何度も何度も約束させられた。
グリーコさんはしぶしぶ荷馬車から皆を降ろし、しぶしぶ仕事に行った。皆で見送った頃には、ほぼない夕闇に包まれていた。
辺りからはかぐわしいイイ香りが、どこからともなく漂っていた。
このイドバ町にはいくつか教会があるのだけど、少しずつ教えはもちろん信じている神様が違った。
それぞれの魔法の種類、曜日にもなっている主に7神がご神体として教会に鎮座しているらしい。
荷馬車から見た町並みの中に、立派で豪華な建物や絶対にお金持ちでしょう!!という風貌の人もいた。
頭からすっぽり布やフードをかぶっている人ばかりで、獣人族らしい人は居なかった。
コリラックさんの様な顔までもふもふの獣人族らしい獣人族はまだ見た事がなかった。
……なぜ?
少し年季が入った洋風のお家。
元は白かっただろうと思われる壁は所々、いや、ほとんど剥がれていた。
隙間もわりとあり、適当な板や石などで穴を塞いでいたり、間に合わせの修繕が至る所にされていた。
遠目でのぱっと見は、まぁ、まぁまぁ…たいへんオモムキがありざますデス、はい、あの洋風のアレ……。
コワクナイモン、だってボクもうオトナだもん。
ほら、ほらアレ的な映画に出てきそうな建物。
入る前に勇気がいりそうだ。
今なら顔がアンパンで出来てる有名キャラの勇気がほしい。
さぁ、ボクのお顔をお食べ!って、リアルで顔をちぎって手渡しされたら間違いなく気を失うかもしれない。
ちぎられた顔のパンはいらないから、勇気だけが欲しい。
ホラーは嫌いだ。
元看護師、夜勤は当たり前で消灯時間が過ぎた小児病棟は特に泣き声がした。色々寂しくて泣く子もいるし、病気やケガが痛くてうめき声もあるんだけど、大人の声よりグッとくるもんがある。
だけど、それはそれで仕事だしそういう場所だからとか、そんなもんだろうと、あまり怖くはないハズと必死に思いながら夜の病院の仕事を乗り越えていた。
遊園地とかまで行って、ホラーハウスに入る人の気持ちがわからない。
なぜお金を払ってまで怖い思いをしなければならないんだと思ってしまう過去の自分。
入る前から戸惑ってしまった。
両手が塞がっているコリラックさんのかわりに、呼び鈴がわりなのか穴があいた鍋?が置いてたので、それをゴンゴンと軽く叩いた。
「「「「「!!!」」」」」
思ってたより、大きな音がしたのでビックリした。
「シエル君、なぜそれを叩いたんだ?」
「えっ?ダメだった?呼び鈴がわりかと思ったんだけど……。」
話してるうちに中から数人の足音がきこえてきた。
「まずい、そこから退け!!」
バゴンッ!!
「っ!!!」
「「「「シエル(君・お兄ちゃん)!!!!」」」」
コリラックさんの言葉に反応が遅れ、ものの見事に顔面に木のドアがぶち当たってしまった。
少し鼻血が出て、目から星が出るって表現はきっとこの事なんだろうなぁと思ってしまった。
痛い、顔面全体が……かなり痛い。
「あっ、すみません、大丈夫ですか?」
「だいじょうばないけど、大丈夫です」
「はっ?」
うん、ごめん。
顔面が痛すぎて自分でも何言ってるのか、わからないんだ。しばらく待ってね?
いや、やっぱりだいぶ待ってて?!
