雨のふる星、遠い星

依久

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10話 確信

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10話   確信

「ほら、シルヴィアさんも紅くなってる。案外ふたりつきあっているんじゃぁないの?」
「え?違うよ」
あたしは両手を振って必死で否定すると、アリスは少し安心した顔をした。



アリス、あなた、アスランのコトを?



もし、そうならあたしは身を引いた方がいい。
彼らのテリトリーに後から入ってきたのはあたし。



そして、もう一人のあたしがいつもの如く頭をもたげた。




『あたしが幸せになってはいけない』



その思いがまた頭を駆け巡った。




「ん~~、やっぱりアスランがゲイて噂は本当だったのかしら?」
これには面食らった。恐る恐る聞き返した。
「アリスさん、アスランがゲイってどういうこと?」
「だってやっぱり変よ。彼ってばあれだけもてるのに女のコ達に見向きもしない」
「まあ!だから、ゲ、ゲ…」




あたしは思わず吹き出し最後まで喋れなかった。昨日の晩、アスランの家で笑ってから笑い上戸になっているみたい。




「あら、意外」
「何が?」



笑いに耐えながらあたしは聞き返した。
「シルヴィアさん、笑わない人かと思っていた。いつも私達とは一線置いていた感じだったから・・・」
「そんな事はないわ。緊張していたのよ。あたし、おしゃべりは大好きよ」
「じゃ、お茶仲間になる?」
「喜んで!!ところで、アスランはゲイじゃないと思うけれど・・・・」
「そうね、ちょっと言いすぎたかな?でも彼なら『実はそぉ~なんだよ~』ってノリそう」
「ああ、それわかるわかる」




あたしは太陽のような彼の笑顔を思い浮かべていた。とても幸せな気分だった。しかしその気持ちは次のアリスの言葉で揺らいでしまった。




「じゃあ、アスランが特定の女性を作らないのは、もうひとつの噂の方かな?」
「もうひとつの噂?」
「そう、彼には忘れられない女性がいるって説」
「・・・・・・」




あたしの脳裏に青いフレームの中で微笑む『エルダ』の写真が浮かんだ。その時に仕事開始の音楽がなった。




「あ~あ、今日もお仕事頑張りますか!シルヴィア。ブラックでいい?」
「OK」
「あとでお茶仲間の会費のことを説明するわね」




アリスが何か言ったようだけど、もうあたしの耳にはおぼろげにしか届かなかった。



仕事しなきゃ……



あたしはコンピュータのスイッチを入れた。



昨日の続きのデータの打ち込みを始めたけれど全然集中出来ない。



しばらくして打ち込みの数字が一行ズレていたことに気がつき、キーボードの手を止めた。



なにをこんなに動揺しているの?


あたしは何を期待して……。


お水でももらいに行こう。



カタンと立ち上がると、サーバーに水をもらいに行った。



この頃なんだか蒸し暑いから喉が乾く。



けれども上着を脱ぐわけにはいかない。
薄着になったら気づかれてしまう。
あたしの手首の……



「やあ、愛しのエンゼルフィッシュ。アンタも水を飲みに来たのか?」
「あ…」



アスラン!



いま、あまり会いたくない人…。



「今日も来る?」
「……今日は…遠慮しとく」
「なんで?」
「逆に聞くけど、なぜあたしに声をかけるの?」
「興味があるから」
「!」



それは、どういう意味で…?
思わずアスランの瞳を覗き込んだ。



「観賞魚には興味がない…のでは?」



掠れた声が出た。



「観賞魚には…ね。また、声かけるよ」



アスランの背中を見つめながら、エルダの事が知りたくなった。



今は仕事中!



あたしは我にかえると水をグッと飲み干して仕事に戻った。



本当は、アスランの誘いに乗りたかった。
でも、エルダの影がちらついてYESと言えなかった。




彼の家に行かなければよかった。
そうすればエルダの事を知らずに、ただのコーヒー友達でいられたのに。



すべて、自分の弱い心のせいだと、あたしは唇を噛み締めた。



つづく

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