雨のふる星、遠い星

依久

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22話 同士

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あたしは、そのまま寝込んでしまったらしい。


くしゃみが聞こえたので、ベッドを抜け出して隣の部屋を覗くとアスランが何も掛けずに丸まって寝ていた。


大きな黒猫みたい…。


あたしは寝室に戻ると掛け布団を持ってきてアスランにふわりとかけた。


「風邪をひかなければ良いのだけど…」


すっかり眠気が遠のいてしまったので、ベッドに戻る気になれず(戻ったところで布団がない)ので、そのまま座り込んでアスランの寝顔を眺めていた。




浅黒い肌。
通った鼻筋。
昔読んだ絵本の中に出てきた砂漠の王子様みたい。





と、思ったところで、この歳で王子様は無いわね、と苦笑した。


ふっと漏れた忍び笑いにアスランが反応した。



「だ…れ…」
「あたしよ」
「エル…ダ…」
「いえ、ちが…!え?え?」


アスランの腕が伸びて、あっという間に布団の中に引きずり込まれた。
きゃっと叫んだあたしの声はアスランの声が重なってかき消されてしまった。


「エルダ、やっぱりおまえが死んだだなんて嘘だったんだ…な」
「え、ちが…」
「皆まで言うな、あいして…い…る…」



アスランは、大切そうに【エルダ】を抱きしめたので、あたしは反論するのをやめた。



これは夢だ。
一晩限りの



少しの間だけ、彼に幸せな夢を見させてあげたい。
その分、覚めた時の落差でアスランは苦しむだろう。



でも…



差し伸べられた手を振り払う勇気がいまのあたしには無い。



あたしは事故の後、心が傷ついてボロボロになった。



ソレはアスランも同じこと。



的外れな言い方かもしれないけれど、同じ事故で心を病んだ者同士。
アスランとあたしはある意味同士だ。



現実を見たくない時もあるし、受け入れたくない時もある。



わざわざ追い討ちをかけるように、現実を突きつけなくても良い。



今がそう…。



あたしはエルダのふりをした。
アスランの腕の中でエルダを演じる。



何も逆らわず黙っているだけで良い。
アスランの夢の中のエルダは、愛らしく光輝いているのだろう。



舞台で演じる女優のように、あたしは今、エルダ。
朝光が訪れるまでのわずかな時間、あたしは自分を殺した。



アスランの肌は温かくて、ウトウトしかけては気をとりなおすことを繰り返した。


エルダはあたしと同じ金髪。
暗闇の中でごまかせても、朝の光が残酷な真実を彼に告げる。



あたりが明るくなる前に抜け出さないといけない…。


ああ、でもここはなんて居心地が良いのだろう。



よりによって婚約者の腕の中ではなく、相反する男の腕の中。



婚約者…と言えばそろそろ破談が成立する頃だろう。
あたしはもう地球には帰りたくないし、婚約者は財閥の御曹司なので地球から離れられる筈もなく。



「エルダ…」


アスランの声に我に返った。
いけない、いま眠りそうだった。


「エルダ」


また、アスランが彼女を呼んだ。
けれど声を出すとあたしがシルヴィアだとバレてしまう。
どうしよう…と困窮し、返事の代わりにアスランの胸元に頭をすり寄せた。



こうしたら甘えているみたいに感じてくれるだろう。



「エルダ、おまえが欲しい」
「!」



つづく



公開、遅くなりごめんなさい…。
…とある作品の二次創作を同時進行で書いていて、二足のわらじ状態です。


https://blogs.yahoo.co.jp/i94formo

良かったらこちらにも遊びに来てくださいね!
お気に召さなければ長居は無用です。

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