そう思っていたら、コリラックさんが説明してくれた。
あと、オレ…僕が呼び鈴がわりかと間違えた穴が開いた鍋?は魔物が出た時の非常ベルの様な物だそうだ。
避難をうながし、助けを求めるための簡易魔道具だそうだ。
古い鍋を利用しているそうで、本来は金属で作られた手の平サイズのベル型だそうだ。
間違えるのも無理はない、そう言って苦笑いしたコリラックさんと教会から出てきた険しい顔をした数人の人たち。
明らかに掃除道具や、おたま、長い木の棒などを持ち魔物を退治しようとしたのか、皆険しい顔をしていた。
明らかに獣人族だとわかりやすいコリラックさんに対して偏見は持ってなさそうだけど、子どもたちをみた瞬間、一晩くらいならと受け入れこのままずっとお預かりする事は出来ませんと言われた。
そういうつもりではないこと、病気の子を治してほしい事を伝えた。
ここは孤児院も兼ねている教会だそうで、いくつかに分かれた部屋にギリギリ寝れる状態で子どもたちがたくさんいた。
10歳以下の小さな子どもたち、興味津々にこちらをみたり、少し大きめの子の後ろに隠れたりしながら様子を伺っていた。
床がギシギシなり、穴が空いているところもあった。
たまにつまづきそうになりながらも、応接室であり祈りの為の部屋であり教皇、司教、司祭、助祭たちの部屋でもあるらしく生活感ある場所だった。
ただ、ボロイだけ。
大人たちの服も子どもたちの服も清潔感はあるものの、使い古されたアラビアンっぽい服装だった。
気候的に気温が極端に下がりすぎる事はなく、どちらかと言えば一年を通して少し汗ばむ気候だそうだ。
熱が下がらないリータ君を見てもらおうとしたら、今、教皇様が不在であと2日後位にしか戻らないそうだ。
「「「「「「!!!」」」」」」
ここまで来て治せる人が居ないなんて。
シエルはリータ君の頭とおでこに、水筒がわりの皮袋に氷水を入れ冷やしていた。
元看護師なのに、ここには点滴も抗生物質も熱下げもない。
日にち薬とか言ってるうちにリータ君がさらに悪化してしまったらどうしよう。
今日一日、果実汁のなんちゃってスポーツ飲料しか口にしていないリータ君。
病気を治すことを治療、治ることは治癒。
回復は、以前の状態に戻ること。
治癒は、病気が完全に治ること。
どうすればいいんだ?
「…薬、薬草、どうすれば……。」
無意識につぶやいていた言葉に教会の人たちが反応していた。
「薬湯にする為の薬草類は、かなりの高額で、薬師ギルドにあるかどうかもわかりかねます」
その言葉を聞いたコリラックさんは、立ち上がり薬師ギルドに行こうとしたが、教会の人が慌ててとめた。
解熱に使う薬草、解毒に使う薬草は貴重で、一般販売されておらず高位貴族のみに、かなりの高額で取引きされているとの事。
この教会には子どもが28人いるが、食べていくのがやっとで小さな傷くらいしか治せない司教と司祭しか今はおらず、生活費を稼ぐために教皇は馬車で2日ほどの距離の領主様の所に行ってるそうだ。
なんでも領主様の三男様がご病気だといううわさをきいて、「商機だ!!行ってくる!!」と叫び飛び出したそうだ。
ただ、辻馬車の乗車賃すらもったいないので自分の足だけで行くと言い、走って行ったそうだ。
「領主様の三男様?ここの領主様って…すみません、僕不勉強で、この町の領主様が誰か知らないので教えていただけないでしょうか?」
申し訳なさがいっぱいで、頭を下げながら聞いた。
聞いた本人もビックリ。
「イバド町の領主様は……あの国王様と元騎士団団長とと学友である領主様だよ」
うん、だから…領主様の名前は?
2度ほど、トイレ休憩とお馬さんのもぐもぐタイムを取り日が沈む頃に到着した。
空はキレイな夕焼け、遠くからでも見えていた薄茶色で横長に広く大きな建物が間近で見えた時には語彙力がなくなってしまった。
もし、どぉ~しても声で表現するならば、うわぁ~とか、おおぉ~とかだ。
とにかくすごいとか、すばらしくごっつい?ごっつぅキレイ?まぁ、そんな感じだ。
門番さんのほとんどが白っぽい足首までの長さのゆったりとした服装だった。
アラビアンっぽい服装に似ていた。
初めての町、初めてのアジがある?門に入る時にはなぜかかなりドキドキしてしまった。
1人ずつ半球の水晶っぽい物に触れ検査された。
ただ身分証がない子が3人。
リータ君は10歳という事で、セブン町の冒険者ギルドで急遽身分証を作ったのだった。
ぐったりしているので不審に思われたみたいだったが、イバド町に行くのでと言ったら納得したらしい。
その時、理由はわからなかったがコリラックさんが保証人となりリータ君は、G級のプレートを首にぶら下げていた。
身分証がない者は1人につき銀貨1枚、大銅貨8枚、銅貨1枚支払わなければいけない。(約1810円)
やたらと細かいなぁと思ったけど、イバド→1、8、10…。まさか、ね?!そんな事って、あるのか?
