雨のふる星、遠い星

依久

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5話 エルダ

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青いフレームの中で、その女性はやわらかく
微笑んでいる。


アスランにばれないように、あたしはそのフレームを
盗み見た。


フレームの端に『エルダ』という名が見えた。
この女性のファーストネームね。



『エルダ』という名は、
過去の忌まわしい記憶を思い起こさせた。







「チーフ!シリンダーの圧力が上昇し続けています!」
「パイロットにエンジンを停止するように指示を
出して!」
「磁場が乱れて交信できません」



食い入るようにみつめていたモニターの中で
宇宙船が爆散した。
あれは過去の出来事だからと、自分に言い聞かせた。



何か別な事を考えよう。


そういえば……
アスランて女性にもてまくっている割には
特定の女性の存在は感じられなかった。
よく化粧室で、


「アスランてなかなか落ちないのよ」て聞いた事がある。
それはこの『エルダ』の存在があったからかしら?

      

この惑星『ルシーダ』に来てから数ヶ月経つけれど、
あたしは自分からは積極的に人付き合いをしてこなかった。


あの自販機のところでアスランから声をかけられるまで
頑なに人と接触しようとしなかった。




あたしは、『人』が恐い。



でも、アスランの話し方や優しげな表情には
安堵感を覚えた。アスランの纏う空気には、
口では説明できない暖かなものを感じた。



そう、まるでさっき食べたオムレツのように
暖かでふわふわしている感じだ。



でもお皿の上のオムレツは無くなってしまった。
加えて、あたしを通り越してフレームの女性を見つめるアスランの視線。


おそらく、ここに座る事が許されるのは、あの女性。
あの金髪の美しいエルダ・・・。
彼女はアスランの恋人?



『アタシが幸せにナレルワケがナイ』




数ヶ月間、忘れていたその感覚が頭をもたげた。
もう、完治しているはずだと自分に言い聞かせた。



「ごちそう様、美味しかった。もう帰るね」
「これからコーヒーでも入れようかと思ったのに?」
「仕事、持って帰ってきたから・・・」



あたしは、バックからメモリーチップを出し、
ヒラつかせて見せた。



「でも、わずかな時間だぞ?そんなに焦らなくとも。
それに仕事ならここでもできるだろう?」



そう言いながら彼はコンピューターを起動させた。
軽やかな電子音が鳴った。



「いえ、ちょっと周りに人がいると集中できないから
帰るわ」



あたしはバックをひっつかんで靴を履き、
逃げるように彼の部屋をでた。



エルダ。という言葉が頭の中で回りはじめた。



つづく

       
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