雨のふる星、遠い星

依久

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3話 彼女の過去

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この頃、雨降りが嫌いじゃなくなった。
ささくれたあたしの心を優しく包み込むように降る雨。
今日も展望ドームでアスランと話している。




浅黒い肌に黒い瞳。
精悍な顔だちにがっしりとした肩幅。




あの日、あの場所で、ひとりでごちなければ
彼から声をかけてもらえることはなかった。




あたしは、こっそりとアスランを盗み見た。




彼の容貌は昔の図鑑で見た「南国の人」を思い起こさせた。




降り注ぐ太陽のイメージはそのままアスランのイメージに重なった。




あたしの視線に気がついているのかいないのか、彼が言い出した。




「なぁ、一度聞いてみたいと思ったのだけど・・・・」
「なぁに?」
「あんた、地球人だろう?
なぜこんな辺境の惑星に来たのか、俺、興味がある」
「え?」
「だって、地球人てエリートが多いじゃないか?」




あたしはギクリとした。




「あたしは、一族の落ちこぼれだったから・・・」



コップの底に残ったコーヒーを飲み干しながら答えた。



「そうかなぁ。あんたの立居振舞い、品がある感じなんだけど?」
「まさか!」
「落ちこぼれとは反対の雰囲気だけどな…」
「気のせいよ」
「おっかしいなあ。この俺が外すなんて」
「猿も木から落ちるって言うでしょう?」
「猿って?」



猿ってなんだ。美味いのか?と尋ねるアスランを横目に見ながらあたしは




「おちこぼれなのでね、就職先が無くて辺境の星に志願したのよ」
と話を締めくくった。








       

『エリート』という言葉は、封印した忌まわしい
記憶を呼び覚ました。




あの日、地球で雨が降っているのをなんとなしにモニターで眺めながらアクエリア号と交信していた。




『チーフ!。シリンダーの圧力が上昇し続けています!!』



鳴り響く、エマージェンシーの警告音の中、アレは起こった。



あの悪夢が………。












「シルヴィア?どうした」
忌まわしい過去の記憶は、アスランの呼びかけに
よって再び記憶の底に沈んでいった。



「顔が真っ青だぜ。まるで死にそうな顔だ」
アスランの大きな手が、そっとあたしの頬に触れた。




「俺のウチに来るか?」
「え?」
「このまま帰せない。今ひとりにしたら自殺しそうな顔してるゾ」




おどけた彼の声音が有難い。




「行ってもいいけれど下心なんて無いでしょうね?」
「いや、おおあり!」
「えええ!?」
「ははは~。う・そ。オムレツ作ってやるよ。得意料理だ!」



彼の瞳が笑っていた。





『君の瞳に恋してる』




そんな古い歌が頭の中をよぎった。



つづく
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