かなり苦しいゴロ合わせなのかもしれないと思ったが、とりあえず考えるのをしばらくやめる事にした。
3人分の通行税は銀貨5枚、大銅貨4枚、銅貨3枚(5430円)はコリラックさんが支払った。
銅貨 1枚 10円
大銅貨 1枚 100円
銀貨 1枚 千円
金貨 1枚 1万円
白金貨 1枚 10万円
確認作業では、すんなりだったのに対して身分証がない3人には尋問?と思えるほど、別室で1人1人呼ばれ確認されたのだった。
小さいけど大丈夫かなあ、怖い事はされてないかなぁと子どもたちが取り調べの間、連れて行かれた別室の前から離れがたかった。
本当は同時期にそれぞれに門番さんが付き、個別に取り調べ?を受ける予定だった。
不安からか子どもたちが僕を含めコリラックさん、グリーコさんから離れず半泣きになってしまったのだった。
誘拐や親に売られてたり虐待を受けた子どもたちは、この短期間で僕やグリーコさんを信用?してくれたのかもしれない。
うれしいと思うと同時に守ってやる!!と謎の使命感が湧いてきたのだった。
それは僕だけではなくコリラックさんもグリーコさんもたぶんだけど同じような気持ちだったようだ。
ただ、オレ…僕の取り調べ?は他とは違った様で、どんな感じだったか答え合わせした時、なぜかコリラックさんもグリーコさんも怒っていた。
質問その一
門番:恋人、または将来を約束した相手はいますか?
シエル:いません。(前にいたけど、転生?初日に婚約破棄されたからいません。顔もうっすらとしか…ほぼ思い出せません。
(*注意*あまりにも緊張していた為、最初の質問からおかしい事にシエルは、まだ気づいてません)
質問そのニ
門番:恋人に対する希望、または好みのタイプは?
シエル:優しい人?そばにいて落ち着く人とか、柔らかい(もふもふ)雰囲気の人?まだ、よくわからないけど話合いができる人かな?
(*注意*シエルはわりと鈍感&天然です。ついでに前世も含み、未経験です)
質問その三
門番:こ、子どもは好きなのか?好きだとしたら何人欲しい?
シエル:好きと言えば好きかな?今回、病気になってる子を助ける為、この町に治せる人がいると聞いたから来たんだけど……。んっ?子どもが欲しい?どういう事?
門番:い、いやぁ。そ、その子どもに対して悪いことするヤツが、多いから……ゴニョゴニョ、ごほっ、そういった悪いヤツがいたとしたら、子どもに対してどう対応するかって感じ、だ。
シエル:あっ、なるほど~。ここは、治安悪いのかな?←ボソッと小声。
門番:治安は、残念ながら良いとはいえないが、自警団や冒険者ギルドと商業ギルドからの見回りもあるから、数年前より良くなったよ。
だけど、小さな子は特に気をつける様に目を光らしてるんだよ。
シエル:へぇ~そうなんだ。すごいんだね。毎日お疲れ様です。
門番:あ、ありがとう。と、ところで、こ、恋人が出来て、け、結婚したら…な、何人くらいこ、子作り…子ども欲しい?
シエル:えっ!!
この辺でやっと尋問内容がおかしい気がしたが、今まで取り調べやちゃんとした手続きを受けた事がないので、こんなものかな?となぜか、そう思ってしまったシエル。
質問に対して「子どもは、何人いても可愛いからたくさんいても大丈夫」と答えたのだった。
門番は、なぜか動きがぎこちなくなったあと、滞在先の事や滞在先に何日位居るのかとか聞いてきた。
滞在先不明、滞在日数不明。
コリラックさんとそしてリータ君の病気が治るまでかなぁと答えた。
グリーコさんは商人だし、この町まで乗せてもらう為ここまでの運賃は払っただけと答えた。
そう門番に伝えたとよ、と言った時のグリーコさんは、なぜか涙目になっていた。
門番さんの名前、たしか…アレ?聞いたはずなのに忘れてしまった。
しかも皆同じ様な白っぽいゆったりとした服をすっぽり着ていたから、見分けがつかない。
まっ、いいか。
この町の多くの人は、強い日差しを避ける為なのか頭をおおうように、首から足まである長袖の"トーブ"という服を着ていた。
基本、全身白色が一番涼しく過ごせるらしく、袖幅も幅も広で風通しがいいらしい。
ここの服装なら僕の体型も隠れるし、ダボっとしてコスプレ感もあるから着たいと思った。
あとで服屋さんも見ようと思った僕がいた。
なのに、まさか、こんなこと!!いゃ~ん♡って思う出来事があったのだった。
やっと終わった尋問?は無事に終わり、取り急ぎグリーコさんは商談の為、寂しそうに仕事に行った。
晩ご飯は一緒に食べよう!!と何度も何度も何度も約束させられた。
グリーコさんはしぶしぶ荷馬車から皆を降ろし、しぶしぶ仕事に行った。皆で見送った頃には、ほぼない夕闇に包まれていた。
辺りからはかぐわしいイイ香りが、どこからともなく漂っていた。
このイドバ町にはいくつか教会があるのだけど、少しずつ教えはもちろん信じている神様が違った。
それぞれの魔法の種類、曜日にもなっている主に7神がご神体として教会に鎮座しているらしい。
荷馬車から見た町並みの中に、立派で豪華な建物や絶対にお金持ちでしょう!!という風貌の人もいた。
頭からすっぽり布やフードをかぶっている人ばかりで、獣人族らしい人は居なかった。
コリラックさんの様な顔までもふもふの獣人族らしい獣人族はまだ見た事がなかった。
……なぜ?
少し年季が入った洋風のお家。
元は白かっただろうと思われる壁は所々、いや、ほとんど剥がれていた。
隙間もわりとあり、適当な板や石などで穴を塞いでいたり、間に合わせの修繕が至る所にされていた。
遠目でのぱっと見は、まぁ、まぁまぁ…たいへんオモムキがありざますデス、はい、あの洋風のアレ……。
コワクナイモン、だってボクもうオトナだもん。
ほら、ほらアレ的な映画に出てきそうな建物。
入る前に勇気がいりそうだ。
今なら顔がアンパンで出来てる有名キャラの勇気がほしい。
さぁ、ボクのお顔をお食べ!って、リアルで顔をちぎって手渡しされたら間違いなく気を失うかもしれない。
ちぎられた顔のパンはいらないから、勇気だけが欲しい。
ホラーは嫌いだ。
元看護師、夜勤は当たり前で消灯時間が過ぎた小児病棟は特に泣き声がした。色々寂しくて泣く子もいるし、病気やケガが痛くてうめき声もあるんだけど、大人の声よりグッとくるもんがある。
だけど、それはそれで仕事だしそういう場所だからとか、そんなもんだろうと、あまり怖くはないハズと必死に思いながら夜の病院の仕事を乗り越えていた。
遊園地とかまで行って、ホラーハウスに入る人の気持ちがわからない。
なぜお金を払ってまで怖い思いをしなければならないんだと思ってしまう過去の自分。
入る前から戸惑ってしまった。
両手が塞がっているコリラックさんのかわりに、呼び鈴がわりなのか穴があいた鍋?が置いてたので、それをゴンゴンと軽く叩いた。
「「「「「!!!」」」」」
思ってたより、大きな音がしたのでビックリした。
「シエル君、なぜそれを叩いたんだ?」
「えっ?ダメだった?呼び鈴がわりかと思ったんだけど……。」
話してるうちに中から数人の足音がきこえてきた。
「まずい、そこから退け!!」
バゴンッ!!
「っ!!!」
「「「「シエル(君・お兄ちゃん)!!!!」」」」
コリラックさんの言葉に反応が遅れ、ものの見事に顔面に木のドアがぶち当たってしまった。
少し鼻血が出て、目から星が出るって表現はきっとこの事なんだろうなぁと思ってしまった。
痛い、顔面全体が……かなり痛い。
「あっ、すみません、大丈夫ですか?」
「だいじょうばないけど、大丈夫です」
「はっ?」
うん、ごめん。
顔面が痛すぎて自分でも何言ってるのか、わからないんだ。しばらく待ってね?
いや、やっぱりだいぶ待ってて?!
そう思っていたら、コリラックさんが説明してくれた。
あと、オレ…僕が呼び鈴がわりかと間違えた穴が開いた鍋?は魔物が出た時の非常ベルの様な物だそうだ。
避難をうながし、助けを求めるための簡易魔道具だそうだ。
古い鍋を利用しているそうで、本来は金属で作られた手の平サイズのベル型だそうだ。
間違えるのも無理はない、そう言って苦笑いしたコリラックさんと教会から出てきた険しい顔をした数人の人たち。
明らかに掃除道具や、おたま、長い木の棒などを持ち魔物を退治しようとしたのか、皆険しい顔をしていた。
明らかに獣人族だとわかりやすいコリラックさんに対して偏見は持ってなさそうだけど、子どもたちをみた瞬間、一晩くらいならと受け入れこのままずっとお預かりする事は出来ませんと言われた。
そういうつもりではないこと、病気の子を治してほしい事を伝えた。
ここは孤児院も兼ねている教会だそうで、いくつかに分かれた部屋にギリギリ寝れる状態で子どもたちがたくさんいた。
10歳以下の小さな子どもたち、興味津々にこちらをみたり、少し大きめの子の後ろに隠れたりしながら様子を伺っていた。
床がギシギシなり、穴が空いているところもあった。
たまにつまづきそうになりながらも、応接室であり祈りの為の部屋であり教皇、司教、司祭、助祭たちの部屋でもあるらしく生活感ある場所だった。
ただ、ボロイだけ。
大人たちの服も子どもたちの服も清潔感はあるものの、使い古されたアラビアンっぽい服装だった。
気候的に気温が極端に下がりすぎる事はなく、どちらかと言えば一年を通して少し汗ばむ気候だそうだ。
熱が下がらないリータ君を見てもらおうとしたら、今、教皇様が不在であと2日後位にしか戻らないそうだ。
「「「「「「!!!」」」」」」
ここまで来て治せる人が居ないなんて。
シエルはリータ君の頭とおでこに、水筒がわりの皮袋に氷水を入れ冷やしていた。
元看護師なのに、ここには点滴も抗生物質も熱下げもない。
日にち薬とか言ってるうちにリータ君がさらに悪化してしまったらどうしよう。
今日一日、果実汁のなんちゃってスポーツ飲料しか口にしていないリータ君。
病気を治すことを治療、治ることは治癒。
回復は、以前の状態に戻ること。
治癒は、病気が完全に治ること。
どうすればいいんだ?
「…薬、薬草、どうすれば……。」
無意識につぶやいていた言葉に教会の人たちが反応していた。
「薬湯にする為の薬草類は、かなりの高額で、薬師ギルドにあるかどうかもわかりかねます」
その言葉を聞いたコリラックさんは、立ち上がり薬師ギルドに行こうとしたが、教会の人が慌ててとめた。
解熱に使う薬草、解毒に使う薬草は貴重で、一般販売されておらず高位貴族のみに、かなりの高額で取引きされているとの事。
この教会には子どもが28人いるが、食べていくのがやっとで小さな傷くらいしか治せない司教と司祭しか今はおらず、生活費を稼ぐために教皇は馬車で2日ほどの距離の領主様の所に行ってるそうだ。
なんでも領主様の三男様がご病気だといううわさをきいて、「商機だ!!行ってくる!!」と叫び飛び出したそうだ。
ただ、辻馬車の乗車賃すらもったいないので自分の足だけで行くと言い、走って行ったそうだ。
「領主様の三男様?ここの領主様って…すみません、僕不勉強で、この町の領主様が誰か知らないので教えていただけないでしょうか?」
申し訳なさがいっぱいで、頭を下げながら聞いた。
聞いた本人もビックリ。
「イバド町の領主様は……あの国王様と元騎士団団長とと学友である領主様だよ」
うん、だから…領主様の名前は?
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オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役の僕 何故か愛される
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BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
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ファンタジーラブコメBL
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【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!
僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして?
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